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第12回 PCの新しいスタイル

PCの性能が向上して、音声や動画のような大量の情報を高速に処理することができるようになりました。また、インターネットへのブロードバンド接続が普及して大量のデータを高速に転送できるようになりました。その結果、PCが電話機になったり、テレビになったり、音楽プレーヤーになったりして、日常生活の中で、より身近かな機能を果たすようになっています。
基礎講座の最後は、こうしたPCの新しい用途のお話しです。

MIPSというCPUの性能を表す数値があります。1秒間に何百万個の命令が実行できたかを表す数値です。25年前に発表された8086CPU(クロック10MHz)は0.8MIPS、これに対してPentium4EE(3.2GHz)は9726MIPSです。10000倍以上の差があります。CPUだけでなく、メモリ、外部記憶装置の容量、速度、機能、周辺機器の性能など、周辺の装置やデバイスも8086当時には想像もつかなかったほど大容量で、強力に、しかも高速になっています。その結果、PCは、文字や数値情報よりもはるかに大きな情報量を持つ音声や映像を処理することができるようになりました。外部記憶装置から読み取ったり、ネットワークから送られてくるデータを処理し、音声や音楽、画像、映像など、人間がすぐに利用できる形で出力できるようになりました。その結果、PCは日常生活により身近なところで機能するようになっています。PCの新しい使い方、新しい形のいくつかを紹介します。


パソコンを電話機に変えるスカイプ(Skype)

ヘッドセットと無料のソフトウェアを追加するだけでインターネットに接続されたPCが通話料無料の電話機になるというのがスカイプです。インターネットを使った電話サービス自体は、すでにIP電話やMSNやYahooのメッセンジャーなどがあり、目新しいものではありません。しかし、2004年8月にSkype Technologies社が発表したスカイプは、リリースから3年足らずの間に1億6千万回のダウンロード、165ヶ国に5700万人の登録ユーザー、同時接続者数200万人、登録者数は毎日15万人ずつ増えていると言われています。
普及の原動力になっているのは、通話音質が良いこと、通信を暗号化できること、ファイアーウォールやNATを気にせず電話できることで、導入にコストも手間もかからないこと、といった他のメッセンジャーソフトにない優れた特長です。それに加えて、PCの利用が進みPCの電源がオンになっている時間が長くなってきたというのも普及の背景にあると考えられます。

スカイプは、他のIP電話と違ってSIPサーバやユーザディレクトリサーバを必要としません。5700万のユーザーは、1000ユーザーごとにグループ分けされ、その中からスーパーノードと呼ばれるサーバの働きをするパソコンが自動的に選出されます。スーパーノードはグループ内のユーザー情報NATやファイアーウォールの状態などを含めて、すべて管理しています。

スーパーノードどうしは互いのユーザー情報を交換し、通話の要求があると、ユーザー情報を持っているスーパーノードに問い合わせて相手を見つけます。通話者どうしのNATやファイアーウォールの状態によってはスーパーノードが通話可能なポートを探したり、複数のノードで通話を中継したりします。ひとつのスーパーユーザの負荷が高くなると自動的に別のスーパーノードが選出され、負荷を分散するなどの機能があり、安定した高品質な通話を実現します。

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パソコンがテレビになる

富士通のテレビパソコンDeskPower T90H次に、テレビパソコンというPCの新しい形を紹介します。
テレビパソコンは、テレビの視聴・DVDやHDDへの録画や再生・映像編集機能を備えたPCです。
PCでテレビを見る発想は新しいものではありません。シャープX1(1982年発売)は「パソコンテレビ」と宣伝され、専用のディスプレイでテレビを見ることができ、チャンネルやボリュームをパソコンで操作できたり、PCとテレビの画面を重ねあわせることができました。
ところが、今日のテレビパソコンは、テレビの視聴・録画・再生・DVD作成、ハイビジョン再生などテレビ専用機に勝るとも劣らぬ機能を備えており、もはやPCというよりもデジタル家電に分類されてもよいほどの充実したAV機能を備えています。


テレビパソコンが相次いで登場する背景には、液晶パネルの価格低下により、大画面ディスプレイが手頃な価格になったこと、地上波デジタルの放送開始、衛星デジタル、CSなどチャネル数が豊富になったこと、放送のデジタル化などPCを始めとするITへの親和性が向上したこと、映像を扱うのに適したハードウェアやメディアが入手しやすくなってきたことがあげられます。PCの性能向上とテレビのデジタル化のタイミングが一致したのです。もちろん、共通の部品が多く差別化しにくいPCに、テレビ機能を搭載することで他機種・他社との差別化をはかろうとするメーカーの意図もあります。

テレビパソコンに必要な機能と装備
機能 摘要
テレビチューナー 衛星デジタル・地上波デジタル放送チューナー
画質調整 三次元Y/C分離、ゴーストリデューサ、デジタルノイズリダクション、タイムベースコレクタ
エンコーダー ハードウェア
録画・再生 ハードディスク録画、DVDの録画・再生
リモコン操作、ソフトウェア制御
映像編集・オーサリングソフト
オーディオ ステレオ音声、5.1チャンネルサラウンド
デジタル入出力
画面 ワイド液晶、ハイビジョン対応、D4端子
ディスプレイに専用のチューナーを内蔵したものもある。
インスタント機能 1ボタンでテレビやDVD録画・再生機能を起動
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音楽配信サービス

小さな音楽プレーヤーが、音楽とパソコンの関係を大きく変えつつあります。携帯型デジタルオーディオプレーヤーとかメモリオーディオプレーヤー、HDDオーディオプレーヤーなどと呼ばれています。CDなどの音楽デジタルデータをファイルサイズが小さいWMAやmp3、ATRAC、AACといったファイル形式に変換し、これをパソコンからUSBなどでプレーヤーに転送します。こうした楽曲データは、変換ソフトを使って自分で作ることもできますが、デジタルオーディオプレーヤー向けの楽曲データをダウンロード購入することができるサービスが人気を集めています。インターネットの音楽配信サービスです。
例えば、Apple Computer社のiTMSは、インターネット上の巨大な音楽ソフトショップで、iPod用の楽曲管理ソフト「iTunes」を通じて音楽(楽曲データ)をオンラインで購入することができます。3年間で累計10億曲の販売実績を持ち、日本でも2005年8月にサービスを開始し、オープンから4日間で100万曲を販売しました。国内の企業も、ソニーミュージックやレーベルゲート、エキサイト、USEN、オリコンなどがサービスを行っています。1曲99円〜250円という手ごろな価格、アルバムの中の1曲だけを購入することができたり、好きなときにすぐに楽曲が手に入ったりする利便性、さらにデジタルオーディオプレーヤーの普及により、利用者・販売数が伸びています。ただし、特定の配信サービスで購入した楽曲データは特定のハードでなければ再生できなかったり、ダウンロードしたパソコンでなければ再生できなかったりするものもあります。

音楽配信サービスの一部
サービス名 ファイル形式 対応プレーヤー 運営元/URL
iTunes Music Store AAC iPod アップルコンピュータ
http://www.apple.com/jp/
Mora ATRAC3 SonicStage レーベルゲート
http://mora.jp/
MusicDrop WMA WMP レーベルゲート
http://musicdrop.jp/
OnGen WMA WMP 有線ブロードネットワークス
http://www.ongen.net/
ORICON STYLE WMA
ATRAC3plus
WMP9 オリコン
http://www.oricon.co.jp/
MaxMuse WMA WMP9 マックス・インターナショナル
http://www.maxmuse.com/
MSNミュージック WMA WMP9 マイクロソフト
http://music.msn.co.jp/
Yahoo!ミュージックダウンロード ATRAC3 MAGIQLIP2 他 Yahoo! JAPAN
http://music.yahoo.co.jp/download/
goo Music Store WMA WMP9 NTTレゾナント
http://musicstore.goo.ne.jp/
Excite Music Store WMA WMP エキサイト
http://www.excite.co.jp/music/store/
music.co.jp WMA/MP3 WMP/MP3プレーヤー ミュージック・シーオー・ジェーピー
http://www.music.co.jp/
※上記以外にも多くの音楽配信サービスがあります。

携帯電話用の「着うたフル」も音楽配信サービスのひとつです。携帯プレーヤー用の配信サービスとは一線を画し、CDと同等またはそれ以上の高音質が売りのe-onkyo music store (http://music.e-onkyo.com/)のような配信サービスも登場しています。今後、利用者増加につれて、音楽配信サービスも増加し、多様化し、音楽のジャンルやデータの種類、携帯用・本格オーディオ用などさまざまに細分化されていくものと考えられます。

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モバイルもブロードバンドで、WiFiとホットスポット

どこにでもコンピュータがあって、ネットにつなぐことができ、自由に情報にアクセスできるというユビキタス社会を、最も身近に体験できるのが無線LANとホットスポットです。

WiFi(ワイファイ)

無線LANについてはこれまで何度か説明しています(11回目PCを取り巻く規格の話)が、無線LAN製品には次のようなロゴマークが付いているものがあるのにお気づきでしょうか。


WiFiは、富士通を始めCisco、3Com、Lucent Technologies、Nokia、ソニーなどの業界大手各社が参加しているWECAが、無線LANの規格である「IEEE 802.11a/IEEE 802.11b」の消費者への認知を深めるため名づけたブランド名です。各社のIEEE 802.11a/b対応製品の相互接続性を保証するために互換性テストを行なっています。これにパスした製品に「Wi-Fi Certified」という認定が与えられ、他社製品との互換性が保証された製品としてロゴマークを製品パッケージなどに表示できるようになっています。無線LAN機器を購入する際の判断材料のひとつとすることをおすすめします。WiFi対応の無線LAN機器を外出先でも使えるようにした場所が、ホットスポットです。

ホットスポット

無線LANやBluetoothなどのアクセスポイントを設置し、無線LANによるインターネット接続サービスを提供する空間をホットスポットといいます(※1)。カフェやホテル、空港をはじめハンバーガーショップなどのファストフード店、駅構内などに導入されています。
ホットスポットの利用には、無線LANが利用できるPCまたは携帯情報端末(PDA)と、ホットスポットサービスを提供する事業者への入会・契約が必要です。NTTコミュニケーションズの「HOTSPOT」、ソフトバンクBBの「Yahoo!BBモバイル」など多くの企業がサービスを展開していますが、各事業者間のサービスの相互乗り入れはありません。ホットスポットを選ぶにあたっては接続できる場所が多いほど有利ですが、ご自分の行動範囲の中にそうした場所があるかどうかも忘れてはなりません。
実際の利用は、契約したサービスを提供しているホットスポットで、PCやPDAを起動し無線LANに接続するだけです。外出先でファイルサイズの大きなメールを受けることもできるし、WEBで調べものをしたり、息抜きをしたり、添付ファイルを受け取ったりなど、外回りの多い営業マンや出張の多い方、旅先での情報収集に街角のホットスポットは大変便利です。
※1:「ホットスポット」は無線LANスポットとしてNTTコミュニケーションズの登録商標ですが、ここでは公衆無線LANの一般的な意味でホットスポットと記します。

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オリガミとウェアラブルコンピュータ

コンピュータの新しい形状として最後にオリガミとウェアラブルコンピュータを紹介します。

オリガミ

オリガミはマイクロソフトが新しいPCの開発プロジェクトに付けた名前です。コンパクトでエレガント、表現力が高い日本の「折り紙」からつけられたといいます。
オリガミはタブレットタイプの小型モバイルPCフォームファクターで、Ultra-Mobile PCを略してUMPCとも表記されます。OSにWindows XP Tablet PC Editionを搭載し、重さ900g以下、7インチのタッチスクリーン、無線LAN、Bluetooth、2.5時間以上のバッテリー駆動、30〜60GBのHDD、CPUはIntel Celeron M、Intel Pentium M、VIA C7-Mが採用されています。PDAとモバイルPC両方の長所も欠点も組み合わせたような仕様です。例えば、OS、CPU、HDDなどはモバイルPC、重量、タッチパネル、電池駆動、価格はPDAの長所を実現しています。しかし、なかなか普及しないタブレット入力、1kg台のモバイルノートPCが存在する中で有利とは言えない900gの重量、モバイルノートPCの方に分がありそうなバッテリー駆動時間などまだこれからの感があるのも事実です。実際、オリガミは、3月に発表されたばかりでまだ販売されている機種も少なく、国内ではSmart Caddie(PBJ株式会社)が唯一という状況です。今後インパクトのある機種の登場を期待したいところです。


Smart Caddie

ウェアラブルコンピュータ

洋服のように身に着けて使用するコンピュータです。
ウェアラブルPCには、衣服のように身につけて使用し、必要なときにはいつでも使用できるようになっていること、身につけていてもデザインに違和感がないこと、形状や操作性が行動の障害にならないこと、などが求められます。
ウェアラブルコンピュータのハードウェアは、コンピュータ本体と出力装置、入力装置で構成されます。

出力装置には、ヘッドマウントディスプレイが利用されます。視線を上に動かすことで、小型液晶ディスプレイの表示を見ることができます。ヘッドホンも重要な出力装置です。入力装置はカメラやマイクロフォン、用途によって各種センサーが使用されます。本体は小型で、バッグや専用のポケットなどに収納したり、ベルトに取り付けたりします。
ウェアラブルコンピュータは、身に着けているというだけでは、モバイルPCやPDA、携帯電話と変わりありません。重要なのは身につけているという特徴を活かした応用技術です。
身につけている間は常に稼働していることが前提で、そのため外部のコンピュータと連携し続けることができます。例えばウェアラブルコンピュータのGPSで自分の位置を知らせ、道案内してもらったり、現在位置周辺の情報を知らせたりすることができます。患者の体温・脈拍・血圧を常時モニタリングし、異常があるときは知らせる、治療中や手術中に症例や他の医者からの意見や指示を受けるなど、医療分野での応用も検討されています。
ウェアラブルコンピュータは、まだ一般に普及する段階ではありません。省電力CPU、小型化、電池寿命、標準化、規格化など課題が多く、またウェアラブルコンピューティングに重要な働きをするユビキタス社会というインフラも十分とはいえません。しかし、機器の小型化や省電力化は携帯電話の多機能化のおかげで急速に進行しており、腕時計のように小さくて、いつも身につけていられる、いつも稼動している、すぐに利用できる、つけていても違和感がない、このようなウェアラブルコンピュータの登場は案外近いかもしれません。

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「あれば便利」から「ないと不便」へ

高性能になるにつれ、PCの用途はますます拡大しています。電話、テレビ、音楽プレーヤーなどPCは日常生活の中で、それも家庭の中で極めて実用的な道具になりつつあります。
インターネットを利用したオンラインショッピング、ネットオークション、動画閲覧や音楽のダウンロード、オンラインゲーム、などは今や特殊なサービスではありません。PCがなくてはこうしたサービスも受けられません。PCは、「あれば便利」な存在から「ないと不便」な存在となりつつあります。PCがより高速に、大容量に、小型化になるにつれ、ますます用途は拡大し、よりいっそう必要性が増していくものと思われます。

より豊かなPCライフのために

PCが高性能・高速・多機能になればなるだけパソコンの内部は見えにくくなり、ブラックボックス化します。動作すれば中身はどうなっていてもよいという意見もあります。しかし、DOS/Vパソコンは、PC/ATとして誕生して以来、アーキテクチャーがオープンになっており、規格も整備されています。数多くの書籍もあり、ネットには情報も豊富です。
パソコン各部の基本的な働きや構造を知っておくことは、日常のパソコンのご利用や、機能強化や拡張、ちょっとしたトラブルシューティング、買い替えや、再利用にあたって、必ずお役に立つものと思います。
カタログや取扱説明書をご覧になっていて不明な点が生じたときは、再度、本講座を振り返ってくださればお役に立つことがあるかと存じます。本講座が、皆様のより豊かなPCライフの役に立てば幸いです。

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