扶桑薬品工業株式会社 様
現状分析から設計・構築、バックアップの高度化まで
富士通による全方位支援でハイブリッドクラウド化を推進
医療の現場に欠かすことのできないブドウ糖注射剤や生理食塩液などの輸液製剤の主要メーカーであり、人工腎臓用透析剤のトップメーカーである扶桑薬品工業。同社では、インフラの構築や刷新に要するコストや運用費用の抑制、および柔軟性と拡張性に優れたIT環境を実現するため、クラウド化を決定する。同社は最適なクラウド環境の選択にあたり、富士通の「デジタルインフラアセスメントサービス」を活用。その結果を踏まえ、「FUJITSU Hybrid IT Service FJcloud-V」(以下、FJcloud-V)を導入するとともに、富士通のデータセンターを活用したハイブリッドクラウド基盤を構築している。
- 課題自社の掲げる要件に対して、最適なクラウドサービスを選択したい
- 効果富士通の全面的な支援により、IT基盤のハイブリッドクラウド化を推進
- 課題初の本格的なクラウド化であるため、選定基準が分からない
- 効果無料のデジタルインフラアセスメントサービスの利用により、最適なインフラ構成を策定
- 課題ハイブリッドクラウド化に際して富士通データセンターとのスムーズな連携が必須
- 効果FJcloud-VのL2延伸と富士通のネットワークサービスでスムーズな移行と連携を実現
導入の経緯
コスト削減に寄与し、柔軟性にも優れたインフラの実現を目指し、クラウド化に踏み出す
2022年に創業85周年を迎えた扶桑薬品工業は、医療の現場に欠かせないブドウ糖注射剤や生理食塩液などの輸液製剤の主要メーカーだ。1963年に日本で初めてとなる人工腎臓灌流原液「フソー」を開発。以後、独創的な医薬品等の開発・供給に邁進、人工腎臓透析液の分野ではトップシェアを誇る。
そうした扶桑薬品工業のビジネスや業務を支えるIT基盤において、近年、急務の課題として浮上していたのがクラウド化への本格的な踏み出しだった。これまで同社では会計、販売管理等の基幹系システムについて、オンプレミスにVMware vSphere®による仮想化基盤を構築し運用、同様に情報系システムも、オンプレミスにファイルサーバや認証サーバ等を立ち上げ運用を行っていた。
クラウド化に舵を切ろうとした背景について情報システム部 部長の梅原邦彦氏は、「5年に一度のシステム更改のたびに発生する、多額のリプレースコストを解消したいと考えていました。また、クラウドならビジネス環境や事業戦略の変化にも柔軟かつ迅速に対応可能なIT基盤が実現できると期待しました」と説明する。
しかし、同社にとって本格的なシステムのクラウド化は初めての試みであったことから、梅原氏は当時の懸念について次のように続ける。「稼働率から移行方法まで、何を選定基準にすればよいのか、どのようなクラウドサービスが自社にとって最適なのか、当初は何も分からない状態でした」
導入のポイント
富士通のアセスメントサービスを利用し、自社にとって最適なクラウドを選択
そうした扶桑薬品工業の悩みを解決したのが、富士通が提案した「デジタルインフラアセスメントサービス」である。同サービスは、現行のインフラ資産の状況やシステム要件を踏まえた上で、企業に最適なインフラ方針を富士通の専門技術者が無料で分析・診断するものだ。情報システム部システム管理課 課長の西岡啓造氏は、「当初は基幹系も含めてすべてのシステムのクラウド化を検討していました。しかし、当社の業務内容も踏まえたアセスメントを行ってもらった結果、停止が許されない基幹系システムは安定稼働を第一としてデータセンターに設置、まずは情報系システムをクラウド化して両者を連携させる、という提案を頂きました」と振り返る。
また、梅原氏も「アセスメントを通じて富士通からは、クラウドベンダーが自社のサービスで謳っている可用性や稼働率には条件によって大きな差異があること、データ送受信時のコストの考えなど、サービス選択で留意すべきポイントも教示してもらえました」と話す。
デジタルインフラアセスメントサービスの結果を踏まえ、扶桑薬品工業はクラウド化に向け複数のベンダーのサービスを比較検討。最終的に選ばれたのが、富士通が提供するVMware vSphere®基盤のクラウドサービス「FUJITSU Hybrid IT Service FJcloud-V(以下、FJcloud-V)」と、富士通のデータセンターサービスを併用したハイブリッドクラウド環境だった。
クラウド基盤としてFJcloud-Vを選択した理由の1つは、同サービスが有するL2延伸により、オンプレミス環境のネットワーク構成を維持したままで、FJcloud-Vとのハイブリッド構成を実現できることだ。情報システム部企画開発課 係長の春山弘一氏は、「ハイブリッドクラウド化で懸念していたのはデータセンターとクラウド上にあるサーバ間の円滑な通信の実現でした。FJcloud-VであればL2延伸が可能であるため、両サーバ間の接続に際して大きな設定変更も不要で、かつ、通信も問題なく行えると判断しました」と説明する。
さらにデータセンター間、クラウド間を閉域ネットワークにより接続する「Digital enhanced EXchange(DEX)が提供されていることも選択の決め手となった。データセンターとクラウド間を構内接続することでパフォーマンスが確保できるだけでなく、セキュリティも担保されるようになるからだ。西岡氏は、「クラウド化されるファイルサーバへのスムーズなアクセスをはじめ、基幹系・情報系システムの連携により販売実績データが日次で更新されるため、遅延の発生は回避しなければなりません。DEXを活用すれば、その課題を解消できると考えました」と説明する。
このほか、FJcloud-Vはシングル構成であっても99.99%の稼働率が適用されるため、システムの安定運用の維持に加え、マルチ構成が不要となり大きなコスト削減効果を享受できる点も、同社の要件にマッチするポイントだった。
そして、何よりも大きな選択の理由となったのが、富士通への高い信頼感である。梅原氏は、「富士通には40年以上に亘り、当社のシステムをサポートし続けてもらってきました。私達の業務内容についても熟知しており、今回も要件定義に際して、私たちが気付かなかった点を都度、補足してくれました。そうした長年の協力関係で培われた信頼感も、富士通を選んだ大きな理由です」
効果と今後の展望
ビジネスに寄与するシステム開発に専念可能なインフラの実現を目指す
2022年7月から開始されたハイブリッドクラウド化のプロジェクトは、2023年8月の本番稼働を目指し、構築が進められている。なお、今回はFJcloud-Vのソリューションサービスである「バックアップ/セキュリティサービス(Acronis Cyber Protect Cloud)」の採用により、セキュリティを確保しながら、柔軟なバックアップが可能な基盤も実現された。春山氏は「Acronis Cyber Protect Cloudはランサムウェア対策機能とクラウドストレージによる優れた柔軟性・拡張性に加え、バックアップデータに対するウイルス検索機能などデータを安全に守る機能が豊富です。これらのメリットも評価し、採用を決めました」と説明する。
当初掲げたコスト削減効果については稼働後に検証を実施する予定だが、クラウド化による柔軟なシステム構築・拡張では、既に社内の各部署から新システムの立ち上げ依頼が寄せられており、本番稼働後、順次取り組んでいきたいという。
そして、扶桑薬品工業が将来的なIT基盤の姿とするのが、インフラの状況に左右されることなく、アプリケーション開発に専念できる環境の実現である。梅原氏は、「例えば、OSのアップデート時にはシステム検証が不可欠であるなど、まだまだインフラについては煩雑な作業を強いられているのが現状です。今回のハイブリッドクラウド化はそのような負荷を解消し、ビジネスに寄与するアプリケーション開発に専念できる環境を実現するための第一歩として捉えており、富士通には引き続き優れた提案やサポートをお願いしたいと考えています」と強調する。
富士通の支援のもと、クラウド化に向けて大きな一歩を踏み出した扶桑薬品工業。さらなる理想のIT基盤を追求していくにあたって、同社が富士通に対する期待は大きい。
扶桑薬品工業株式会社 様
本社事務所 | 大阪市城東区森之宮2丁目3-11 |
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(茨城工場) | 茨城県北茨城市中郷町日棚1471番25 |
設立 | 1937年 |
ホームページ | https://www.fuso-pharm.co.jp/ |
事業内容 | 医療用医薬品の開発・製造 |
[2022年11月掲載]
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