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第8回 データをより速く、より確実に、安全に

ディスク編の2回目は、ハードディスク(HDD)インターフェースとRAIDのお話しです。
HDDインターフェースは、他のPCパーツと同様に、時代の要請に応じて高速化、安定化、標準化が図られてきました。今回はHDDインターフェースの変遷を追いながら、現在のインターフェースの仕組みやはたらきに触れます。
また、HDDの容量が大型化するにつれ、ディスククラッシュなどの事故によるデータ消失などのダメージも大型化します。こうしたリスクの軽減とシステムの高速化を目指してRAIDが注目されています。個人レベルでの導入も進んでいます。後半ではこのRAIDを説明します。


HDDの誕生とインターフェース

インターフェースのお話しの前に、HDDの誕生から黎明期について簡単に触れます。
世界初のハードディスクは、1956年にIBMが発売した「IBM 305 RAMAC」です。

  • 記憶容量 約5MB
  • 転送速度 60KB/sec (8800字/秒)
  • ディスク回転数 1200rpm
  • ディスク直径 24インチ
  • ディスク枚数 50
  • ヘッド数 2(独立した二つのヘッドがディスク間を上下した)
  • サイズ 縦75cm x 横152cm x 高172cm(大きめの自動販売機なみ)
  • 重量 1トン


IBM RAMAC

記憶容量5MBに驚かされますが、当時主流だったパンチカード6万枚分に相当する画期的な容量だったといいます。このディスクの開発者の中に、Alan Shugart氏がいました。この後、彼はShugart社を設立しました。ここで生まれたインターフェースが、SASI(Shugart Associates System Interfaceの頭文字)です。本来はミニコン用のインターフェースですが、我が国では国民機といわれたPC98シリーズのドライブに搭載されていました。1979年にはAlan Shugart氏はSeagate社を設立しています。翌1980年、SASIを規格化する動きが始まり、曲折があって、1986年、SCSIがANSIで標準と認められました。SCSIの名称はANSIが規格名に企業名を入れることを許さない方針で、意味を変えずに最小限の変更ですませた結果です。SASIとSCSI、確かによく似ているはずです。
SASIの標準化が動き始めた当時、Shugart社の開発にLarry Boucher氏がいました。彼は後に、SCSIボードで有名なAdaptec社を設立します。
IBMは別にして、1970年から1980年の間に5大メジャーといわれるHDDメーカーが次々に設立されました。IBM、Western Digital、Seagate Technology、Maxtor、Quantumの5社ですが、現在はQuantum社がMaxtor社に買収され、そのMaxtor社がSeagate Technologyに買収され、IBMのHDD部門が日立に買収されるなど、さま変わりしています。

HDDインターフェースの変遷

RAMACの時代からHDDとCPUを結ぶインターフェースは存在しますが、特定の機種に依存しないインターフェースが登場するのは5インチディスクの頃からと考えて良いようです。ちなみに、RAMACの24インチは別格としてもミニコン用のディスクは14インチ、8インチといった大型のディスクが採用されていました。5.25インチディスクが登場する頃からインターフェースのあり方も少しずつ変化してきます。

ST-506とESDI

5.25インチディスクは、1980年Seagate社が発売したST-506が最初です。IBM-PCにも採用されました。このディスクに搭載されたインターフェースが、ST-506です。ディスクの製品名がインターフェースの名前になっています。


Seagate ST-506
5.25インチディスク、容量5MB、転送速度625KB/sec

ST-506は転送速度が625KB/secと遅く、設計上140MBの容量制限を超えることができません。この容量と速度の改善を目指して1983年にMaxtor社が中心となって規格化を進めたのがESDI (Enhanced Small Device Interface) です。


IBM ESDIアダプター 対象ディスク5.25インチ
転送速度5Mbps〜3MB/sec(一般的な仕様で、上記アダプターのものではありません)

ESDIが今日のATAやSCSIに大きな影響を与えているのが、コマンドによるドライブ制御を可能にしたことです。また、7台までのデバイス(うち1台はホスト)を接続することができ、デバイスのアドレスが設定できるので、コントローラーは個別にアクセスします。この3年後、1986年SCSIがANSIによって標準に認められます。さらにその2年後には、IDEへの規格作りが始まり、新しいHDDインターフェースの時代が始まります。

SCSI

SCSI (Small Computer System Interface) はSASIを元に開発されたインターフェースです。元になったSASIはミニコン用のバスインターフェースでした。ANSIによる標準化を通じて、SCSIはコンピュータやドライブを含む周辺装置を接続する汎用インターフェースになりました。接続された機器でケーブルを共有するバス型インターフェースで、接続できる機器は合計7台、ケーブルの総延長は6mです。データバスは8ビット+パリティ1本、50ピンのケーブルで機器間を接続します。転送速度は5MB/secです。
しかし、SCSI-1と呼ばれる最初の規格は、内容に曖昧な点が多く、機器への組み込みの自由度が高く、問題が生じやすかったといわれます。1990年にANSIはデータ転送の高速化や機能拡張を入れるとともに、標準的なコマンドセットCCSを取り込んで規格案を作成し、1994年に正式に承認されました。これがSCSI-2です。
その後も規格は拡張が続き、SCSI-3に至って従来のSCSI-2はパラレル伝送部分を残すのみで、ファイバーチャネルやシリアルバスなどが入っています。
今日、SCSIはPCに使われなくなってきています。安価なATAインターフェース機器が十分な性能を発揮しており、PC内蔵機器にはATAが使われるようになっています。外付け機器の接続にはUSB 2.0やIEEE 1394といった新しいシリアルインターフェースが使われるようになっており、しだいに出番が失われているのです。
しかし、一方で最新のSCSIはターゲットをハイエンドに向けていることも事実です。PCの世界に見切りをつける方向で進化しているように見えるのです。

多様なSCSI規格
転送モード 規格 SCSI-3 バス幅 転送レート
SCSI SCSI-1   8 5
Wide SCSI SCSI-2   16 10
Fast SCSI SCSI-2   8 10
Fast Wide SCSI SCSI-2   16 20
Ultra SCSI SCSI-3 SPI 8 20
Ultra Wide SCSI SCSI-3 SPI 16 40
Ultra2 SCSI SCSI-3 SPI-2 8 40
Ultra2 Wide SCSI SCSI-3 SPI-2 16 80
Ultra3 SCSI SCSI-3 SPI-3 16 160
Ultra160 SCSI SCSI-3 SPI-3 16 160
Ultra320 SCSI SCSI-3 SPI-4 16 320

ハイエンド傾向が強く感じられるようになったのが、Ultra3 SCSIからです。Ultra3 SCSIの特徴的な機能にその傾向が現れています。

CRC (Cyclic Redundancy Check)
Ultra ATAやEthernet、ファイバーチャネルなどで採用されているエラーチェックです。SCSIの高帯域化に伴い、より高速な信号にも耐えうるエラーチェックが必要とされています。さらに、SCSIは長いケーブルを使用する機会が多く、強力なエラーチェックで確実にデータを保護しなくてはなりません。
ドメインバリデーション
SCSIホストアダプターと機器間のデータ幅の不一致やケーブルの断線、ターミネーションの異常などをチェックする基本テストと、実際の読み書きテストを通じてSCSIバスの電気特性をチェックする拡張テスト行って、確実に動作する安全性の高いSCSIシステムを提供する機能です。
パケッタイズドSCSI (Packetized SCSI)
データの転送効率を大きく高める改良型のSCSIプロトコルです。非同期で非効率的な転送を行っていたコマンドやメッセージ、ステータスといった非データを、データとともに同期転送ですべてやり取りできるようにしています。非データやデータの内容をSPI情報ユニットという情報単位にまとめ、このSPI情報ユニットを最大ネゴシエーション速度(Ultra320 SCSIならば最高320MB/sec)でやり取りします。
QAS (Quick Arbitration and Selection)
どのデバイスがバスを占有するかを調停する時間を短縮し、バスの使用効率を高めます。バスフリーフェーズ(SCSIバスが使用されていないことを示す状態)を介することなく高速にバス調停を行います。パケッタイズドSCSIでは、バスフリーを除くすべてのバスフェーズが最大ネゴシエーション速度で遷移します。そこで、QASを利用して残りのバスフリーフェーズもさらに切りつめ、SCSIバスの使用効率を極限まで引き上げます。

以上、Ultra3 SCSIの主な機能を紹介しましたが、いずれも、高速なHDDを多数束ねて使う用途でこそ効果が発揮される機能です。SCSIホストアダプターにHDDを1台や2台接続するような使い方では、効果どころかほとんど意味をなさないといってよいでしょう。
どうやらSCSIは個人用PCの世界からは遠ざかって行くようです。

IDE (Integrated Drive Electronics)

1986年Compaq PCの製品化のための企画が始まりといわれています。Western Digital社やSeagate社、Conner Peripherals社が関わりました。従来、ホスト側にあったディスクコントローラーを、ドライブ側に移し、ドライブ側のロジック回路と一体化しました。ドライブとインターフェース回路を統合したのです。その結果、ドライブはディスクコントローラーを搭載したアダプターを介することなく(実際にはアダプターはありましたが、従来のものよりもずっと簡略化されました)、マザーボードに接続され、転送速度が向上しました。
しかし、ロジックが簡単なうえに標準規格が存在しなかったことで、互換性の問題が生じるようになりました。これらの問題の解決を目指して、1988年にドライブメーカーが集まってIDEの仕様を整備し、ANSIに提案して1994年に承認されます。これがATA (AT Atachment) インターフェースです。この仕様が標準となり、ドライブメーカー、ホストメーカーがこのATA仕様に準拠するようになります。
ケーブル1本あたり、最大2台の機器が接続可能(マスタ/スレーブ接続)で、40芯または80芯のリボンケーブルを用いて接続し、ケーブル長は最大18インチ (45.7cm) と規定されています。ところが、IDE HDDには、504Mバイトを超える容量が認識されないという問題がありました。HDD側のパラメーターとPC/ATのBIOS のパラメーターのミスマッチが原因です。そうしたこともあって、1996年にはEnhanced IDEとして拡張規格を統一したATA規格が、ATA-2としてANSIに承認されています。その後もSCSI同様にATAも規格の拡張が続いており、現在ATA-8がANSIで審議中です。

規格 承認 内容
ATA-1 1994年 IDEの規格化
ATA-2 1996年 PIO 3,4 Multiword DMA 1, 2追加による高速化
ATA-3 1997年 Singleword DMAの削除、リムーバブルメディアのサポート、S.M.A.R.T対応
ATA/ATAPI-4 1998年 ATAPIの統合。UltraDMA 0, 1, 2 スキャナ、プリンタ、メディアチェンジャー等SCSI準拠の多種デバイスのサポート
ATA/ATAPI-5 2000年 UltraDMA 3, 4のサポート。
ATA/ATAPI-6 2002年 UltraDMA 5、BigDriveのサポート
ATA/ATAPI-7   UltraDMA 6のサポート。1.8、2.5インチHDDの3.3V規格定義

IDE HDDについて知っておきたい用語と、データ転送モードについて解説しておきましょう。

Ultra ATA (Ultra AT Attachment)
1996年に米Quantum社や米Seagate Technology社、米Intel社などにより提唱されたIDEの拡張仕様です。業界標準(デファクト スタンダード)でIDEの公式な規格ではありませんが、その仕様は、ATA/ATAPI-4やATA/ATAPI-5などに受け継がれ、規格化されています。データ転送速度と信頼性が強化されており、Ultra DMAという新しい転送方式で、最大転送速度を33.3Mbytes/sにまで高め、CRCによるエラーチェック機能が追加され、信頼性を向上させています。
ATAPI (ATA Packet Interface)
IDEコントローラーからSCSI互換のパケット形式のコマンドを発行することにより、HDD以外の機器を接続できるようにした規格。CD-ROM等がサポートされました。
BigDrive(ビッグドライブ)
28ビットLBAを48ビットに拡張し、128PB(ペタバイト、128ペタバイト=134,217,728GB)までの容量を扱えるようにした規格。ATA/ATAPI-6で採用されました。LBA (Logical Block Addressing) はHDDのすべてのセクタに通し番号を振って、その通し番号によってセクタを指定する方式のことで、28ビットの場合の上限は128GBです。ただし、ハードウェアの規格上は128PBまで可能とはいっても、Windows XPなど32ビットOSでは、OSの構造上2TB(テラバイト、2TB=2,048GB)が限界です。
PIO (Programmed input/output) 転送モード
CPUが直接IDEコントローラーI/Oポートを経由してデータの送受信を行います。 ATA機器はすべて機器転送速度、転送モードのネゴシエートのためにPIO Mode 0をサポートしています。Mode 0 (3.3MB/sec) 〜Mode 4 (16.7MB/sec)
Singleword DMA転送モード
PC 本体に搭載されている8bitのDMA転送が可能なDMACを用いて転送を行います。ATA/ATAPI-3規格において廃止されています。Mode 0 (2.1MB/sec) 〜Mode 2 (8.3MB/sec)
Multiword DMA転送モード
PC/ATで拡張された16bitのDMA転送が可能なDMACを用いて転送を行います。
Mode 0 (4.16MB/sec) 〜Mode 2 (16.6MB/sec)
Ultra DMA転送モード
ATA/ATAPI-4以降で追加されたチップセットやUIDEコントローラーカードに搭載された、専用の高速なDMACを使用して転送を行います。
Mode 0 (16.7MB/sec) 〜Mode 6 (133.3MB/sec)

シリアルATA

パラレル転送方式による速度向上が技術的に困難になってきたため(詳しくは第4回「バスの基礎知識」をご覧ください)、ATAインターフェースの転送速度を向上させるための規格として登場しました。

シリアルATA 1.0
2003年に規格化され、150MB/secのデータ転送を行います。
ホットスワップに対応し、信号の伝送に使用する電圧はパラレルATAの5Vから0.5Vに低下しており、消費電力と信号の干渉の低減、ケーブル長の延長を実現しています。
ケーブルは7pinで、最大長は1m、1本のケーブルに1台のデバイスを接続します。
従来のパラレルATAとはプロトコルレベルでの互換性を持っていますが、ATAのマスタ/スレーブ接続の概念は廃止されています。


シリアルATAケーブル

シリアルATAII
転送速度300MB/secを実現しています。シリアルATA IIは、Serial ATA 1.0aを基にして、2004年ごろまでの技術的な拡張全体のことをいい、サーバやワークステーション、ネットワークストレージ向けの拡張機能が主となっています。NCQ (Native Command Queuing) やマルチポートなどの概念を取り入れています。
NCQ (Native Command Queuing)
シリアルATA IIで盛り込まれた機能です。HDDのコマンド実行の完了を待たずに複数のコマンドを連続して発行し、そのままキュー(待ち行列)にためていきます。これにより、長い時間を要するHDDの機械的動作の完了をコマンドごとに待つことなく、次々とHDDにコマンドを送り込むことができます。しかも、ためて順番に実行するのではなく、キューに格納された複数のコマンドを、HDDの動作効率の良い順番に並べ替えてから実行に移します。これによって、HDDの機械的動作によるオーバーヘッドを最小化します。
シリアルATA III
2007年に規格化が予定されており、転送速度600MB/secの実現が期待されています。
eSATA (External Serial ATA)
Serial ATA 1.0aの拡張規格で外付けドライブ向けに定義されています。一部で対応製品は出ていますが、同様の機能を実現するUSBやFireWireほど普及していません。
誤接続を防ぐため、eSATAのコネクター形状はシリアルATAのコネクター形状とは違うものになっています。接続ケーブルの長さは最大2m。パソコンの電源を入れたまま、接続ケーブルを抜き差しできるホットプラグに対応し、USB2.0接続の2倍以上の速度で通信可能です。

RAID (Redundant Arrays of Independent(Inexpensive) Disks)

RAIDは、ディスククラッシュなど不意のディスクの故障などからデータを守ったり、あるいはディスクシステムを高速化したりする技術です。
IDE RAIDの登場でハードウェアRAID製品の初期導入コストが下がっており個人レベルのPCでもRAIDを導入しやすい環境になっています。
しかし、RAIDの仕組みは比較的複雑です。今回は、「RAIDレベル」を中心にRAIDの原理を概説します。RAIDレベルは、数字の大小によって性能やグレードを表すものではなく、RAIDの実現方式を表すものです。用途に合った最適なRAIDレベルを選ぶための基礎知識として、RAIDレベルを整理しながら理解するようにしましょう。

RAID 0(ストライピング)

RAID 0では、2台以上のディスクを組み合わせ、ディスクに対する読み書きの処理を複数のディスクに対して同時並行的に実行することで、アクセス速度を高速化します。

ディスクが3台あれば、データを3つに分けてそれぞれのディスクに対して同時に書き込むことにより、理論的には1台の場合の3分の1の時間で書き込むことができます。複数のディスクをあたかも1台のディスクであるかのように扱うことで大容量の単一ストレージを実現します。この方式は、ディスクのうち、1台でも壊れてしまうと全体へアクセスできなくなります。つまり、冗長性 (Redundancy) をまったく備えていないので、ディスク台数が多くなると、かえって耐障害性は悪化します。

RAID 1(ミラーリング)

RAIDレベルの中で、最も単純な手法でディスクの耐障害性を高めています。その手法とは、同一のデータを複数のディスクに書き込み、一方のディスクが故障しても、他方で処理を続行できるようにします。同じデータを格納したディスクの「コピー」を用意することで、故障に備えています。通常は2台のディスクを使って実現します。

データはアレイ内の各ディスクにまったく同一のデータが書き込まれます。1台のディスクが故障しても、残りのディスクが稼働し続けることで、データは失われません。
ただし、同一のデータを2台以上のディスクに書き込むため、ディスク容量の利用効率は50%以下になってしまうというデメリットがあります。また、2台のディスクに同一のデータを書き込むため、ディスク1台の場合と比べ、書き込み時のオーバーヘッドが大きくなり、速度も遅くなります。

RAID 5(分散データ・ガーディング)

耐障害性の向上と高速化、大容量化のすべてを実現できます。
ディスクの故障時に記録データを修復するために「パリティ」と呼ばれる冗長コードを、全ディスクに分散して保存するのが特徴です。

RAID 0と同様にデータを分割して各ディスクに格納しますが、データ・ブロックの組(上図でいえば1/2や3/4、5/6)ごとにパリティが生成される点がRAID 0と違います。1台のディスクが壊れても、残りのディスクに格納されたデータとパリティから、失われたデータを復活させることができます。
複数のディスクにデータを分散して書き込むと同時に、パリティも計算・生成して同時にディスクに書き込みます。負荷を分散するためパリティ用ディスクは特に決まっておらず、全ディスクに分散して書き込まれます。どれか1台のディスクが故障しても、それ以外のディスクのデータとパリティ情報から、元の完全なデータを生成して回復できます。ただし、2台以上のディスクが故障すると回復できません。
ディスク台数が多いほど容量の利用効率も向上します。RAID 1(ミラーリング)と比較した場合、この利用効率の高さがRAID 5のメリットの1つです。

余り使われないRAIDレベル

RAIDレベルが0、1、5と番号がとんでいます。実は抜けている2、3、4、6というRAIDレベルも存在します。しかし、あまり使われていません。概要を説明しましょう。

RAID 2
元データとともにエラーを修復するための冗長コードを、複数のディスクに記録します。この冗長コードは、主記憶装置などで使用されるECC(Error Correcting Code:誤り訂正符号)で、パリティよりも複雑で生成に時間がかかります。しかもECCによる冗長コード自体のサイズが、元のデータに対してさらに大きくなりがちで、容量面でもデメリットが目立ち、市販のRAID製品にもほとんど実装されていません。
RAID 3
RAID 3も元のデータに冗長コードを加えて複数のディスクに記録します。冗長コードにはRAID 5と同じパリティを使用します。
データは、ビットまたはバイト単位に分割されて、専用の複数のディスクへ同時に書き込まれます。そのデータからパリティが生成され、パリティ専用のディスクに書き込まれます。常にすべてのデータディスクに並行してアクセスし、データを一括して転送する方式なので、転送速度は高速ですが、そのために、ほかのディスクと同期して回転させたり、データ転送したりするための特殊な仕組みが必要となるなど、コスト面でほかのRAIDレベルより不利です。このため、RAID 3を実装している製品は多くありません。
RAID 4
RAID 0のストライピングに、パリティ専用ディスクを追加してデータを再生成する機能を持たせたものです。ブロック単位で複数のディスクに記録しますが、パリティは特定のディスクだけに格納されます。データとパリティそれぞれを格納するディスクが分かれています。そのため、データの書き込みが発生すると、パリティ用ディスクへの書き込みが集中して、そこがボトルネックとなって書き込み性能が下がります。これをパリティの分散書き込みで改善しているのがRAID 5です。つまり、RAID 4は、RAID 5で代替されるため、サポートしている製品はほとんどありません。
RAID 6
RAID 5の改良版で、1つのデータ・ブロックにつき2つのパリティを生成し、別々のHDDに記録することで、同時に2台のハードディスクが故障しても、元のデータを修復可能とします。しかし、パリティが増えた分だけ、計算や書き込みのオーバーヘッドも増加するため、書き込みの性能は高くありません。パリティ用に2台分のディスク容量を必要とするため、ディスクの利用効率はRAID 5より低下します。現在のところRAID 6を実装している製品は多くありません。

RAIDレベルの組み合わせ

RAID 0/1/5はそれぞれ異なるメリット/デメリットを持っています。
そこで複数のRAIDレベルを組み合わせて、あるRAIDレベルが不得意とする機能は別のRAIDレベルでカバーして、総合的にデメリットの少ないシステムを実現するというものです。
RAIDレベルの特徴と組み合わせによる特徴の変化を表にしました。

  RAID 0 RAID 1 RAID 5 RAID 10(※1) RAID 50(※2)
耐障害性 なし
性能 シーケンシャル読み出し
シーケンシャル書き込み
ランダム読み出し
ランダム書き込み  
リビルド時*1  
必要なディスク台数 2台以上 2台 3台以上 4台以上 6台以上
ディスク容量の利用効率(n:ディスク台数) 100% 50% 100×
(n-1)/n%
50% 100×
(n-1)/n%
実装にかかるコスト
※1: RAID 10:RAID1とRAID 0を組み合わせたRAIDレベルです。RAID 0+1、RAID 1+0と呼ぶこともあります。
※2: RAID 50:RAID5とRAID 0を組み合わせたRAIDレベルです。RAID 0+5、RAID 5+0と呼ぶこともあります。

単一のRAIDレベルに比べ、ディスク台数が多くなりがちですが、複数のRAIDレベルの組み合わせは、耐障害性の向上と高速化、大容量化を同時に実現する手段としてよく利用されます。実際、多くの製品が、ハードウェアRAIDコントローラーには、RAID 0/1/5という単体のRAIDレベルだけではなく、これらを組み合わせたRAIDレベルをサポートしています。
ただし、RAIDレベルを組み合わせたRAIDには、呼称からしくみまでベンダーによって異なっているのが実情で、これが標準というものがありません。呼称が同じでも原理が異なっている例さえあります。選択にあたっては注意が必要です。

RAIDの構築は簡単ではありませんが、ソフトウェアも充実してきており、ハードウェアも扱いやすくなっています。何よりも、今回のテーマであるHDDの低価格化は魅力です。
次回は、ネットワークとHDD、そしてPC以外の用途で活躍するHDDのお話しです。

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