2007年 27号  発行日: 2007年12月5日 バックナンバー

2007年度FUJITSUファミリ会 秋季大会
開催日:2007年11月1日 開催地:リーガロイヤルホテル広島

Slide Show

[Flash/15KB/96秒]
Flashによる SLIDE SHOW

アンケート

セッション3「フィールド・イノベーションとビジネス・フィールドワークのご紹介」

ビジネス・フィールドワークのパターン

富士通がどうしてこのようなことをやっているかと申しますと、実は少し前から米国パロアルト研究所(PARC)と富士通研究所、富士通とが連携して、社内活動の一環として社内のいろいろなプロジェクト、主にSIプロジェクトの現場に出向き、フィールドワークをして、現場の本質的な課題をえぐって改善を図るという活動を続けております。ここで使っているフィールドワークを、フィールド・イノベーションの起点の一つとして、まずお客様の業務の可視化のために使えるようにカスタマイズしたものがビジネス・フィールドワークなのです。

フィールドワークにはいくつか実施パターンがあります。(図表6)

ビジネス・フィールドワーク実施パターン クリックすると拡大画像が開きます

(図表6)ビジネス・フィールドワーク実施パターン

エスノグラフィックフィールドワークは、現場の実態を知りたい時に有効な手段です。エスノグラフィをベースに現場観察し、シャドーイングを進めてまいります。また、業務把握インタビューとして弊社と富士通研究所は、「ECOWインタビュー」というインタビュー技法を共同開発しております。お客様によってはセキュリティが厳しかったり、例えばお客様が顧客対応しているカウンターの場面等、その場で現場観察できない領域が結構あります。そういう場合にはインタビュー主体で進め、ECOWインタビューを使って短い時間でできるだけ効率的・網羅的に事実を押さえていくということをします。特に働いている方の問題意識やモチベーションに焦点を当ててインタビューしていくこともあります。

これらは人間を主体にして、その人が何をしているか、どんな心持ちでいるか等々をまとめ上げていく手法ですが、これにIE的な定量分析的なものを加えたり、レイアウトデザインも加えて総合フィールドワークとして実施していく場合もあります。

エスノグラフィックフィールドワークの、エスノというのは「人々の、民の」という意味で、エスノグラフィックとは人々の生活や文化や作業の様式を記述していくもの。現場観察をする人の意見ではなく、色眼鏡を付けずにとにかくありのままを記録します。人間というものは、自分で必要と思わない情報を遮断してしまう傾向があり、必要な情報を見なかったり、自分のゴールやビジョンに該当しそうなものだけピックアップしてきます。そうではなくて、ありのまま記述することがエスノグラフィのベースになります。

このエスノグラフィでシャドーイングをして、さらに極力誘導せずにありのままを話してもらうエスノグラフィックインタビューを行うなどして、フィールドノートを作成していきます。

エスノグラフィは、もともと文化人類学の手法です。異文化の土地に出向いて実際に生活をして体験をし、その文化を明らかにしていく。10年とかのスパンですが、我々ビジネスの世界では1年でも長すぎますし、個人技の世界になります。そうすると、客観性・網羅性は大丈夫なのかという疑問も出てきます。そこで、複数人で行うことによって短期間で客観性・網羅性を確保するチームフィールドワークという技法を開発しました。

シャドーイング、エスノグラフィックインタビュー等の後には、データセッションを行います。フィールドワークでともかくあるがままを記載したデータを、データセッションでみんなが持ち寄って、ある軸を持って整理していくと、自分が大したことないと思っていた点も、他の人の点と結びついて線になって、やがて面になっていくといったことが起こります。そうして軸をつくって大きなストーリーをまとめ上げます。これを私どもはコンステレーションと言っています。点と点を線に、線と線を面に。コンステレーションというのは星座のことで、無関係に見える星を線でつないで面にして、名称を与えて形にしていった。これもアナロジーでコンステレーションと呼んでおります。

先ほど話に出ましたECOWインタビューについてお話します。ECOWのEはエスノグラフィのEです。COWというのはもう少し誘導が入るコグニティブインタビューを指していまして、両者の良いとこ取りをしてECOWインタビューという技法を開発しました。これは時間的な切り口ですとか、空間的な切り口などで事前にワークシートを作成し、進行表も用意しておいてインタビューを短時間で効率的に進めていく技法です。

以上のような人間系の調査に加え、大昔からありますIE的な量的分析を必要に応じてやる場合もあります。そして職場の動線・アメニティなども調査して空間分析を行っていく。このような総合フィールドワークを実施する場合もございます。

前のページ 次のページ
ページトップへ