2007年 27号  発行日: 2007年12月5日 バックナンバー

2007年度FUJITSUファミリ会 秋季大会
開催日:2007年11月1日 開催地:リーガロイヤルホテル広島

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アンケート

セッション2「マツダにおける“くるまづくり革新プロジェクト”MDI(マツダ・デジタル・イノベーション)の取り組み事例」

デザインからテストまでの流れ

弊社のアテンザという車では、デザイン決定したときの3D、コンピュータの中の画像と実際に車が完成して世の中に出した時の写真と比べて、素人目にはほとんど変わりません。実は玄人が見れば随分違いがあるのですが、要は車を世の中に出す2年前くらいから実際と素人目には変わらないほどのレベルまで作って、これをどんどんチューニングしていくということをやっているわけです。(図表4)

Digital Styling クリックすると拡大画像が開きます

(図表4)Digital Styling

さらに、3D設計したデータに基づいて三次元で粘土のクレイモデルを作り、デザインの評価をします。昔はデザイナーが自分でカッティングしておりましたが、今は自動切削器がコンピュータの中の3D設計に基づいて粘土で作っていく、デジタルスタイリングをやっております。

次にプロダクトデザイン、車というプロダクトの詳細設計に入っていきます。プロダクトデザインの段階では、コンピュータの中でバーチャルに車を作っていきますが、実は車を構成するすべての部品約2万点を、すべて3D設計して、その部品をコンピュータの中で組み上げていきます。バーチャルの世界ですからこういうふうに輪切りにすることも簡単にできます。これをデジタルモックアップと言っていますが、MDIを進める中で、従来できなかったこと、全くやってなかったことをコンピュータの中で可能にしていこうということです。

設計が進みますと、次に試作車を作ってテストを行います。システムの場合ですとバグが出るとデバッグしていきますが、それと同じようなことをやっていくわけです。デジタルモックアップによって、コンピュータの中にバーチャルな試作車ができていますので、それをベースにコンピュータの中でテストをします。これをバーチャルテスティングと呼んでおります。

車の場合、いろいろなテストが必要です。例えば、テストコースで実車のテストも行いますが、それをできるだけ実験設備でのテスト、いわゆるベンチテストに置き換え、実際に起こる物理現象を実験設備で再現するということを綿密にやっていきます。これができますと非常に再現性があります。テストコースでは気象条件やドライバーによっても違いますし、やるたびに値が違うということも起こります。いろいろな変動要因があるので、できるだけ実験設備で標準化していく取り組みを行っています。そういう意味では、MDIではITだけではなく設備にもかなり大きな投資をしています。

これをさらにコンピュータの世界、数学のモデルに置き換えていきます。CAEという言い方をしておりますけれども、ここでベンチテストとCAEのコリレーション、物理現象をコンピュータで正しく再現しているということを検証していく。そうすると、結果として実車テストとコンピュータのテストのコリレーションがとれる。理屈は簡単ですが、これが実は非常に骨の折れる仕事です。これを一つひとつ、やっていったわけです。

今申しあげました実車テスト、ベンチテスト、CAE(コンピュータシミュレーション)、従来ほとんど実車に頼っていた開発を、理論的には100%コンピュータでやっていきたいということがバーチャルテスティングのコンセプトです。

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