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UP TO DATE おサイフケータイ
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ポケットから財布がなくなる日は来るのでしょうか。
ケータイ(携帯電話)の強力な機能が注目を集めています。おサイフケータイです。
ケータイがおサイフになり、読み取り機にケータイをかざすだけでコンビニや自動販売機で商品が買えます。駅の改札を通過することもできます。便利そうで、興味もありますが、ほんの少し不安もある。そんなおサイフケータイの機能の現状やサービス、問題点や将来について考えてみます。

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おサイフケータイはモバイルFeliCa対応端末

おサイフケータイは、JR東日本のSuica(スイカ)、JR西日本のICOCA(イコカ)や、ビットワレットのマネーカードEdy(エディ)等に採用されているFeliCa(フェリカ)という非接触型ICカードの一種です。非接触型ICカードは、カードリーダーライター(カード読み取り・書き込み装置)にかざすだけでデータを読み書きできるカードです。磁気カードのようにカードリーダーライターに接触させたり、差し込んだりする必要がないので、振動やホコリに強く、スピーディーに読み書きできる特長があります。
このFeliCaをモバイル情報端末向けに強化したのが、おサイフケータイのコア技術、モバイルFeliCaです。おサイフケータイの実体はモバイルFeliCaを内蔵した携帯電話です。モバイルFeliCa対応端末と呼ばれることもあります。
FeliCaは、1988年ソニーで開発された無線ICタグがその始まりです。この技術を使ったICカードが1994年香港のオクトパスカードに採用されました。公共交通機関や店舗、コンビニ、自販機などで利用できる電子マネーカードで1997年に稼働し、現在は発行枚数1200万枚、一日850万回使用されています。2000年、JR東日本はFeliCa採用を決定し、2001年にSuica誕生、同年、ビットワレットのEdyが誕生しました。また、2003年には、JR西日本のICOCAが稼働を開始しました。

FeliCaカードの構造

チップ1個とアンテナが1枚のカードに収められています。

ICカードとリーダー/ライター

電源はなく、ICカードリーダーライターのアンテナから発射される電波で、カード側のアンテナに生じる起電力で動作します。ICカードリーダーは、カードの検出・認証・読み書きをわずか0.1秒で行います。

以上はICカードのFeliCaのお話しですが、おサイフケータイに採用されているモバイルFeliCaも非接触・読み書きのメカニズムは変わりません。

FeliCaとモバイルFeliCaの違い

大きく異なる点が2点あります。
1点目は、電源です。前述のようにFeliCaカードは電源なしで動作しますが、おサイフケータイの「モバイルFeliCa」は携帯電話の電池で動作します。
携帯電話の電源スイッチが切れていても、「モバイルFeliCa」は動作しますが、電池が完全に放電してしまうと「モバイルFeliCa」も動作しません。
もう1点は、FeliCaのICカードは全て1枚1サービスの専用カードです。受け取ってすぐに使えるようになっていますが、モバイルFeliCaは、パソコンと同じようにアプリケーションをインストールして初めて使えるようになります。そのかわり、アプリケーションを追加すれば、どんどん用途を拡張することができます。例えば、家電量販店やドラッグストアなどのポイントカード、航空会社のマイレージカード、スポーツクラブの会員証、Edyなど。これらを、1台のおサイフケータイにまとめることができます。

もともとFeliCaは柔軟性・拡張性が高い仕様といわれており、それに非接触ICのリアル連携処理、携帯電話のネットワークとの結びつき、アプリケーションの追加などを実現したのがモバイルFeliCaです。ですから、おサイフケータイが秘めている可能性は結構大きいのです。

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おサイフケータイはどう使う

電子マネーのEdyを例に、おサイフケータイで買い物をするための準備作業を説明します。

対応機の選択

2006年8月現在、おサイフケータイ対応機種は、DoCoMo 18機種、au 10機種、Vodafone(2006年10月1日より、ブランド名をソフトバンクに変更の予定)5機種がラインナップされています。目印は次のロゴです。おサイフケータイには、携帯電話キャリア3社で共通のロゴを使っています。

購入時には特におサイフケータイだからといって特別なことはありませんが、JR東日本のモバイルSuicaにのみ対応していない機種(※)があるので、注意してください(※※)

※2006年8月末現在、DoCoMoで4機種、auで4機種、vodafoneは5機種ありますが、販売終了や新発売がありますので、未対応機種はほぼ毎月変わります。ご検討される場合には、店頭または最新のカタログなどでご確認ください。
※※JR東日本が求める通過性能基準を満たしていないとされた機種で、おサイフケータイとしては何の問題もありません。


第一段階:初期設定

新品のおサイフケータイは、普通の携帯と同じです。買い物はできません。最初に、おサイフケータイ用に初期設定を行います。どのおサイフケータイにも標準搭載されている電子マネーEdyアプリで初期設定を行います。


初期画面

初期設定を終えると、「店頭でのEdyチャージ(入金)」、「店頭での支払い」、「Edyギフトの受取り」、「残高・履歴照会」ができるようになります。

第二段階:サービス登録

再び、電子マネーEdyアプリでサービス登録を行います。登録は無料です。登録後は次の機能やサービスが利用できるようになります。
「ケータイでのチャージ」、「Mobile Edy(ネットでの支払い)」、「登録情報の変更・削除」、「パスワード忘れ」、「機種交換手続き」、「Edyレスキューサービス」(※)


サービス登録選択画面
※「Edyレスキューサービス」は、水没など携帯電話の故障時にEdy残高の返還を受けられるもので、事前の登録が必要です。

第三段階:チャージ(入金)

おサイフケータイにお金を入金します。以下の6通りの方法があります。1回の入金額は最高25,000円です。店舗によってはチャージャー(自動入金機)の制限で10,000円が上限の場合もあります。残高の上限は50,000円です。

おサイフケータイ(Edyの場合)のチャージ(入金)方法
方法 詳細
Edy加盟店店頭のレジで 一部のEdy加盟店でレジにて現金でチャージ可能。スタッフにチャージを依頼する。(※)
Edyチャージャー(現金入金機)で Edyチャージャー(現金入金機)は1,000円単位の現金でチャージ可能。(※)
パソコンでクレジットカードから パソコン用リーダー/ライター「パソリ」を使用して予め登録したクレジットカードからチャージ可能。
携帯電話でクレジットカードから 携帯電話による通信で、サービス登録時に登録したクレジットカードからチャージ可能。
モバイルバンキングで おサイフケータイで自分の銀行口座等からチャージ可能。
イーバンク銀行、三井住友銀行、東京三菱UFJ銀行が対応。
郵貯で 契約者の郵便貯金口座から毎月自動的に一定額の払込が行われ、その金額相当のEdyギフトが発行され、郵送されるので、受け取った後、コンビニや自動入金機でEdyにチャージ。
※チャージャー(自動入金機)の制限で10,000円が上限の場合もあります。

支払いと残高確認

支払時には、読み取り用の端末のEdyマークにおサイフケータイを軽くタッチさせるだけです。迅速かつ快適に支払ができます。入出金の履歴や残高は、パケット通信が可能であれば、Edyアプリで簡単に、おサイフケータイの画面に表示させることができます。

意外に大変−普及へのカギは導入の簡素化

Edyアプリはおサイフケータイに標準搭載されており、使えるまでの手順も比較的簡単な部類です。他のサービスを利用するためには、「申し込み」、「アプリケーションのダウンロード」、「初期設定」、「登録」を経てやっと使用可能になるのが普通で、通話とメールだけで携帯を利用している人には、かなり高いハードルです。導入の簡素化は普及へのカギになりそうです。

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安心して使えるか

もう一点、普及のカギになるのが、安心して使えるかどうかです。実際におサイフケータイを所有するOLのうち、おサイフ機能を使っているのは33.6%にすぎないというアンケート結果(※)があります。別の意識調査では「おサイフケータイは不安」が58%に達した例もあります。(※※)紛失したらチャージしたお金は戻らない、故障や機種変更はなるのか、といった不安があるようです。おサイフケータイは財布であると同時に携帯電話です。電池切れ、機種変更、故障はつきものです。紛失や盗難も考えられます。「おサイフケータイ」はそのときどうなるのでしょうか。

サンケイリビング新聞社のOLマーケットレポート/電子マネーについてのアンケート
※※アイシェア 携帯電話に関する意識調査(japan.internet.com 2006年2月10日の記事

電池切れ−切れた直後はまだ使える

モバイルFeliCaは微弱な電力で動作しますので、通話ができなくなっても電池が完全に放電していなければ動作します。電池を取り外したり、完全に放電したりすると動作しません。ちなみに携帯電話の電源を切っていてもおサイフ機能は使えます。

機種変更は前後の手続きが必要

Edy、モバイルSuicaは、どちらも機種変更をする前に、オンラインで残高を残高情報センターのサーバに預けます。機種変更した後、新しいおサイフケータイにソフトと残高情報をダウンロードすれば前と同じように使えるようになります。
「おサイフケータイ非対応機」に機種変更する場合は、Suicaは清算することができますが、Edyは返金されないので残高は使い切るか、無効にすることになります。
クレジットカード機能を持つおサイフケータイはいったん使用を停止し、機種変更をした後で、ソフトをダウンロードして、郵送されてくるIDなどを入力して、利用を再開します。

故障への対応はほぼ万全

水没などの故障については、サービス提供者ごとに対応策が用意されています。Edyでは、事前登録が必要ですが「Edyレスキューサービス」で残額を付け替えることができます。モバイルSuicaは、センターに連絡して利用停止手続きをした後、残高や定期券を付け替えることができます。ポイントカードやマイレージ、電子チケットなどもサービス提供者ごとに対応は異なりますが、店舗へ持参するなどしてポイントの付け替えなどは可能なようです。

紛失・盗難への対応は厳しい

サービス提供者によって対応が分かれます。Edyの場合は、紛失・盗難による補償はいっさいなく、運良く携帯電話が戻ってきても、使われていればチャージしたお金は戻りません。ポイントカードなども補償は難しいようで使われたポイントはほとんどの場合戻りません。
モバイルSuicaの場合は、センターに連絡して利用停止が完了した時点での残高は補償されます。
クレジットカード系のサービスでは、クレジットカードと同様に届け出た時点から60日前までさかのぼって全額を補償されるようになっています。

自己責任−紛失・盗難への備え

利用する端末が多機能、多用途になるにつれ、紛失や盗難による損害は大きくなります。
携帯電話に装備されている認証システムを有効にしておく、電話やサービスに設定するパスワードは推測されにくいものにしておく、事前に登録した電話番号から電話してロックをかける遠隔ロック機能や一時的にICカード機能を止める機能をすぐに使えるように手順や利用停止時の連絡先のメモを用意しておくなど、ユーザー側での対策を忘れてはなりません。

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おサイフケータイの将来

「多用途化」、「ポストペイ型へ」、「多機能化」をキーワードに、おサイフケータイのこれからを考えてみます。

多用途化

現在、おサイフケータイの用途は電子マネーが中心です。自動販売機、一般商店やコンビニ、量販店、レストラン、タクシー、公共交通機関、病院など、幅広い分野で利用可能です。
その一方で、おサイフケータイは、電子マネー以外にも用途を拡大しています。

おサイフケータイの多用途化の例
用途 サービス提供者
または実施者
内容
学生証 神奈川工科大学 おサイフケータイを利用したモバイル学生証システム。
時間割や出席率・出席情報、試験日情報などが携帯で確認ができる。
電気錠 YKK AP他 おサイフケータイが玄関の鍵になる。おサイフケータイをリーダーにかざすだけで、ドアの施錠と解錠ができる。同様の製品は他社からも出ている。
賃貸マンション NTTビジネスアソシエ おサイフケータイを電子錠と室内のセキュリティシステムに使う賃貸マンション。
タイムカード キングジム おサイフケータイをタイムカード代わりに利用できる勤怠管理システム。
シングルサインオン・システム
入退室管理システム
ハザマ PCに接続した読み取り機に携帯電話をかざして個人認証を受け、業務システムを利用する。オフィス内のドアに設置した読み取り機に携帯電話をかざしてドアのロックを解除する。
PCログイン パナソニックソリューションテクノロジー PCへのログイン時、アプリケーションやWebサイトでユーザー認証時におサイフケータイやICカードで自動的にユーザーIDやパスワードを入力する。

モバイルFeliCaは、柔軟で拡張性豊かな仕様と言われます。認証や識別をベースにしたあらゆる分野への適用が可能で、今後さらなる用途拡大が期待されています。

ポストペイ型へ

おサイフケータイの電子マネーはプリペイド型からポストペイ型へ移行しようとしています。
EdyやSuicaのようなプリペイド式では少額の買い物や使用頻度が低いうちはよいのですが、利用できる店舗が増え、使用頻度が高くなると、残高の変動が激しくなり、チャージの頻度も高くなって便利さが損なわれるようになります。そこで、クレジットカードのように使った分を後から決済するポストペイ型が注目されています。
DoCoMoは2005年12月におサイフケータイのクレジットカードサービス「iD」を開始しています。2006年4月にはiDに対応した小額決済向けのクレジットサービスDCMXとDCMXminiを発表しました。DCMXminiは、iDのリーダーライターで10,000円まで利用でき、携帯電話料金と併せて支払いができます。おサイフケータイ対応のFOMAはDCMXアプリを標準搭載しており、初期設定と簡単な審査でDCMXminiをすぐに使用できるようになっています。DoCoMoでは、iDとEdy、Suicaとの競合はないとしていますが(http://bcnranking.jp/service/11-00007329.html)、利便性で一歩勝り、取り扱い店舗数も他をしのぐ規模が予定されており、おサイフケータイの電子マネーの主流はポストペイ型へと移行すると思われます。

多機能化

DoCoMoは2005年秋に「トルカ」を発表しました。
クーポン券や店舗案内などの情報を、おサイフケータイのリーダーライターから携帯電話内に取り込む機能です。リーダーライターから情報配信が可能になります。トルカ対応の機種であれば、特別なアプリや操作は不要です。

トルカのロゴ

例えば、CDを購入しておサイフケータイで支払う時、自動的にそのアーティストのライブのクーポンを受け取るといった使い方ができます。2006年7月現在、目立った事例はありませんが、おサイフケータイが普及し、使用環境が整備されるにつれて応用事例が増えてくると思われます。

「小銭入れ」から「財布」へ

現在、Edyカードの累計発行枚数は1920万枚、そのうちおサイフケータイは360万台です(2006年7月1日現在)。利用可能な店舗数は約35,000店です。使える店舗がまだまだ少なく、コンビニによって、使えるのがEdyのみだったりSuicaのみであったりして相互利用もできません。しかし、リーダーライターの共通化、サービスの相互利用、多種対応など、環境は徐々に整いつつあります。
おサイフケータイで利用できる金額は、ポストペイ型への移行、クレジットカード化で、EdyやSuicaとは比べ物にならないほど高額になります。キャッシングも可能です。おサイフケータイは、「小銭入れ」から本物の「財布」に変身しようとしています。しかも、身分証明書であり、家に入るための鍵にもなる。日常の生活の中で、その「おサイフ」で通話し、メールをやりとりするのですから、携帯電話ユーザーの半数以上が、おサイフケータイのセキュリティに不安を持つのも解ります。おサイフケータイがさらに普及するためには、この不安感の払拭と導入のハードルを下げることが必要です。
2006年度携帯市場のけん引役は、番号ポータビリティとおサイフケータイだと言われます。
外出時にはポケットにおサイフケータイだけを持って、という時代は来るでしょうか。

モバイルFelica適用事例

参考URL

「おサイフケータイ」は、NTTドコモの登録商標です。

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