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「傾く」(かたむく)の古語にあたる「傾く」(かぶく)。今は使わないが、「異風を好み、常識を打ち破って派手なことをする」というような意味で、歌舞伎の語源ともなった言葉だ。歌舞伎とは元来、斬新で革新的な芸能なのだ。 |
京都・四条大橋の北東たもと、鴨川を背にして立つ「出雲(いずも)の阿国(おくに)」は、安土桃山時代から江戸初期にかけて活躍した天下一の踊り手で歌舞伎の始祖と謳われる女性。しなやかな肢体を派手な男性装束で包み腰にひょうたん、左手で刀を肩にかついでポーズを決めている、その姿はかっこよく名実ともに「傾き
(かぶき)者」だった。 |
四条大橋の道向かいの南東角には、吉例顔見せ興業を終えて新年を迎えた歌舞伎の本拠地、南座がある。 |
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舞台は関ケ原の合戦が終わったばかりの頃のみやこ、京。何百年も続いた乱世が終わり泰平の世にさしかかる時代の中で、阿国は天下一の舞踊家、今風にいえば人気ストリートパフォーマーだった。 |
伝承によれば阿国は、元亀(1570〜1573)もしくは天正(1573〜1592)年間に出雲国(現・島根県)で生まれたとされる。松江の鍛冶職、中村三右衛門の娘だったとも出雲大社の巫女だった言われるが真相は定かではない。旅芸人になったのは出雲大社の本殿を修理するための勧進(募資活動)がきっかけだったようだ。 |
同じ村の女たちと諸国を巡って「ややこ踊り」や「念仏踊り」などを披露するうち、才能が開花して舞いを生業にしたのではないだろうか。みやこに上った阿国が鴨川河川敷や神社の境内などで勧進興行をすると、並はずれて踊りがうまい阿国はたちまち人気者になった。 |
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プロフィール
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●文/写真:フリーライター・池永美佐子
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京都生まれ、大阪育ち。
関西大学社会学部卒業後、新聞社、編集プロダクション、広告プロダクションを経てフリー。 |
雑誌やスポーツ紙等に執筆。趣味は温泉めぐり。現在、恋愛小説
に初挑戦?! |
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