2008年 31号  発行日: 2008年12月5日 バックナンバー

2008年度FUJITSUファミリ会 秋季大会
開催日:2008年10月30日 開催地:ホテル新潟

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アンケート

特別講演「まちをアートで元気に」

過疎のまちをアートで元気に

私のふるさと新潟県高田市(現・上越市)では、毎年、「城下町・高田 花ロード」というイベントを行っています。1日だけの催しですが、道路は歩行者天国になります。高田は歴史ある城下町ですが、時代の流れとともに当然のことながら、廃れてきました。しかし、このイベントを行うことで、間口が狭く奥に長く、主人が奥に引っ込んでしまう城下町特有の店舗の人が、道路に出てくるようになりました。それによって、まちに活気が出て、高田の中心市街地は見事に復活することができたのです。

アートピクニック-1

11:城下町・高田花ロード-1

アートピクニック-2

12:城下町・高田花ロード-2 ©Hiroshi Noguchi

また、合併政策が広がる中、新潟県南部に位置する、十日町市、川西町、中里村、津南町、松代町、松之山町の6市町村では、この地域に「越後妻有(えちごつまり)」という名称を付け、3年に1度の芸術祭、「アートトリエンナーレ」を開催しています。2000年、2003年、2006年と実施し、次は来年の2009年です。1泊2日平均で30万人を超える人々が世界各国からやってきたこのイベントに、フィンランド、オランダ、イギリス、フランス、オーストラリアの国々の美術関係者は、世界最大の美術の祭典である「ヴェネツィア・ビエンナーレ」の次代を担う新しい芸術祭として高い評価をしてくれました。

また、この地域は、峠の棚田で有名な地域です。山の上から下まで見事な棚田が現在もつくられています。ここには、400年以上前、織田信長と戦って追われた一向宗の門徒たちが、雪深い山の上まで逃れてきた歴史があるのです。夏は高温多湿で、日本海の水蒸気が山に当たるこの地域は、米づくりには良いけれども、平地がまったくありません。その中で、すさまじい労力を使い、棚田をつくり、日本のほかの地域へも米を供給してきたのです。しかし、農業を捨てた日本は、効率が悪い米づくりをやめさせようとしています。先祖代々生きてきた土地や、暮らしをやめろといわれてもどうしようもありません。これは、棚田をつくっている人々だけの問題ではなく、国を運営するという意味で、私たち一人ひとりをも痛めつける話です。お年寄りは効率が悪い、都市からはずれた地域は効率が悪いと言い出すのは、人間のすることではありません。

このような中で、そこに生きる人々と楽しいことをやろうというのが、越後妻有の「大地の芸術祭」です。約200ある集落と徹底的にかかわるこのイベントに、2006年にはついに、1泊2日平均で30万人を超える人々がやってきました。

これはなぜかというと、濃密な里山の風景や風の気持ち良さ、足で感じる土の弾力など、最初に申しあげたように、身体全体で喜びを感じることができるイベントだからです。最大で最新の情報に最短でアクセスできることが、最大の価値というのも重要なことだと思いますが、ここではそれとはまったく違う、とにかく手間がかかることをやり出しました。なぜなら、それらは両方必要だからです。私たち誰もが、根っこでは里山などの自然とつながっています。1ヵ所で2時間もあればすべてが見られる都会の美術館ではなく、五感全部を使って、里山という時間を知ってほしい。農業を通して大地とかかわってきた時間というものを、五感を通して感じる場所にしたい。そうすればあらゆる場所が世界の中心になります。そこに誇りを持って、さらに、世界の人々とつながることが重要であると思ったのです。

越後妻有アートトリエンナーレ-1

13:越後妻有アートトリエンナーレ-1
<大岩オスカール幸男(ブラジル)> ©S.Anzai

棚田の持ち主たちの肖像を案山子に見立てた

越後妻有アートトリエンナーレ-2

14:越後妻有アートトリエンナーレ-2
<レアンドロ・エルリヒ(フランス)>

三階建て、波板ストレートの壁、形の違う窓、屋内のものの多さといった日本(妻有)の家を表現した

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