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UP TO DATE Google Earth
パソコンで世界中を空中散歩

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Google Earth(グーグルアース)は、Google社が無料で配布しているバーチャル地球儀ソフトです。まるで地球儀を回しているかのように、画面上の地球を自由に回転させ、世界中の衛星写真を閲覧できます。ズームアップするにつれ、自宅の屋根まで表示されるほど、驚異的な解像度と情報量を持っています。地上だけでなく、海中や宇宙、火星、過去まで表示し、そこに、地図情報をはじめ、スポット情報や3D表示などのさまざまなコンテンツを表示することもできます。
これら「Google Earth」の多彩な機能を紹介するとともに、ベース技術、ビジネスへの利用への可能性について探ってみましょう。

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「ぐぐる」の動詞が生まれたほど、Googleはインターネット利用者にとって、なじみの深い存在です。来訪者数や被リンク数などでWebページの重要性を判断する独自の検索エンジンにより、世界中で利用されようになりました。しかし、Googleは単なる検索エンジンの提供会社ではありません。インターネットの可能性に挑戦する実に多彩なサービスを提供しています。
その1つ「Gmail」を利用している人も多いでしょう。ブラウザの「Google Chrome」も注目を集めています。地図サービスの「Google Maps」は情報検索とともに利用している人も多いでしょう。こうした多彩なサービスの中に今回ご紹介する「Google Earth」があります。

「Google Earth」利用シミュレーション

「Google Earth」は、Googleが2004年に買収した「Keyhole」というソフトウェア会社が開発したサービスです。Googleから提供されたのは2005年6月28日。2009年5月末現在、バージョンは「Google Earth 5.0」です。
Google Earthで画面に表示される地球儀は、自由に回転、ズームアップ・ダウン、視点移動を行うことができます。宇宙から海底まで、ある地点の過去の姿から現在の姿まで、地理的な情報に基づくリアルな情報をユーザーの意のままに表示することができます。テレビやゲームで味わうバーチャルな映像とは次元を異にする世界です。

地名で一発検索

「Google Earth」のソフトウェアをインストールすると、画面上に地球が現れます(図1)。右側にナビゲーションが表示され、この操作で見る方向を変えたり、移動したり、地球を回したりすることができます。

実際の地球儀と違うのは、ピンポイントで拡大できることです。ナビゲーションのスライダーのつまみを「+」方向にドラッグすることで、目的地にどんどん近づき、見たい国や街を上空から眺めることが可能です。例えば図2がパリ凱旋門。マウス操作でパリ上空を遊覧することもできます。

便利なのは検索機能です。ジャンプボックスに地名を入力すると、一発でその場所へ飛んでいきます。図3は「ニューヨークマンハッタン」で検索。近づくとエンパイアステートビルも確認でき、近づくと、ビルが3D表示され、その精密さには驚かされます。

こうした衛星写真や3D画像をもっと楽しみたい方には、フライトシミュレータ機能も装備されています。空からの景色を自分の操縦する飛行機で楽しむことができます(図4)。

過去の街並みや海底図

ユニークなのは、提供されている地図情報が過去にさかのぼれること。最も古い映像は1940年代のアメリカ、カリフォルニア州の一部、日本を含む多くの地域は1995年前後からの映像を見ることができます。
ここ十数年で大きく変わってきた街に秋葉原があります。図5が現在の状態。図6が1997年当時の状態です。まだ、ヨドバシ-Akibaもありませんし、駅西側は駐車場が広がっていました。

海にも潜ることもできます。海上で高度をどんどん下げていくと、そのまま海に入り、海底の様子が確認できます(図7)。広大な海で詳しい地形データがあるのは全体の数%といわれていますが、タイタニックなどの難破船を 3D 映像など、ナショナルジオグラフィック、スタンフォード大学、BBC、日本水路協会海洋情報研究センターといった100以上の組織や個人から提供されたコンテンツを見ることができます。

さらに、火星や星座も表示できます。
特に、火星については、NASA(米航空宇宙局)が提供するデータを使用して、地表の写真や探査機の着陸地点、探査機の撮影したパノラマ写真、1時間前にNASAが受信したばかりの火星探査機 からの映像(図8)を見ることもできます。

リアルな映像を支える情報源

Google Earthの精密な画像は、人工衛星GeoEye-1などから供給を受けた1ピクセル当たり50cmという高解像度の映像や、買収した衛星写真データベースKeyhole社の画像、各国地図ソフト会社から提供された街やビルの3D画像を組み合わせて表現されています。2005年巨大ハリケーン、カトリーナがアメリカを襲った際には、Google Earthで洪水の状況を表示するために、軍用に使われていた地図情報をまとめている政府機関からも一部の情報提供を受けたといわれます。
さらに、企業や団体から現在や過去のデータを提供してもらうための「Imagery Partner Program」を設けて、データの収集を行っています。
こうして集められたデータは膨大な量であり、おそらくGoogleならではのおびただしい数のサーバとストレージに蓄積されているものと考えられます。

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「Google Earth」を支えるベース技術

地球上の陸地はもちろん海底まで、さらには火星の映像まで提供してくれる「Google Earth」。その映像は実になめらかに切り替わりますし、高精細です。膨大な量になると推測されるデータの描画処理とダウンロードを可能にしているベース技術が「ポリゴン」と「ディスク・キャッシュ」です。

3D画像を表現する「ポリゴン」

ポリゴン(polygon)とは多角形という意味で、3Dグラフィックス分野ではすでに一般的な用語です。3Dグラフィックス、すなわち立体画像を表現する場合、コンピュータでは三角形や四角形などで構成します。その三角形ないし四角形がポリゴンです。
ポリゴンの数が増えるほど詳細でリアルな表現が可能になりますが、それだけコンピュータへの負荷は大きくなります。このため、ゲーム機ではポリゴンの処理能力が、重要な仕様の1つとなっています。コンピュータにおいては、CPU能力やソフトウェアが、ポリゴンの処理速度を決定します。そのため、「Google Earth」のソフトウェアのインストールには「DirectX」のインストールが求められます。この「DirectX」とは、マイクロソフト社がWindows OSのマルチメディア機能を強化するために提供しているソフトウェアです。パソコンでゲームを快適に行う際に、インストールを求められることが多く、専用ゲーム機に負けない画像を再現できます。
「OpenGL」(注)でも再現できますが、こちらではだいぶ解像度が落ちます。

注:Silicon Graphics社 (SGI) が開発したOSやハードウェアに依存しない3Dグラフィックスのためのプログラムインターフェイス

ダウンロードデータ量を抑える「ディスク・キャッシュ」

いかに高速なポリゴン処理を可能にしているとはいえ、対象となるデータ量が膨大であれば、そのダウンロードが大きな課題となります。例えば、「Google Earth」では遠目で見た円形の地球を回転させたり、急激なズームなども極めてスムーズにできますが、ここに求められるデータダウンロード量とその処理はCPUの大きな負荷となります。
そこで、「Google Earth」で採用されている技術がディスク・キャッシュで、これも、コンピュータではおなじみの技術です。いったん処理したデータをキャッシュとしてディスクに保存しておき、再度必要になった際、ダウンロードせずに、保存先のディスクにアクセスすることで、処理を高速化する技術です。

「ポリゴン」と「ディスク・キャッシュ」による高速な画像処理とGoogleならではのサーバ・ストレージ群。これらに加えて、Googleの最新で高度な技術が駆使されていると推測されますが、Googleはこれらの自社の技術をほとんど公表していません。

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娯楽からビジネスまで、広がるGoogle Earthの用途

Google Earthは、バーチャルな旅行体験や住所検索だけでなく、環境保護団体による森林伐採や汚染地域の監視、ホテルやレストランの案内、観光、交通、不動産、建設業などのさまざまなビジネスから教育、行政、犯罪捜査にいたるまでさまざまな用途で利用され、今後も用途は拡大し続けるでしょう。
「Google Earth」は有料版もあり、こちらは1年間のライセンス料が400ドルです。注釈の追加、インポート・エクスポート、プレゼンテーションへの活用、共有機能などが追加されており、不動産、建築、行政分野などでの使用を想定しています。例えば不動産の場合は現地調査や案件のプレゼンテーションなどが可能となります。建築では建築現場確認から建築物による影響分析のシミュレーションなどができます。
さらに、Googleは「Google Earth API」とプラグイン「Google Earth Browser Plug-in」も公開しています。これらを使うと、「Google Earth」同様の3D地図を利用したソリューションや、自社のサイトで地図を使ったWebサービスを提供することが可能になります。例えば、携帯電話やPDA、RFID、GPSとの連携などにより、荷物、ペット、人間、自動車などの現在位置表示や道案内、車両の運行管理業務からフライトシミュレータのようなゲームにいたるまでさまざまな用途が考えられます。

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