2006年 22号  発行日: 2006年9月21日 バックナンバー

ハイビジョンと最近のテレビ事情

アンケート

その他のテレビ

ハイビジョン映像などを楽しむためのテレビには、液晶、プラズマ、ブラウン管以外にさらにいくつかの種類があります。ここではプロジェクター、リアプロとSEDに触れておきます。

プロジェクター

6畳の部屋で80インチクラスの大画面の映像を観ることができるのが、プロジェクターです。映像を結ぶ方式に「液晶」、「DLP」、「LCOS」の3つがあります。

投影方式別の世界出荷台数比
※「3管」方式もありますが、方式別のシェアでも算出できない状態ですので、割愛しています。

「液晶」方式は、高圧水銀灯など非常に明るい光源ランプの光を、液晶パネルを透過させて像を結び、スクリーンに投影します。画面の大きさとピントを合わせるだけの簡単な調整で済み、画面の輝度が高く、発色が鮮やかです。
「DLP」(Digital Light Processing)方式とは、半導体上に独立して動く極小の鏡を敷き詰め、それらにランプ光をあて、反射した光で像を結んで投影します。深みのある色、高いコントラスト比、高精細な映像、動きの速い動画を投影できる特長があります。

「LCOS」(Liquid Crystal On Silicon)は、反射型液晶素子といいます。ランプ光を液晶パネルに反射させて像を結んで投影します。高解像度、高コントラスト比、高速応答性、液晶ならでは階調表現など、DLPと液晶のよいところだけを集めたような性能で、高級プロジェクターとして販売されています。

プロジェクターでハイビジョン映像などを楽しむためには、チューナー、音響システム、スクリーンが別途必要です。また、映画館のように暗くしないと良好な画質で観られませんので、遮光カーテンなど視聴環境も整える必要があります。DVDやハイビジョン放送を、映画のような大画面で本格的に楽しみたい人向けと言えます。

リアプロ

リアプロは、「リアプロジェクション」を略した呼称です。スクリーンの背面からプロジェクターの映像を投影するテレビです。リアプロは、前述のプロジェクターと違って、チューナーやスピーカーを内蔵して、単体でテレビとして機能します。

海外で人気が高く、日本国内では比較的地味な存在です。画面の角の付近がボケやすい、SDTVを観るのには画面が大きすぎるなどの問題がありました。ところが、ハイビジョンなど映像の品質が向上し、テレビが大画面を指向する今日、リアプロが見直されつつあります。多くのプラズマよりも大画面で、近いサイズの液晶よりも省電力、しかも、そのどちらよりも安く作ることも可能です。課題だった映像も、最近の製品では、すみずみまでくっきり表示できています。しかし、リアプロはブラウン管ほどではないにしても、薄型とは呼びにくい奥行き(厚み)があります。しかも大画面に限られますので、液晶やプラズマよりも設置場所を選びます。リアプロが住宅事情のよい海外で人気があり、国内では液晶やプラズマと並ぶ存在になれないのはこうした理由があります。

SED

新しい薄型大画面テレビとして注目を集めているのがSED(Surface-conduction Electron-emitter Display:表面伝導型電子放出素子ディスプレイ)です。液晶やプラズマと同じくらいの薄さで大画面が得られるブラウン管です。本来、ブラウン管は色やその明暗、濃淡の表現をするうえで理想に近い性能を持っています。長年にわたる技術の蓄積があるのも強みです。

キヤノンは、ナノオーダーの技術を活用して実用化に目処をつけました。薄膜で作られた電気の通り道に、ナイフで切れ目の筋を入れるようにナノメートル単位のスリットを入れ、両側に電圧をかけると、そこから電子が放出されます。この素子を各画素に割り当て、ブラウン管と同じく蛍光体に当てて発光させる表示パネルがSEDです。ブラウン管と同程度の寿命を持つと考えられます。

SEDの原理

小型化も可能で、キヤノンのバブルジェットプリンタの技術を生かして比較的容易に生産できるとも言われています。数年後には、各サイズを揃え、薄型テレビをもっと身近で高性能なものにしているかもしれません。

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