| 2008年 29号 発行日: 2008年6月5日 |
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2008年度FUJITSUファミリ会 春季大会
開催日:2008年5月16日 開催地:帝国ホテル
[Flash/約88秒] Flashによる SLIDE SHOW
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記念講演「企業の未来に向けて真のコンプライアンスを考える」
法令の“遵守”とは
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「法令遵守」に凝り固まった組織というのは、構成員の役割分担や人の動きという面でもマイナスの要素を持っています。それは、例えるなら、狭い守備範囲の中にボールが落ちるのをじっと待っているへぼ野球の外野手のようなもの。一流の選手は、守備範囲が広い上に、ボールが飛んだ瞬間にそのボールの方向に向かって走り出します。さらに、隣の選手はボールに向かっている選手のバックアップに入るという動きに出ます。それによってこの二人の間に、ベストのコラボレーションが実現します。これが、アクティブな組織とそうでない組織の決定的な違いです。アクティブではない組織では、問題に対して自分が問われる責任をまず考えます。それに対して、アクティブな組織の人間は、その問題に対して、自分なら何ができるかということをまず考えます。急激に変化する世の中では、積極的にボールをとりに行く態度でないと、適切な対応を行うことができません。
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法令遵守の“遵守”という言葉が問題になるのは、それが、その社会における人間と法令の関係に関わってくるからです。法令を刃物に例えると、日本人にとって法令は、神棚に祭った“伝家の宝刀”のようなもの。伝家の宝刀とは実用ではなく、神棚の中に存在していることに意味があるのです。何か特別なことや予期せぬことが起きた時、神棚の中に納めたまま拝み、崇め奉る。これが伝家の宝刀に対する姿勢です。それと同じ日本人の態度が、法令をそのまま守る法令遵守という考え方につながるわけです。 |
しかし、2000年以降、経済構造改革という言葉に伴って司法制度改革が進められてくると、今までの日本における人間と法令の関係も考え直さなければいけなくなってきました。ところが、日本人は明治以来ずっと続けてきた“法令はそのまま守れ”という遵守の姿勢をなかなか変えようとしません。コンプライアンス不況という事態を生じさせている根本的な原因は、建築基準法や食品に関する法令、IT関係の法令など、その業務や社会の実態と乖離した法令を伝家の宝刀のごとく崇め奉り、遵守していることにあるのです。 |
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法令や規則というのは、その背景に必ず社会的な要請があります。日本の社会では、この社会的要請と法令・規則がずれていることがしばしば見られます。しかも、そのずれは、昨今の経済社会の急激な変化に伴ってますます大きくなっています。これからのコンプライアンスは、組織に向けられた社会的要請にしなやかに、鋭敏に反応しながらその目的を実現していくことが必要です。 |
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