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第6回 PCをより強力にする、拡張バス

バスのお話しの3回目は「拡張バス」です。
PCが本来持たない機能やインターフェースを増設するために、マザーボードには、拡張スロットが用意されています。さらに、PCのケースには、外部の機器を取り付けることができる拡張用のポートが装備されています。PCに搭載されたいろいろな拡張バスを見てみましょう。


拡張バスとは

周辺装置や拡張基板を追加してPCの機能を拡張するために、マザーボードに装備されているバスのことをいいます。最近のマザーボードには、PCI、PCI Express、シリアルポート、パラレルポート、USBなどの拡張バスが搭載されています。シリアルポート、パラレルポート以外は、比較的新しい拡張バスです。PCはその時々の技術や時代のニーズに応じた規格の拡張バスを搭載してきました。あるものは姿を消し、あるものは機能を強化して今日に至っています。ここでは、始めに、年代を追って主要な拡張バスを概観し、次に長い間変わることなく装備され続けているシリアルポートとパラレルポート、最後に拡張バスの標準的な存在となったPCIバスを説明します。

拡張バスの移り変わり、ISAからPCI Expressへ

ISA( Industrial Standard Architecture bus:アイサ)
1984年にIBM社が発売したパソコンIBM PC/ATのシステムバスが発展したもの。一時期は、事実上の標準バスとなっていたが、今日ではPCIバスに置き換わっている。

データバス幅:16ビット
アドレスバス幅:32ビット
バスクロック:8MHz
データ転送速度:8MB/sec


MCA(Micro Channel Architecture:エムシーエー)
1987年にIBM PC/ATの後継機PS/2に搭載された32ビット(および16ビット)の拡張バス。
ISAとは互換性がなく、データバス、アドレスバスともに32ビットで、バースト転送、バスマスタ機能を搭載していた。

データバス幅:32ビット
アドレスバス幅:32ビット
バスクロック:10MHz
データ転送速度:20MB/sec(通常の転送モード)
160MB/sec(最大、64ビット転送併用時)


EISA(Extended ISA:エイサ)
1988年、IBMのMCAに対し、Compaqなど9社によるISA上位互換の拡張バス。
ISAと互換性があり、EISAスロットにISAカードを装着できる。1990年代前半、PCサーバなど高性能なPCを中心に実装されたが、次第にPCIに置き換わっていった。

データバス幅:32ビット
アドレスバス幅:32ビット
バスクロック:8〜16MHz
データ転送速度:33MB/sec


VL-Bus(VESA Local Bus:ブイエルバス)
1992年にVESAが主にグラフィックスの性能を高めるために策定した。i486アーキテクチャーに強く依存し、互換性、安定性が十分でなく、Pentiumの登場で姿を消した。カードの物理的なサイズが大きくなる点も使いづらかった。
※VESA:Video Electronics Standards Association

データバス幅:32ビット
アドレスバス幅:32ビット
バスクロック:50MHz
データ転送速度:132MB/sec〜
200MB/秒(50MHz駆動時)


PCI(Peripheral Components Interconnect :ピーシーアイ)
1992年、Intel社を中心とするPCI SIG(Special Interest Group)によって策定された高速ローカルバスの規格。1994年頃からISAバスに替わって急速に普及し、現在はほとんどのPCに採用され、ワークステーションや産業用コンピュータなどにも利用されている。

バス幅:32/64ビット
バスクロック:33/66MHz
データ転送速度:133MB/sec(32ビット/33MHz)〜533MB/sec(64ビット/66MHz)


AGP(Accelerated Graphics Port:エージーピー)
1996年、Intel社が発表した、ビデオカードとメインメモリ間の専用バス規格。
グラフィックコントローラー専用のインターフェース。グラフィックコントローラーとメインメモリ間の高速データ転送を可能にし、急速に普及したが、やや遅れて普及が始まったPCI Expressに置き換えられている。

バス幅:32ビット
データ転送速度:266MB/sec(AGP 1x)〜2.13GB/sec(AGP 8x)


PCI Express(PCI Express:ピーシーアイ・エクスプレス)
または3GIO(3rd Generation I/O:スリージーアイオー)
2002年にPCI-SIGによって策定されたシリアル転送インターフェース。Intel社が開発していた3GIOを標準規格化したもの。高いスケーラビリティを持ち、最大構成では転送速度は80Gbps に達する。

データ転送速度(1レーンあたり):
250MB/sec(片方向)、500MB/sec(双方向)
レーンを束ねることで最大10GB/sec(32x)
※束ねる本数を1x、2x、4x、8x、16x、32xと表記する。


変わらない拡張ポート、シリアルポート・パラレルポート

ほとんどのPCが、シリアルポート、パラレルポートを標準装備していました。しかし、最近ではこれらのポートを載せず、USBポートのみという製品も出ています。
シリアルポートは、一般にRS232Cの名前で親しまれています。PCではCOMポートとも呼ばれています。RS232Cは、Recommended Standard 232 version Cの略で、1969年に制定されています。2006年現在の正しい規格の名称は、EIA(※1)232D/E(25ピンコネクターの場合、9ピンコネクターの場合はEIA574)ですが、本編ではRS232Cと表記します。
RS232Cはコンピュータと通信端末間の端子のはたらきを規定した規格で、同期用のクロックを使用せず、データにスタートビットとストップビットを付加する非同期通信に使用されます。規格上の最高通信速度は19.2kbpsですが、PCでは規格外の115.2kbpsや230.4kbpsを実現しています。モデムやプリンタなどの周辺機器に多用された時期もありましたが、今日では通信速度や接続性で勝るUSBに置き換えられています。

パラレルポートは、プリンタポートとも呼ばれます。シリアルポートと同様にほとんどのPCに標準装備されていました。本来はセントロニクス(※2)互換プリンタインターフェースですが、双方向のパラレルポートで、汎用インターフェースとしてプリンタだけでなく、他の周辺機器の接続やPCどうしの接続に使用することができます。
当初は、転送速度100kbps〜150kbpsと低速だったので、メーカーごとに拡張が進められました。その結果、仕様のバラツキが大きくなり混乱を生じたため、1994年と2000年にIEEE(※3)により元の規格を拡張する形で標準化が行われました。現在の規格はIEEE1284-2000です。
セントロニクス互換モードに加えてより高速なEPPモード、ECPモードなどで最大8MB/secの双方向伝送が可能です。 しかし、パラレルポートも、プリンタやスキャナなどの周辺機器がUSBを標準インターフェースとする中で出番を失っているのが現状です。

※1:EIA(Electronic Industries Association 米国電子工業会)
※2:Centronics Data Computer社が自社のプリンタ用に開発した規格
※3:IEEE (Institute of Electrical and Electronics Engineers)

衰えない人気、PCIバス

PCIは、CPUのアーキテクチャーに依存せずに周辺機器を接続するための内部高速バスとして1992年に提案されました。バスクロック33MHz、バス幅32ビット、最大データ転送速度133MB/secは、CPUの主流がi486DX2(50〜66MHz)の頃としては、リーズナブルな仕様です。翌年にはPentiumが登場し、翌々年の1994年にはi486DX4(75〜100MHz)が登場しています。こうした中で、PCIも1994年に、バスクロック66MHz、バス幅64ビット、転送速度は533MB/secの仕様が追加されています。
PCIには電源電圧と信号電圧に3.3Vと5Vの両方が規定されています。また、バスブリッジというPCIと他のバス(ISAなど)やCPUとの橋渡しをする機構を備えています。これらの機能が、ISAやEISA、VL-Busと共存しながら、やがてそれらをスムーズにPCIに置き換えることを可能にしたと考えられます。
ただ、現在でもPCI拡張基板の主流は32ビット、33MHzタイプです。実際の転送速度は50〜100MB/secで画像表示やギガビットネットワーキングなどでは、転送速度がボトルネックになります。そのため、現在ではほとんどのPCが、ビデオカード基板には高速なPCI ExpressやAGPバスを採用しています。
それでも、ほとんどのデスクトップPCには、最低でも1本は拡張用PCIスロットが搭載されており、PCIバス対応の拡張カードは、LANカードやサウンドカード、SCSIカード、ビデオキャプチャーカードなど多くの種類が出回っています。コンパクトなPCケースに合わせて、ショートサイズ、ロープロファイルなど、拡張基板のサイズも多様化されています。
拡張バスの主役の座は当面PCIという状態が続くと思われます。

シリアル転送の時代

これから普及または発展していくと考えられる2つのシリアル転送方式の拡張バス規格を紹介します。PCI ExpressとUSBです。パラレル転送に比べて速度的にハンディがあるといわれるシリアル転送が、バス規格の主役になりつつあります。

次世代のI/O、これからの本命PCI Express

PCIは1992年の発表以来、進化を続け1999年のPCI-X Rev1.0を経て、2002年にPCI Expressの誕生にいたります。Intel社が開発を進めていた3GIO(Third Generation I/O)がPCI SIGに提案され、承認された規格です。
PCI Expressで特徴的なのが、ポイントトゥーポイント(Point to Point:1対1)接続でシリアル転送方式を採用していることです。

その他に、DVLと呼ばれる低電圧差動方式による信号伝送、1レーンあたり片方向2.5Gbpsの高速伝送、8ビットのデータを10ビットに変換して符号化する8B/10Bエンコーディングによるクロックの埋め込み、レーンを複数本束ねることによる広帯域化、など高速動作を前提とした技術的な特長を備えています。
データ転送速度、2.5Gbpsにクロック信号が埋め込まれているため、実効データ転送レートは2Gbps(=2.5Gbps×80%)であり、片方向につき250MB/sec、双方向合わせて500MB/secが1レーンあたりの有効帯域です。現在主流のPCIの133MB/secの4倍です。このレーンを2本、4本と束ねて(2x、4x、、と表現)、1GB/sec、2GB/secの帯域を実現することができます。ビデオカード用としてPCに搭載されているPCI Express x16では、8GB/secの広帯域になります。
現在、店頭で見かけるPCI Express対応の拡張基板は、ほとんどがビデオカードです。高解像度グラフィックをはじめDDR3メモリ搭載、ビデオやDVI出力など、ビデオカードは大容量・高速・多機能化しており、PCI Express x16のような高速インターフェースが必須となっています。一方で、LANやサウンド、各種インターフェース基板はPCIが主流で、PCI Express製品を見かけることはありません。PCI Expressの本格的な普及はこれからです。

ついてないPCはない、USB

USB(Universal Serial Bus:ユーエスビー)は、1995年に0.9版の仕様書が発表された汎用のシリアルインターフェース規格です。
電源を入れたまま抜き差しできるホットプラグ機能、接続するだけですぐに使用可能なプラグ&プレイ、コンパクトなコネクターと取り回しのよいケーブルなど、使い勝手のよい拡張ポートとして現在ほとんどのPCに装備され、事実上の標準的な拡張インターフェースとなっています。
2000年には、480Mbpsの高速転送を追加したUSB2.0が公開され、マルチメディアなど対応可能な範囲が広がりました。また、USB2.0からは、ホストPCを使わずに、USB機器どうしを直接接続してデータ転送を行うUSB On -the-GOの機能が追加されました。これにより、デジカメから直接USB対応プリンタに接続することができるようになりました。さらに、コネクターに小型のミニプラグも追加され、PDAやデジカメなどの小型機器に搭載しやすくなりました。


左:USBコネクター(シリーズA)と右:USBコネクター(シリーズミニB)

現在では、プリンタやスキャナ、デジカメなど多くの周辺機器がUSBを標準的なインターフェースとしています。こうした機器はプラグ&プレイ機能で、PCと接続するだけですぐに使用できます。USB対応機器は、キーボード、マウス、プリンタ、スキャナ、ジョイスティック、デジタルカメラやWEBカメラ、デジタル音楽プレーヤー、LANアダプターなど実に豊富で、これからもさまざまな機器が対応するものと考えられます。
PC1台に対して、最大127台のUSB機器を接続することができます。データ転送は、接続する機器により、低速(1.5Mbps)・中速(12Mbps)・高速(480Mbps)の接続をサポートしています。また、バスパワーというUSBケーブルを通じて電力を供給する仕組みがあり、電圧5V、1台あたり500mA、システム全体で5Aまで供給することができます。
バスパワーを利用する携帯電話の充電器が市販されていますが、接続直後は100mA、ホストPCが動作していないときはサスペンドモードというようにバスパワーに関しては細かな規定があり、充電は規格外の使い方の可能性があります。常用はお勧めできません。

その他の拡張バス

PCにはこれまで説明したもの以外にも、いくつかの拡張バスがあります。PCによっては装備していないものもありますし、デスクトップPCでは見かけないものもあります。それらの中から、IEEE1394とCardBusの概要を紹介し、最後にこれからの拡張バスを展望します。

IEEE1394

IEEE1394は1986年にApple社がFireWireの名称で開発を始め、1995年にIEEE1394-1995として規格が承認されています。PC周辺機器のための汎用シリアルインターフェースです。さまざまな機器への対応を考慮しており、100〜400Mbpsという高速なデータ伝送が可能です。また、転送帯域幅を保証できる伝送方式を採用しており、大容量ストレージやスキャナ、プリンタ、ビデオキャプチャーなど大きなデータを扱う画像機器などに適しています。
また、映像のリアルタイム伝送も可能な仕様なので、デジタルビデオカメラなどの家電製品にも装備されています。この場合、DVポート、i-link(ソニー)などの名称になっていますが、実体はIEEE1394そのものです。
IEEE1394は、USB同様にホットプラグやプラグ&プレイに対応しています。ツリー上に接続すれば最大で64台までの対応機器を接続することができます。USBと異なる点はホストPCが他の機器を支配する構成ではなく、すべての機器が対等に動作するようになっており、接続された周辺機器の間でホストPCを介さずデータ転送が可能です。


IEEE 1394コネクター(6ピン)

当初、IEEE1394はシリアル伝送方式を採用した次世代の高速インターフェースとして注目されました。USB1.1に対して転送速度で大きなアドバンテージを持っていましたが、PCへの普及が遅れたこと、USB2.0がIEEE1394と同等な伝送速度を実現したことで、パソコンの汎用インターフェースの主流となるまでにはいたっていません。

CardBus

CardBusの仕様は1995年公開のPC Card Standard Rel5.0に盛り込まれています。16ビットのPCカードに対して、PCIの仕様を取り入れて拡張をはかっています。バスクロックは、33MHz、バス幅32ビットで、デスクトップPCの32ビットPCIバスと同じです。最大データ転送速度は133Mbpsとなります。CardBus自体もノートパソコンの内部PCIに接続するのが一般的で、CardBusソケットのコントローラーLSIはPCI−CardBusのバスブリッジとしてのはたらきを持っています。
ネットワークカードを例に、16ビットのPCカードとCardBusを比較すると、16ビットのPCカードの実効転送レートは2MB/sec程度で、100BASE-TX(最大11MB/sec程度)の性能を活かすことはできませんが、CardBusは、デスクトップPCのPCIとほぼ同じ転送速度50〜100MB/secを期待でき、100BASE-TXの転送レートを余裕でカバーします。
CardBusは、現在でPCカードスロットを持つほとんどのノートPCに装備されていますが、PCカード側の方が16ビット版のままであることが少なくありません。導入にあたっては32ビット対応やCardBus対応の表示を確認してください。


左:16ビット版PCカードと右:CardBus対応PCカード

なお、PCカードは、次世代カードの規格としてExpress Cardの仕様が2003年9月に公開されています。

これからの拡張バスに求められるもの

動作クロックが1GHzを超えるとバスのような信号線の束でさえも、今までにはなかった問題点を抱えるようになります。従来の技術の延長では対応が困難で、抜本的な解決策が必要になります。パラレルからシリアルへ、バス配線からポイントトゥーポイントへ、双方向から片方向へ、バス技術は大きな転換点にさしかかっています。近い将来、PCIからPCI Expressへ、パラレルポートとシリアルポートのUSBへの統合、などの変化が予想されます。
また、CPUが3.8GHzで動作し、FSBが1.06GHzという高速で動作する同じマザーボード上で、バスクロック33MHzで動作する拡張バスが主流というのは実にアンバランスです。ブロードバンド、動画、音楽、リアルタイムビデオなど高速大容量化の流れが止まることはなく、マザーボード上のコンポーネンツや外部の周辺機器が高速大容量化する中で、バスだけが旧態依然というわけにはいきません。PCの動脈に値する信号の伝送路がボトルネックになると、PC全体の性能に影響が出てしまいます。拡張バスの高速化は必須です。当面は、すでに標準の座を獲得した感のあるUSBのさらなる進化、これからの期待を集めるPCI Expressの普及に注目したいところです。

高速化はバスだけではありません。ストレージの世界では高速化に加えて、記憶容量の大型化が進んでいます。PCにTB(テラバイト)単位のストレージが載る時代が来ています。次回からは「ストレージ」について、3回にわたってお話しします。

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