2008年 29号  発行日: 2008年6月5日 バックナンバー

2008年度FUJITSUファミリ会 春季大会
開催日:2008年5月16日 開催地:帝国ホテル

Slide Show

[Flash/約88秒]
Flashによる SLIDE SHOW

アンケート

記念講演「企業の未来に向けて真のコンプライアンスを考える」

コンプライアンスに求められる“センシティビティ”と“コラボレーション”

未来に向けてのコンプライアンスに求められる、重要な言葉が2つあります。一つは、社会の要請に対して鋭敏であること。“センシティビティ”です。そしてもう一つは、社会の要請に対してセンシティブな人や組織がお互いに力を合わせること。“コラボレーション”です。コンプライアンスというのは、基本的にこの2つの組み合わせですべてを考えることができます。そして、そのための具体的手法に関して私が以前から提唱しているのが、「フルセットコンプライアンス」という考え方です。これには、5つの要素があげられます。

郷原信郎氏4

第1に、社会の要請に組織として応えていくためには、その要請を的確に把握し、どのようにバランス良く応えていくかという方針を明確化する必要があります。刻々と変化する社会の要請を的確に把握するためには、まず、法令が何のために定められ、それはどのような社会の要請に従って変えられようとしているのかという基本的な部分を理解することが大切です。その中で自分たちの組織はどういう方向に向かって動いていけば良いのかということを理解する。それがコンプライアンスとしての出発点、方針の明確化です。

2番目は、その方針が実現できる組織・体制づくりの必要性です。組織が社会の要請に応えるためには、その組織の中にバランスと方向性が構築されていることが重要です。

郷原信郎氏5

3番目は、構築された組織がきちんと機能して、刻々と変化する社会の要請や経済の環境に現実に応えていかなければいけません。そこで必要なことは、組織全体の意思決定を行う経営者自身が、社会の要請に対してセンシティブに方針決定する“トップのセンシティビティ”と、社会と直接関わる現場で仕事をしているボトムの従業員や社員が社会の動きや環境変化、要請の変化を敏感に受け止めたことを会社に反映させていく“ボトムのセンシティビティ”です。組織全体がセンシティブになっていくためには、この両方がうまくハーモナイズされる必要があります。

4番目は、治療的コンプライアンスです。組織の中で問題が発生した時、二度と同じ問題を起こさないように、再発防止を図るための是正措置です。

そして、私が5番目に加えているのが、環境整備コンプライアンスです。組織が社会の要請に応えていこうと思っても、その環境自体の制度や社会構造のゆがみがあってうまくいかない時に、どうすれば根本的な問題が解消できるのかということを考える。この5つが、フルセットコンプライアンスの考え方です。これらをバランス良く実行していくことにより、組織は社会の要請に応えることができるのです。

郷原信郎氏6

我々のコンプライアンス研究センターというのは、一言で言えば、環境整備コンプライアンスを支援する組織です。環境全体を正していくためには、さまざまな機関との協力が必要になります。その活動の中心となっているものが、年4回発行している季刊誌『コーポレートコンプライアンス』と、クライシスマネージメントです。クライシスマネージメントとは、不幸にしてリスクが顕在化してしまい、その組織にとって危機的な状況に至りかねないという時に、その企業の損失を最小限に抑えるための活動です。

前のページ 次のページ
ページトップへ