2008年 31号  発行日: 2008年12月5日 バックナンバー

2008年度FUJITSUファミリ会 秋季大会
開催日:2008年10月30日 開催地:ホテル新潟

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アンケート

特別講演「まちをアートで元気に」

芸術文化がまちをつくる

今、東京ではオリンピックを掲げて、芸術文化のインフラづくりを急ピッチで始めています。北京も上海もソウルも台北も香港も、芸術文化でしかまちはつくれないことがわかりました。欧州でも、そのまちに固有な文化を大切にしようという動きが活発です。かつては、奴隷貿易で栄えたフランスのナントでは、廃れつつあったまちを復活させるために、芸術文化に力を入れるようになりました。その結果、IT企業がナントを目指して動き出したそうです。ナントは、自分たちの活動を、越後妻有のプロジェクトから学んだものだと最近発表しており、これは私たちの誇りでもあります。

世界の芸術文化は今後、その土地に固有に流れていた時間を、地元の人々といかに共有するかが問われてくることになります。その1つの例が、越後妻有の「カバコフの棚田」です。アーティストのカバコフ氏は、作品の舞台に棚田を使用する際、まず日本の農業について学び、農家の人々にこういったものをやりたいと提案しました。初めは現代美術への理解を示さなかった農家の人々も、これには異を唱えませんでした。これは、アーティストのその土地の人々に対する敬意から、ついにはアーティストを地元の人々が手伝うという構図に発展したわけです。アーティストの頭の中に生まれた思いつきが、現実の他者の土地に移し換えられるときに立ちはだかる壁を破り、人と人がつながり始めたのです。越後妻有が世界中から大きく評価され、まちづくりの見本といわれる理由がここにあります。

今、農業は厳しい、労働の担い手がいない、ということを、いくら絵を描き写真を撮っても伝わりません。越後妻有のような仕掛けをつくって、実際に見にきてもらうと、それが肌身を通じてわかる。このようなわけで、今、現代美術がまちづくりに必要なのです。

こうした流れの中で、広域合併を経て政令指定都市となった新潟市で、2009年7月には、「水と土の芸術祭(仮称)」が開催されます。信濃川と阿賀野川という日本一の水量と延長を誇る水と土によってつくられた新潟市は、また、日本一、水と土と闘ってきた地域でもあります。新潟は今も配水をし、灌漑しているわけです。これは世界共通で、砂漠には砂漠の、水があるところには水があるところのさまざまな問題がある。そこからもう一度、人間のコミュニティーということを検討して、まちをつくっていく。私たちは、自分たちの来し方、行く末というものを、もう一度きちんと把握する必要があるのです。自然への感謝と先人たちの戦いから生まれた文化を大切にし、次代の子供たちに伝え、国内外に発信するためのプロジェクトが始まっています。

本日は、このような機会を与えてくださり、ありがとうございます。また、新潟にいらしていただきまして、本当にありがとうございました。

越後妻有アートトリエンナーレ-3

15:越後妻有アートトリエンナーレ-3
<北山善夫(日本)> ©S.Anzai

作者は半年間、廃校になった小学校の校舎で生活をして作品をつくった。ここに足を踏み入れた瞬間、子供たちのざわめきが聞こえ、子供たちが走り回っているように錯覚を覚えた

越後妻有アートトリエンナーレ-4

16:越後妻有アートトリエンナーレ-4
<イリヤ&エミリア・カバコフ(ロシア)> ©S.Anzai

苗代から種まき、収穫までの5場面の彫刻とそれぞれの詩が手前のスクリーン上に表現された

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