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第7回 情報を貯蔵する(補助記憶装置)

ハードディスクやフロッピィディスク、CD-ROMなどを補助記憶装置といいます。CPUが処理するためのプログラムや情報をメモしておくための装置です。

CPUは、このメモに書かれた情報や指示を自分のメインメモリに読み込んで仕事をするのです。いくら「補助」といっても、この装置なしでコンピュータは動きません。ハードディスクをはじめ何かと話題のDVDまで補助記憶装置のしくみを説明します。


補助記憶装置は外部記憶装置とかストレージ装置とも呼ばれます。ストレージ(STORAGE)は「貯蔵庫、収納庫」の意味で、情報を蓄える装置そのものの意味です。

かつて、パソコンの補助記憶装置の主役はフロッピィディスクでした。
今日では補助記憶装置の主役はハードディスクに代わりました。パソコンになくてはならない存在だったフロッピィディスクも、高画質で撮影されたデジカメのデータはもはや1枚には収まらず、ブロードバンドインターネットが普及した今、メディアを輸送することも少なくなりました。

こうしてフロッピィディスクが役割を終えようとしている一方で、DVDに代表される大容量メディアが次の世代を迎えようとしています。

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情報を蓄える

補助記憶装置には、CPUがデータを処理する手順を書いたプログラムや処理の元になるデータ、そして処理結果のデータが書き込まれます。CPUは補助記憶装置からプログラムを自分のメインメモリに読み込み、プログラムに従って補助記憶装置からデータを読み込んで処理を加え、結果をまた補助記憶に書き込みます。
現在、補助記憶装置の中心はハードディスクです。読み込み・書き込みが高速で、記録容量が巨大で、しかも容量当たりの単価が安いことがその理由です。速度では、半導体メモリにはかないませんが、容量あたりの単価の開きはそれを補って余りあるところです。

補助記憶装置は記録方式で磁気と光と半導体に大別することができます。

磁気記憶は、ハードディスク、フロッピィディスク、磁気テープなどがあります。光記憶には、CD、DVDがあります。MOは、記録するときは磁気、読み取りに光を使います。 半導体記憶は、フラッシュメモリです。USBメモリやカード型のパッケージに収納したPCカードやCF、SD、メモリスティックなどがあります。

半導体記憶装置は、次回「情報を持ち歩く」で解説しますので、今回は磁気記憶装置と光記憶装置について、代表的な装置の現状と構造、特長を説明します。

フロッピィディスク

フロッピィディスクは、薄いポリエステル円板の表面に磁性体をコーティングし、磁気を使ってデータを記録します。通常この円板はそとから見えません。今では見かけることが少なくなった8インチ、5インチのフロッピィディスクは薄いプラスチック製のジャケットに収納され、読み書き時にヘッドが接触する部分は磁性体の円板が露出していました。

3.5インチタイプはシェルと呼ばれるプラスチックパッケージに収められ、ヘッドが接触する部分は、ドライブに挿入したとき以外はシャッターで閉じられており、記録板面が露出することはありません。小型堅牢で持ち運びも安心できる構造になりましたが、容量は1.44MBのままです。

フロッピィディスクドライブ図解

32MBや120MBなどフロッピィディスク互換の媒体も登場したのですが、互換性やコストの問題などで普及には至りませんでした。

フロッピィディスクドライブには、上下両面に磁気ヘッドがあり、ディスクの両面に情報を読み書きできます。磁気ヘッドに流す電流の向きにより、ディスク上の磁化の方向を変えて記録します。読み取り時には、磁性体の向きにより磁気ヘッドに発生する電流の向きを読み取ります。

フロッピィディスクドライブ図解

現在ではフロッピィディスクドライブを搭載しないパソコンもめずらしくありません。300万画素のデジカメで撮影した画像が1MB強、写真がやっと1枚収まる記録容量が時代に合わなくなってきたのでしょう。
フレキシブルディスクの国内生産の経済産業省機械統計は2003年12月で中止になっています。

フレキシブルディスク国内生産推移 一覧

ハードディスク

ハードディスクは、磁性体を塗布または蒸着した金属の円盤の表面にデータを記録します。
この円盤を高速に回転させ、磁気ヘッドを近づけてデータを読み書きします。円盤の両面に記録することができ、磁気ヘッドは記録面の数だけあります。容量に応じて、この円盤を1本の軸に一定の間隔で取り付けます。円盤をプラッタといいます。ハードディスクの容量は、このプラッタ当たりの記憶容量×プラッタの枚数で決まります。

磁気ヘッドと円盤は空気圧により接触しないようになっていますが、その間隔は約10nm(ナノメートル)、ジャンボジェットが高度1mの低空飛行をしているようなものと形容されるほどです。
読み取りと書き込みの方法はフロッピィディスクと同じです。

フロッピィディスクドライブ図解

2005年10月で、デスクトップパソコン用の3.5インチディスクでは1プラッタ当たり133GB、ノートパソコンに使われる2.5インチディスクでは40GB、携帯音楽プレーヤーに使用される1.8インチディスクで30GB、コンパクトフラッシュと同サイズでマイクロドライブに使用される1インチディスクで10GBです。インチで表されるのはプラッタの直径です。

ハードディスクのカタログを読み解くいくつかのキーワード
キーワード 内容
流体軸受 ベアリング(軸受)に金属の代わりに磁性流体を使用する。
回転部に金属の接触がないので動作音が静か、耐衝撃性、高速回転対応、超寿命化を実現する。
インターフェース インターフェースによりデータ転送速度が決定される。
( )内は転送速度で、秒当たりの数値が大きいほど速い。

U-ATA/33(33MB/秒)、U-ATA/100(100MB/秒)、U-ATA/133(133MB/秒)、SerialATA(150MB/秒)、SerialATA2(300MB/秒)
回転速度 ディスクの回転数。高速なほどよいが、騒音や発熱にも注意が必要。
rpmは1分間当たりの回転数を表す単位。
4200rpm/5400rpm/7200rpm/10000rpm/15000rpm
キャッシュ 読み出したデータや書き込むデータを一時的に蓄えるメモリ領域で、ハードディスクドライブに内蔵される。この領域が大きいほどCPUへの負荷を軽減できる。
シークタイム アクセスアームがディスク上の所定のトラックを探し、データ記録位置まで移動するまでの移動時間で、短いほどよい。
※各数値は2005年10月現在のもの。

磁気テープ装置

テープストリーマともよばれます。大きなものだと数十ギガバイト(GB)の単位で記録が可能です。ただし、テープという形状からくる制約で先頭から順番に読み書きするシーケンシャルアクセスしかできません。しかし、大容量、低コスト、可搬性のある媒体として、バックアップ用途など中・大規模のストレージシステムにはかかせない存在です。

MO(光磁気ディスク:Magneto Optical)

消去時・書き込み時に磁気を利用し、読み取り時に光の反射を利用します。128MB、230MB、640MB、さらにASMOやGIGAMOのように2.3GBまで、記憶容量のバリエーションも揃っており、フロッピィディスク感覚で読み書きできる手軽さで、中・大容量データの受け渡しなどに便利なメディアとして人気があります。

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光記憶

メディアの盤面にレーザー光を照射して光や熱でデータを記録し、レーザー光の反射を光ヘッドで読み取ります。記録速度はハードディスクに及びませんが、比較的容量が大きく、音楽や映像用の記録用としてCD-RやDVD-Rが家電品用として普及しており、メディアが安価で入手しやすい長所があります。

光記憶用のメディアを駆動する装置を光学ドライブと呼んでいます。
CD-ROMドライブの○○倍速というときの基準となるのは、音楽用CDの転送速度で、150KB/秒です。音楽用CDは最大74分(650MB)記録できます。32倍速ドライブなら74分のデータを2分強で読み込めることになります。
DVDドライブの○○倍速の基準は、DVDビデオの転送速度で1350KB/秒です。DVDビデオに標準画質で記録すると最大1時間(4.7GB)記録できますが、このときの転送速度です。8倍速のDVDドライブは、1時間のビデオを7.5分で読み込めることになります。

光学ドライブの種類

光学ドライブはCD-ROMドライブとDVD-ROMドライブに大別できます。

CD-ROMドライブは、音楽用CD、CD-ROM、CD-R、CD-RWを読み込むことができます。コンピュータの記憶装置としては、読み取るだけの装置なので競合製品間の差別化が難しく、読み込み速度と価格が競争の中心でした。CD-R/CD-RWドライブには、書き込みエラーを軽減するBURN-ProofやJust linkなど機能面の強化もありましたが、現在では、光学ドライブの中心はDVDに移りました。

ところが、DVDには書き込みの互換性がない5種類のメディアがあります。
DVDアライアンスとDVDフォーラムという二つの団体がそれぞれ規格を策定し、製品化したことによります。
記録の原理や構造は同じですが、ディスクの制御方法が異なるために、再生互換性は期待できる場合もありますが、書き込みに互換性はありません。
DVDを自家用に保存する場合は問題ありませんが、メディアを配布するときは互換性を考慮する必要があります。最近では複数のタイプのDVDメディアを読み書き可能なドライブが多く、そうした時には便利にはなりました。

対応するメディアごとに次のようなドライブ名称が付けられています。

ドライブ名称 対応する記録可能なCD、DVDメディア
コンボ

CD-R・CD-RW・DVD-ROM

スーパーコンボ CD-R・CD-RW・DVD-R・DVD-RW・DVD-ROM
マルチ

CD-R・CD-RW・DVD-R・DVD-RW・DVD-RAM

スーパーマルチ

CD-R・CD-RW・DVD-R・DVD+R・DVD-RW・DVD+R・DVD+RW・DVD-RAM
(2層書き込み以外の5種類の規格すべて)

ハイパーマルチ

CD-R・CD-RW・DVD-R・DVD+R・DVD-RW・DVD+R・DVD+RW・DVD-RAM・DVD-R for DLCD-R・CD-RW・DVD-R・DVD+R・DVD-RW・DVD+R・DVD+RW・DVD-RAMDVD+R DL (2層書き込み含むすべての規格)

※DVD-ROMには書き込みできません。マルチドライブ以下はDVD-ROMを省略しました。
※CD・CD-ROM・DVD-ROMの読み込みはすべてのドライブで可能です。

光記憶の構造と仕組み

メディアの構造や記録の原理はCD、DVDともほぼ共通しています。
形状はCD、DVDとも直径12cm(シングルCDや特殊な形状のものは除く)、厚さ1.2mmです。物理的には次のような構造です。

フロッピィディスクドライブ図解

データの記録は、アルミ箔の記録層にピットという細かい凹凸を刻んで行います。読み取り時には、レーザー光を当て、記録層の凹凸によって変化する反射光を光ヘッドで読み取ります。
ピットのない部分はランドといい平面で光を反射し、光ヘッドは反射光を受け取ります。ピットでは光が乱反射し、光ヘッドは反射光を受け取れません。この反射光の有無をデータに置き換えています。
CD、DVDはこのピットとランドが1列になって、アナログレコードのようにトラックが渦巻き状に1本で構成されています。レコードとは逆に、記録は内周から行われます。

フレキシブルディスク国内生産推移 一覧

光記憶装置のメディア

CD、DVDそれぞれ次の3種類に分類できます。

  • 再生専用型
    音楽CDやDVDビデオ、CD-ROM、DVD-ROMのように再生だけしかできないもの。
  • 追記型
    CD-RやDVD-Rのような一度だけ書き込み可能なもの。
  • 書き換え型
    CD-RWやDVD-RAM、DVD+/-RWのように何度でも書き換え可能なもの。

なお、記憶容量はCDが650MBと700MB、DVDは4.7GB、二層記録(8.5GB)や両面(9.4GB)タイプがあります。個々の媒体を見てみましょう。

媒体 媒体 種類
CD 再生専用 CD-ROM
(CD-ReadOnlyMemory)
読み取り専用。アルミ箔に凹凸を付けて記録するので、原盤ができれば、プレス機で大量生産することができる。音楽配信やプログラム、データの大量配布に使用される。
追記型 CD-R
(CD Recordable)
一度だけ記録可能。消去・書き換えはできない。
レーザー光の熱で記録層の有機色素を変色させてピットを作る。読み取り方法がCDと同じで、家庭用のCDプレーヤーで再生可能。
書き換え型 CD-RW
(CD-ReWritable)
約1000回程度書き換え可能。記録層に相変化化合物を使用し、レーザー一光で加熱する。加熱により生じる相変化で光の透過率を変化させて記録する。読み出し時にはその透過率の変化を読み取る。さらに加熱して相変化で元に戻す(消去する)ことができる。
ただし、透過率の変動は比較的小さく、反射率はCD-Rの70%に対して20%程度といわれ、家庭用のCDプレーヤーや旧型のドライブでは読めない場合がある。
DVD 再生専用型 DVD-ROM
(DVD- ReadOnlyMemory)
読み取り専用。アルミ箔に凹凸を付けて記録するので、原盤ができれば、プレス機で大量生産することができる。
DVD-Videoやソフトの配布に使われる。
追記型 DVD-R
(DVD-Recordable)
DVD+R
(DVD Recordable Plus)
一度だけ書き込み可能。記録原理はどちらもCD-Rと同じ。
どちらもほとんどのDVD-ROMドライブ/家庭用のDVDプレーヤーで再生できる。国内ではDVD-Rが普及しており、メディアも入手しやすい。互換性もDVD-Rの方がやや有利。
書き換え型 DVD-RW
(DVD-ReWritable)

DVD+RW
(DVD ReWritable Plus)
約1000回程度の書き換え可能。CD-RWと同様に、相変化により記録する。
DVD+RWはDVD+VRフォーマット対応で、ビデオの追記・編集など機能的には有利だが、対応ドライブは少ない。
DVD-RAM
(DVD-Random Access Memory)
レーザー光による相変化記録。元々パソコン用に作られており、書き込み回数10万回以上と耐性に優れている。
記録方式が特殊なので、他のDVDメディアとの互換性はない。専用のドライブやレコーダでしか再生できないが、MOやフロッピィと同様に書き込み、追記、消去ができる。書き込みにベリファイ処理を行うので、データの信頼性は高い。
※DVD-R、DVD-RW、DVD-RAMはDVDフォーラムが策定した規格。
※DVD+R、DVD+RWはDVDアライアンスが策定した規格。
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これからの外部記憶装置

現在の主要な記憶装置であるハードディスクと光学ドライブについて今後の動向に触れておきます。

巨大容量化するハードディスク

プラッタ当たりに記録できる情報量を増やすことが大容量化のキーです。記録密度を上げるためにはプラッタ上の磁石を小さくすればよいのですが、これには限界があります。

そこで、考案されたのが垂直磁気記録方式です。
従来はプラッタに長手方向に水平に並べていた磁石を、垂直に立てて並べることで単位面積当たりの磁石の数を増やして密度を上げます。磁石が小さくなると、より高感度なヘッドが必要となり、トンネル効果を応用したTMRヘッドが実現しました。

こうした新技術の採用により、プラッタ当たり240〜300GBまでは実現可能と予想されています。

フレキシブルディスク国内生産推移 一覧

次世代DVDを争う二つの規格

DVDは、普及当初から複数規格の書き込み可能メディアが乱立し、ユーザーを混乱させました。そして今度は次世代DVDにおいてHD DVDとブルーレイディスク(BD)という2大規格が相譲らず、将来が混沌としています。

従来のDVDとの互換を重視するHD DVDと、大容量化を目指すブルーレイディスクは、コンピュータ業界はもとより家電業界、映画などのコンテンツ業界も巻き込んでの争いになっています。どちらかにまとまるか、並立か、新規格か、今のところ決定打はありません。
しかし、大画面テレビの普及、デジタル放送の本格化などコンテンツは次世代DVD規格へのシーズは成長しつつあります。結論が出る日はそう遠くないかもしれません。

技術的には、ハードディスクは1TB(テラバイト)までは現行の技術で可能と考えられます。DVDは、大容量化を目指すブルーレイディスクでも、レンズやレーザー光の波長の制限から、片面1層で50GBを超えるものは難しく、今の記録方式による光学ドライブはこれで最後になると考えられています。
しかし大容量化の波は止められません。次々世代の技術が具体的に見えてくる日が楽しみです。

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第7回   情報を貯蔵する(補助記憶装置)
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