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第3回 主役はCPU

今回はコンピュータの心臓部であるCPUについてのおさらいです。といっても、CPUはいわばブラックボックスのようなもので、細かすぎて具体的に見ることはできません。ここでは、あくまでも原理を理解するということを主眼において説明していきます。

メールを書いたり、WEBを見たりといった普段の何気ない操作をしているとき、コンピュータ内部では大変なことになっています。キーボードから入力された文字やマウスの動きがいくつものインターフェース回路やメモリ、CPU、ハードディスク装置、ビデオカードを経て画面に表示されます。こうしたコンピュータ各部の動作を、OSやアプリケーションソフトの命令に基づいて整然としかも高速に行なわせているのが、コンピュータの心臓と言われるCPUです。


CPUの構造・動作・仕組み

最近では「CPU」という呼び名に統一されてきていますが、「MPU」という呼び名もまだ並行して使われます。これは、英語で「Central Processing Unit」と呼ぶか「Micro Processing Unit」と呼ぶかの違いです。初期の頃は「マイクロ」つまり「超小型」に大きな意味がありましたが、超小型が当然になると「内容」を表わす言葉のほうがふさわしいということで、「中央処理装置」である「CPU」が定着したようです。また、日本語訳では「中央演算処理装置」という言葉もまだよく使われますが、これも同じものです。

構造

CPUはLSIのひとつですから、集積回路であることに変わりはありません。見た目はほかのLSIと大きく変わるわけではありませんが、現在のCPU(ペンティアムなど)はひとまわり大きく正方形で剣山のようにたくさんの針のような端子が出ています。この端子部分をCPUソケットに差し込みます。ソケットを使用しているため交換可能で、グレードアップも容易です。ただしソケットが合わないもの、物理的には差し込めても信号が違うものなどがあるので、CPU交換の場合は注意が必要です。
また、集積度が高いため、内部構造は2層3層になっています。

内部構成

CPUは演算装置と制御装置との2つの機能により中央処理装置として成り立っているため、基本的に内部はこの2つに分かれています。

演算装置は、3つ。

  1. 算術論理演算装置
    加算器と補数器などを用いて四則計算や論理演算などを行う
  2. 各種レジスタ
    演算に必要なデータを一時的に記憶し高速アクセスできるようにしておくもの
  3. アキュムレータ
    累算器とも呼ばれ、演算結果を保持するための一種のレジスタ

制御装置は、5つ。

  1. プログラムカウンタ
    逐次制御計数器とも呼ばれ、ひとつの命令が実行されたあと次に実行されるべき命令のあるアドレスを記憶しておく
  2. 命令レジスタ
    記憶装置から取り出された命令を受け、実行するために一時記憶しておく
  3. インデックスレジスタ
    指標レジスタとも呼ばれ、このレジスタの内容と命令語のアドレス部のアドレスを加えた値が処理対象のアドレスとなる
  4. 基底アドレスレジスタ
    基底アドレスを保持するレジスタ
  5. デコーダ
    解読器とも呼ばれ、命令レジスタに取り出された命令を解読し、対応する制御信号を出力する

がおもな機能です。

CPU内部は大きくは以上のように構成されていて、命令に対応・処理するようになっています。

CPUの基本動作の流れ

CPUの基本動作

前回にも触れたように、処理装置は主記憶装置に一時記憶された命令を順次取り出し実行します。その処理の流れはおおよそ以下のようになります。

  1. 命令取り出し
    前出のプログラムカウンタに記憶されているアドレスに読み取り指示が出され(1)、その内容が命令レジスタに送られ(2)、プログラムカウンタに1が加算され、次の命令があるアドレスを記憶します(3)。
  2. 命令実行
    命令レジスタの命令部にある四則計算、入出力、分岐などの命令がデコーダに送られ解読され(4)、それに対応する制御信号が各装置に送られます(5)。
    また、命令レジスタのアドレス部にある主記憶装置のアドレスはアドレスレジスタに送られ(6)命令部の指示に従って処理されます(7)(8)。
  3. 次の命令の取り出しが行なわれます(1)。
バス
装置間を結ぶ信号の通り道をバスといい、システムバスともいいます。主記憶装置と処理装置を接続するバスは次の3つがあります。
1. アドレスバス:制御装置が主記憶装置のアドレス指定するためのバス
2. データバス:データのやりとりのためのバス
3. コントロールバス:制御装置から主記憶装置に読み書きの指示信号を送るバス
キャッシュ
CPUの処理速度とメモリのアクセス速度に差がある場合、全体の速度は低速なデバイスに支配されてしまいます。この低速なデバイスの性能がシステム全体に及ぼす影響を少なくするために使われる仕組みをキャッシュといい、キャッシュに使われるメモリをキャッシュメモリといいます。高速なメモリは高価なため、メインの主記憶装置には低速でも安価なものを使い、小容量でも高速なメモリをキャッシュメモリとして使って全体の速度を保つようにしています。現在、このキャッシュメモリはCPUに内蔵されています。
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CPUの性能を知る

32ビットCPUがメイン

CPUの能力は、まず何ビットのCPUなのかで判断できます。
ビットとはコンピュータが扱う情報の最小単位です。1ビットでは0または1の2通りですが、4ビットになると16通り、8ビットになると256通り、32ビットになると42億通り以上の情報を一度に扱うことができます。CPUのビット数は数値の大きいほうが処理能力は高いことになります。
現在のパソコンに使われているCPUは32ビットが中心ですが、64ビットへの移行がすぐそこまできている状況にあるといえるでしょう。世界初のマイクロプロセッサ(インテル4004)は4ビットでしたが、その後、8ビットに進歩し、改良を加えられてマイクロプロセッサからCPU(つまり演算のみから演算と制御を兼ね備えた中央処理装置)となりました。この8ビットCPU時代に実用的パソコンとなり、16ビット、32ビットと進歩してきました。

CPUの進歩とパソコン*1
ビット数
CPU
クロック
CPUメーカー
主なOSとアプリケーションソフト、出来事
4
4004
1971
108KHz
インテル
-
8
8008
1972
200KHz
インテル
Microsoft社設立(1975)
VisiCalc/AppleII版(1979)
CP/M(1980)
ファミリーコンピュータ(6502CPU搭載:1983)
8080
1974
2MHz
インテル
6502
1977
1Mhz
モトローラ
Z80
1978
2MHz
ザイログ
16
8086
1981
4〜10MHz
インテル
MS-DOS(1981)
CP/M-86(1981)
8088
1984
6MHz
インテル
MS-DOS2.11(1983)
PC-DOS(1983)
Lotus 1-2-3日本語版(1983)
Ascii Multiplan日本語版(1983)
System1.0(Macintosh:1984)
68000
1984
8MHz
モトローラ
32
80286
1986
6〜16MHz
インテル
jx-word太郎(現一太郎:1985)
MS-DOS3.3(1987)
Excel Windows版(1987)
DOS/V(1990)
Linux公開(1991)
MS-Office4.2(1992)
Windows3.1J(1993)
WindowsNT(1994)
Netscape Navigator 1.0(1994)
Internet Explorer 1.0(1995)
Winodws95(1995)
Mac OS 7.6(1997)
Windows98(1998)
Windows2000(2000)
WindowsMe(2000)
MacOS X(2000)
WindowsXP(2001)
80386
1989
16〜33MHz
インテル
i486
1989
25〜50MHz
PowerPC
(G1〜G5)
1992
50〜80MHz
〜2.7GHz
アップル・
IBM
Pentium
1993
60〜200MHz
インテル
i486DX4
1994
75/100MHz
インテル
MMX-Pentium
1997
166〜233MHz
インテル
Pentium2
1997
233〜450MHz
Celeron
1998〜
266〜2.4GHz
インテル
K6-2
1998
266〜550MHz
AMD
Pentium3
1999
450MHz〜1.1GHz
インテル
Athlon
1999〜
550MHz〜1GHz
AMD
Pentium4
2000〜
1.3〜3.8GHz
インテル
Duron
2000〜
600MHz〜1GHz
AMD
AthlonXP
2000〜
1500〜3200+*2
AMD
Crusoe
2000〜
400MHz〜1GHz
Transmeta
64
Itanium
2001
733〜800MHz
インテル
Safari(Apple独自ブラウザ:2003)
WindowsVista(2006予定)
Athlon64
2002
2.2〜2.8GHz
AMD
Itanium2
2005
1〜1.6GHz
インテル
PentiumD
2005
2.8〜3.2GHz
*1:本表はすべてのCPUを網羅しているわけではありません。
*2:AthlonXPの数字はモデル番号です。ほぼクロック周波数(MHz)に相当します。
*3:本表に記載の年限は、設計開始・発表・設計完了・発売・国内発売などが混在しています。
   詳細は各社のWEBサイトなどでご確認ください。

クロック周波数

もうひとつの性能を表わす数値がクロック周波数(クロックスピード)です。クロック周波数とはCPUが1秒間に何回演算できるかを表わすものです。これも数値が大きいほど処理能力が高いことを表わしています。単位はメガヘルツ(MHz)で表わします。一例として、クロック周波数が800メガヘルツのCPU(たとえばペンティアムIII)の場合、1秒間に800×10の6乗=800,000,000回の演算処理ができる能力があることになります。最近のパソコンのクロック周波数は2ギガヘルツ以上が中心なので、たとえば2.4ギガヘルツのCPUは、この例の3倍の能力を持つことになります。
実際のパソコンの処理速度は、補助装置や記憶装置をはじめとする他の装置の能力も関わってきますが、やはり、CPUの能力の差は大きいですし、当然、CPUの価格差も大きくなります。
ただし、クロック周波数が高くなると同時に熱も高くなります。この熱をいかにして放出するかも大きな課題で、以前は放熱版が用いられていましたが、現在はCPUの上に放熱ファンを取り付けることが必須です。これは大きめのノートパソコンなどでも採用されていますが、逆に、小型のノートパソコンでは、いかに熱を出さないCPUを開発するかが課題となっていて、ノートパソコン専用のCPU(たとえばペンティアムM)も開発されています。
また、熱の発生を抑えることができたとしてもクロック周波数を高くするのには限界があります。そこでクロック周波数によらずCPUの性能を向上させるために、ひとつのパッケージに複数のプロセッサコアを載せて、並列して処理する考えかたが有望視されています。これをマルチコアプロセッサ技術といいます。

処理速度を測る

少し専門的になりますが、MIPS値という命令・実行速度を表わす単位もあり、これは1秒間に何百万回、命令を実行できるかを表わします。同種の処理装置の性能を比較するとき、ひとつの要素になります。これも数値の大きいほうが能力の高さを表わします。また、パソコンの処理速度能力を測る方法として、いくつかのプログラムを実行させ処理時間を測定するベンチマークテストもよく使われます。パソコン雑誌などでの性能比較に掲載されているので、ご覧になる機会も多いでしょう。
*MIPS(Million Instructions Per Second)

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CPUは今

各社の代表的なCPUの今とこれからをメーカー別に概観してみましょう。

インテル社

ペンティアム(Pentium)
現在は、Pentium 4です。インテル社第7世代のCPUです。高性能、安定性と扱いやすさは定評があります。マルチCPU、64ビット化など幅広い製品がラインアップされています。
セレロン(Celeron)
ペンティアムの廉価版です。ペンティアムのように名前の後に数字は付きませんが、ペンティアムに対応してバージョンアップしています。現在のセレロンはPentium4の廉価版です。
ノートパソコン用
Pentium−MとCeleron−Mがあります。省電力のため、クロック周波数が1.7GHz前後とやや低めになっていますが、1.5倍程度のクロック周波数のCPUと同等の実力を持っています。

AMD社

アスロン(Athlon)
現行品はAthlon XPです。Pentium4の対抗馬です。
CPU名のあとの数字はクロック周波数ではなくモデルナンバーです。しかし、インテル社製CPUのクロック周波数と同等といえるようです。
デュロン(Duron)
デュロンは、アスロンの廉価版です。セレロンに対抗して作られています。
ノートパソコン用
モバイルAthlonXPとモバイルDuronがあります。モバイルDuronはエントリーモデル用、それ以外の広い範囲をAthlonXPがカバーします。

トランスメタ社

ノート型パソコンのためのモバイルCPUで有名です。省電力・低価格が売りです。

クルーソー(Crusoe)
TM5800は省電力低価格が特長です。多くのモバイルPCに採用されました。
イフィシオン(Efficeon)
イフィシオンは、低消費電力+高性能を意味する現在のトランスメタ社の主力製品。TM5800と比較して動作速度が約50%〜80%の向上しています。

IBM

パワーPC(PowerPC)
アップルと共同で開発され、マッキントッシュに採用されています。ワークステーションクラスに使われる高性能CPUです。プレイステーション3のCPUであるCEllは、このパワーPCがベースになっています。しかし、アップル社は将来マッキントッシュのCPUにインテル社製品の採用を発表しています。

現在、CPU市場の主流はインテル社製品です。

しかし、32ビットから64ビットへの移行過程のサーバ市場で最近異変が起こりました。
64ビットCPUとしてインテル社から登場したItaniumは、高性能を追求し、まったく新しく作られておりそのままでは32ビット環境で動作しません。それに対してAMDアスロン64は32ビットを拡張したもので、環境移行の容易さなどで市場の高い評価を得ました。Microsoft社もAMD64対応のWindowsを開発するにいたり、インテル社は、急遽32ビット拡張版の64ビットCPUとしてEMT64対応のPentiumを登場させることになりました。厳しい見方をすると、AMD互換Pentiumとも言えます。
圧倒的に優勢と言われるインテル社でさえ、ひとつ間違えると厳しい対応を迫られます。
今後、CPUはクロックの高速化はもちろん64ビットへの移行、マルチプロセッサへの対応、マルチプロセッサコア技術がキーとなります。これはCPU単体でなく、OSやアプリケーション、バスやチップセットをはじめとするマザーボード上のコンポーネンツを含めた大きな変化を起こすことになるでしょう。
次回は、今回の記事にも随所に登場しているメモリについてのおさらいです。

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第3回   主役はCPU
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