| 2007年 27号 発行日: 2007年12月5日 |
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2007年度FUJITSUファミリ会 秋季大会
開催日:2007年11月1日 開催地:リーガロイヤルホテル広島
[Flash/15KB/96秒] Flashによる SLIDE SHOW
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セッション3「フィールド・イノベーションとビジネス・フィールドワークのご紹介」
すべてのステークホルダーに利益を生む改革を
以上4つの事例をご紹介しましたが、これらをフィールド・イノベーションの観点から捉えて簡単に概観させていただきます。 |
まず、フィールド・イノベーションは最初に課題を設定して、現状どうなっているか可視化を図る、意識を変えて、プロセスを変えて、本当に必要なITを駆使して全体最適へ、というサイクルです。事例1の、いかに現場が見えていないか、そして事例2の事実と事実認識は違うということから、いかに事実認識があいまいか、フィールド・イノベーションの起点の一つである可視化の重要性を感じていただいたかと思います。 |
事例3は、常識や習慣など気づきがたい中に大事なことがある、ということです。このお客様ではフィールドワークの結果いろいろ出てきた課題に基づいて社内改善が進んでいます。役席の方の作業をもう少しシンプルに減らす取り組みや、役席業務の阻害要因の一つであったATMのトラブル対応の改善など課題領域がさらに広がり、実際にATMのトラブルをセンターの集中対応に切り替えていきます。センター集中でオペレーターがQ&A対応、トラブル対応をし、ディスパッチ等々も一元的にやる。意識が変わって、プロセスが変わって、そしてITを駆使していくという流れになっています。さらに、現在ではセンターをアウトソーシングして本業により集中し、全体最適化の観点でさらにイノベーションが進んでいます。 |
事例4のシステム間の連携課題ですが、このお客様も既にシステム間の連携を見直ししたプロトタイプを作られて、ある一部門で試運転もされている。こういったいろいろなイノベーションが起こっております。 |
最後の事例として、ビジネス・フィールドワークの結果がシステム開発にどう関係していくのか、どう貢献していくのか、簡単にご紹介いたします。
また別の金融業の店舗業務のケースです。ここでは経営層の思いによって、オペレーションの自動化やペーパーレスを目指して最新システムを入れる企画が進んでいました。ところが、現場はリストラや残業規制等で、忙しい。さらに投資信託等の新しいサービスも入ってきて、てんやわんやです。新しいシステムの対応を一緒に考える余裕はありません。現場のモチベーションを上げるのが先ではないかなど、かなり不満の声が挙がっていました。情報システム部門もトップの期待も無視できないし、無理やり進めても現場に喜ばれない、サンドイッチ状態でした。こういったお悩みを聞きまして、とにかく現場の実態を明らかにしましょうと、総合フィールドワークをご提案をいたしました。 |
フィールドワークの結果、出てきた課題を整理してみると、上位の項目はシステムの導入もさることながら、ほとんどが業務中の離席や紙書類の多さなどの事務や運用の改善だということがわかってきました。(図表9) |
 (図表9)総合フィールドワーク結果から課題を整理 |
これをさらに整理し、総合フィールドワーク結果による課題に対して、新システム導入による改善項目と、ただシステムを導入するだけでなく、きちっと利活用してもらわないとだめな項目を整理しました。例えば簡単な例でいえばワークフロー上に伝言のメモフィールドをよく作りますね。放っておけばフリーフォーマットで煩わしいことも出てきますから、少しはルールを決めるといった利活用も進めていくことで改善が図れます。 |
しかし、システムを入れて利活用も図っても、それだけで済むわけではありません。事務や運用における改善を行ってやっと解決できるものがある。このように全て整理をして、課題に対して全てきちんと対応しないと、しょせん現場には喜ばれず、効果は生みません。こういった最終報告をさせていただいて、実際に全社的な参加意識の醸成、事務・運用部門の方々が本腰を入れて事務改善をやっていこうという流れになりました。 |
同時に、弊社がシステムの開発もやらせていただくことになったんですが、システム化要件定義作業のときに、エンドユーザー部門に参画していただいた。これが非常に大きかったですね。さらに大きかったのが、業務仕様のバイブル効果でした。フィールドワークで徹底的に事実を押さえて課題を明確にしたため、後工程で何かあるとそこに立ち戻り、ぶれることがありません。類似プロジェクトで比べると、設計レビューの回数や時間が非常に減りました。機能見直し、不備・仕様変更も非常に減少し、高品質で推移できました。これはすべてのステークホルダーがハッピーになる新しい形だと言っております。) |
エンドユーザー部門の方には現場の意見が反映されたという納得感があるわけです。要望をすべて反映できるわけではありませんが、まずはきちんと現場に踏み込み、見て洗い出してもらった。その上で事実に基づき、納得の上で、これはIT化、これは事務・運用改善、これは対象外と対処しますから非常に明確で納得性が高まります。
情報システム部門もエンドユーザー部門の方々が納得して参画してきてくれますから、当然モチベーションが上がります。全社一丸となった形で、経営層も当然ハッピーなわけです。弊社のようなベンダーも不要な作りは排除し、本当に喜んでいただけるものを提供できてベンダー冥利に尽きます。全者がハッピーになる、非常にいい形です。 |
以上、金融系の事例が多く出てきましたが、ビジネス・フィールドワークは業種・業務を問いません。フィールド・イノベーション自体が業種特化のものではなく、実際に製造業や医療、通信、ユーティリティ関係等々も実績がございます。 |
最後に弊社の非常勤の取締役でもあります野中郁次郎先生のお言葉で、まとめさせていただきます。「社会科学」、これはフィールドワークと読み替えていいと思いますが、「そのおもしろさは自然科学ではうまく扱えない価値、コンテキスト、パワー、こういった現象を事例や物語をベースに、できるだけ客観的に、禁欲的に、現実に迫っていく。」これはシャドーイングの際のエスノグラフィ、ありのままに書くということですね。「そして最終的には、「かくあるべきである」という規範的命題を出す。」これは私どもの中で技法として作ったコンステレーション、チームで軸を立てて、ストーリーとしてまとめていく、大きな命題を出すということ。これを全部合わせて、先生のお言葉はそのままビジネス・フィールドワークを表しているとも言えます。 |
ビジネス・フィールドワークはITベンダーの弊社においてはちょっと特異な分野ですが、弊社の総合力の一端として、機会があればご活用いただければと思います。以上で私の話を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。 |
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