基調講演④サステナブルな成長の実現に向けて
リーダーシップ・パートナーシップ・ビジネス変革
サステナビリティ・トランスフォーション実現の3つの鍵

富士通株式会社
執行役員副社長
COO,CRO 大西 俊介
基調講演の富士通講演では、富士通 執行役員副社長 COO,CROの大西 俊介が登壇。「サステナブルな成長の実現に向けて」と題して、2030年までに事業活動が環境や社会に与える影響をゼロではなくプラスにする「Net Positive」を目指す富士通の具体的な取り組みについて説明しました。
2030年に向けた価値創造
「Net Positive」を実現するテクノロジーカンパニーに
富士通では2020年、「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」というパーパスを掲げました。そして、2023年度からの中期経営計画の中では、「2030年に向けた価値創造の考え方」として、デジタルサービスによってNet Positiveを実現するテクノロジーカンパニーになることを打ち出しています。

富士通は2030年に向け、Net Positiveなテクノロジーカンパニーを目指す
Net Positiveとは、企業の事業活動が環境や社会に与える影響をゼロではなくプラスにする取り組みです。現時点では通常、企業の事業活動は環境や社会に何らかの負のインパクトを与えることが多いのですが、そのインパクトをマイナスからNet Zero(ネット・ゼロ)へ、そしてプラスとなるNet Positiveへと転換してくことの重要性が指摘されています。
2024年には地球が1年間に生み出す生物資源を8月1日に使い果たしてしまったことが話題になりました。つまり、2024年においては8月1日以降、人々の暮らしや企業の事業活動は環境や社会に負のインパクトを与え続けています。そうした負のインパクトは2024年だけでなく過去から現在まで長きにわたって蓄積されており、その状況を改善していくためにもNet Positiveを目指した取り組みが重要視されているのです。

企業活動による環境・社会への影響をゼロではなくプラスにすることが求められている
Net Positiveの実現に不可欠な
「リーダーシップ」「パートナーシップ」「ビジネス変革」
ポイントとなるのはサステナビリティと経済価値の両立です。Net Positiveの実現には、まずは企業の存在意義(=パーパス)を定めて目標に向かってコミットする「リーダーシップ」、単一企業では実現できない社会課題の解決に向けてエコシステムを構築する「パートナーシップ」、サステナビリティと経済価値を両立する「ビジネス変革」の3つの要素が不可欠であると考えています。

Net Positiveの実現に向けたグローバル動向と課題
Net Positiveの実現に向けたグローバルの動向を見ると、例えばFortune Global 500企業の3分の2以上がCO2削減目標を設定しているなど積極的な取り組みも見られています。富士通が「サステナビリティの取り組みのビジネス化状況」について調査した結果でも、サステナビリティと経済価値(経済合理性)を両立したビジネスはまだ10%程度ではありますが、確実に生まれて来ている状況です。こうした中、各企業においても富士通においても、2030年や2040年を見据えて、持続的かつ長期的にサステナビリティと経済性を両立させた取り組みを粘り強く続けていくことが大切であると考えています。
Net Positiveの実現に向けた
富士通の具体的な3つの取り組み
富士通では、Net Positiveの実現に向けて不可欠となる「リーダーシップ」、「パートナーシップ」、「ビジネス変革」のそれぞれの領域で、具体的な取り組みを実践しています。パーパスを実現する「リーダーシップ」では、持続的成長に向けて解決すべき重要課題としてマテリアリティを設定し、事業の変革を推進しています。パーパスを実現するために必要不可欠な貢献分野を「地球環境問題の解決」、「デジタル社会の発展」、「人々のウェルビーイングの向上」と明確化し、それぞれに具体的なKPIを設定しています。例えば、「地球環境問題の解決」では、「世界のGHG排出量削減への貢献」として0.3%を目標としています。

パーパスを実現するリーダーシップにおける富士通の具体的な取り組み
富士通単独では、実現できない社会課題の解決に向けてエコシステムを構築する「パートナーシップ」として、グローバルな業界団体やイニシアティブに参画しています。

グローバル業界大切団体やイニシアティブに参画し社会課題解決に向けた技術実装をリード
大切なことは、こうしたグローバルな業界団体やイニシアティブに参画し、具体的な活動をすることで「何ができて、何ができなかったのか」を明確にし、さらには「できなかったことをどう解決していくのか」というプラクティカルな議論のループを回していくことです。
「ビジネス変革」の領域における富士通の取り組みでは、テクノロジーやデータを活用して社会価値と経済価値を両立した、さまざまなビジネスを展開しています。例えば、東京海上グループとはサプライチェーン全体のリスクの可視化、有事における迅速な影響把握と意思決定を支援するサービスを共同開発して提供しています。また、大手製造会社との協業では3,000以上の拠点に散在している20万点を超えるパーツのデータを横断的に管理し、在庫管理の最適化を図りました。

さまざま企業との協業で社会価値と経済価値を両立したビジネスを展開
さらに全世界1,800名のビジネスリーダーへの調査に基づくNet Positive推進のための要諦をまとめたリポート、アセスメントツールなどを公開します。
日本は高齢化、資源不足、地震、台風など社会課題の先進国といえます。その中にある日本企業は、サステナビリティで世界をリードするポテンシャルがあると思っています。ファミリ会の会員企業と富士通が協力して課題解決に取り組むことで、世界をリードするようなユースケースが出てくることを期待します。
