萩原工業株式会社 様

SAPとWindows Serverのサポート終了問題に直面
Azureへの移行で課題解決と柔軟な対応が可能に

櫛田 宏紀、福田 哲 氏、瀬良 保 氏、喜野 聖の写真

SAP ERPの2025年のサポート終了、Windows Server 2008R2の延長サポートの終了、サーバーなどのシステム基盤の老朽化といった基幹業務システムにおける課題と、データの災害対策に課題を抱えていた萩原工業様は、富士通が提案・提供したAzureによるソリューションにより可用性と拡張性、そして信頼性の高い将来を見据えたシステム基盤を構築することに成功した。

課題
効果
課題OSやERPのサポートの終了やサーバーの老朽化で基幹システムのリプレイスが必要
効果Azureへ移行することでハードウェアの老朽化を気にせず常に最新のシステム基盤を使用可能に
課題基幹システムデータのバックアップはテープメディアの遠隔地保管で月1回行っているが、復旧に時間がかかる上に、被災した直近のデータを復元できない環境にあった
効果Azure Site Recoveryの導入によりデータバックアップにかかるコストを削減するとともに、バックアップから復旧へのリードタイムが大幅に縮小し、直前データのフェールバックも可能になった

背景

OSおよびERPソフトのサポート終了とハードウェアの老朽化を解決したい

岡山県倉敷市南部の瀬戸内海を臨む工業地帯、水島コンビナートに本拠を置く萩原工業様は合成樹脂繊維「フラットヤーン」を用いた高機能シート類をはじめ、コンクリートの剥離や剥落を防ぎ耐久性を高める「バルチップ」、そして液晶フィルムやペットボトルフィルム、リチウムイオン電池セパレーターフィルムなどに向けた、巻き取り・スリット技術を用いた加工機械「スリッター」などの事業に力を入れている。

特に世界中で進む社会インフラの整備や保守等で需要が高まっているバルチップ事業では海外の代理店を買収して海外拠点を拡大するなど、成長戦略を強く推進している。

こうした同社の経営および業務を支えてきたのがオンプレミスで構築したSAPのERPパッケージによる基幹業務システムだ。しかし同社が運用していた基幹業務システムはいくつかの重大な課題を抱えていた。

同社は2004年よりSAPを運用しており、2011年に現在も運用しているSAP ERPにバージョンアップした。SAPを運用するサーバー等のシステム基盤は2011年の環境が使用されており、OSはWindows Server 2008R2が稼働している。萩原工業様で情報システムを担当する瀬良 保氏は課題について次のように説明する。

「まずWindows Server 2008R2が間もなく延長サポートの終了を迎えます。そしてSAP ERPも2025年にサポートが終了します。さらに老朽化したハードウェアの刷新も必要です」(瀬良氏)

萩原工業様では将来のS/4HANAへの移行を見据えたシステム基盤の再構築が急務であったため、その刷新に取り組み始めた。そして富士通が提案・提供したマイクロソフトのAzureをSAP ERPのシステム基盤として導入したのだ。

瀬良 保 氏の写真 萩原工業株式会社
事業支援部門
経理部 経理課
情報システムチーム
係長
瀬良 保 氏
福田 哲 氏の写真 萩原工業株式会社
事業支援部門
経理部 経理課
情報システムチーム
福田 哲 氏
喜野 聖の写真 富士通株式会社
エンタープライズビジネスグループ
ERPソリューション事業本部
第2ソリューション事業部
第1ソリューション部
喜野 聖
櫛田 宏紀の写真 富士通株式会社
エンタープライズビジネスグループ
ERPソリューション事業本部
第2ソリューション事業部
第1ソリューション部
櫛田 宏紀

ポイント

国内の2か所のデータセンターでサービス利用できるAzureなら安心できる

萩原工業様は当初、オンプレミスでの運用を継続するもしくはハウジングサービスを利用する意向だった。しかし富士通がクラウドサービスの利用を提案したことから、検討が開始された。導入に携わった萩原工業様の福田 哲氏は「ハードウェアを最新化しても数年後には再び更改が必要です。それならば常に最新のシステム基盤が利用できるクラウドサービスの方が良いと判断しました」と説明する。

ただしオンプレミスの基幹業務システムをクラウドに移行するのには不安があったという。福田氏は「富士通の担当者が類似の事例を用いて詳しく説明してくれたり、Azureで基幹業務システムを運用している企業への見学を実施してくれたりするなどして不安を払しょくしてくれました。また、外資系のクラウドサービスではデータセンターがどこにあるのか不安ですが、Azureのデータセンターは国内にあるため安心してシステムやデータを預けられます」と話す。

導入が極めてスムーズだったことも高く評価された。富士通と萩原工業様とはホストコンピューターからの長いお付き合いがあり、同社のシステム基盤にはずっと富士通の製品が採用されてきた。そのため「当社のシステムを熟知しているので話が早く、時間とコストの削減につながった」(瀬良氏・福田氏)という。

さらに移行のための休日出勤が業務部門の担当者はわずか1日(情報システム部門は2日)で完了したと喜んでいる。瀬良氏は「移行はシステムの停止を伴うため、長期休暇中に実施しました。しかし移行を完了するには各業務部門の担当者による動作確認が必要で、休日出勤をお願いしなければなりません。当初は3~4日の出勤を覚悟していたのですが、富士通の担当者から1日の出勤で完了できると聞いて、休日出勤をお願いしやすくなりました」と話す。

システム移行イメージ

これは富士通が移行に伴う作業を詳細に準備していたことに加えて、SAPなどの基幹業務システムのみならず、さまざまなシステムをAzureへ移行した豊富な経験とノウハウが活かされた結果である。

さらに富士通は移行の際に富士通の支援拠点と萩原工業様とをSkype for Businessで72時間常時接続して、萩原工業様の現場で何が生じても即座に対応、回答できる体制も提供した。

萩原工業様のSAP ERPのAzureへの移行は、当初のシステム基盤に関する課題とは別の課題の解決にもつながった。萩原工業様ではデータを毎日テープメディアにバックアップしており、さらに月に1回、テープメディアを本社以外の拠点に運び地理的に異なる場所で保管することで災害対策を講じていた。

しかし毎日のバックアップに時間がかかること、テープメディアの保管に管理が必要なこと、本社が被災した場合は直近のデータを復旧できないこと、復旧に時間がかかることなどの課題があった。

そこでこのプロジェクトに携わった富士通 エンタBG ERPソリューション事業本部の喜野 聖は「国内での正式提供が開始される前でしたが「Azure Site Recovery」(ASR)を提案しました」という。ASRはAzureで提供されるDR(Disaster Recovery)サービスだ。ASRは正式提供前ではあったが西日本と東日本の二カ所にあるAzureのデータセンターで、お客様のデータを相互に分散して保管できることなどが萩原工業様の課題解決に役立つと考え喜野、櫛田らはASRをあえて提案した。

Azure Site RecoveryによるDR運用

提案を受けた萩原工業様は正式提供前のサービスにもかかわらず、富士通を信頼してASRの採用を決めた。それは富士通自身がグローバルコミュニケーション基盤にOffice 365を採用するなど、世界有数のマイクロソフトのクラウドサービスのユーザーであり、マイクロソフトと親密なパートナーシップを築いていることが決め手となった。

効果

S/4HANAの移行を見据えたシステム基盤を実現できコストと作業を軽減できた

オンプレミスで構築したSAP ERPのシステム基盤をAzureへ移行したことで、ハードウェアの更改が不要となり新たな投資や作業の負担から解放された。そして将来のSAP S/4HANAへの移行の際に求められるコンピューターリソースも確保できた。
また従来のシステム基盤の保守費用の総計に対してAzureのランニングコストは低く、コスト削減にもつながっているという。もちろんオンプレミスでは負担が大きかったシステム基盤の運用管理からも解放された。
さらにAzureでシステム基盤が最新化されたことでWindows Server 2008R2の延長サポート終了の問題も解決できたほか、処理能力が向上したことでさまざまな業務の時間短縮にもつながっている。業務によっては従来の3分の1の時間に短縮できたという。そしてASRの導入によって災害時のBCP対策も強化された。

今後の展望

SAP以外のサーバーをAzureに統合して一元管理したい

萩原工業様では導入したAzureをSAPだけではなく、他の用途でも活用したいとの意向がある。瀬良氏は「例えばファイルサーバーは部門ごとに個別に運用しているため、Azureに統合して一元管理したい」と説明する。
さらに、Azureはグローバルで共通の仕組みおよび環境が利用できる点も大きな利点であるため、グローバルでビジネスを展開して成長を目指している萩原工業様のビジネス基盤としても期待できる。

萩原工業株式会社 様

本社所在地 岡山県倉敷市水島中通一丁目4番地
設立 1962年
ホームページ https://www.hagihara.co.jp/
概要 ポリエチレン・ポリプロピレンを主原料とした合成樹脂繊維「フラットヤーン」を用いた関連製品、およびフラットヤーン技術を応用したスリッター等、産業機械の製造・販売。

[2019年1月掲載]
「FUJITSU Cloud Service for Microsoft Azure」は、「FUJITSU Hybrid IT Service for Microsoft Azure」へ名称変更しました。

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