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第10回 動作を支える舞台装置

PCを選ぶときに、CPUのクロック周波数やメモリのサイズ、HDDの容量やDVDドライブの速度などを気にする人は多いのですが、PCの電源ユニットの性能やケース内部の機構、ファンの回転数などを気にする人はほとんどいません。電源なしではPCは動きませんし、ケースがなくては安定動作は望めません。また、ファンがあるから、CPUはその力を精一杯発揮することができるのです。

今回は、注目度は高くないけれども、コンピュータの動作に欠くことのできない重要な脇役たち、電源ユニット、ファン、ケースのお話しです。


電源ユニット

電源ユニットは、コンセントから供給される交流100Vを、スイッチング電源回路により、コンピュータの動作に必要な数種類の直流電圧に変換し、CPUをはじめとするコンピュータを構成する各部品に電力を供給しています。Pentium4 3EGHzをはじめPentium-D、AthlonXP4000+など消費電力が100Wを超えるCPUは珍しくありません。それに応じて電源ユニットは大出力への対応が進んでおり、1kWを超える消費電力の電源ユニットも市販されています。

CPUの消費電力はほとんどが熱になります。消費電力100WのCPUは100Wの半田ごてとほぼ同じ熱量を放出します。電源ユニットの電源供給以外の大切な役割が排熱なのです。電源ユニットに内蔵されるファンは、ケース内部でさまざまな部品が発する熱をケース外に排出し、コンピュータ内部が高温になることを防ぎ、各部品の冷却効果を高める役割を担っています。

電源ユニットの仕様

電源ユニットの形状にはATXまたはSFX(Micro ATX)、PS3といった規格があります。ただし、メーカー製のPCには、ケースに合わせた独自の形状や規格を採用しているものも少なくありません。

電源ユニットの規格と外形寸法
規格 外形寸法
(幅×奥行き×高さ)
mm
備考
ATX 2.0x 150×140×86 2005年3月現在、ATXの最新版は2.03
SFX(A) 100×125×50  
SFX(B) 100×125×63.5 ファンの厚みがあるので高さが実質80.6mmとなる
SFX(C) 125×100×63.5  
SFX(D) 100×125×63.5 ファンの厚みがあるので高さが実質80.6mmとなる
PS3 150×100×86 ATXの奥行きを100mmに縮めたもの
※寸法:外部電源コネクタの面を横長に配置した状態で、(幅)×(奥行き)×(高さ)を表記しています。

標準的な電源ユニットの出力電圧
出力電圧 用途
+12V HDDなど各種ドライブやファンのモーター、PCIスロット、プロセッサコアの電源など
+5V マザーボード上のIC、ドライブ装置、PCIスロット、プロセッサコアの電源など
+3.3V メイン・メモリとその周辺回路、PCIスロット、マザーボード上の低電圧対応ロジックICなど
-5V メイン・メモリに使用されることもありますが、現在のメモリモジュールではほとんど使用されることはありません。
-12V PCIスロット用です。現在は使用されることはありません。
+5VSB ソフトウェア・パワーオン/オフ、Wake On LANなどパワー・マネジメントに関係する回路
※12V、5Vをプロセッサコア電源に使用する場合は、電圧を下げて利用します。
※-5V、-12Vは現在ほとんど使用されることはありませんが、この2出力を備えていないとATX規格を満たせないこと、すべてのマザーボードがこの出力を絶対に利用していないとは言えないことが理由のようです。

電源ユニットの電源供給能力は、説明書やユニット本体に貼付されているラベルに記載されています。ラベルの読み方にはコツがあります。

  1. 3.3V×28A=92.4W、5V×30A=150W、合計電力は、92.4W+150W=242.4Wとなりますが、使用できるのは最大180W(40A)というのが表示の意味です。
    これは、+3.3Vと+5Vが1つの出力回路を共有しているため、+3.3Vと+5V両方の最大出力を同時に利用することはできません。一方を多くすると他方は減らされます。これをコンバイン出力といいます。
  2. 12V出力は独立回路で最大15Aまで利用可能です。
  3. -(マイナス)電圧のコンバイン出力です。-5V0.5A、-12V0.8Aの合計電力の12.1Wのうち、最大で9.6Wまで利用可能です。
  4. ソフトウェア・パワーオン/オフなどの制御用電力で、PCの電源スイッチがオフでも電源プラグがコンセントにつながっている間は電力が供給されています。
  5. 電源ユニットの定格電力です。(1)は最大180W、(2)は180W、(3)は最大9.6W、(4)は10Wですから最大で合計379.6Wです。しかし、これは最大値で、ユニット全体としては、安定して供給できるのは300Wであることを意味します。

※最大電力と定格電力
最大電力はそのユニットが出力可能な最大の電力値です。この状態で使い続けることはできません。電源ユニットの故障や寿命を縮めることになり危険です。
定格電力は安定して出力できる最大の電力値です。PCに装備する機器の電力の合計をこの定格値内に余裕を持って収めるようにします。

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ケース

今まで「基礎講座」で説明してきたコンピュータを構成する各種部品を1台のコンピュータとしてまとめるのが、ケースです。ケースは、部品をケース内部に収納し、それらを固定し、物理的、電気的に保護することで、PCの動作を安定させます。同時に、電気的に危険な部位や機器の突起部などの物理的に危険な部分を覆い、ユーザーの安全を確保します。メディアの出し入れや電源スイッチ、リセットボタンなど、ユーザーの操作性もケースのデザインに大きく影響されます。

ケースの各部の名称

ケースの規格

現在の主流はATXケースまたはMicroATXケースです。1995年にIntel社が発表したATX規格はマザーボードと電源の仕様を定めています。しかし、それらを効率的に機能させるためのケースのデザインはおのずと一定の方向性を持つようになり、やがてそれがATXケースと呼ばれるようになりました。ATXから派生した小型のMicroATXやさらにコンパクトなFlexATXもマザーボードとともに同名のケースが普及しています。2003年にIntel社は、BTX規格を発表しました。デスクトップパソコン用マザーボードの形状及び本体ケースの規格です。マザーボード上のチップセットやソケットのレイアウトを見直し、ケース内の空気の流れを改善することで、排熱・冷却や騒音低減を実現しています。BTXを使用するとなると、ケースだけでなく、マザーボード、電源ユニットまでBTX規格でそろえなくてはなりませんが、現状ではBTX対応製品は少なく、普及はまだこれからというところです。

ケースの外観による分類
ケースの呼称 5インチベイ 3.5インチベイ シャドウベイ 対応マザーボード他
フルタワー 4〜5以上 4〜5以上 3〜5 ATX、大型ケース、拡張性に優れているが、設置場所も選ぶのであまり一般的ではない。サーバーなどに使用される。
ミドルタワー 3〜4 2〜3   ATX、Micro-ATX、拡張性・設置性もほどほどで扱いやすく、一般用途に向いている。
マイクロタワー 1〜2 1〜2   Micro-ATX、拡張性はないが、小型で設置性に優れている、一般用途。
スリムタイプ 1〜2 1〜2   Micro-ATX 、flex-ATX、個人用に普及。省スペース型。
※呼称はメーカーによってまちまちです。各種類ごとの明確な寸法の規定はありません。

ケースの選び方

ケースは比較的長期間にわたって使用される部品です。そのため、長いつきあいをするためには、第一に頑丈なものを選ぶことです。PCにはクーラーやドライブ装置などモーターを使用する機器が使用されていますが、ドライブ装置は回転数が高く、大きな振動を発生します。剛性の弱いケースは、この振動により、ビリ付きや騒音の発生、ネジ、リベット、コネクタ、拡張ボードなどのゆるみが生じます。

材質はスチール、アルミニウム、ステンレス、アクリル、中には段ボールなどもあります。スチールとアルミニウム以外はほとんど使用されていません。アルミは放熱性に優れ、軽量であることが特徴ですが、剛性を高めようとすると、厚みが必要でコスト高になります。現在は、丈夫さ、コスト面での有利さからスチール製がほとんどです。

メンテナンスの容易さも忘れてはならないケース選びのポイントです。パネルの取り外しは簡単にできるかどうか、ケースを開けるのに工具が必要かどうか、各部品の着脱が簡単にできるかどうか、シャドウベイへのHDDの取り付け方法、部品を追加または拡張するための空間の余裕があるかなどを確認します。そう考えると、事情の許す限り、ケース内部の空間が大きなケースをお勧めしたいところです。

ファン、クーラー

動作速度が速くなるにつれ、また、集積度が上がるにつれて部品の発熱は激しくなります。デバイスには発熱量に応じた大きさのヒートシンクを取り付けて、熱を逃がすようにしていました。しかし、発熱量が大きくなると、ヒートシンクだけでは対応できず、ファンを取り付けて強制的に冷却しなくてはならなくなりました。2GHz超のクロックで動作するCPUを積んだPCには、多いもので5個もファンを搭載しています。いったいどのようなファンが搭載されているのか、個々のファンを見てみましょう。

CPUクーラー

前述したように、Pentium-Dクラスでは100Wを超える熱を発生します。この熱を空気中に放出するために銅やアルミ製の大きいヒートシンクを取り付け、さらにヒートシンクにファンを取り付けて強制的に冷却するようにしています。ペルチェ素子(電圧をかけて一方を熱すると他方は冷える性質を持った素子)を組み合わせたものや水冷式のものもあります。

  • 回転数は1000回転〜5000回転まで機種によりさまざま。
  • ファンの直径、6cm〜8cm
  • ソケットごとに取り付け方法が異なるので、適合するタイプを選ぶこと。
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ビデオカード

オンボードビデオ(マザーボードに内蔵されているビデオカード)に対して、拡張スロットを使用するビデオカードはその存在感を示すためにも、CPU並みの高速化が進んでいます。グラフィックプロセッサのコア周波数は500MHz、カードに搭載されているメモリの動作クロックは1GHzを超えています。ただし、拡張スロットに取り付けるという制約がありますので、小型であることが条件となります。

  • 販売時からビデオカードに装着済みのものが多い。
  • 小型のファンが多く、1300〜5000回転までで、比較的高めの回転数のものが多い。
  • 大きなヒートシンクを採用してファンを使用しないタイプも多い。

チップセットクーラー

チップセットのうち、高速動作のデバイスをコントロールするMCHを冷却するクーラーです。
クーラーの交換は難しく、難易度の高い作業が求められます。チップセットクーラーの着脱が容易でなく、設置場所とクーラーの大きさによっては拡張ボードなどとの干渉にも注意しなくてはなりません。

  • MCHはマザーボード直付けなので、ヒートシンクの着脱に失敗するとマザー全体に影響が及びます。
  • 後付用にチップセットクーラーとして市販されているものはそれほど種類は多くありません。

HDDクーラー

HDDを冷却するための専用クーラーです。HDDの使用温度環境は60度までとなっていますが、PCのケース内部ではそれを上回ることも珍しくありません。クーラーで冷却することにより、動作環境を改善し、熱によるHDDの劣化を防止し、プラッタの膨張や収縮による読み取りエラーを防止します。

  • 40mm〜80mm程度のファンの使用が多く、回転数は1000〜2000rpmと低めです。
  • ヒートシンクのみのタイプも多い。

ケースファン

たんに冷却ファンということもあります。PCのケースの前面下部に設置して吸気を行います。60〜120mmの大口径のファン、1000rpm〜2000rpmの比較的低い回転数で風量を稼ぎ、騒音の発生を抑えるようにしています。

  • 大口径、低回転が特徴、口径60〜120mm、1000rpm以下の回転数で動作するものもある。
  • 大口径ファンは回転時にケースが振動したり、騒音を発生したりすることがあります。取り付けを確実に行うことと剛性の弱いケースには使用しないほうが無難。
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静音化へ向かうPC

電源ユニット、ケース、ファンの3つが目指す一つの方向性が、静音化です。

液晶ディスプレイの大画面化、テレビチューナーの搭載、HDDの大容量化など録画できる記憶装置の低価格化、5.1チャネルサラウンドやデジタル入出力などサウンド機能の強化などAV(オーディオビジュアル)機能が強化され、PCはDVD鑑賞、テレビ視聴や録画、音楽鑑賞などに利用されるようになってきています。作り手であるメーカーもそれを後押しする傾向があります。

その結果、PCが単純に情報処理機器として性能を発揮していればよかったころに比べて機器として求められる要件が増えています。静音化もその要件の一つです。

PCから発生する騒音で最も大きいのが、ファンの回転によるものです。PCには最低でも1個、多い場合は、4、5個のファンが搭載されます。これらファンの巻き起こす空気の流れと振動は、ケースの内部の突起、機器やケーブルにぶつかって、摩擦音、風切音、振動を発生し、機器全体として大きな騒音を発生します。そこで、静音化対策の主役を担っているのが、今回紹介した電源ユニット、ケース、ファンなのです。

電源ユニット、ケース、ファンによる静音化

ファンは回転数を上げれば上げるだけ、騒音が増えます。摩擦音と風切音です。そこで、電源ユニットなどの開口部を広く取り、大口径のファンを使って風量を増大させ、同時に回転数を小さくすることで騒音を低減することができます。

ファンの排気に向かって空気の流れを作り、熱を効率よく排出できるようにすることができます。 排気ファンの負担が軽くなり、回転数を下げることができ、騒音を減らすことができます。ケース内部の熱を排出できれば、HDDクーラーのファンも不要になります。

しかし、こうしたファンによる静音化対策には限界があります。ケース、電源ユニット、ファン、マザーボードのレイアウトなどの放熱対策を中心にトータルに考え直す必要があります。これがBTX規格です。しかし、ケース、マザーボードを含め、まだ十分に選択肢があるといえず、現時点では普及には至っていませんが、今後に期待したいところです。

水冷とファンレス

CPUクーラーの一部には水冷方式を使用するものもあります。ポンプとラジエーターとタンクで構成される水冷キットも数社から発売されていますが、導入は簡単ではありません。ケースの一部を外すか、加工して水を通すパイプを外部に引き出す必要があり、大がかりになりますが、確かな効果が得られると言われます。

もっと進んで、究極の静音化は、PCの内部からファンを追放してしまうことです。ケースや大型のヒートシンクに熱を逃がす工夫をすることで、ファンをなくそうとするものです。大型のヒートシンクを実装し、空気の流れをスムーズにするための経路を確保し、排気用の十分な開口部を持つ大きなケースが必要になります。それでも、小さなチップ1個が100Wの熱を発生する状況では、ファンレスでPCに安定した動作をさせることはかなり厳しいと思われます。

静音化は初めの一歩

一部のマニアが自作PCの中で始めた静音化は、静音化をうたい文句にするメーカー製のPCが登場するまでになりました。テレビと違ってPCは至近距離で操作します。そのために、PCが発生する騒音が気になるのは当然です。これまでそれが問題にされなかったのは、PCの完成度に対する要求が低かったこと(「PCはこの程度のもの」)と、PCが日常生活の中で必需品に近い位置づけを獲得していなかった(「なくても不便じゃない」)からです。ところが、ブロードバンドの普及で、ネットショッピングや音楽・動画配信・テレビ視聴などなどPCでできることが広がってきた結果、PCは日常生活の中にしっかりビルトインされました。そのことにより、PCは道具として、ユーザーからより厳しい条件が求められるようになったと考えられます。日常使うのだから、もっと静かに、もっと美しく、もっと便利に、と要求水準はますます上がっていくことでしょう。静音化はその第一歩に過ぎません。

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