2008年 30号  発行日: 2008年9月19日 バックナンバー

社会全体で取り組む「ユニバーサルデザイン」

アンケート

第2章 ユニバーサルデザインの活動プロセス

行政機関も推奨しているように、近年、ユニバーサルデザインは企業にとってもCSR(企業の社会的責任)として取り組むべき重要な活動に位置づけられています。さらに、ユニバーサルデザインを積極的に取り入れることで、品質の向上、顧客満足度の向上、そしてビジネスの効率化など、売上拡大や経営貢献などの効果も期待することができます。

製品やサービスの企画・開発の考え方

製品やサービスの企画・開発において、最も重要となるのはさまざまな利用者への「考慮」です。利用者とは、周囲にいるような人だけではありません。納期や費用、開発技術の先進性だけを重視して、製品を開発する側の視点だけで考えてもいけません。
ユニバーサルデザインの製品やサービスの開発には、人間中心設計プロセスの考え方が参考になります。以下がそのプロセスです。

ステップ1:対象製品・サービスの利用状況の把握と明示
最初に必要となるのが、利用者を理解することです。想像するだけでなく、利用者にアンケートをしたり、実際に使ってもらったりするなど、テストの実施も有効です。利用状況を明らかにすることで、何をどう改善すれば良いのかを考えることができます。
ステップ2:ユーザーと組織の要求事項の明示
製品コンセプトや開発に求められる要件を明文化し、企画・開発側のメンバーで共有します。利用者にも参加してもらって要件整理をしたり、設計要件をガイドライン化するのも良いでしょう。
ステップ3:設計による解決策の作成
開発への要求事項に基づき、解決策を考えていきます。課題の改善案を設計し、提案します。
ステップ4:要求事項に対する設計の評価
設計した改善案が要求事項を満たすかどうか(課題を解決できるかどうか)を確認します。専門家の評価や実際に利用者にテストしてもらうなどの各種評価手法を取り入れたり、評価のチェックリストを作成したりします。

製品やサービスの提供の意味

製品やサービスを企画・開発してそれだけで終わりということではありません。ユニバーサルデザインへの配慮や工夫を、周囲の人々に伝えていくことも重要です。
例えば、ATMの本体全面がへこんでいる(ラウンドボディ)のを多くの人は知っていることでしょう。しかし、なぜこのような形態になっているのかまでは理解できません。これは、車いすの人の利用を配慮しての措置なのです。
同じことは「音声案内システム」にも言えます。このように、障がい者に向けた配慮は、ともすれば健常者には理解できないことがあります。このためにも、多くの方に価値を認識してもらうため、その説明が求められるのです。
さらに、提供後のチェックも欠かせません。継続してお客様の声を集めて、製品改良に活かしていきます。これを繰り返すことで、製品の完成度を高めていきます。

日常業務でのユニバーサルデザイン

製品開発のほかに、ユニバーサルデザインの考え方はビジネスのあらゆる場所で応用できます。以下、できるところから実践していきましょう。

会議・報告
不明瞭な指示語を多用していませんか?
これ、それ、あれ、というような指示語では、目の不自由な方の理解を妨げます。同様に、自分の名前を言ってから話し始めないと、誰がしゃべっているかわからない場合もあります。また、はっきり聞き取れる声で、落ち着いてゆっくり話すといったことは、普段のコミュニケーションでも実践できます。
プレゼンテーション・提案書の作成
文字の大きさや配色は適正なものになっていますか?
グラフなどの図で、モノクロになると区別がつかないようでは、弱視の方にはわかりにくい情報となります。また、専門用語、略語を多用していると、大勢の人に訴えることはできません。相手の立場を考えて資料を作ることも、実践の1つです。

職場環境安全衛生の面
障がい者に対する配慮の面でも、職場環境は重要です。例えば通路に、荷物など、通行の妨げになったり、転倒の危険性があったりするものを置かないようにします。整理整頓をし、快適な職場環境作りを心がける必要があります。
ウェブサイトでの情報発信
ウェブサイトでの情報発信やサービスの提供は、外出が困難であったり、印刷物の文字を読み難い方にとって、社会参加を支援する重要なツールになってきています。ウェブサイト自体のアクセシビリティ(文字や色が変更できたり、画像に適切な代替テキストを付す等)に関する配慮や、順路案内を地図だけでなく文章でも解説するといった利用される方に必要な情報を用意していくことが大切です。

ユニバーサルデザインを適用したウェブサイトのリンク集

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