2009年 33号  発行日: 2009年6月5日 バックナンバー

2009年度FUJITSUファミリ会 春季大会
開催日:2009年5月15日 開催地:帝国ホテル

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アンケート

記念講演「積極的危機対応戦略を考える」
-100年に一度の危機に対応するには-

事業システムは真似できない

加護野 忠男 記念講演

日本全国に文房具を宅配するシステムを作り上げて成功した企業があります。東京は、あらゆる面で物価が高いのですが、文房具だけは東京が一番安いそうです。全国の文房具の値段を東京価格にしたのがこの企業です。それにより地方の文房具屋さんが減少し、それを支えてきた大手文具メーカーも大変な思いをしています。
今、ビジネスの世界は、商品の戦いではなく仕組みの戦いなのです。100年に1回の不況の中で、われわれはこの戦いの変化に対応していかなければなりません。

ビジネスの仕組みを、私は「事業システム」と言っています。
事業システムは、商品と違って競争相手がなかなか真似できません。商品の競争は華々しいのですが、事業システムの競争は目立ちません。優位の持続時間が非常に長く、一旦リードしてしまうと競争相手が気付いたときにはもう追いつけません。しかも、事業システムはリバースエンジニアリングができません。部分的に真似をしても効果はありません。
事業システムの再構築を考えていただくときに大事なのは、顧客価値と競争相手との差別化です。それらについて会社としてどのようなメリットがあるか。そのカギが3つのCです。第1はCustomer、お客様。第2はCompany、わが社。第3はCompetitor、競争相手です。この3つのCの中で、意外に忘れられてしまうのがお客様です。競争相手だけ見て製品を開発し、潜在的な競争相手を恐れて、機能性能を上げていくよりも、顧客にとっての価値を考えなければなりません。お客様は物が欲しいのではありません。価値を買おうとしているのです。

事業の仕組みを作るための設計思想にバンドリング(注1)という考え方があります。いろいろなサービスを組み合わせるビジネスの仕組みです。
バンドリングの典型的な例がプリンタメーカーです。プリンタ本体より消耗品を売ることによって利益を上げています。そのメーカーは、かつてカメラを作っていたときに儲けていたフイルムメーカーでした。そこで、プリンタ用の消耗品を手がけ、プリンタと消耗品をバンドリングする事業の仕組みを作り上げました。
物だけを売っていると、リバースエンジニアリングによりすぐに真似されてしまいます。ナノテクノロジー技術を持つあるメーカーは、自社の機械を使って化粧品まで作って販売しています。そうなると商品だけではないので簡単には真似できません。

(注1) 関連する商品・サービスをセットにして提供する商品提供手法のこと。

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