2006年 22号  発行日: 2006年9月21日 バックナンバー

ハイビジョンと最近のテレビ事情

はじめに

本格的なデジタルハイビジョン放送の時代を迎え、テレビの選択と購入時に意識したいキーワードが三つあります。「地上デジタル放送」、「ハイビジョン」、「薄型テレビ」です。地上デジタル放送は20号のUp To Dateで紹介しています。今回は、ハイビジョンと薄型テレビにみる最近のテレビ事情を特集します。

第1章 放送の仕組み(ハイビジョンとは)

ハイビジョンは、かつてのアナログHDTV(High Definition TV:高精細テレビ)の愛称ですが、現在では、走査線の本数が750本以上、画面の縦横比(アスペクト比)が16:9の横長で、高精細な映像を扱う放送をデジタルかアナログかにかかわらず、ハイビジョン放送と呼んでいます。

現在、ハイビジョン放送の主流となっているのは、「衛星放送(BSと110度CS)のデジタルハイビジョン」、「地上デジタルハイビジョン」です。これらの放送と「地上デジタル放送」、「地上波アナログ放送」を数字で比較しました。

なお、標準画質放送をSDTV(Standard Definition TV:標準画質テレビ)と呼びます。

  BSデジタル放送 ハイビジョン 地上デジタル放送 ハイビジョン 地上デジタル放送 SDTV 地上波アナログ放送 SDTV
1 走査線 1125本 750本 525本 525本
2 走査方式 インターレース プログレッシブ プログレッシブ インターレース
3 画素数 1920×1080 1280×720 720×480 720×480
4 縦横比 16:9 16:9 4:3 4:3
5 ビットレート 24Mbps 17Mbps 9Mbps 4.5Mbps※
6 2時間番組をHDDに録画すると 22GB 15GB 8GB 4GB

※標準的な画質とされているビットレート
※BSアナログ放送もハイビジョン放送を行っていますが、2007年9月に放送終了の予定ですので、比較に加えていません。

1. 走査線

「走査線」は、光の点がテレビ画面の1コマを表示するときに、水平方向に描く線の本数です。

SDTVの走査線は525本、そのうち画面に映る有効走査線は480本です。BSデジタル放送ハイビジョンの場合は、SDTVの倍以上の1125本で、そのうち有効走査線は1080本。同じ画面サイズであれば、縦方向は倍の密度で映像を表現できることになります。大画面で観ても、近くで観ても、きめ細かな美しい映像を観ることができます。

2. 走査方式

「走査方式」は走査線が1コマの画面を作る方法のことです。

地上波のアナログ放送は、インターレース(飛び越し走査)方式を採用しています。525本の走査線を偶数・奇数に分けて、30分の1秒で偶数の走査線で1本おきに画面を描き、次の30分の1秒で奇数の走査線がその間を埋めるようにして画面を描きます。この動作を繰り返し、30分の1秒ずつで1画面(実際には半分)を描くことで、電波に載せる情報量を節約し、帯域を広げることなく、滑らかな動きを実現します。

ところが、画面が大きくなり、テレビの性能がよくなるとインターレース方式では画面のちらつきやにじみが気になるようになります。そこでプログレッシブ(順次走査)方式が採用されるようになりました。一度に1画面全部を走査する方式で、60分の1秒ずつ完成された画面で動画を表示しますので、ちらつきやにじみのない、美しい動画表現ができるようになります。液晶は、インターレース方式の電波を、テレビ自身が60分の1コマのプログレッシブ表示に変換して、表示しています。このことで、見かけ上画像の分解能が上り、従来の地上波テレビでも美しく見えるのです。

3. 画素数

「画素数」は1枚の画像を構成するのに必要な点の数です。

デジタルカメラ風にいうと、BSデジタルハイビジョンは約200万画素、地上デジタルは約100万画素、地上波アナログ放送は35万画素となります。画素数が増えれば増えるほど、映像は高精細になり、大きな画面で楽しめるようになります。

4. 縦横比

「縦横比」は画面の縦と横の比率です。

ハイビジョンの縦横比16:9は、横に広い人間の視野に近く、SDTVの4:3と比べると臨場感や迫力に大きな違いが出ます。

4:3のテレビの理想的な視聴位置は、画面の高さの5倍の距離といわれ、その位置から視聴することを前提に番組も作られました。16:9のテレビは、画面の高さの、3〜4倍の距離が視聴に適した位置です。32型のワイドテレビの画面の高さは約40cmです。視聴に適した位置は、画面から120cm〜160cmです。4畳半でも32型の視聴が楽しめることが判ります。人間の視野は横に広く、16:9の画面は視野全体を覆うように拡がります。

5. ビットレート

「ビットレート」は1秒間に伝送できるデータ量です。

「画素数」と同じです。一定の時間内では、情報量が多ければ多いほど、質の高い映像や音声を再生することができるようになります。例えば、DVD-Videoのビットレートは約9Mbpsです。これに対して、VHS標準録画したものは約500Kbps、VHSの3倍モードでは300Kbps程度です。なお、表中のビットレートは仕様上の最高の数値です。送信側、受信側の条件や電波状況に左右されます。

6. 録画データのサイズ

「録画データのサイズ」は、2時間番組を録画した場合のデータファイルの容量をビットレートに基づいて計算した参考値です。

SDTVに比べてハイビジョンの情報量は5倍以上です。この情報量がハイビジョン放送の豊かな表現力の源泉です。この大きな情報量を効率よく伝えるために、デジタル化への移行、データ圧縮技術、プログレッシブなどの画像表現技術が発展したのです。

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