| 2007年 27号 発行日: 2007年12月5日 |
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2007年度FUJITSUファミリ会 秋季大会
開催日:2007年11月1日 開催地:リーガロイヤルホテル広島
[Flash/15KB/96秒] Flashによる SLIDE SHOW
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セッション2「マツダにおける“くるまづくり革新プロジェクト”MDI(マツダ・デジタル・イノベーション)の取り組み事例」
バーチャルテスティングからプロダクションエンジニアリングへ
一番典型的な実験、衝突実験の事例を見てみましょう。ある条件でぶつかったときにドライバーにできるだけけがをさせない、ドライバーを守る構造をつくっていくために、試作車を実際にぶつけてどういうつぶれ方をするかを見ます。車は壊れても仕方がない、しかしドライバーは助ける。そういう構造にすることが車の開発で一番大切で、一番お金がかかるのですね。実は試作車は非常に金がかかるのです。平均すると試作車1台つくるのに市販の価格の10倍くらいかかる。売るとき250万円の車だとしたら2500万くらいかかります。試作の目的によっても異なり、1億かかるのもあれば、1000万くらいでできる試作品もありますしいろいろですが、平均するとそれくらいですね。いい結果が出るまでたくさんの試作車を作っては衝突実験でぶつけて壊すわけですから、非常に金がかかるわけです。試作車をできるだけ少なくするということが非常に重要な課題になってくる。これは自動車各社抱えている永遠の課題です。そこで、3Dで部品設計しますから、数学モデルでコンピュータの中で試作車を作ってぶつけてみようという取り組みを始めたわけです。実際にどういうふうに車がつぶれるのか、ドライバーにどんなインパクトを与えるのかといったところを分析しています。 |
CAEは、コンピュータの中で解析シミュレーションしていく手法です。図表5の中の赤い線がテスト、実際の試作品で計測したデータです。青いのがコンピュータの中でシミュレーションした結果。これが合わないと単なるテレビゲームになってしまいます。実際の物理現象とコンピュータの中でシミュレーションした結果がかなりの精度で合うことが検証されないと、実際に車を作ってみたら上手くいかないということが起こります。ここの精度をいかに上げていくかが各社の競争ということになってくるわけです。(図表5) |
 (図表5)Offset Crash |
クラッシュ安全テストの事例を見てみましょう。まだ試作車がない段階で衝突現象をシミュレーションして、ドライバーにどういうインパクトがあるのか、例えば50km/hのスピードでぶつかったときにどんなインパクトがあるかを定量的に測ります。それがある基準値以下にならないとクルマを販売することができません。そういったことを実験設備としてやっているわけです。
バーチャルテスティングは、実際には100%コンピュータでシミュレーションできるわけではありません。プロトタイプを作って、実験して評価するということが主体になってきます。そこで、この試作の世界、テスティングの世界もイノベーションする必要があります。プロトタイピングの場合は、試作車を極めて上手に作り、それがきちんと正確に作られているかを検査することをやっていきます。 |
事例を見てみましょう。これは、三次元のデータからつくった試作車ですが、三次元設計した図面どおりに作られているかを検査するために、xyzの座標で三次元計測します。測ることで間違いなく設計者が設計したとおりに作られているということを検証するわけです。これをさらに応用すると、物理的に存在するものを3D設計データに落とし込む、いわゆるリバースエンジニアリングとして、あるものを計測してコンピュータの中のデータに置き換えるということも当然できるようになります。要は、試作車は作って終わりなのではなく、正しく設計図面どおり作られているからこそ試作車でテストを行う意味があるわけですから、ここの精度を上げていくことをやっています。(図表6) |
 (図表6)Prototyping |
こうして設計ができ上がると、いよいよ工場で量産に入っていきます。いきなり工場に行くわけではなく、その前にプロダクションエンジニアリングという量産準備の段階があります。自動車の工場をご見学になると非常にわかりやすいと思うのですが、今はどこの自動車会社に行っても、工場の中で非常にたくさんのロボットが活躍しております。この溶接ロボットも3D設計するということで、コンピュータで溶接ロボットのアームを動かし、コンピュータで作った試作車を溶接していきます。赤い印が出ていますが、これはエラーの表示で、ロボットとプロダクトが干渉しているということです。このまま工場で溶接すると大変なことになりますので、量産する前に作り込んでいきます。塗装ロボットなどでも、塗装工程でやはり同様にバーチャルな世界で検証していきます。(図表7) |
 (図表7)打点検証・打点配分 |
視点は違いますが、MDIでは人に優しい工場を目指しており、できるだけ作業者から見て見やすい、あるいは姿勢が楽であるなど、人に優しい工場をつくるためにどういう作業手順にしたらいいのかといったことも、バーチャルに作って検証していくということをやっています。 |
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