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第12回 新しい光

メディア編の最終回は、次世代DVDのお話しと光メディアにまつわる著作権保護技術のお話しです。次世代DVDは、Blu-ray DiscとHD DVDの2規格が並立しています。両者の比較とそれぞれの特徴を説明します。
また、デジタル録音や録画では画質や音質を劣化させることなく複製することができます。そのため、違法なコピーや海賊版等の問題が発生しています。DVDメディアには著作権を保護するための仕組みが導入されています。これらの技術を説明します。

地上波デジタル放送、ハイビジョン映像、高画質ゲームと高品位な映像への関心が強くなっています。地上波デジタル放送のハイビジョン放送(ビットレート17Mbps)を2時間録画すると、約15GBの記憶容量が必要です。4.7GBを基本にするDVDでは二層記録でも足りません。そこで、より大きな容量と高速なデータ転送を持つメディアが求められています。こうして次世代DVDが登場しました。


次世代DVDの規格

大容量のDVDメディア、次世代DVDと呼ばれる規格が登場しました。現在、Blu-ray DiscとHD DVDの二つの規格があり、標準の座をめぐって激しいつば競り合いを行っています。
記録用メディアで比較しました。

  Blu-ray Disc HD DVD
追記型メディア BD-R HD DVD-R
書き換え型メディア BD-RE HD DVD-RW
記録容量(1層記録) 23.3/25/27GB 15GB
記録容量(2層記録) 46.6/50/54GB 30GB
レーザー光波長 405nm 405nm
レンズ開口数 0.85 0.65
ディスク直径 12cm 12cm
カバー層厚み 0.1mm 0.6mm
記録膜 相変化 有機色素・相変化
トラック方式 グルーブ記録 ランド・グルーブ
トラックピッチ 0.32μm 0.34μm
データ転送レート 36Mbps 36Mbps

【Blu-ray Disc】

2002年6月、Blu-ray Disc Recordable Format規格に基づく次世代DVDのフォーマットが発表されました。規格制定には、ソニー、日立製作所、LG電子、松下電気産業、パイオニア、フィリップス、サムスン、シャープ、トムソンの9社が名を連ねています。
なぜBlueではなくてBluなのか、疑問を持つ方がいるかもしれません。Blue-ray discとすると、欧米では「青色のディスク」という一般名詞になってしまい、商標として使用できないからです。
基本的な考え方は次のようなものです。

  • 直径12cmのメディアにデジタルハイビジョン映像を2時間以上記録できること
  • データ放送を含めて、デジタル放送と親和性の高いフォーマット
  • セキュリティの高い著作権保護システム
  • 規格のファミリー化を推進し、グローバルスタンダードを達成する

直径12cmのディスクは、CDやDVDと同じです。このサイズに、DVDの約5倍(23GB)の情報が記録されます。2層記録では最大50GBのメディアになります。
これら大容量記録を実現するポイントとなる技術が、青紫レーザー、開口数の大きな対物レンズ、厚さ0.1mmの保護層です。

青紫レーザー光

下図はBlu-ray Disc、DVD、CDの記録面とレーザー光のスポットのイメージです。ピットの密度、それに応じたスポット径の違いが分かります。Blu-rayでは、トラックピッチもCDの5分の1です。人の毛髪の直径は、大きく見えるCDのトラックピッチのさらに30倍から50倍です。

スポット径の大きさはレーザー光の波長に比例します。波長が短くなればスポット径は小さくなり、より高密度な読み取りができます。Blu-ray の青紫レーザー光の波長は405nmとDVD(青色レーザー光、450nm)やCD(赤色レーザー光、650nm)よりも短くなっています。

開口数0.85の大きな対物レンズ

波長の短い青紫レーザー光を、記録面上でさらに小さなスポット径に絞り込むために開口数の大きい対物レンズを使用します。Blu-rayでは開口数0.85の超広角レンズを使用します。このレンズでスポット径を小さくします。DVD(開口数0.6)の記録容量を2倍に増大させる効果があります。ただし、盤面に非常に浅い角度で入射するため、これ以上大きな開口数のレンズは、ピックアップの物理構造の点で実現できないといわれています。

0.1mmのディスクの透明保護層(カバー層)

保護層は記録面を保護するためのポリカーボネート製の透明な層で、この層をレーザー光が通り抜けて記録面を照射します。CDが1.1mm、DVDが0.6mmの厚みを持っていますが、Blu-rayでは、保護層は0.1mmと極薄になりました。
次の図はDVDとBlu-ray Discの断面です。

Blu-rayは記録密度が高く、小さなスポット径で高密度のピットを読み取りますので、今までのDVDで問題にならなかったディスクのわずかな傾きや反り(そり)も許されません。
しかも、対物レンズの開口数が大きくなればなるほど、傾きや反りによるスポットのひずみが大きくなります。そのために、ディスクの保護層を0.1mmと薄くし、記録面をディスクの表面近くに配置しています。

メディアの構造

次の図は再生専用Blu-ray Disc (BD-ROM)の構造です。記録層が表面から0.1mmの位置にあることを除けば他のDVDとメディアの断面構造は変わりありません。2004年7月に、BD-ROM Ver.1.0として片面1層25GB、片面2層50GBで規格化されています。規格化された当時はカートリッジに収納されていましたが、ハードコートなど保護層の強化により現在のように、ディスクを直接扱うことができるようになりました。人気のゲーム機プレイステーション3用として提供されるソフトのメディアはこのBD-ROMです。

Blu-ray Discの規格は光学式メディア技術の物理的限界とも、「光学式メディアの終着点」に相応しい規格として策定されたとも言われています。しかし、多層化記録や多波長化などによる大容量化、高出力化による高速記録への可能性を秘めており、さらに期待されています。

BD-R(Blu-ray Disc Recordable、追記型)

記憶容量は1層記録が23、25GBの2種類、2層記録が46、50GBの2種類です。2005年にBD-R Ver.1.0として正式な規格が発表されました。メディアは次のような構造です。

BD-Rでは、シリコンと銅、二酸化テルルとパラジウムなどを組合せて無機皮膜を作り記録層としています。レーザー光の熱で金属を溶かして合金化した部分をマーク(ピットに相当)にする記録方式です。有機色素が採用されなかったのは、初期のBD-Rではメディアの製作時にスピンコート法により有機色素の塗布と0.1mmの保護層を作りづらかったという背景があります。現在では、厚さ100μm±数μmという精度の高い、均質な皮膜を形成するスピンコート法で、BD-Rメディアが製造されていますが、記録層は無機材料で構成されています。記録層はグルーブという溝と、溝の壁が左右に蛇行するウォブルによって書き込み位置を案内するしくみになっています。記録面は、密度は高くなっていますが、現行の記録可能なDVDメディアと同じです。

BD-RE(Blu-ray Disc REwritable、書換型)

記憶容量は1層23、25、27GBの3種類、2層記録も46、50、54GBの3種類です。2002年6月にBD-RE Ver.1.0として規格化されています。Blu-ray Discでは最初にこの書き換え型メディアが規格化され、BD-R、BD-ROM の順に規格化されています。BD-REの書き換え回数はDVD-RWに比べて飛躍的に伸びており、メーカーによっては1万回の書き換えが可能としています。メディアは次のような構造です。

記録層はBD-Rと同じように、グルーブという溝と溝の壁が左右に蛇行するウォブルによって書き込み位置を案内するしくみになっています。記録の原理や構造はDVD-RWメディアと同じです。記録方式は相変化型です。レーザー光により結晶(クリスタル)相の記録層を加熱し、非結晶(アモルファス)相になったところで急速に冷却し、非結晶相に固定します。この非結晶相部分がマーク(ピットに相当)のはたらきをします。記録層を低温で加熱し、ゆっくり冷却すると非結晶相を結晶相に戻すことができ、消去や書き換えを行うことができます。

【HD DVD】

HD DVD(High Definition DVD)は、2002年に前身となるAOD(Advanced Optical Disc)規格として提案され、2003年11月DVDフォーラムで次世代DVDとして承認されました。東芝を中心にNEC、三洋電機が参加しています。
大きな特長は次の通りです。

  • 現行のDVDと同じディスク構造(0.6mmディスク2枚の貼合わせ構造)を採用し、現行DVDと同様の2層ディスクやハード機器製造面での容易さを確保していること。
  • 青色レーザー、新たなデータ処理方式、現行DVDに使われた画像圧縮技術をさらに性能アップした高効率画像圧縮技術を採用し、高精細画像の長時間収録/録画を可能にしていること。

(HD DVDプロモーショングループ設立趣旨より)

現行のDVDの延長線上の規格として開発されており、既存のDVDとの互換性を重視しながら大容量化を実現していることがHD DVDの最大の特徴です。従って、原理や構造は現行のDVDメディアと同じです。次の図はHD DVDメディアと現行のDVDメディアの断面です。

同じ構造で、大容量化を実現するために、トラックピッチを狭くし、メディアの記録密度を高くするとともに、記録再生時のレーザー光のスポット径を小さくするために、レーザー光の波長を短くし、対物レンズの開口数を大きくしています。

見方を変えると、HD DVDと現行のDVDはレーザー光の波長とスポット径が異なるだけ、メディアは高密度化されているだけということになります。これは、既存のDVDメディアの生産設備が流用できる、ドライブ装置やプレーヤーなどの機器においても既存の技術が活用できるという大きなメリットになります。
しかし、良いことばかりではありません。互換性を重視したための問題点もあります。HD DVDでは、対物レンズと記録層間の距離が1.9mmと長いにもかかわらず、トラックピッチやレーザー光のスポット径が小さくなっているため、ディスクにわずかな傾きや反りがあっても、記録面に焦点を結べなくなります。Blu-ray Discは、同じ問題を対物レンズと記録面の距離を0.4mmに接近させることで解決しています。HD DVDでは、レンズの角度を変えるチルトサーボ機構を装備して対応しています。

メディアの構造

次の図は、再生専用HD DVD(HD DVD-ROM)メディアの断面です。
前述したとおり、DVD-ROMとまったく同じです。

この互換性を活かしたHD DVDメディアが「コンビネーションディスク」と「ツインフォーマットディスク」です。

コンビネーションディスクとツインフォーマットディスク

コンビネーションディスクは、片面に現行DVDを、裏面にHD DVDを記録するディスクで、ユーザーがプレーヤーに対応した面を選んで再生します。
ツインフォーマットは、片面2層記録のメディアで1層に現行DVD、もう1層にHD DVDの記録面を配置したものです。対物レンズに近い0層(DVD層)の半透明反射膜記録層は赤色レーザーだけを反射し、青紫色のレーザーは透過します。このしくみで、片面にDVDとHD DVDの両方のフォーマットで記録したものです。

左がコンビネーションディスク、右がツインフォーマットディスクです。
HD DVDのタイトルにはツインフォーマットやコンビネーションディスクに収録されたものが2007年1月現在、およそ10%(440本中48本)程度あります。
【参考サイト:HD DVDプロモーショングループ http://www.hddvdprg.com/jpn/index.html

HD DVD-R(DVD Specifications for High Density Recordable Disc 、追記型)

HD DVDの追記型メディアが、HD DVD-Rです。記録容量は片面1層記録で15GB、2層記録で30GBです。次の図のように、記録層と反射層が、0.6mm厚のポリカーボネート基盤に挟まれた構造です。

記録層には特定の波長のレーザー光に反応する有機色素が使用されます。レーザー光を照射して加熱し、有機色素を焦がしてマーク(ピットに相当)を作ります。記録層はDVD-Rと同じように、グルーブという溝と溝の壁が左右に蛇行するウォブルによって書き込み位置を案内するしくみになっています。記録の原理や構造はDVD-Rメディアと同じです。

HD DVD-RW(HD DVD ReWritable、書換型)

HD DVDの書換型メディアです。記録容量は、片面1層記録で15GB、2層記録で30GBです。
0.6mm厚のポリカーボネート基盤に記録層、反射層が挟まれた構造になっています。記録層は、加熱・冷却を繰り返すために他の相に影響しないよう誘電体層に挟まれています。

記録層はDVD-RWと同じように、グルーブという溝と溝の壁が左右に蛇行するウォブルによって書き込み位置を案内するしくみになっています。記録方式は相変化型です。レーザー光により結晶(クリスタル)相の記録層を加熱し、非結晶(アモルファス)相になったところで急速に冷却し、非結晶相に固定します。この非結晶相部分がマーク(ピットに相当)のはたらきをします。記録層を低温で加熱し、ゆっくり冷却すると非結晶相を結晶相に戻すことができ、消去や書き換えを行うことができます。

競争の外側で

インターネットコム株式会社と株式会社インフォプラントが2006年12月に行った「次世代 DVD 規格に関する調査」で64.3%のユーザーが次世代 DVD 規格の対立について「迷惑」と感じているという結果が出ています。同時期のインターネットコム株式会社と goo リサーチが行った調査では、回答者の約半数が「決着がつくまでどちらも購入しない」としています。
2005年には規格統合の動きが報道されましたが、まとまらず、2規格の競争はVHSとベータのビデオ規格戦争を上回ると言われるほど激しくなっています。
ところが、この2規格の争いの外で、次世代DVD規格にしがらみのない立場で現実的なソリューションが登場しています。2007年1月、韓国LG電子がBlu-ray/HD DVD両対応プレーヤーを開発し、間もなく発売すると発表しました。同時期に米Warner Home Video(WHV)が片面でHD DVDフォーマット、もう片面でBlu-ray Discフォーマットを記録できるTHD(Total Hi Def)ディスクを開発し、同ディスクで映画を供給すると発表しています。どちらも、コストの問題は残っていますが、普及が進めば解消される可能性があります。こうして外堀が徐々に埋められていくと、やがて、国産の機器ではコンテンツによっては観ることができない作品が生じる一方で、圧倒的な生産能力で低価格を実現する外国製プレーヤーではどちらも観ることができる、という事態も生じかねません。さらに、動画をネットで配信することも、すでに現実味を帯びてきており、規格どころかメディアの重要な用途の一部が消失する可能性さえ生じています。
高速・大容量というメディア自身の持つ課題に加えて、ブロードバンドネットというライバルも登場しており、光メディアの今後に目が離せません。

著作権保護技術

デジタルデータは複製しても劣化しません。デジタルデータになった映像は、そのままの画質で複製することができます。しかも、デジタルデータはPCやネットワークとの親和性が高く、流通させやすい特徴があります。特に光メディアでは流通しているコンテンツをメディアごと複製できてしまいます。LPレコードをカセットテープに、CDをMDに形を変え、劣化を伴いながら複製するのではなく、CDの質を落とさずまるごとCDに、DVDをそのままDVDに複製できてしまいます。しかも、今日の複製機器やソフトウェアの性能はすばらしい。その結果、海賊版のようなある一定の規模を持つものから、知人友人への気軽なコピー配布のように私的複製の範囲を超えた違法コピーにいたるまで、幅広い著作権侵害が日常発生しています。

CDのコピープロテクト

CDでは著作権保護に関する技術は規格化されませんでした。そのため複製横行により売り上げが低下しているとして、一部のメーカーは自社の音楽用CDに特殊な方法でコピープロテクトを組み込みました。CCCD(Copy Control CD)とよばれていますが、規格の名称ではありません。各CDメーカーが独自な手法で組み込んでいるもので、CD EXTRAをベースにしてTOC(目次情報)を改変したり、エラーセクタを挿入したりしているようです。
エラーセクタ挿入など、読み取りの誤りを故意に引き起こすためにジッターの発生で音質は低下します。音とび防止のためにメモリに読み込むプレーヤー(ポータブルや車載用など)では再生できない、PCに勝手にソフトウェアを組み込む、その一方でオーディオ補正を行うPC用のドライブでは問題なく読めてしまったりする、など問題が多く、販売増にも結びつかなかったことから、現在、販売用ではEMIグループが採用するにとどまっています。急先鋒であったSME(Sony Music Entertainment)やavexはすでに通常のCDを販売しています。

DVDの著作権保護技術

CDのコピープロテクトの状況から、DVDでは規格の策定当初から、メディアに著作権保護技術の搭載が求められていました。

CSS(Content Scramble SystemまたはContent Scrambling System)

映像コンテンツを暗号化し、その暗号鍵を複製できないエリアに記録する方法です。PCで単純にデータだけをコピーしても暗号鍵が複製されないために再生できません。DVD-Video規格に採用されましたが、1999年に解除ソフトDeCSSが開発され、その後類似ソフトが次々に登場し、事実上抑止力を失ってしまいました。その後のDVD-RやDVD-Audioでは、CPPMやCPRMなど別の技術が使われています。

CPPM / CPRM

CPPM(Content Protection for Prerecorded Media)とCPRM(Content Protection for Recordable Media)は、いずれもDVDに採用されている著作権保護技術です。
CPPMは再生専用メディア(Prerecorded Media)向け、CPRMは記録可能なメディア(Recordable Media)向けです。

CPPMではコンテンツを3つのデータで作成される「鍵」で暗号化します。
「メディア鍵」、「アルバムID」、「CCI(Copy Control Information)」です。メディア鍵は、「デバイスキー」(機器固有の鍵)とメディアに記録されている「MKB」(Media Key Block)を用いて生成します。アルバムIDはコンテンツ固有のもので、MKBとともにメディアのリードイン領域に記録されますので、複製や改ざんはできません。
CCIは、複製に関する情報で、複製可/不可、可の場合には何回まで複製できるかといった情報が記録されており、コンテンツと一緒に記録されます。複製を行う場合も同様で、1度だけ複製可のコンテンツは複製した後、「複製不可」の情報に書き換えたものを入れておけば、複製した媒体もコピーコントロールできます。
デバイスキーは、個々の機器ごとに必ず異なったものが使用されます。PCの場合は、再生に使用するソフトウェアが、“機器”として、ドライブおよびメディアを認証することになっています。
実際のコンテンツを再生する時は、MKBとデバイスキーからメディア鍵を生成し、そのメディア鍵とアルバムIDとCCIを使用して暗号化に使用された“鍵”を生成します。この4つの情報のうち1つでもおかしなものがあると、復号されず、再生することができません。

CPRMもCPPMとほぼ同じ原理です。
リードイン領域にMKBが記録され、最内周のBCA(Burst Cutting Area)と呼ばれる領域に、メディア1枚ごとに異なる「メディアID」が記録されています。どちらも複製や改ざんできません。コンテンツの暗号化は、デバイスキーとMKBによって生成される「メディア鍵」と「メディアID」によって「暗号化タイトル鍵」を生成し、その暗号化タイトル鍵に「CCI」を加えたデータから生成された「鍵」によって暗号化が行われます。

CPPM/CPRMでは、単純にコピーしただけでは、アルバムIDやメディアIDが異なるため再生することができないだけでなく、メディア側に記録されているMKBを更新することで、特定の機器やメーカーの製品で、記録/再生できないようにすることもできます。
MKBとデバイスキーで「メディア鍵」を生成できない限り、暗号を復号することができません。MKBやデバイスキーはライセンス会社によって管理されており、メーカーや機器を特定することができます。万一、デバイスキーが流出しても、メディア鍵を生成できないようにMKBを対策して、メディアを更新してしまえば、それ自体を無効化することができます。更新後は、そのメーカーや機器では、使用できないディスクが流通することになり、暗号鍵が破られても実害が最小限にとどめることができます。暗号鍵が破られたCSSの教訓が活きています。

メディアや機器側に固有のIDを持たせた著作権保護技術は、Blu-ray Discなどの次世代ディスクやSDカードなどのフラッシュメモリにも採用されています。
今後は、電子透かしやDTCP(Digital Transmission Content Protection)のように、プレーヤーと復元/表示装置間で公開鍵と暗号鍵を用いて機器間の認証を行う技術や、HDMI(High Definition Multimedia Interface)のようにアナログ信号を使わず、再生から表示まですべてデジタル信号にして制御を徹底する技術など、著作権管理技術はますます複雑・高度になっています。大容量・高品質データを高速に手軽に記録・複製できる今日の記録メディアには、光メディアに限らず、著作権管理を欠くことはできません。しかし、保護を優先するあまり、CCCDのように悪意のないユーザーに負担を強いたり、DVDレコーダのコピーワンス制限のようにユーザーの困惑を招いたりすることがあってはなりません。著作権保護機能が健全に発展することを祈りたいものです。

以上で応用編は終了です。
技術の発展は日進月歩を超える速度で動いています。特にPCにおいては、それは顕著です。WEBで公開する端から新技術や新製品が登場し、説明が陳腐化していくのに焦りさえ感じます。それはこの講座をお読みになる方々も多分同じでしょう。そこで、基礎にこだわらずこれを知っていれば新製品や新技術を読み解くヒントになると思われる技術や機能を選んで説明してまいりました。これまでの記事が何かのときにお役に立てば幸いです。

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