| 2009年 34号 発行日: 2009年10月13日 |
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「新型インフルエンザ」から学ぶ
新たな脅威から企業を守る事業継続管理
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第1章 新型インフルエンザA(H1N1)流行の実相
新型インフルエンザA(H1N1)の発生から今日に至るまでを振り返り、企業に与えた影響などについて整理してみましょう。 |
想定外だった低病原性新型インフルエンザA(H1N1)の流行と混乱をきたした日本国内の対応
2009年4月下旬、メキシコおよび米国で発生した新型インフルエンザは、その後世界各国に感染拡大し、収束する兆しもなく、感染者は増加の一途をたどっています。低病原性とはいえ死者も発生し、ハイティーンが中心を占めていた感染者の年齢層も、多様な年齢層へと拡大し、今後の感染拡大が国民生活や企業活動に与える影響は無視できないものとなっています。
発生時国内ではさっそく空港における水際対策が採られ、厚生労働省や自治体に電話相談窓口が開設、発熱相談センターや発熱外来などが設置されました。しかし対策内容が高病原性H5N1による新型インフルエンザを前提としたものだったために対策現場は混乱し、発熱相談センター、発熱外来はパンク寸前となり、また学校では国の一斉休校の方針について自治体との間で意見が分かれるなど混乱も発生しました。病原性がきわめて高い鳥インフルエンザを想定した備えはあったものの、軽症者の多い今回の新型インフルエンザA(H1N1)への対応は想定外であったことが、こうした対応の混乱につながりました。
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企業の対応の特徴
新型インフルエンザA(H1N1)の流行が拡大する中、企業は警戒感を強め、万が一に備えた対策や予防策の強化に動き出しました。しかし実際に流行した新型インフルエンザA(H1N1)の病原性は、高病原性の鳥インフルエンザの致死率2パーセントと比べて当初0.1パーセントと低く、タミフル、リレンザなどの治療薬も有効とわかりました。このギャップは企業の対応にブレをもたらしました。実際には全ての企業が実施したわけではありませんが、企業内対策本部の設置前倒しや、マスク備蓄量を従来の数倍に増やす、また感染地域への出張や旅行を自粛するなどの企業の動きが伝えられました。高病原性H5N1のフェイズ4の想定「感染地域へ出張および受け入れ禁止。海外帯同家族帰国命令」を採ったケースでは、その後の状況を踏まえて対策レベルを弱めた企業が少なくありませんでした。また感染の危険が高いと心配された不特定多数の顧客に接する小売・サービス業では、マスコミに取り上げられ、他社と比較された場合の対応の差が、顧客離れにつながることをおそれ、厳しい対応を採っているケースが数多く見られました。 |
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