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SPARC/SolarisベースのIaaS「FUJITSU Cloud Service U5」が登場、
真に基幹系システムを動かすクラウドの条件とは

「FUJITSU Cloud Service U5」は「FUJITSU Cloud Service for SPARC」に、「FUJITSU Cloud Service K5」「FUJITSU Cloud Service for OSS」は「FUJITSU Hybrid IT Service FJcloud-O」に名称変更しました。

クラウドファーストの浸透にともない、新たなシステムの構築はクラウドでと考えるようになった。実際System of Engagement(SoE)と呼ばれる、顧客とのつながりで新たな価値を生み出す仕組みはクラウドで提供されるものが多い。一方、System of Record(SoR)と呼ばれる旧来の業務効率化のシステムは、まだオンプレミスで運用されている。とくに企業の根幹を支える基幹系システムは、クラウド化を検討はしてもあきらめている企業が多い。

しかしここに来て、基幹系システムもパブリッククラウドで動かすとのメッセージが出始めた。基幹系もクラウドでと言う新たな波の中で、UNIXベースのIaaS「FUJITSU Cloud Service U5」の提供を始めたのが富士通だ。このタイミングでU5の提供を開始した富士通の意図は何か、さらにはUNIXサーバーの戦略について、ZDNet Japan編集長 怒賀新也が富士通 エンタプライズシステム事業本部 エンタプライズ事業部 事業部長の吉山正治氏に話を訊いた。

[2017年4月17日 ZDNet Japan 掲載]

オンプレミスの基幹系システムをそのままクラウドで動かしたいニーズ

怒賀:MetaArcを中心とする富士通のクラウドの戦略、変化するITへの要求に対する富士通のIT基盤に対する考え方を教えてください。

吉山:富士通にはメインフレームの時代からの長い歴史があります。歴史の中で常に時代の変化に合わせITの仕組みを提供してきました。ここ数年はモバイル端末が広く普及し、さまざまな人たちがコンピュータを手にしています。その中で企業の基幹系のシステムはどう変わらなければならないのか。基幹系だけを見るのではなく、モビリティも含めたIT全体で捉える必要があります。

変化の中でも安定しセキュアなインフラを提供するのは当たり前です。その上でAIなど最新技術も容易に活用できるようにする。それにはさまざまな要素を有機的につなぐことが大事です。それができるのが富士通のデジタルビジネス・プラットフォーム「MetaArc」です。

富士通株式会社 エンタプライズシステム事業本部 エンタプライズ事業部 事業部長 吉山 正治氏の写真
吉山 正治
富士通株式会社
エンタプライズシステム事業本部
エンタプライズ事業部 事業部長

MetaArcでは、クラウドをベースにモバイル、ビッグデータ、IoTなど先進のICTを実装しています。それによりビジネスにおけるデジタル革新を実現するSoEに適応し、さらに従来の基幹システムであるSoRとも連携できます。パブリッククラウドからプライベートクラウド、マルチクラウドのインテグレーションなど幅広いサービスをMetaArcでは提供しています。パブリッククラウドではIAサーバーを使ったクラウドサービス「FUJITSU Cloud Service K5」を中心に展開しており、新たにSPARC/SolarisのIaaS環境「FUJITSU Cloud Service U5」の提供も始めました。これらで、あらゆる顧客の幅広い要求に応えるのが富士通のクラウドです。

お客様に話を聞くと、クラウドへの取り組みが一巡したとの声があります。これまではクラウドで基幹系システムを動かすことは後回しにされてきましたがそれが変わってきた。SoEだけでなく企業が抱える全てのシステムをクラウド化したいとの要望があります。これに対する答えの1つがU5の提供です。Solarisの基幹系システムをクラウド化するニーズに応えるのがU5なのです。

基幹系システムは、例えば製造業ならば生産管理や販売管理など、各企業におけるビジネスの強みに直結します。それをクラウド化する際には、既存の強みをそのままクラウドに載せたい。Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azure用にシステムを作り替えるのではなく、オンプレミスのシステムに手を加えずクラウドに載せたいと考えます。オンプレミスでの信頼性も、運用管理の仕組みもそのままにです。この要望に応えるにはクラウド上に単にサーバーやストレージなどがあるだけではだめです。オンプレミスと同様の運用があり他システムとの連携も必要です。

企業の根幹を担う基幹系システムを動かす条件

怒賀:クラウドファーストでは、AWSやAzureが話題の中心です。一方で基幹系はオンプレミスから抜け出せない。このギャップを富士通はどう捉えていますか?

吉山:ここ最近、AWSやAzureでも基幹系システムを動かす話題が出てきています。体力が十分にある企業なら、現状のパブリッククラウドで基幹系システムを動かすこともできるでしょう。とはいえ、それができる企業ばかりではありません。オンプレミスのシステムをそのままクラウド移行できることが重要なのです。そのため富士通では、信頼性の高いハードウェアやSIのノウハウが必要だと考えています。

既存のクラウドベンダーと富士通と一番の違いは総合力です。クラウド上にあるサーバー、ストレージ、ネットワークは自社で作って、自社エンジニアがサポートする体制をとっています。メインフレーム時代から、基幹系システムを動かすための信頼性の考え方を継承しているのです。さらに、数多くの基幹系システムを作ってきたノウハウと実績があります。SPARC/Solarisベースの基幹系システムも支援させていただき、そのノウハウがU5に入っています。

クラウドを本格的に使うようになり、失敗している企業もあるようです。たとえばサービスが止まってしまい、ベンダーに問い合わせてもトラブルの原因が究明できず、不安を抱えたまま運用しなければならないケースもあるようです。そういうクラウドには、基幹系システムを預けられないと言う企業がたくさんあります。富士通ではそういった企業に、総合力のある信頼性の高いクラウドを提供します。

SANストレージを採用し基幹系に必要な性能と信頼性を確保

 ZDNet Japan 編集長 怒賀 新也の写真
怒賀 新也
ZDNet Japan 編集長

怒賀:具体的にU5のクラウドはどのような構成になっていますか?

吉山:U5は高性能、高信頼なUNIXサーバー「SPARC M10」を使ったIaaSです。SPARC M10は、すでに海外も含め数多く稼働しており、二重化などの高信頼性、可用性構成でこれまでにハードウェア故障による業務停止が1回も発生していない堅牢なサーバーです。

また多くのクラウドではストレージにNAS(Network Attached Storage)を使っていますが、U5では信頼性を高めるためにあえてSAN(Storage Area Network)を採用しています。NASだとストレージIOのパケットが通信ネットワークを通ります。U5ではSANで通信ネットワークと経路を分け、IO帯域とレイテンシーを確保しています。SANストレージではサーバーからブロックデバイスに見えるので、Oracle Automatic Storage Managementを使いOracle Real Application Clusters(RAC)の構成もとれます。ここも他のクラウドとは異なります。

OSにはSolarisを採用し、仮想化機能は「Oracle VM Server for SPARC」を利用しています。富士通とOracleは長い年月に亘る強力な協業体制があり、エンジニアの交流も盛んです。富士通にはSolarisの開発エンジニアもおり、自前のOS、自前仮想環境と同様のサポートが可能です。つまりハードウェアを含めオール富士通体制でサポート、運用できるのもU5の強みです。

怒賀:実際にパブリッククラウドを利用し始めると、データベースの性能が十分に発揮できないなどクラウドの限界的な話も聞こえます。一般のクラウドサービスとU5を比べると、性能などでどのような差があるのでしょうか?

吉山:通常のパブリッククラウドではリソースが共有されます。そのせいで十分な性能が出なかったり、突然性能が劣化したりします。ある日は夜間バッチが終わったのにある日は終わらない、あるいは月末は処理が遅いといったこともあります。

U5も仕組み的には他ユーザーの影響を受ける可能性もありますが、富士通ではそういった影響が出ないようサーバーやストレージの配置を技術者の手で最適化しています。それではクラウドらしくないと感じるかもしれませんが、きめ細かい対応があるからこそ基幹系システムに求められる性能や信頼性を実現できるのです。


SPARC/Solaris環境をIaaSとして提供

基幹系システムを構築してきたエンジニアのノウハウも注入

怒賀:富士通が持つ基幹系システム運用ノウハウについて、もう少し詳しく教えてください。

吉山:各種業務システムを構築してきたノウハウが富士通にはあります。高い可用性が必要と言っても、金融業の求めるものと製造業、流通業の求めるものは異なります。金融では可用性において二重化ではなく三重化が必要かもしれません。製造業では二重化しているけれど、実際はシングルでも十分な場合もあります。そういった業種ごとの違いが、SEの頭にノウハウとして入っています。技術者の豊富なノウハウは、高い信頼性と可用性を求められる基幹系システムでは大いに役立ちます。

また、SPARC/Solarisの基幹系システムはその環境に閉じているわけではありません。IAサーバーで動くさまざまなシステムとも連携しています。ハイブリッドなクラウドをどう組み上げていくかも、技術者のノウハウが役立つのです。

怒賀:U5ならではの特長を改めて教えてください。

吉山:まずは富士通のUNIXは信頼性の高さが特長です。壊れにくいので、お客様のもとではかなり古くなったSolaris 8のシステムが動いていることもあります。U5はそのような古い環境もそのまま動かせます。

U5では仮想化にOracle VMを活用しています。Oracle VMの良いところはリソースのオーバーコミットの概念がないことです。なのでシステムに割り当てたリソースが占有でき、これにより基幹系システムにも適した性能を発揮できます。これは基幹系のシステムを動かす上では重要です。

もう1つの特長が、純粋なIaaSなのでユーザーからはOSが生で見えることです。そのためオンプレミスで利用しているソフトウェアを利用することで、運用管理をクラウド向けに変更する必要がありません。AWSでは管理が独自の仕組みになりますが、U5では運用管理も顧客が自由に選択できるのです。

Solarisの市場を継続しさらに広げていくのが富士通の責任

怒賀:U5の顧客ターゲットを教えてください

吉山:富士通は、SPARC/Solarisのハードウェアにもソフトウェアにも継続的に投資を続けます。お客様のSolarisの環境を維持するのが、富士通の使命だと考えています。2000年頃に一気に広がったSolarisベースがマーケットにはまだまだ残っています。それらも含めU5に移行してもらうことで、Solaris市場をさらに広げたいと考えています。

コストをかけSolarisからLinuxへ移行する話もありますが、かなり苦労もするようです。顧客の既存資産を活かし、U5の利用でコストメリットも提供したいです。それとU5なら、Oracle Databaseが快適に動かせるのも大きなメリットです。U5のベースとなっているSPARC M10はSoftware on Chipという機能によりOracle Databaseを高速処理できるので、Oracleを最大限に活かしたい顧客にもお勧めです。

U5は、すでに国内の製造業や流通業などのいくつかの企業に採用していただいており、引き合いがたくさんあります。多くのお客様はU5だけを使うのではなく、K5や他のクラウドと連携したマルチクラウド環境でのご要望を多くいただいております。既存システムをそのまま動かせるのなら、ハードウェアのリプレイス時期を待たずに移行をしたいとの企業もあります。

怒賀:今後U5をどのように進化させていきますか?

吉山:ハードウェア、ソフトウェアの部隊が一緒になってU5は作り上げました。当初はもっと簡単に実現できると思っていたのですが、苦労したところもありました。苦労の中で、SEが持っている技術をU5にどう反映させるかが重要だと分かってきました。

今後は周辺技術を含め、基幹系を動かすのに必要なものをさらに提供していきます。そのためには顧客の声を聞き、何が必要かを見極めていきます。さらに、エンジニアの育成にも力を入れます。これをやり続けることが、富士通の責任だと思っています。その上でIoTなどSoEとの連携も行います。IoTはそれだけがあってもビジネスになりません。基幹系システムと連携できて初めてメリットが出ます。

クラウドで長くお得に利用してもらうための3年契約のプランや、災対向けなどの複数リージョンへの対応は既に実施しています。移行サービスの提供も検討しています。

また現状は直販がほとんどですが、もともとSolarisはパートナーの取り扱いが多いので、今後はパートナー経由の販売も増やします。SIパートナーがプラットフォームとして扱う場合もあれば、パートナーのSolarisベースのパッケージをU5から提供するものもあるでしょう。とにかくクラウドではスピードが大切です。なので顧客が必要なものは、なるべく迅速に市場に提供していきます。

怒賀:最後になりますが、U5を含めた富士通のUNIX戦略の動きとして、先日、新しいUNIXサーバーを発表されたようですが?

吉山:はい。4月初旬にSPARC M10の次機種のSPARC M12を販売開始しました。

実は、基幹系システムをクラウドにもっていくかどうかは、データの持ち方、運用、用途により、取捨選択されるものと考えています。例えば、どうしても手元に置いておきたい高いセキュリティを必要とするシステムや、業務要件に合わせて構成をカスタマイズしたいシステムはオンプレミスで構築。災害対策やリソース利用量変動への対応はクラウドを利用する。このようにオンプレミスとクラウドの選択基準は顧客により異なり、我々は選択肢をご提供するのが役割だと思っています。ですから、クラウドだけでなく、オンプレミスを支えるサーバーもしっかりと開発しているのです。このように、富士通は、オンプレミスとクラウドの両輪でお客様のビジネスを支援していきたいと考えています。


適材適所でオンプレミスとクラウドを選択

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出典:ZDNet Japan
SPARC/SolarisベースのIaaS「FUJITSU Cloud Service U5」が登場、真に基幹系システムを動かすクラウドの条件とは(2017年4月17日掲載)
https://japan.zdnet.com/extra/fujitsu_201704/35097921/新しいウィンドウで表示


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