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第4回 名脇役メモリ

主役のCPUの脇役がメモリです。CPUが処理するのはメモリに読み込まれたデータです。処理結果もメモリに書き込みます。CPUにとってメモリはなくてはならない存在です。その大切な仕事をするメモリの構造や種類を説明します。

コンピュータは生活のいたるところに使われています。それだけメモリも身近なものになっています。デジタルカメラ、携帯電話、携帯音楽プレーヤーでは、メモリは画像やメール、音楽データを保存するという準主役の働きをします。パソコンの内部でもメモリの働きは重要です。
特にメインメモリ(主記憶)はCPUの作業領域となり、その性能がCPUの性能に影響を与えます。今回はCPUと結びつきが強いこのメインメモリのお話しです。


半導体メモリ

単に「メモリ」と言うと、ほとんどの場合CPUが直接読み書きできる半導体メモリを意味します。半導体メモリはさまざまな種類があります。

メモリの種類

大別すると、次のように分類することができます。

電源を切ると記憶も消去されてしまうのが揮発性メモリです。これに対して、電源を切っても記憶し続けるメモリが不揮発性型です。
揮発性メモリは、主として自由に読み書きできるRAM(Random Access Memory)と呼ばれます。メインメモリとしてRAMはCPUの一時的な記憶作業領域となります。
RAMは動作特性からDRAM(Dynamic RAM)とSRAM(Static RAM)に分類されます。

RAMの種類 内容
DRAM

メモリセルの性質上、長時間記憶を維持しておけないので一定時間ごとにリフレッシュとよばれる再書込動作を必要とする。常に動的な管理が必要なことからDynamicRAMと呼ばれます。しかしDRAMは、(SRAMほどではないが)高速に読み書きができる、集積度が高く大容量化しやすい、ビットあたりの単価が安い、などの長所からコンピュータのメインメモリに使用されている

SRAM

リフレッシュ動作は不要。DRAMよりも高速に動作。しかし、メモリセルの素子構成が複雑で大容量化しにくいことから、容量よりも高速動作が必要なキャッシュメモリなどに利用されている

不揮発性メモリは、読み出し専用メモリROM(Read Only Memory)です。
ROMは半永久的な記録領域で、コンピュータの中ではBIOSの記憶に利用されています。
ROMは製造工程でデータやプログラムが記録されるMROM(Mask ROM)とユーザー(コンピュータメーカーなど)が何らかの方法で記録するPROM(Programmable ROM)に分類されます。

ROMの種類 内容
UV-ERROM
(Ultra Violet Erasable Programmable ROM)

紫外線で記録内容を消去できるPROM

OTP ROM
(One Time Programable ROM)

一度書き込んだら、再書込できないPROM

EEPROM
(Electrically erasable Programmable ROM)

電気的にデータの消去が可能なPROM。
アップデート可能なBIOSやファームウェアはこのEEPROMか次項のフラッシュメモリが使われている

フラッシュメモリ

現在、一括消去型メモリとしてROMの主流。
コンピュータのBIOSを始め、携帯電話をはじめデジタルカメラの大容量カードメモリや持ち運びに便利なUSBフラッシュメモリなどに用いられている

メモリの記憶のしくみ

メモリは格子状に並んだ記憶素子で構成されています。一つ一つの記憶素子をメモリセルといいます。それぞれのセルは、電荷の有無で1または0を記憶します。
セルの記憶のメカニズムを説明します。

メモリセルにデータを書き込む(「1」を記憶させる)
W線に電圧をかけます。するとセルのトランジスタスイッチがオンになります。
さらにB線に電圧をかけると、トランジスタスイッチがオンなので、B線の電圧でコンデンサが充電され、電荷が蓄えられます。
W線の電圧を切るとトランジスタスイッチはオフになります。逃げ場のない電荷はそのまま蓄えられ、セルに「1」が記憶されます。
メモリセルからデータを読み出す(「1」を読み出す)
W線に電圧をかけます。するとセルのトランジスタスイッチがオンになります。
B線には電圧をかけないままにするとコンデンサに蓄えられた電荷が流れ出し、B線に電圧が発生します。これを読み取ります。
以上のことから、DRAMは一度読み込みをするとそのセルの内容が失われることが分かります。そのために再書込という動作が必要です。
リフレッシュ
トランジスタスイッチはオフにしていてもわずかずつ電流が漏れます。そのため蓄えられた電荷が少しずつ流れ出し、一定以下になると1か0か分からなくなります。そこで一定時間をおいて、改めて書込を行わなくてはなりません。これをリフレッシュといいます。Dynamic(動的)RAMの名前の由来はこのリフレッシュ動作にあります。

メモリの形状

メモリは、コンピュータで使用されるときにはモジュールと呼ばれる形状で装着されます。
これまで説明してきたメモリセルは必要な容量分、格子状に配置されて一つのICパッケージに封入されます。これをメモリチップといいます。
メモリチップは専用の基板に載せられます。このメモリ基板をメモリモジュールといいます。
通常使用するときには、このモジュールと呼ばれる状態で使用することになります。

上の図はDIMM(Dual Inline Memory Module)と呼ばれるメモリモジュールで、現在最も普及しています。メモリチップが8個並んでいます。メモリチップは8の倍数でDIMMに装着されることになっています。
SPD (Serial Presence Detect)はEEPROMです。メモリモジュールの製品仕様が書き込まれており、コンピュータは起動時にこの内容を確認し、自動的にメモリの設定をします。
端子は、DIMMの場合、基板の裏表でそれぞれ別々の信号の入出力を行います。これがDualの由来です。裏も表も共通の信号を扱うSIMM(Single Inline Memory Module)というのもあります。最近では見かけることが少なくなりました。

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コンピュータとメモリ

次の表は、パソコンの黎明期から今日に至るまでの代表的なパソコンを年表にしたものです。
パソコンに標準搭載されていたメモリの大きさとOSをご覧ください。

年代 メーカーと機種名 RAM OS/基本ソフト
1976年 NEC TK-80 512B 機械語モニタ
1977年 Apple社AppleII 4KB BASIC(ROM)
1978年 シャ−プ MZ-80K 20KB BASIC
1979年 NEC PC-8001 16KB N-BASIC
1981年 IBM PC 64KB MS-DOS
1981年 富士通 FM-8 64KB F-BASIC(ROM)
1982年 富士通 FM-7 64KB F-BASIC(ROM)
1984年 IBM PC/AT 640KB MS-DOS
1984年 富士通 FM-16β 512KB 日本語CP/M-86
1987年 富士通 FM-R70 2MB MS-DOS/日本語MS OS/2
1989年 富士通 FM TOWNS 2MB TownsOS
1991年 アップル PowerBook 170 4MB 漢字Talk6.0.7
1995年 富士通 FMR-280L3 model340C 4MB Windows3.1/MS-DOS
1995年 富士通 FMV-DESKPOWER T 16MB Windows95
1996年 富士通FMV-DESKPOWER SV267 32MB Windows95
1999年 富士通 FMV-DESKPOWER S/457 64MB Windows98
2001年 富士通 FMV-DESKPOWER C7/100L 128MB Windows Me
2002年 富士通 FMV-DESKPOWER C24C/R 256MB Windows XP
2004年 富士通 FMV-DESKPOWER T90G 512MB Windows XP
※メモリの説明をするのに、わかりやすい代表的な機種を選択してあります。

パソコンの黎明期、手作りのキットの時代から30年でコンピュータに搭載されるメモリの記憶容量は100万倍になっています。CPUのクロック周波数の2MHzから現在の3GHz超で、2500倍になったのと比べても、驚異的な増加です。
CPUが8ビットから32ビットへ、OSやアプリケーションソフトが複雑・高度化に伴い、CPUの作業領域もより広く大容量化が必要になってきたこと、メモリチップの生産技術の向上で集積度が飛躍的に向上していることなどが理由として上げられます。
大容量化だけでなく、動作速度の向上、安定度の向上のために読み書き方法、モジュールの形状などさまざまな新しいものが登場しています。

現在の主流はDDR-SDRAM(Double Data Rate- Synchronous DRAM)

DDRは、メモリバスクロック信号での入出力のタイミングを倍にすることで、一定の時間内で通常のSDRAMの2倍の入出力動作をするものです。メモリバスクロックが200MHzに対応するDDR−SDRAMは、クロック400MHzに対応することができます。
また、SD-RAMは外部クロックに同期して動作するDRAMで、最大データ転送速度などの性能が高くなっているのが特徴です。市販のDDR-SDRAM DIMMは、対応するクロックで表示される場合(表示1)と最大データ転送幅(表示2)で表示される場合と両方あります。
同じものなので、計算の仕方を覚えておくとよいでしょう。

表示1 表記2 クロック×2倍×8byte(バス幅64÷8bit)
DDR200 PC1600 100MHz×2倍×8byte(バイト)=1600Mbit/秒
DDR266 PC2100 133MHz×2倍×8byte(バイト)=2128Mbit/秒
DDR333 PC2700 166MHz×2倍×8byte(バイト)=2656Mbit/秒
DDR400 PC3200 200MHz×2倍×8byte(バイト)=3200Mbit/秒

DDR-SDRAM DIMM以外のメモリ(例えば、SD-RAM DIMM)は多くの場合メモリクロックの周波数で表されています。

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これからのメモリ

DDR2は、DDRをさらに安定・高速化しています。DDRの長所を受け継ぎながら、さらにDRAM内部の記憶回路に対して外部インターフェースの速度を4倍(DDRは2倍)に高めたり、より高いクロックに対応できるように信号の振幅電圧を下げたり、転送プロトコルを簡素化したり、といった細かい工夫がなされています。
現在、DDR2-667、DDR2-533とDDR2-400の3種類が市場に出回っています。DDR2の後ろの数字は動作クロック(MHz)を表しています。
DDR2-667、DDR2-533、DDR2-400を用いたDIMMは、それぞれPC2-5300、PC2-4300、PC2-3200と呼ばれています。PC2の後の数字は、DIMMの最大データ転送速度(MB/秒)を表しています。
2006年にはDDR3が登場の予定です。駆動電圧を1.5Vに下げ、DDRで2倍、DDR2で4倍になった入出力速度が8倍速になります。動作周波数は1066MHz相当から登場するでしょう。ただし、DDR3になるとマザーボードに装着できるモジュールの本数が1〜2本になるといわれています。これは、現在のメモリの装着方法ではDDR3のような高速なメモリには対応できないからです。そこで注目されているのがFB(Fully Buffered)DIMMです。メモリモジュールにバッファを搭載し、シリアルインターフェースでチップセットとDIMM上のバッファ、DIMM上のバッファと別のDIMMのバッファというように1本の伝送路で結びます。信号の分岐がなく、信号の反射が抑えられ、安定した動作が得られます。
今後、注目されているのがFeRAM(Ferroelectric RAM),MRAM(Magnetic RAM)といった新しいメモリチップです。
例えば、DRAM やSRAMの長所を持ちながらも、不揮発性という万能選手のようなメモリが提案されています。強誘電体メモリ(FeRAM)と磁性体メモリ(MRAM)です。読出し/書込み共に高速で,書換え可能回数も十分といわれます。コストの問題など、まだこれからの技術ですがすばらしい可能性を秘めています。
メモリは今後も高速・高集積化・大容量化を続けていくものと思われます。コンピュータをはじめとして、生活のあらゆる場面に必要とされます。ユビキタスを支える大切なデバイスです。

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