2007年度FUJITSUファミリ会 秋季大会
開催日：2007年11月1日 開催地：リーガロイヤルホテル広島

そこで出来上がったのが、「プロマネ虎の巻」です。少々ネーミングにセンスがないかもしれませんが、PMBOKの実践的なガイドラインとして、この名前を付けました。まず全体の体系の整理を図るため、SDEMとPMBOKの知識体系をマトリクス状に融合した「プロマネ・マトリクス」を作りました。そして、個々の開発工程の中でのマネジメント作業そのものを規定し、するべき事柄を「プロマネ・ミッションシート」というチェックシートで整理しました。また、経験によるノウハウも無視・無駄にはできないということで、「プロマネ・ノウハウシート」を作り、この3つを「プロマネ虎の巻」という一つのツールにリンクして、研究成果としてまとめました。これが、我々が考えた、プロジェクトマネジャのなすべきことの集大成です。（図表9）

まず、プロマネ・マトリクスの概念ですが、図（図表10）の上の横軸に、SDEMをベースに開発工程を定義したものが取り込まれています。PMBOKと融合するために、SDEMではうたわれていない立ち上げと終結を、要件定義から運用テストに追加しました。縦軸はPMBOKの9つの知識体系を配置。44個の見にくかったマネジメントプロセスは、一連の作業に関しては一つに括り、「プロセスパッケージ」というかたちで再定義しました。計画をする上で、さらに細かく詳細にしていく必要があるものは、段階的詳細化という言葉で、内容を見直しながらより精密にしていく作業工程を、斜め線で区切りながら一つの大きなプロセスパッケージとして作りました。また、プロジェクトの立ち上げから終結までの全域にわたるマネジメントの実行や、それぞれの自工程に関してのプロセス内容が変わるものについては、小分けをして記述するかたちにしました。

プロマネ・マトリクスの実際（図表11）ですが、上の方に大工程と工程名、SDEM工程の名前を配置し、開発工程の必要な部分で、下のプロセス部を見て、やるべき事柄がわかるようなかたちにしてあります。PMBOKでは、統合マネジメントのプロジェクト立ち上げ以外、立ち上げフェーズで実行するものは何もないのですが、実際に研究メンバーでディスカッションした結果、それ以外の部分でも、立ち上げに前後して発生するものがあるのではないかということで、計画全体のマスタースケジュールがなければ承認されないだろうと、システム開発工程における具体的な作業も検討しながら取り込んでいきました。

要件定義のシートであるプロマネ・ミッションシート（図表12）に関しては、PMBOKの各知識エリア、プロセス群名があり、我々が定めた、PMBOKにはないプロセスパッケージ名や作業内容を列挙しました。そこにおける成果物や、このフェーズで作るべきものも記載してあります。 実際には、これらは色分けがされており、その色遣いに意味があります。立ち上げのプロセスは水色、計画プロセスはグリーン、計画に大幅な見直しが発生したものは紫、実行は黄色、監視コントロールは白、終結のプロセスは薄いピンク色というようなかたちで色分けされています。

プロマネ・ノウハウシート（図表13）には、各メンバーが独自に持っているプロジェクトマネジメント観や、各社内でプロジェクトを進めるために必要な書類や標準文書、マネジメントツールなどを知識体系の中にはめ込み、必要なものを必要なタイミングで取り出したり作成したりできるようなノウハウの一覧表を作り、ノウハウシートというかたちにまとめました。

このツールに関しては、例えばプロジェクトの立ち上げを選ぶと、ミッションシートの立ち上げが出てきます。それを見ると、成果物を作らなければならないとか、どのような成果物を作るとか、PMBOKではどう呼ばれているかというような内容とリンクしています。規模等によって要・不要がある場合は、そのチェックを入れます。当初我々のメンバーは、規模の大中小にしたがって、必要なマネジメントプロセスを選別しようと試みたのですが、会社の規模や業態によってまったくレベル感が違い、何が大で、何が中で、何が小かというところで議論が分かれてしまいました。わずか18名でも、統一した見解を出すことができませんでした。結局、要・不要は各会社でモディファイできればいいのではないかということで、この欄は残してあります。

ノウハウの一覧に関しては、先程のノウハウシートに、現在の登録項目が一覧で出るようになっています。まだ少ないように見えますが、LS研に提出するということで、公開可能なものだけを取り込んで表示してあります。これは各社で、各工程別に提出する資料や稟議（りんぎ）に関わるドキュメントなども体系づけ、マネジメントできるようにすべきではないかと考えております。また、ここからもう一度チェックシートに戻ることもできますので、こうしたものをPMのツール代わりに使っていただき、自分たちのマネジメントをより具体的に漏れなく行っていただければと思います。