#わが社のパーパス 三和酒類様工場見学編


大人の社会科見学「日本を代表する食文化、酒造りの現場から」

会報Family406号では、「#わが社のパーパス」として、本格麦焼酎「いいちこ」で知られる大分の総合醸造企業、三和酒類株式会社様のインタビュー記事を掲載。酒造りに対する想いや、近年、策定したパーパス「世界を、“WA”でいっぱいに。」について語っていただきました。
同記事の取材にあたり、編集委員が現地に赴き酒造りの現場を取材してきましたので、本誌と連動したWeb記事として体験レポートをお届けします。
記事の最後にはお酒のプレゼントのお知らせもありますので、ぜひご覧ください!

三和酒類株式会社

いいちこ日田蒸留所
所在地 :〒877-1354 大分県日田市西有田810-1  TEL.0973-25-5600
     https://www.sanwa-shurui.co.jp/factory/hita/
操業開始:2002年(平成14年)4月
営業時間:10:00~16:00 入場料 :無料 定休日 :毎週火曜日(祝日の場合は営業)・盆・年末年始
安心院葡萄酒工房
所在地 :〒872-0521 大分県宇佐市安心院下毛798  TEL.0978-34-2210
https://www.ajimu-winery.co.jp操業開始:2001年(平成13年)10月
営業時間:09:00~16:00(園内見学17:00まで可) 入園料 :無料 定休日 :毎週火曜日(祝日の場合は営業)・年末年始

豊かな自然が多彩な原酒を育む「いいちこ日田蒸留所」

大分県日田市は、江戸時代には幕府が直轄する「天領」として栄えた九州北部の要衝です。今も当時の町屋が多数残され、風情豊かな街並みは「九州の小京都」として人気の観光スポットになっています。
周囲を緑深い山々に囲まれた日田盆地には筑後川の支流が注ぎ込み、清水に恵まれた「水郷(すいきょう)」と呼ばれています。こうした環境のもとで、豊富な水資源を活かした良質な焼酎造りを行うべく、「いいちこ日田蒸留所」は2002年に誕生しました。
蒸留所に到着すると、まず目を奪われたのが初夏の緑の美しさ。春には桜、秋には紅葉、冬には雪化粧と、「いいちこ」の原酒を育む“原酒の杜”では、四季折々の自然が楽しめます。お迎えいただいた浦中所長が「焼酎の成分は75%が水。良質な水があってこその焼酎造りですから、自然の恵みに対する感謝の気持ちを忘れてはならない。そうした想いを込めて、この豊かな森林を育てています」と語っていたのが印象的です。



緑との対比が美しい赤レンガの建屋は、築20年とは思えないレトロな雰囲気。もともとは洋酒メーカーの工場だったものを買い取り、焼酎の蒸留所として整備したものだという。
蒸留所内には見学コースが整備され、パネル展示や動画で焼酎造りの工程が分かりやすく解説されています。案内いただいた藤田さんによると、コロナ禍以前は年間6万人もの見学者が訪れたそうです。そのうち約半数は海外からの観光客で、「いいちこ」をはじめとした焼酎の人気が、国内にとどまらず世界に広がっていることが分かります。
一基1万5千リットルもの大きな釜の中では、地下150メートルから汲み上げた地下水に、大麦に種麹を吹き付けて育てた「小麦麹」と独自に開発したオリジナル酵母を合わせて発酵させています。発酵が盛んな釜の表面がプチプチと泡立つのが見学通路からも見て取れます。
発酵による「もろみ造り」は一次仕込み、二次仕込みと二度にわたって行われます。二次仕込みでは小麦麹でなく蒸麦を投入するのが一般的だそうですが、ここでは一次、二次ともに小麦麹を使う「全麹仕込み」にこだわっていて、それが麹によるコクと深みを生み出しています。


じっくりと醸されたもろみは、ステンレス素材のポットスティル(単式蒸留機)で蒸留されます。蒸留方式には2種類あり、通常の常圧蒸留からは味わい重視の原酒が、ポットスティル内の空気を抜いて行う減圧蒸留からは香り重視の原酒が生まれます。この両者をブレンドすることで、味と香りを両立させた本格焼酎が生まれるのです。
蒸留したての原酒は重く荒々しいフレーバーですが、樫樽やホーロータンクでじっくり寝かせることで、丸みがあって穏やかな味わいへと変化していきます。先述した蒸留方式だけでなく、原料となる大麦の品種や酵母の種類、貯蔵方法など変えることで、それぞれ味や香りが異なる原酒が生まれます。それら多様な原酒をブレンドすることで、常に変わらぬ「いいちこ」の豊かな風味を創り出しているのです。


「見学いただいた方に、異なる原酒をブレンドしていると説明すると、驚かれる方も少なくありません。焼酎造りにはそうした奥深さがあり、組み合わせ次第で新たな味わいを創造できます。今後も焼酎の魅力とともに、造り手のこだわりや喜びについてもお伝えしていきたいですね」と藤田さんが語ったように、焼酎造りの奥深さやを実感できる貴重な体験でした。


日田蒸留所)所長 浦中 直也 氏/課長 藤田 善也 氏

霧深い盆地のテロワールを活かした「安心院葡萄酒工房」

宇佐市南部に位置する安心院(あじむ)盆地は、朝晩の寒暖差が大きいため霧が生じやすく、晴天の朝には一面が霧に覆われる幻想的な風景が見られます。温度差が激しく日照時間が長い気候風土はブドウ栽培に適していることから、1966年に国営農地開発事業の一環として、「西日本一のブドウ団地」をスローガンに栽培が奨励されました。
この地で育った豊富で良質なブドウを原料に、三和酒類様がワイン醸造を始めたのは、今から半世紀前の1971年のこと。それから30年後の2001年に、ブドウ栽培から醸造、貯蔵、試飲・販売までをトータルに担う拠点として、「安心院葡萄酒工房」が誕生しました。


西洋風のお洒落なエントランスをくぐると、そこには深い緑に包まれたワイナリーが。案内いただいた岩下さんから「杜の中のワイナリー」がコンセプトと聞いて納得しましたが、驚かされたのは、もともとは更地だったということ。植樹から始めて丹精込めて育てた木々が、約20年後にはこれだけ豊かな森になり、多くの鳥や昆虫、小動物が暮らす豊かな生態系となっていることに感動を覚えました。



森の奥に広がる「あじむの丘農園」では、約15種類ものワイン専用種を育てながら、品種開発に向けた試験栽培も行っています。もともとは4ヘクタールの休耕地を開墾することから始まったものが、「いいワインはいい畑から」を合言葉に、土づくりからこだわって栽培技術の向上に努めた甲斐あって、上質なブドウが育つ農園へと成長。あわせて栽培面積も拡大し、今ではトータル30ヘクタールに及んでいます。
「ワイン原料にできるブドウを収穫するまでには、栽培開始から10年はかかるのもの。現在、ここで造るワイン原料の1/3が自社産ブドウで、2/3は近隣のブドウ農家から仕入れていますが、あと数年で逆転できるでしょう」と岩下さんは語ります。
より多くの人にワイン造りに親しんでもらおうと、ここでも醸造場などに見学コースが整備されています。栽培されたブドウの粒と枝をより分け、果汁を絞り、醸造、そして瓶詰めまで、機械化された一連の工程を見るのは何とも楽しいもの。瓶詰めラインでは、瓶同士の摺動で品質を損なわないよう、瓶を一本ずつ動かしながら充填する方式を採用。検査工程では、異物が混入していないかを目視と画像処理とでダブルチェックするなど、随所に品質へのこだわりが見られます。



樽や瓶に詰められたワインは、一定温度に管理された半地下の貯蔵庫で熟成されます。一見、同じに見える樽ですが、原料となる木の産地や、内面の焼き焦がし具合など、それぞれ異なるのだとか。同じワインでも熟成させる樽によって味わいが異なり、それらを巧みにブレンドすることで、複雑で奥行きのあるワインの味わいが生まれるのです。
また、貯蔵庫内の通路には様々な地域、年代のワイングラスが展示されていて、その美しさに目を見張るとともに、ワイン文化の歴史を感じさせてくれます。
一通りワイン造りの工程を見学した後は、お待ちかねの試飲タイム。赤ワインや白ワイン、スパークリングワイン、デザートワインまで十数種ものワインのテイスティングが楽しめます。もちろん、もちろん、ドライバーの方はワインを試飲できませんので、特製のブドウジュースを。
土壁、漆喰仕上げの情緒あふれる試飲ショップ内では、安心院ワインやブランデー、ブドウジュースなどのショッピングや喫茶も楽しめます。ワインの幅広さ、奥深さが楽しめるひと時でした。
安心院葡萄酒工房の設立当初から携わってきた岩下さんにワイン造りの魅力を伺うと「自然の恵みを活かして造るものだけに、毎年、出来映えが違う。それがワイン造りの難しさであり、魅力でもある」とお答えいただきました。
「ワインと言えばフランスをはじめヨーロッパが本場と言われますが、日本ワインの実力は年々向上して、海外でも認められつつあります。これからも安心院のテロワール(気候や風土・土壌など地域独自の環境を意味するフランス語)を大切にしながら、より良いワインを造り続けて、国内はもちろん世界中の方々にお届けしたいですね」との岩下さんの言葉から、ワイン造りに込めた情熱の深さが感じ取れました。



会報family編集委員長 山宿 信也 氏/安心院葡萄酒工房 課長 岩下 理法 氏

今回の取材では、紹介した両施設に以外にも、仕込みから蒸留、貯蔵、瓶・パック詰めまでを一貫して担う本社工場や、麹と発酵文化を世界に発信すべく、2022年に新設された「辛島虚空乃蔵」も案内いただきました。
どの施設でも感じたのが、整備や清掃がすみずみまで行き届いている清潔感と、スタッフ1人ひとりの礼儀正しさ。それらのおかげで、「また訪れたい」と自然に思えるような、楽しい時間を過ごせました。皆さんも近くを訪れる機会があれば、ぜひ、足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。


編集委員コメント

今回の取材には会報Family編集委員長である山宿氏も参加し、三和酒類様の酒造りへの想いや、造り手の言葉に熱心に耳を傾けていました。取材後のコメントを紹介します。
“三和酒類様の社是に「おかげさまで」という言葉があるそうです。人や自然や地域社会などあらゆるものに謙虚に感謝するという姿勢がこの言葉に象徴されています。
何もない土地に木を植えて育て上げた「杜のワイナリー」、隅々まで清掃の行き届いた蒸留所、すれ違う度に気持ちの良い挨拶をしてくれる工場のスタッフの方々。
素晴らしい環境を作り上げているのは、経営者から現場スタッフまで全ての方の一貫した想いでした。
理念が会社の隅々まで浸透している組織とは、こんなにも清々しいものなのかと感嘆しました。
日田蒸留所や安心院葡萄酒工房は、本当に気持ちの良い場所だったので、ぜひ再訪したいと思いました。”
編集委員長 山宿 信也(株式会社マルハン)

限定いいちこ、スパークリングワインプレゼント!


いいちこ日田蒸留所でしか手に入らない、オリジナルのブレンドが楽しめる「いいちこ」や、安心院葡萄工房で伝統的なシャンパン方式で作られている「スパークリングワイン」を3名の方にプレゼントします!
ご希望の方はこちらからご応募ください。
なお、お酒の種類は選べません。発送をもって、当選とさせていただきます。
〆切:2022年9月31日

デジタル冊子

406号冊子のデジタル版は以下からまとめてダウンロード可能です。
またバックナンバー(2000年10月発行 275号以降)の会報FamilyをWeb上でご覧いただけます。

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