| 2009年 33号 発行日: 2009年6月5日 |
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2009年度FUJITSUファミリ会 春季大会
開催日:2009年5月15日 開催地:帝国ホテル
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論文表彰
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論文表彰では、まず2008年度論文委員会の吉田委員長(清水建設株式会社)より、審査経緯の報告がありました。 |
 論文委員会 委員長
吉田 高範 氏
(清水建設株式会社) |
ただいまご紹介いただきました清水建設の吉田でございます。2008年度の論文審査の経緯、ならびに結果につきまして、ご報告させていただきます。
2008年度も昨年に引き続き年1回の募集でしたが、前年度を上回る力作41編の論文の応募をいただきました。
論文委員会では、全論文につきまして厳正な審査をいたしました。その結果、「秀作論文」2編、「奨励論文」4編を入賞論文として選定させていただきました。
今回の入賞論文は、「秀作論文」2編のタイトルにもありますように「続けるぞ!! ヒューマンエラー・ゼロ〜改善、改善、改善〜」、「システム障害「ゼロ」を目指して」といった、社内の品質向上の取り組み、あるいはICカードシステムの構築事例、フィールド・イノベーションへの取り組み、ワークスタイル変革に伴うテレワークスモデルへの取り組み、計算科学による癌治療遠隔支援といったさまざまなテーマが入賞されました。これは、皆様にも広く参考になるものと確信しております。
なお、入賞されました6編の論文につきましては、昨日、5月14日の『富士通フォーラム2009』の中で発表させていただきました。多数の方々にご参加いただき、この場を借りてお礼を申しあげます。
その発表の中で、これから表彰を受けます南九州コカ・コーラボトリング株式会社の小山様がこのようなことをおっしゃっていました。「論文というのは、現場におけるIT活用の知恵を共有する場である」。私もなるほどと思いまして、本日はこのことを、ぜひ皆様にお伝えしたく思った次第です。
ここで、お願いが2つございます。1つ目は「論文の活用」についてですが、論文はファミリ会のホームページでご覧になれますので、ぜひ1度目を通していただきたいということです。
2つ目は、「論文の応募」についてです。ただいま2009年度の論文を募集しております。エントリーの締め切りが7月24日、論文の原稿の締め切りが8月31日となっております。会員である皆様の日頃の努力の成果をぜひまとめていただき、この共有の場に発表していただきたいと思います。
最後になりましたが、ご多忙の中、論文を執筆していただいた方々、審査を担当していただいた論文委員の皆様、また、論文の編集・発行に絶大なご協力をいただきました富士通株式会社殿にお礼を申しあげまして、ご報告とさせていただきます。ありがとうございました。 |
秀作論文
タイトル:「続けるぞ!! ヒューマンエラー・ゼロ 〜改善、改善、改善〜」
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新日石インフォテクノ株式会社 安村 達男 氏 |

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新会社設立より5年間取り組んできた品質向上を目指した継続的な活動を、一度整理し振り返ることにより、次へのステップアップを目指したいというのが論文応募のきっかけです。
当社は2003年に新日本石油(株)と富士通(株)との合弁会社としてスタートしましたが、発足当初、本番システムで重大トラブルをいくつか発生させました。これは、"個人Play"や"組織間の連絡がない"という点に起因していました。そこで"所管する業務のイベントに関して再点検・対策構築を実現して欲しい"との強い指示が幹部よりありました。発足当時は、大規模な販売物流システムが稼働しており、点検してみると属人性に頼っていることがわかりました。従って、5W1Hを意識して日常業務の整理と手順書化を行い、その手順書に従って保守や運用業務を行うことを徹底しました。また、この手順書化は、品質を維持向上させると共に知識や技術のナレッジ化をも推進させるため、手順書に従った活動をし、評価し、改善していくというPDCAサイクルを回し続けていこうというものです。
現在は、今あるプロセス(手順書)の水準・質を一段上へ上へとレベルアップさせていくという意味を込めて、「改段段運動」のキャッチフレーズを掲げ、「変えない方が楽→変えることで楽になる」、「手順は守るもの→手順は良くするもの」、「このようにやることが常識→ここを変えたらもっとよくなる」を合い言葉に、自律的な改善活動をこれからも続けていきたいと思っています。 |
タイトル:「システム障害「ゼロ」を目指して」
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南九州コカ・コーラボトリング株式会社 小山 隆道 氏 |

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論文の舞台となっているKSSは昨年まで、(株)コーナンシステムアンドサポート(KSSは略称)という社名で、南九州コカ・コーラボトリング(株)の情報担当子会社でした。昨年の早い時期に決定した親会社への統合(2009年1月1日付け)をきっかけに、KSSの活動記録を残しておきたいという、いわば感傷的な動機から、今回の論文募集に応じたわけです。過去の私たちの仕事を整理し記録に残すことで、それを新体制へのメッセージにしたいと思ったのです。これまでバラバラに管理されていたデータを整理し、論文にまとめる作業は思いの外大変でしたね。KSSの業務は主に、システムの開発と保守運用、つまり情報処理です。南九州コカ・コーラボトリング(株)の場合に関わらず、重大なシステム障害は経営の根幹を揺るがす一大事です。障害のレベルには、その影響が単一部内に止まる小規模な段階から、グループ内外にまで影響の及ぶ重大なものまで各段階がありますが、結局、障害発生件数を減らすには業務の属人的対応を排除する(脱・属人化)ことがもっとも有効です。脱・属人化の結果、KSSでは2005年度から2008年度までにシステム障害件数が激減したことが、今回の論文で明確になりました。新体制への統合に際し、非常にいい状態でバトンを渡すことができたのではない(もちろん私も新体制の一員として頑張りますが)か、と自負しております。 |
奨励論文
タイトル:「フィールド・イノベーション Tobe2010 〜 運用業務改革 〜」
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新日石インフォテクノ株式会社 加藤 剛 氏 |

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昨今、ITは経営そのものといわれるように、企業活動における血液のように重要性が増してきており、信頼性・安全性の向上と投資効果も含めた有効性が求められていると考えます。運用業務は、オープン系へのダウンサイジングの流れや、さらには情報セキュリティ対策やBCP対策等の強化、IT内部統制対応等、事業環境の変化/顧客ニーズの変化/市場の変化 に常に対応していくことが求められています。しかし、長い歴史の中で運用業務コストのブラックボックス化等、各社でも運用業務可視化は課題が多いテーマと考えています。当社では、2003年4月の新会社設立以来、新会社に対する良質で低廉のITサービス提供を目指して、ITサービスマネジメントを意識してまずは、"情報システムの機能を安定的かつ正確に提供し続けること"をターゲットに、品質確保を重点として順次運用業務改革に取り組んできました。2007年度からは、上記に加えさらに、"適正コストで提供し続ける"ことをターゲットにコスト面に重点を置き、運用業務改革をスタートしたものです。
まだ、一部取り組み中の活動もありますが現時点での成果として、
- 運用部門の組織としてのマネージメント力の強化が図れたこと
- 運用に携わる人の個々人の意識改革が図れたこと
- 運用業務の可視化が図れたこと
が一番の成果であると考えております。今後は適正なサービスレベル追求により、システム運用コスト全体の最適化に向けた新たなチャレンジに取り組んでいきたいと考えております。 |
タイトル:「実践的テレワークにより社員のワークライフバランス向上へ」
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株式会社富士通ワイエフシー 法林 佳世 氏 |

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私自身、産休一ヶ月前の一仕事ということで、論文の執筆は大変でしたが、自分たちのやってきたことが論文という形で残ったのは、良かったと思います。結婚や妊娠で退職する女性社員が多いのは当社に限らないことで、女性社員は育たないと考える風土が、日本ではまだまだ根強い。そこで、女性が会社にとって重要なブレインとして活躍できるようにするための社内プロジェクトを提案してみたのです。結果思いがけず、その提案が通ってしまいました。社内の女性社員からあがった80項目余りの改善要求を具体的な働き方に集約させたのがテレワークというシステムです。テレワークとは「IT技術を活用し、時間や場所に制約されず、柔軟に仕事をする働き方」で、在宅勤務とモバイル勤務があります。実施にはたくさんの課題がありましたが、テレワーク検討開始から2ヶ月後に試行しました。まずやってみる、というスタンスが大切だと考えたのです。試行者の声をくみ取り、具体化する目的で試行を実施、本格導入に繋げていきました。テレワーク申請者数は現在(2009年3月末)、女性社員の38%、全対象社員の30%に上っています。このプロジェクトは女性活用の視点からスタートしましたが、現在は男女ともに対象となる取り組みになってきています。企業だけでなく、地方公共団体からの問い合わせもあり、これからは障がい者社員や外国人社員の受け入れにも効果を発揮すると期待しています。 |
タイトル:「大学におけるICカードシステムの構築 〜学生証を利用したキャンパスライフ〜」

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乗車券や社員証と同様に、近年では学生証をICカード化する大学が増えています。ただし建物への入館だけの利用など、単一の目的のみで利用されているケースがほとんどです。ICカードは従来の磁気カードに比べ多目的での利用が可能で、拡張性が高いカードです。本学(名古屋外国語大学と名古屋学芸大学)で開発した「キャンパスカードシステム」は、入館管理はもとより、学内の食堂・コンビニ、証明書発行などの決済システム、図書の貸出しやスクールバスの乗車など、多目的で多機能なサービスの展開に成功しました。これにより、学生サービスの面での差別化が図れました。論文の応募は今回が初めてで、文章として表現することが難しかったです。特に、導入効果に関しては担当部署から意見を定量的に表現していく点が大変でした。キャンパスカードシステムの運用開始から2年が経過し、学生や教職員からは高い評価を受けています。今後もさまざまな角度からサービスの拡張を図り、さらに充実したものにしていきたいと考えています。
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タイトル:「計算科学が拓くがん治療遠隔支援」
(論文タイトル:「放射線治療遠隔支援のための線量計算システムIMAGINEのグリッド化」)
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独立行政法人日本原子力研究開発機構(JAEA)
鈴木 喜雄 氏
手島 直哉 氏 |

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鈴木氏:私たちの組織、日本原子力研究開発機構(JAEA)は、『原子力の未来を切り拓き、人類社会の福祉に貢献する』ことをミッションとしています。原子力の研究開発を行うと同時に、研究開発の成果を広く国民に役立てていくことも私たちの大切な仕事のひとつです。今回は、私たちの研究成果に対して外部の評価をいただき、一般の方々に広く知っていただくために応募いたしました。
手島氏:計算科学とは耳慣れない言葉かもしれませんが、わかりやすくいえば、スーパーコンピュータを利用した数値シミュレーションにより、科学技術上の問題を解決しようというものです。計算科学を現代医療の最前線である「がん放射線治療」に役立てようというのが今回のプロジェクトの大筋です。私たちが携わっている計算科学に関する研究、特にグリッドコンピューティングの研究は、一般の方には馴染みがない分野ですので、論文執筆では、どうすればわかりやすく研究内容を伝えられるかという点に一番苦労しました。
鈴木氏:放射線を照射してがん細胞のDNAを破壊する治療が「がん放射線治療」です。体にメスを入れないので、人体への負担が少なく、特に神経や血管が集中する部位では外科手術よりも安全とされています。がん細胞に照射する放射線の量は、多すぎても少なすぎてもいけません。そこで一人ひとりの患者さんに、例えば、どのくらいの時間、どのくらいの量を照射するかというような治療計画を立てる必要があります。そのために、事前に照射に関する検討を行うのに、市販の治療計画装置が広く用いられています。しかしながら、照射条件が複雑な場合には高度なシミュレーションが必要で、市販の装置だと長い時間を要してしまいます。このような高度シミュレーションを高精度・高速で行うシステムが「線量計算システム(IMAGINE)」です。IMAGINEを実用化するにあたり多くの患者さんの治療計画を立てることを想定すると、シミュレーションを実行するまでの待ち時間が長くなり、患者さん一人ひとりの治療計画を立てるまでに相当の時間がかかってしまうことが危惧されます。そこで私たちが考えたのが、グリッドコンピューティング技術を利用してIMAGINE をグリッド化することで、結果を得るまでの時間を短縮することでした。グリッドコンピューティングという言葉がでてくる以前から、私たちはネットワーク上にある複数のコンピュータを使う技術の開発に取り組んでいましたので、この技術に注目したわけです。
手島氏:今回、地理的に離れた場所にある複数のスーパーコンピュータを同時に利用して線量計算を並列実行できる技術の開発に成功することで、時間短縮できることを実証いたしました。今後はさらなる実用化に向けた研究開発を進めていくつもりです。
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