2006年 22号  発行日: 2006年9月21日 バックナンバー

ハイビジョンと最近のテレビ事情

アンケート

第4章 テレビを選ぶ

「液晶」と「プラズマ」、どちらかを選ぶ場合、かつては、それぞれの欠点から、明るさがとか、応答速度が、といったような性能比較が容易でした。しかし、今日では、液晶だからとか、プラズマだからというような、構造上あるいは原理上の明確な欠点は技術的に解消されつつあります。例えば、プラズマは消費電力が大きく、液晶の倍といわれていましたが、その差は30%程度に縮んでいます。大画面はムリといわれた液晶は今や60インチを超える商品が店頭に並んでいます。

こうなると、自分はこういう映像をこういう環境で観るテレビがほしい、というようにそのテレビの特長を活かした選択をすることになります。

次の表はプラズマと液晶の比較です。

プラズマ   液晶
大画面向き(32V〜60V)   画面サイズ   小・中型向き(〜42V)
約9cm 薄さ 約9cm
約23kg(32V) 質量 約16kg(32V)
全画面が明るいときには明るさ自動調整 明るさ 非常に明るい(シーン適応型調光タイプ有)
くっきり鮮やか コントラスト(非常に暗い場所) 黒がバックライトの光漏れで浮いてしまう
ブラウン管同等
黒が外光で浮いてしまう
コントラスト(非常に明るい場所) 外光の反射が少なく、くっきり
フルハイビジョン対応 高精細 フルハイビジョン対応
なし ゆがみ・色ずれ なし
依存性なし 視野角 以前よりも改善(AS-IPS液晶:○)
8msec(ミリ秒)以下 動画・応答速度 8msec(ミリ秒)以下
ブラウン管以上(約1.3倍) 色再現性 ブラウン管同等
ブラウン管同等 外光反射 低反射傾向
ブラウン管同等、それ以下 消費電力 ブラウン管テレビ以下
パネル輝度半減はブラウン管以上(日立6万時間以上) 寿命 バックライト寿命はブラウン管以上(日立6万時間)

上記は32型クラスのブラウン管テレビと2006年の8月現在の液晶・プラズマを比較したもの。

明るい場所に強い液晶

明るい店頭で液晶が美しく見えるのは、画面表面を覆っているカラーフィルターが外交を吸収し、RGBの発光が強められる方向にはたらくためです。しかも、高輝度なので、明るいリビングルームでも、くっきりきれいです。家事をしながら、仕事をしながら、あるいは勉強しながらというように「ながら」視聴に適しているのも液晶のよさです。つけっぱなしにしておいても、自発光しない液晶には画面の焼き付きがありませんし、消費電力も低い。プラズマでのホームシアター視聴のように、少しかまえて、さぁ観るぞという気負いがいりません。家族が気軽に観ることができるカジュアルな良さがあります。

視聴する番組では、昼間の明るい時間帯の番組は有利です。ニュース番組や子ども番組は、明るい画面作りが多く、輝度の高い液晶向きです。屋外での撮影が多く、動きの少ない旅行番組やグルメ番組、自然を撮影したものも液晶に向いています。静止画の多い美術系の番組も、精細度の高い表現ができる液晶に向いています。

さらに、液晶の長所として、プラズマと比べて、13インチから60インチクラスの超大型まで画面サイズのラインナップが充実していることがあげられます。日本の住宅事情に合う手頃な画面の大きさ(30インチクラス)でフルスペックハイビジョンが楽しめるのは液晶ならではのメリットです。

暗いところで強いプラズマ

映画やDVD、スポーツ番組など動きの速い映像を楽しみたいのであれば、プラズマです。スポーツ選手の素早い動きを精確に表現し、アクション映画など画面の激しい変化に何の問題もなく美しい映像を表現する応答性は液晶を上回ります。通常、応答速度は16msecあれば、60分の1秒のコマの切り替えには問題はなく、液晶も16msec以上の遅いものはほとんどありません。それでも、プラズマがスポーツやアクション映画に向いているのは自発光することによる応答性のよさと、明るさのダイナミックレンジが広いからです。プラズマは、最小輝度を液晶の半分ほどに小さくすることができます。つまり暗い映像も、コントラストをつけて表現することができるということです。映画は、もともとスクリーンに映して楽しむために、暗めの映像になっています。夜のシーンなど画面全体が暗くても、コントラストを表現することができます。部屋を暗くすれば、より一層効果があります。ホームシアターなど部屋の照明がコントロールしやすい環境下で、じっくり大画面で映像を楽しむ用途に最適です。

もちろん、プラズマはホームシアター専用ではありません。例えば、夕方から夜、深夜にかけての視聴が多い人にはプラズマはよい選択です。通常の室内であれば、総合的な画質では液晶を上回るといわれています。陽光のさす明るい部屋ではパネルの中に光が回り込んで本来の性能が出ないというだけです。

プラズマは40インチ以上の大型テレビが中心です。同じ価格であれば液晶より二回り大きなサイズが入手できる有利さもあります。

決断は自分の目で確かめてから

設置する部屋に窓が多くて映り込みしてしまうようであれば、外光に強い液晶がお勧めです。テレビを観るのは、ほとんど夕方から夜ということであれば、プラズマを選ぶのがお勧めです。

特殊な条件がない場合には、まず店頭で実物を見て確認するべきでしょう。大きな店では、液晶だけでも実に多くの機種が展示されています。液晶を買うつもりで、店頭でいろいろな機種を比べて、やっと気に入ったものを見つけたと思ったらプラズマだったという話もあるほどです。

液晶とプラズマに限れば、画質や表現力は絶対にこちらというほどの性能の優劣はありません。広いスペースに手頃な価格の大画面がほしいとなればリアプロを検討してもよいでしょう。あと1年で、次世代の本命といわれるSEDも市場に登場します。現在は寿命が短く実用的でない有機ELも長寿命化の目処がたつかもしれません。選択の幅は、まだまだこれから大きく拡がっていきます。

つきなみな結論ですが、選択にあたっては、最終的には自分の目でしっかりと確認することです。できるだけ自分の日常の視聴状況に近い状態で、判断できるようにします。例えば、よく視聴するDVDを持参する、設置する部屋の明るさに近い条件の店で視聴してみる、など必ず視聴する条件に近い状態で、実際の映像を観て確認することです。安い買い物ではありません。慎重であるにこしたことはありません。

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