\ こんなことが分かります /
- なぜ「リフト&シフト」が求められるのか
- ハイブリッドクラウドとはー 選択するメリット
- FJcloud-Vでのハイブリッドクラウド構築手順
適材適所の環境選択&段階的移行も可能に
クラウド移行「現実解」としての
ハイブリッド化を考える:成功への筋道は?
「DXの必要性は分かっているが、情報システム部門は目の前の業務で手一杯」「システムの維持運用、更新にかかるコストが、新たな取り組みに充てる予算を圧迫している」――。
このような課題に直面する日本企業は多いだろう。「2025年の崖」が迫る中、既存システムをクラウドに移行し、運用負荷やハードウェアの更改にかかるコストの問題を手離れすることが、多くの企業のミッションになっている。
これらの課題を解決するのはなかなか難しい。例えば、「リフト&シフト」のアプローチで進めるにしても、すべての既存システムを一気にクラウド移行できるケースは稀だ。なぜなら、既存システムのインフラはそれぞれに更改時期が異なる上、技術的な要件や適用すべきセキュリティポリシーもまちまち。それらを考慮せずにクラウド化してしまうと、かえってコスト増につながったり、業務停止などの事故を引き起こしたりする可能性があるからだ。
つまり、クラウド移行プロジェクトでは、オンプレミスとクラウドのハイブリッド型を「現実解」として見据えることが必要になる。最終的に全システムのクラウド移行を目指すか、ハイブリッド型を軸とするかは企業の戦略次第だが、どちらの戦略も支えられる環境を整えることがクラウド移行プロジェクトの“一丁目一番地”となるのだ。
事実、この方向性のもとで取り組みをスタートする日本企業は多い。最適なハイブリッド環境の構築に向け、押さえるべきポイントとはどのようなものか。多くの企業のクラウド移行を支援してきた富士通の佐藤 哲也氏に聞いた。
ハイブリッド環境を考える上で重要なポイントになるのが、オンプレミスに残るシステム、クラウドに移行したシステムの双方をどう接続して、業務を維持するかということだ。
「まず注目すべきは、オンプレミスとクラウドを接続する『ネットワーク』です。既存のオンプレミスのネットワークにクラウド側のセグメントを加えるとすると、新たなルーター機器などが必要になり構成がより複雑化します。また、ネットワークの設計次第ではサーバーのIPアドレスが変わるため、結果的にアプリケーション側の改修も必要になってしまいます」と佐藤氏は指摘する。
アプリケーションを改修する場合は実装・テストなどの作業が発生するため、移行プロジェクトが長期化する。また、ネットワーク構成が複雑化すれば、運用者の負担も増す。そうなれば、コストや運用負荷の削減といった、クラウド移行の効果も目減りしてしまうだろう。
そこで富士通は、そもそもこのような問題を発生させないハイブリッド化の方法を提案することで、企業の取り組みを支援している。その中核となるのが、VMware vSphere®ベースのクラウドサービス、「FUJITSU Hybrid IT Service FJcloud-V」(以下、FJcloud-V)だ。
「FJcloud-VはL2延伸に対応しています。L2延伸とは、L2(レイヤー2、データリンク層)ネットワークを延伸する技術。L2延伸によって異なるネットワーク同士を統合し、お客様の社内ネットワークの延長線上にあるシステムとして同じ様に利用できるようになります」(佐藤氏)。この技術を用いることで、IPアドレスを変更することなく、既存のオンプレミス環境をFJcloud-V上のシステムと接続できる。アプリケーションに影響を及ぼさないため、これに伴う改修は必要ない。もちろん、ルーターなど新たな機器の設置も不要だ。
「同時に、ハイブリッド環境を業務の基盤に据える際に考えなくてはならないのが、システムのレイテンシーです。オンプレミス環境と比べ、クラウドのデータセンターはどうしても遠方に存在することになるため、利便性や業務効率を低下させない環境を実現するための工夫が必要になるのです」と佐藤氏は付け加える。
この点についても解決策が用意されている。富士通データセンター構内の物理サーバーとFJcloud-Vの間を閉域接続できるネットワークサービス「Digital enhanced EXchange」を介し、富士通データセンターにハウジングした環境と距離的に近いFJcloud-Vをつなげることで、レイテンシーを抑えたハイブリッド環境を構築できるのだ。
「今後は外部のクラウドサービスとも接続できるようにし、マルチクラウドを含めたハイブリッド環境の接続基盤へと進化させていく予定です」と佐藤氏は説明する。FJcloud-Vは、第3世代 インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサー・ファミリーを搭載した「FUJITSU Server PRIMERGY」を採用。高信頼かつ安全・安心な環境と最適な移行手段を提供する。
加えて、冒頭でも触れた通り、クラウド移行時の重要な検討要素の1つがセキュリティポリシーである。
インフラの運用負荷、コストの削減や柔軟性、といったクラウドの効果は魅力的だが、組織のポリシーや業界のガイドラインに照らすと、どうしてもパブリッククラウドへの移行が難しいケースが出てくる。このようなシステムに対し、クラウド化を検討の視野に入れることができるサービスが「FUJITSU Hybrid IT Service FJcloud-Outstation」(以下、FJcloud-Outstation)だ(図1)。
「お客様の拠点や、お客様が指定するデータセンターに専用のFJcloud-V環境を構築する“オンプレミスクラウド”サービスです。クラウド基盤や機能の更新、ハードウェアの運用管理はFJcloud-Vと同様、クラウドサービスプロバイダー側である当社が行います。お客様は、規定のポリシーを満たしたままクラウドならではのサービスを利用できます」と佐藤氏は述べる。
今後は、FJcloud-OutstationとFJcloud-Vとで一元的に管理できるコントロールパネルを提供予定だ。サービスの進化によって、より柔軟性の高いハイブリッド環境が構築できるようになるだろう。
このように富士通は、避けて通れないハイブリッド化を見据えたサービスを網羅的に用意することで、企業のクラウド移行を強力に支援している。
ただ、よりシンプルな問題として「どこから、どのように手を着ければよいか分からない」という企業も多いのではないだろうか。その場合、サービスメニューだけ提示されても、取り組みを進めることは難しい。そこで、そのような企業をサポートする無償サービスとして用意されているのが「デジタルインフラアセスメントサービス」である(図2)。
「既存のITインフラ資産を調査し、現状の課題を抽出・分析することで、移行先の要件を定義します。また、現場の業務課題もヒアリングしながら、『業務重要度』『可用性』『災害対策』などの項目別に、インフラ最適化に向けた方針を提示することが可能です」(佐藤氏)。このサービスを利用することで、具体的な取り組みの第一歩を踏み出すことができるはずだ。
富士通のサービス/サポートのもとで、ハイブリッド化を含めたクラウド移行を進める企業は増えている。例えば、あるECサイトのシステムをオンプレミス環境で運用していた企業では、繁忙期を基準として設計したシステムが、平時にはオーバースペックになり過剰投資になることを課題としていた。クラウドに移行することで、利用増減に柔軟に追従できる環境を構築したいと考えたのだ。
「ECサイトの基盤なので、クラウド化に伴うレスポンス低下は絶対NGでした。そこでこのお客様は、繁閑によってスケールイン・スケールアウトが可能なWebサーバーをFJcloud-Vに、低遅延かつ性能を保証する必要のあった、データベースサーバーを当社データセンター内のハウジング環境に移行。両方を構内接続することで、低遅延かつリソースを柔軟に拡大・縮小できるハイブリッド環境を構築しました」と佐藤氏は紹介する(図3)。同時に、インフラ運用負荷の低減効果も得られているという。
今後も富士通は、FJcloud-Vを中核として、ハイブリッド化ニーズに応えるサービスを随時拡充していく。ユーザーにより多くの選択肢を提供することで、柔軟なクラウド移行戦略を支援していく構えだ。
[2023年1月 掲載]
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