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第8回 情報を持ち歩く(補助記憶装置2)

携帯電話、携帯型音楽プレーヤー、PDA、デジタルカメラなど小型情報機器の外部記憶媒体としてコンパクトフラッシュに代表される外付けの半導体メモリが注目を集めています。さまざまな形状のメモリカードが市場に出ており、価格低下にともなって普及も進んでいますが、相互に互換性はなく、デジカメを買い増すたびに記憶媒体が増えていくと嘆く人もいます。今回は、情報の持ち運びに便利なメモリカードやUSBメモリを説明します。

カード型で着脱が容易なメモリは、PCMCIA規格のフラッシュATAカードメモリがその最初です。PCカードメモリとも呼ばれ、ノートパソコンなどに取り付けて、補助記憶装置の拡張に使用されていました。しかし、PCカード市場の主役は、メモリカードよりもモデムやネットワーク、各種インターフェースなどの機能拡張装置でした。そのカード型メモリが市場で目立ち始めるのはコンパクトフラッシュが登場してからです。そしてその普及を進めたのがデジタルカメラです。今回はこのカードメモリとUSBメモリの話です。


情報を持ち歩く

情報を持ち歩くためのメモリに要求されるのは、「省電力」、「小型」、「扱いやすさ」の三点です。
「省電力」とは、携帯機器に取り付けて使用するときは電池を消耗しないこと、または電源がなくてもデータが保持されるという条件です。「小型」であることが携帯するための条件です。デジタルカメラや携帯電話などの携帯型機器は本体そのものが小型化されており、それらに取り付けて使用するメモリは、どこまでも小型であることが求められます。「扱いやすさ」とは、USBメモリに見られるように電源が不要で、パソコンに挿せばすぐに使用できるといった取り回しの良さのことで、持ち歩くデータのコピーに長時間かかるのでは意味がありません。
こうした条件にぴったり適合する半導体メモリが「フラッシュメモリ」です。

フラッシュメモリとは

パソコンに内蔵される半導体メモリは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static RAM)など高速な読み書きでCPUの動作を支えています。これらは、揮発性メモリといい、電源を切ると記憶内容は失なわれます。それに対してROM(ReadOnlyMemory)のように電源を切っても記憶が保持されるものを不揮発性メモリといいます。フラッシュメモリは不揮発性メモリに属しますが、ROMと違って記憶内容を書き換えることができます。RAMのよさとROMの便利さを兼ね備えています。ROMやRAMなどメモリについて詳しくは、コンピュータ基礎講座第4回「名脇役メモリ」をご覧ください。 フラッシュメモリを構成する1つ1つのセルは、次の図のようにしてデータを記憶します。

これらのセルのつなぎ方でNAND型とNOR型に分類されます。
NAND型は、構造がシンプルで集積度を上げやすく、大容量化に向いています。ブロック単位で読み書きするので、消去や書き込みは高速ですが、ランダムアクセスが遅いという欠点があります。本稿で説明しているメモリカードやUSBメモリはこのNAND型です。
NOR型は、信頼性が高く、ランダムアクセスが高速なため、携帯機器のプログラムの記憶などに利用されています。読み出しが高速で、高速ランダムアクセスも可能です。NAND型が対応していない1バイト単位での読み書きができます。しかし、高集積化には向かず、書き込みに大きな電流が必要という欠点があります。携帯電話やPDAなどハードディスクが使用できない環境でプログラム等を保存しておくのに使われています。

メモリカードの種類

デジタルカメラや小型携帯機器では、メーカーごとに形状や機能、規格を決めようとする傾向が強く、結果として、さまざまな規格が乱立しています。一部を除いて相互に互換性はないままの状態が今日まで続いています。これらはすべてフラッシュメモリと入出力機能や著作権保護機能などの付加装置を1つのパッケージに収めたものです。

名称 寸法・外観 説明
コンパクトフラッシュ
36.4×42.8×3.3mm

SanDisk社が開発した小型フラッシュメモリカード。
8GBの大容量モデルがあり、データ転送速度は、8MB/秒から、20MB/秒。
フラッシュメモリと入出力を受け持つコントローラーチップを1枚のカードにまとめている。外部端子の構造は、PCカードに準拠しており、CFスロットや専用のアダプターを介してノートパソコンに接続することができる。カードが、ATA規格に準拠した入出力を行うので、パソコンからはハードディスクに見える。
コンパクトフラッシュには、32倍速とか40倍速と表示をしているものがある。「○○倍速」は、音楽CDの転送速度150KB/秒が基準になっている。例えば、32倍速なら4.8MB/秒、40倍速で6MB/秒ということになる。

スマートメディア
45×37×0.76mm

東芝が提唱した切手大のメモリカード。小さくて薄い。容量は128MBまで。著作権保護用ID付きもある。データ転送レート2MB/秒。構造が単純でPDAやデジタルカメラの記憶媒体として広く利用されたが、薄さゆえに曲げによるトラブルや、露出した金属端子部分が災いして、読み取りができなくなったといった問題が他のメモリカードに比べて多かった。現在新しい機器のメディアとして採用されることはない。

メモリースティック メモリースティック
21.5×50×2.8mm


メモリースティックPRO
21.5×50×2.8mm


メモリースティックDuo
20×31×1.6mm


メモリースティックPRO Duo
20×31×1.6mm

ソニーが提唱・製造。フラッシュメモリタイプの記録メディア。一口にメモリースティックと言っても種類は多い。
標準サイズとDuoサイズの2つに大別できる。
標準サイズの「メモリースティック」は単3乾電池と同じ長さ。128MBまでで、それ以上の容量の製品は出なかった。そこで、切り替えで128MB_2=256MBというメモリーセレクト機能付というモデルが登場したりした。
1999年12月に同社の音楽データ著作権保護技術マジックゲートを搭載した「マジックゲートメモリースティック」、「メモリースティックPRO」は上位機種で大容量、高速書き込みが可能。最高転送速度は160Mbps(20MB/秒)と、従来のメモリースティックの約8倍の高速化を実現し、著作権保護技術マジックゲートも標準搭載している。容量は2GB。
「メモリースティックDuo」は小型のメモリースティック。携帯電話などの小型機器用で、アダプターを使用することにより、通常のメモリースティックとして使用することもできる。携帯電話や携帯型音楽プレーヤー、小型・薄型デジタルカメラではサイズ的に有利であることから、Duoのみに対応したものも多い。
Duoには、何の機能も持たない「メモリースティックDuo」と「マジックゲートメモリースティックDuo」、「メモリースティックPRO Duo」がある。 メモリースティックマイクロも発表されているが、出荷は2006年上半期となっている。

SDカード
32×24×2.1mm

SDは、SecureDigital(安全なデジタル)の頭文字。
1999年にSanDisk社、松下電器産業、東芝の3社が次世代の小型メモリカードとして共同開発。現在のところ最大記憶容量は4GB。データ転送レートは2MB/秒〜22MB/秒。
CPRM(Content Protection for Recordable Media)を内蔵し、SDMI(Secure Digital Music Initiative/デジタル音楽著作権保護協議会)の規格に準拠した著作権保護に対応している。SanDisk社のメモリカード「MMC(マルチメディアカード)」の仕様をベースとしているため、SDメモリカードスロットにMMCを差し込んで使用することができる(逆はできない)。

ミニSDカード
20×21.5×1.4mm

2003年にSanDisk社が発表したメモリカード。
SDカードをベースに、携帯電話向けに開発された。データ転送レートは2MB/秒〜22MB/秒、アダプターを利用すれば、SDカードスロットで利用できる。 重量は約1g。SDメモリカードと比べて面積で40%減、容積で60%減、重量で50%減となっている。
コントローラーICや動作電圧、データ転送速度などは従来のSDカードと同じだが、ライトプロテクトスイッチはつかない。

xDピクチャーカード
20×25×1.7mm

2002年オリンパス光学工業、富士写真フイルム、東芝がスマートメディアを置き換える次世代メディアとして共同開発。容量8GBまで可能。サイズは50円切手並み、メモリカードとしては世界最小。書込速度は16MBと32MBのカードは1.3MB/秒で、それ以上では3.0MB/秒。読出速度は、5.0MB/秒。著作権保護(カードごとの固有のID番号)がある。
主としてカメラメーカー製のデジタルカメラに使用されている。

マルチメディアカード
32×24×1.4mm

1997年にSiemens社とSanDisk社が共同開発。SDメモリカードの下位互換メディア、SDカードスロットで利用できる(逆はできない)。 1998年には両社とNEC、日立、Motorola社、Nokia社などで業界団体「MMCA」(MultiMediaCard Association)を設立し、規格の普及を推進している。 容量は4GBまで拡張可能。転送速度は20Mbps(2.5MB/秒)。
マルチデバイスに対応しており、最大30枚までのMMCを接続することができる。

リドゥーストサイズマルチメディアカード
24×18×1.4mm

業界団体「MMCA」が規格化した新しいタイプのマルチメディアカード。アダプターを利用すれば、マルチメディアカードとして利用可能。

※サイズ表記は、縦×横×厚さの順。単位はすべてmm。
※容量・転送速度などの仕様に関しては2005年11月現在。

メモリカード市場

2005年BCNランキングではSDカード(ミニを含む)が65%を占めており、圧勝に近い状態です。

容量別に見ると、128〜256MBが現在の主流です。今後、容量が増加していくことは間違いありませんが、今の時点では1GB以上はまだ少数派です。

MOやFDを駆逐したUSBメモリ

最近ではフロッピィやMOの代わりにUSBメモリを持ち歩くようになりました。形状はさまざまですが、印鑑2本分くらいの大きさに、GBクラスのデータを記録するものもあります。
もともとUSBは、周辺機器とパソコンを結ぶデータ伝送路の規格です。USBメモリは、パソコンのUSBコネクターに接続するだけで、外部記憶装置として使用できるようになっています。USBには「USB Mass Storage Class」という、ハードディスクなどをリムーバブルドライブとして認識するための仕様があり、USBメモリはこのUSB Mass Storage Classに準拠しています。そのため、OS側が持っているMass Storage Class用のドライバをそのまま使うことができ、Windows 2000以降では特別にドライバをインストールしなくても差し込むだけですぐに使うことができるようになっています。
USBには、USB1.1(転送速度12Mbps=1.5MB/秒)とUSB2.0(転送速度480Mbps=60MB/秒)の二つの規格が存在します。実際に40倍の開きが出るわけではありませんが、大幅に転送速度が違いますので、少々の価格差であればUSB2.0のご利用をお奨めします。
最大で8GBクラスの大容量のものから安価な小容量のものまであり、小型で、入手しやすく、挿すだけで簡単に使え、電源も不要、といいことばかりです。比較的小容量のデータを簡単にコピーすることができるので、仕事の続きを自宅でといった場合にとても重宝します。しかし小型で持ち歩きが簡単であるがゆえに、紛失や盗難などの事故への備えを忘れないようにしたいものです。多くのUSBメモリにパスワードによるセキュリティ機能が用意されています。正しいパスワードを入力しないとUSBメモリの内容を見ることはできないようになっています。USBメモリの使用にあたっては、こうしたセキュリティ機能を活用する習慣をつけましょう。


これからの「持ち運び」メモリ

フラッシュメモリで大ヒットした商品に、AppleComputer社のiPod ShaffleやiPod nanoがあります。1GBまたは2GBの大容量フラッシュメモリが実に身近な存在になりました。また、デジタルカメラの画素数は普及機で500万画素に達しており、標準的な画質で撮影すると、画像データは3MBにもなります。128MBで記録できる枚数は50枚足らずになります。メモリカードの売れ筋は、現在の128〜256MB中心から、512MB〜1GBにシフトしていくことになるでしょう。

さらなる小型化・大容量化

携帯電話や携帯型音楽プレーヤーの小型化・多機能化は、メモリの大容量化を必要としながらも、物理的にはよりいっそうの小型化を求めています。各メモリカードとも理論値最大まで容量を上げることになると同時に、SDカードがミニSDカードを必要としたように、さらなる小型化されたカード規格が登場するでしょう。

機能を複合化するUSBメモリ

USBメモリは、小型ストレージとしての役目以外に、プログラムやデータの配布や配信などの複合的な機能を搭載することになります。メールクライアントを入れて持ち歩いたり、携帯音楽プレーヤーと合体することもあります。USB Mass Storage Classに対応した携帯音楽プレーヤーは市販されています。USBメモリ単体では、競合する他商品との差別化が難しい商品であることも原因の1つです。

便利さと小型化の追求と同時に、紛失や盗難、情報の持ち出しや機密漏洩などのセキュリティ対策も必要となります。企業では、会社専用USBメモリやメモリカード以外の使用を禁止したり、暗号化記録やパスワードによるデータ保護、指紋認証機能の利用などの対策が欠かせません。 大容量・小型化・多機能化に加えて、セキュリティもこれからの「持ち運び」メモリのキーワードになります。

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