2007年 25号  発行日: 2007年6月11日 バックナンバー

2007年度FUJITSUファミリ会 春季大会
開催日:2007年5月18日 開催地:東京国際フォーラム

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アンケート

論文表彰

論文表彰者の皆様

論文表彰では、まず論文委員会の吉田委員長(清水建設株式会社)より、審査経緯の報告がありました。

論文委員長 吉田委員長

論文委員会 吉田委員長
(清水建設株式会社)

皆様こんにちは。ただいまご紹介いただきました清水建設の吉田でございます。
2006年度の論文審査の経緯、ならびに結果につきまして、簡単ではありますが、ご報告させていただきます。
2006年度は、前期・後期、合せまして39編のご応募をいただきました。
ご応募いただきました皆様、また、ご応募にご協力いただきました会社の上司の方をはじめとする皆様に、改めてお礼申しあげます。ありがとうございました。

さて、論文委員会では、お寄せいただきました全論文につきまして、厳正に審査いたしました。その結果、「秀作論文」2編、「奨励論文」6編を入賞論文として選定させていただきました。

秀作論文に選定されました「大阪ガスにおけるIP電話への取り組み」や「建築現場事務所のIT環境の標準化」の論文をはじめ、「ICタグ活用の豚トレーサビリティシステム」、「サービスステーションPOSハードディスク障害予兆検知システム」、「業務パッケージ導入の選定基準」、「社内システム統合に伴うシングルサインオンシステムの導入」、ISMSの国際規格であります「ISO27001の認証取得」--等々、皆様が日頃抱えておられる課題、あるいはお客様の課題を、その会社の事情に即して工夫され、解決されたということで、論文委員会では高い評価を得たものであります。また、「街角ロボットの実現」という論文をいただいていまして、この論文は2年ほど前に企画・アイデア論文として応募いただき入選論文になり、その後地道な活動を続けられ、今回、実施の試行の報告をいただいたということで、論文委員会としましても大変敬意を表したいと思っております。

なお、前期入賞論文4編につきましては、今日の『富士通フォーラム2007』の中で発表させていただきました。多数の方にご参加いただき、大変ありがとうございました。

次に論文の活用とご応募につきまして、この場をお借りして、お願いをさせていただきたいと思います。
まず、論文の活用についてのお願いです。論文は、ファミリ会のホームページに掲載しております。この1年間のアクセスを見てみますと、ダウンロードの多い論文では1,000件ほどとなっております。ご覧いただく方も増えていらっしゃると思いますが、IDとパスワードが必要になりますので、まだお持ちでない方は申請いただければ、ファミリ会の会員の方であれば発行いたします。是非、取得いただき、論文を活用いただきたいと思います。
次に、論文のご応募についてのお願いです。

現在、2007年度の論文を募集しております。昨年度までは、前期・後期の年2回募集を行っておりましたが、今年度からは年1回の募集とさせていただくこととなりました。エントリーの締切りが7月20日、原稿の締切りが8月31日となっております。あと1か月ございますので、是非、ご応募のほど、よろしくお願いいたします。

本日この場におられる皆様は会社の上司の立場の方が多いと思います。若い方が日頃苦労して上げられた成果を、是非、社内だけでなく社外に発表する機会を設けてあげていただきたいと思います。社外の人が分かるようにものを纏める、あるいは、ここにおられる上司の方が、その論文を見て助言、指導していただくということが、大変意義のあることではないかと思っております。是非、ご応募のほど、よろしくお願い申しあげます。

論文委員をやっておりますと、論文を読むのが大変でしょうと、よく言われますが、論文委員の方は、みなさん、読むのが非常に楽しみ、あるいは勉強になるという方ばかりですので、沢山ご応募いただいても大丈夫です。是非、よろしくお願いいたします。

最後になりますが、ご多忙の中を論文を執筆いただきました皆様、また、審査を担当いただいた論文委員の方々、ならびに論文の編集・発行に協力いただきました富士通株式会社殿にお礼申しあげまして、簡単ですが、ご報告とさせていただきます。
ありがとうございました。

秀作論文

タイトル:「大阪ガスにおけるIP電話への取り組み―6,000台の無線IP電話を含む10,000台のIP電話システム構築を通して―」

コメント: 大阪ガス株式会社  伊津野貴彦 氏
伊津野貴彦 氏

伊津野貴彦 氏

IP電話導入プロジェクトは、「ユビキタスオフィス」という当社のIT施策の一環で立ち上がりました。その中で電話の効率的な使い方を一から検討し、無線LAN対応携帯電話によるモバイルセントレックスという形態が、当社のニーズに最も適していると判断しました。導入においては無線LANの設定に一番苦労しました。電話の無線出力がPCに比べて弱いため、PCでは通信できる場所でも電話では届かない場合があります。また、携帯電話ですから、無線LANのアンテナとアンテナの間を移動するときでも会話が途切れないように高速につなぎ変える必要があります。そのために無線エリアの重ね方やアンテナの設置場所が最適になるように試行錯誤しました。無線LANを利用したIP電話は、おそらく当社が世界初の大規模導入ということで、世の中にノウハウがほとんどなく、すべての動作を検証しながら構築していきました。今後は、業務システムを携帯電話のブラウザ上でも稼働するように変更するなど、携帯電話を活用して従来以上に業務の効率化が図れる取り組みをしていきたいと考えています。

タイトル:「建築現場事務所のIT環境の標準化」

コメント: 株式会社朝日工業社  牧瀬博詔 氏
  株式会社朝日工業社  長堀秀之 氏
牧瀬博詔 氏

牧瀬博詔 氏

以前、当社が論文表彰を受けたことがあり、会社から応募を勧められました。当社の社員が常駐する建設現場は常時300か所前後あり、それぞれIT環境が異なります。私は現場経験者なので、他の設備工事業者さんと一緒にネットワークを結んでいる現場を数多く見ています。しかし、パソコンを経由したウイルスの攻撃や不正侵入、情報漏えいなどの心配があるため、他社との接続を前提とした安全なIT環境の構築が望まれていました。当社では今まで他社とネットワークを接続することは禁止しておりましたが、去年の3月に標準化が完成して正式に他社との接続を許可しました。現在、50か所くらいの現場で順調に稼働しています。現段階では最低のスペックで組んでいますので、現場のCADの容量や写真の容量が増えてきた際の対応を考えています。ただ大きいポータブルディスクがないため、バックアップがしっかり取れないんですね。この辺が今後の課題だと考えております。

長堀秀之 氏

長堀秀之 氏

当社の基幹システムは社内のサーバに接続して使用するので、建設現場からでも社内ネットワークに接続しないと作業ができません。そのため、他社とネットワークをつないでいる現場では、セキュリティ面で不安があります。安全なネットワークを構成してIT環境を統一するため、今回の標準化を検討しました。現場では自社に接続するよりも、むしろ同じ現場内で作業をしている他社と接続するほうが重要です。今回の標準化によりIT環境の構築方法が確立でき、全現場で安全な環境を構築できるようになりました。また維持管理にもネットワークスキルが必要ないため、誰でもが安心して作業を行えます。この考え方が業界全体に広まることを期待しています。

奨励論文

タイトル:「SS-POSハードディスク障害予兆検知システムについて」

コメント: 新日石インフォテクノ株式会社  小園光弘 氏
小園光弘 氏

小園光弘 氏

これまで、POSシステムの障害対策としては、発生後の早期復旧を目指していましたが、復旧時間短縮には限界があり、サービスステーションの営業が長時間止まってしまうということがありました。そこで障害が発生する前に、障害の予兆を捕まえて対応できるシステムの開発を検討しました。システム開発は2005年の夏から取り組みを開始し、同年12月に適用しました。既存の仕組みを活用できたことから、開発期間も短時間ですみました。導入後、障害の発生率が下がり、効果を実感できました。今後も障害発生率をもっと下げていきたいと考えています。現在のシステムは予兆の検知にSMART情報を採用しているのですが、その精度を上げて、発生率を下げることを検討しています。今も改良を進めておりまして、近々警告レベルの値を見直して新たに設定する予定です。

タイトル:「ICタグを使用した「豚トレーサビリティシステム」の開発・導入」

コメント: 富士通SCMシステムズ株式会社  渡辺光夫 氏
渡辺光夫 氏

渡辺光夫 氏

日本でも狂牛病が確認されたこと、輸入食材から高濃度の残留農薬が検出されたことなどから、食品のトレーサビリティが必要との声が聞かれるようになり、農林水産省は、これに応え、生産情報公表JAS規格を制定しました。このような中、当社の営業が農林関係の企業から「豚のトレーサビリティに良い方法はないか?」と相談されたことから、ICタグを使用した豚トレーサビリティシステムの開発が始まりました。私が主に担当していたのは工場の情報システムです。生体向け(豚)のシステムというのは初めてでした。このため、まず農場の運用の方法が分からないので、農場内に入り、実際の作業を見せてもらい、豚にICタグ(電子耳票)を取り付ける作業も自分たちで行い確認しました。これらは初めての経験でした。豚トレーサビリティシステムは2004年11月から運用を開始し、耳標などの改良を重ねた結果、昨年くらいから安定して使えるようになっています。開発したシステムは農林水産省が制定している生産情報公表JAS規格に準じたシステムとなっています。現在は、農場から、実際の経営に役立つような情報も加えたいという要望がありますので、機能拡張などを検討しています。

タイトル:「業務パッケージ導入の成功の秘訣−失敗しないパッケージ選定プロセスの確立−」

コメント: 中部電力株式会社  澤井志彦 氏
澤井志彦 氏

澤井志彦 氏

当社では開発期間短縮などを目的として積極的に業務パッケージを導入しており、導入後2年くらい経過したところで、導入事例を検証するためのワーキンググループができました。そこでいろいろと評価をしてみまして、得られた知見を論文に起こしてみようということになったのです。業務パッケージと一言でいっても、規模や業務機能、システム形態などにおいて千差万別であって、得られた知見をどのように汎化するかという点で一番悩みました。リスク分析・評価の方法を例示していくという、基本方針が決まった後はスムーズに運びました。パッケージ選定において、リスク評価をして導入の可否を検討するといった道筋ができたこと、また、その評価項目を標準化できたことが大きな成果だと思っています。今後、今回標準化した内容に則って導入したパッケージに対して詳細に分析していく予定です。

タイトル:「エンジニアリング業界として初のISO27001認証取得 認証取得プロジェクトの成果と課題」

コメント: 日揮情報システム株式会社   田中修司 氏
  日揮情報システム株式会社   鈴木茂明 氏
田中修司 氏

田中修司 氏

お客様との取引上で情報セキュリティへの取り組みが不可欠になってきたこと、また、社会全体の取り組みとして、情報セキュリティへの対応は避けて通れないこともあり、一昨年2005年の秋にISO27001の認証取得プロジェクトがスタートしました。情報セキュリティは、本来会社全体として取り組むべき課題ですが、まずは自分たちの足元から確実な体制を作っていこうと考え、認証取得範囲はIT基盤に絞り込みました。ISMSの構築では、情報セキュリティの三要素であるC.I.A(機密性・完全性・可用性)をバランスよく配分することが必要です。私たちは、世界のいろいろな国々でプラントを作る仕事をしていることもあって、IT基盤の安定稼働は業務遂行上必要不可欠ですので、可用性の確保やBCPの検討などについても十分な検討を行いました。

鈴木茂明 氏

鈴木茂明 氏

メンバー間の意識合わせといいますか、モチベーションをどうやって高めながら、メンバーの歩調をそろえていけばいいのかというあたりが、当初苦労した点でしょうか。でも短期間ながら、ISO認証取得までのプロセスでスキルビルディングができたと思っています。とりあえず認証取得ができたという局面での論文発表だったわけですが、これからは全社的な取り組みとして、浸透させていきたいですね。まずは足元をきっちり固めて、ISO27001の規格に基づいたマネジメントシステムを社内に根付かせ、序々に適用範囲を広めていこうというのがこれからの課題だと思っています。

タイトル:「シングルサインオンシステムの導入における課題」

コメント: ヤマトシステム開発株式会社  永住健太 氏
永住健太 氏

永住健太 氏

「シングルサインオン」は、技術的には新しくないものの、意外と事例や具体的なデータが少ないため、上司から論文を書いてみたらどうかと勧められたのをきっかけに応募しました。また自分のやってきたことをまとめる意味にもなりました。私の所属部署は新技術の調査・研究や導入を目的としているので、当初、シングルサインオンにおいても検証目的で取り組んでいましたが、社内での要望が高かったことから適用するところまで発展しました。システムに関しては、思ったとおりの効果が得られました。社内の人々に、セキュリティの重要性に対する理解を得てもらうことが今の課題です。そのために社内のニーズにはどのようなものがあるか聞き出したり、本当に最適なシステムなのか検証するなどして、運用するうえでどうやって調整していくかを検討しています。また最近は、日本版SOX法の1つのソリューションとして、アイデンティティ管理やアクセス管理といった技術の調査にも取り組んでいます。

タイトル:「街角ロボットの実用化検討事例」

コメント: 富士電機システムズ株式会社  高畑達 氏
高畑達 氏

高畑達 氏

「街角ロボット」は、3〜4年くらい前から取り組んでいます。街中にある自販機を使って、新たなユビキタス社会における社会インフラの構築を目的とした取り組みで、前回も表彰していただきました。今回は実用化検討として、いろいろな実証実験を繰り返してまいりましたので、実用化に向けての取り組みを論文にしました。このインフラでどういったビジネスモデルを作れるかという段階にきています。駅ですとか、バスターミナル、集合住宅など、街の中にある自販機に近づくと、その周辺の情報が得られたり、サービスの提供を受けられるというイメージでしょうか。ICタグ、防犯カメラ、センシングネットワーク等の機能を自販機に付加できますから、自治体はもちろん、いろいろな企業さんとのタイアップも考えられます。通信の問題や、ソフトウェアをどうするであるとか、運用にあたっては広告の取り扱いなどもあるでしょうね。そのあたりは、これから検討していかなければならないと思っています。

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