味の素株式会社 様
ASEAN4カ国の基幹システムをシンガポールのクラウドへ移行、国内災害による海外事業リスクを排除、現地で完結する運用を実現
事業継続性を強化するために、ASEAN4ヵ国の基幹システム(SAP)を日本国内からシンガポールデータセンターで提供される「FUJITSU Cloud IaaS Private Hosted LCP(以下Private Hosted LCP)」に移行。同じくシンガポールに英語対応のサービスデスクを開設し、主な運用をASEAN内で完結する体制を構築した。また、グローバルサービスマネージャーによる運用の「見える化」や継続的な改善提案を進め、エンドユーザーへのサポート向上を図っている。
- 注「FUJITSU Cloud IaaS Private Hosted LCP」は、「FUJITSU Cloud Service Private Hosted LCP」へ名称変更しました。
- 課題日本国内での自然災害の影響を受けないシステム環境の実現
- 効果自然災害リスクの低いシンガポールにあるデータセンターのクラウド環境にシステムを移行し、グローバルな事業継続性を強化
- 課題現地ユーザーと国内運用窓口間の連携時における翻訳などの支援負荷の軽減
- 効果サービスデスクをシンガポールに開設。また、ジョブ管理ツール「FUJITSU Software Systemwalker Operation Manager(以下Systemwalker Operation Manager)」の英語版を導入し、主な運用管理をASEAN内で完結することで日本国内の負荷を軽減。システムの企画・改善などの業務への注力が可能に
今回のプロジェクトで富士通を選んだ理由は、ひと言でいうなら、グローバルなシステム移行やクラウドサービスにおける信頼感です。プロフェッショナルとして安心して任せられると感じました。
味の素株式会社
情報企画部 専任部長
吉田 孝氏
導入の背景
日本での自然災害リスクを未然に回避
世界No.1の調味料事業をはじめ、食品やバイオファイン、医薬・健康などの分野で独自のビジネスを推し進める味の素株式会社様。2009年に創業100周年を迎え、現在、新たな100年に向けてグローバル展開を加速しています。世界マーケットの中でも、同社が特に注力するのがASEANをはじめとするアジア地域です。その中核となるタイ、インドネシア、フィリピン、マレーシアの4ヵ国におけるグループ会社では、SAPによる基幹システムを稼働させています。
従来まで、これら4ヵ国の基幹システムは、日本国内のデータセンターに配したサーバにシステム基盤を置き、インフラ運用管理を日本で行っていました。しかし、アジア市場の重要性がますます高まるにつれて、グローバルな事業継続計画の観点から早急に解決しなければならない課題が浮上してきました。同社情報企画部において海外での取り組みを統括する専任部長、吉田孝氏は次のように語ります。
「日本における自然災害リスクにいかに対応するか。それが第一の命題でした。もしも日本で巨大な地震が発生し、データセンターが被災した場合、震災とは直接関係のない、遠く離れたASEANの国々のシステムがストップしビジネスが麻痺してしまいます。東日本大震災の教訓を得た今、そのリスクは未然に回避しなければならなかったのです」。
運用管理の負荷が大きく、本来の業務に影響が及んでいた
また、運用管理においても解決しなければならない課題がありました。それは、現地のエンドユーザーと日本国内の運用管理者とのリレーションです。システムの運用管理を国内データセンターのオペレーターが日本語ツールを使って行っていたため、障害が検知された場合など、言葉や時差が障壁となって現地のユーザーと直接やりとりできなかったのです。そのため、夜中の2時、3時でも携帯が鳴り、同社情報企画部の担当者が仲介役となって翻訳などの作業を行わざるを得ないこともありました。これら煩雑な負荷によって、本来の役割であるシステムの企画や改善といった業務に全力を注ぎ込めないという問題が生じていたのです。
導入のポイント
グローバルなクラウドサービスにおける富士通の信頼感
このような課題の解決に向けて、富士通が提案したのは、自然災害リスクの低いシンガポールのデータセンターから提供される「Private Hosted LCP」にシステムを移行するというソリューションでした。また、英語対応のサービスデスクをシンガポールに開設することによって主な運用をASEAN内で完結し、日本におけるサポート負荷を軽減する運用体制の改革も併せて提案しました。
同社では、ベンダー数社から提案を受けて検討を重ねた結果、プロジェクトのパートナーとして富士通を選択しました。その選定のポイントについて、吉田氏はこのように語ります。「最終的に決め手となったのは、パートナーとしての信頼感でした。というのも、私たちは運用や管理には精通していても、システムの構築や移行に関しては専門家ではありません。グローバル環境でのクラウド利用についても初めてのプロジェクトであり、安心して任せられるプロフェッショナルのサポートを求めていたのです。その点、富士通は、提案の当初からプロジェクトを担う責任者が同席し、私たちの質問に対して常に的確に対応してくれました。また、日本と海外の部門が連携してユーザーをサポートする富士通のJOC(Japan Originated Company)という考え方についても安心感を得ました。グローバルサービスマネージャーという独自の仕組みも、提案時において評価したポイントのひとつです」。
また、国内のみならずグローバルなクラウドの構築・運用において豊富な経験とノウハウを持っていたことも選定理由のひとつだったといいます。今回のプロジェクトでリーダーを務めた同社情報企画部の専任課長、乾英一氏は次のように話します。「ASEAN4ヵ国のシステムは同じSAPといっても、データベースが異なる、アプリケーションのメンテナンスも各々で実施している、そもそもアプリケーション自体が古いなど、非常に複雑な環境でした。それらを海外の、しかもクラウド環境に果たして完璧に移行できるのか? 当初は懸念していましたが、富士通の理路整然とした対応によって不安も消え、安心して任せられると確信しました」。
システムの概要
国境を超えたシステム移行を、システム停止期間1.5日で完了
こうして2013年4月シンガポールの「Private Hosted LCP」への基幹システム移行プロジェクトが開始。同年12月にインドネシア、フィリピン、2014年2月にタイ、マレーシアのシステムの移行を完了しました。
「移行にあたっては、不要なジョブを整理するなど効率化も同時に進めました。テストでもエラーを早期につぶしてくれたため、本番の移行の際には現地に出張して立ち会ったのですが、拍子抜けするくらいスムーズでした」と語るのは、今回のプロジェクトでの実務を担った同社情報企画部の金子智彦氏。移行にともなうシステム停止も1.5日ときわめて短い期間で、シンガポールのクラウド上に基幹システムが稼働しました。
運用管理体制を刷新して、日本での負荷を軽減
このプロジェクトでは、運用体制も刷新しました。シンガポールにサービスデスクを開設し、日本を介することなく、英語対応によるダイレクトなエンドユーザーのサポートを実現しています。
また、そのためのジョブ管理ツールとして、富士通の「Systemwalker Operation Manager 」の英語版を新たに導入しました。金子氏はこのように話します。「4ヵ国のエンドユーザーにも『Systemwalker Operation Manager』のクライアントツールを導入しましたが、GUIや操作もわかりやすく、簡単な説明とマニュアルだけで容易に立ち上げることができました。監視画面なども見やすいと感じています」。
さらに富士通では、ASEANのIT運用管理者と日本で統括する同社情報企画部との円滑な連携のために、グローバルサービスマネージャーを配置。海外インフラサービスの統制、運用の「見える化」や継続的な改善提案を目指しています。
導入効果と今後の展開
グローバルな情報戦略のパートナーとして
2014年2月に移行を完了して以来、ASEAN4ヵ国の基幹システムは安定的な稼働を続けています。一方、新たな運用管理体制について、乾氏は次のように語ります。「体制を刷新したこともあって、慣れるまでにもう少し時間がかかりそうです。しかし、フルに機能するようになれば、私たち日本側はもちろん、現地のエンドユーザーの負荷も軽減されると思います。将来的には、標準化を進めて、システム監査などにも容易に対応できる仕組みを構築していきたいと考えています」。
また、今回新たに利用したクラウド環境についても「フレキシビリティという特長を活かし、ビジネスの拡大や新しいプロジェクトなどに応じて柔軟にスケールアップしていきたい(乾氏)」と、期待を語ります。
同社は、すでに世界130以上の国/地域に商品を展開しています。さらに現在、「確かなグローバル・スペシャリティ・カンパニー」を目指した中期経営計画を推し進めており、今後はグローバルビジネスの基盤となる情報システムにおいても海外での展開を拡大していきます。その取り組みを統括する吉田氏は次のように語ります。「これからはアジアばかりでなく、南米や中東などでも情報システムの安定的な運用が重要となります。富士通には、グローバルな情報戦略を推し進めていくためのパートナーとして、今後はさらに一歩踏み込んだ、プロアクティブなサポートを期待しています」。
富士通は、クラウドをはじめとする先進かつ多様なソリューションと、ワールドワイドなサポート体制をフルに活かし、同社のグローバルビジネスを強力に支援してまいります。
営業からの一言
今回のプロジェクトは、味の素様の中期経営計画において重要地域と位置づけられているASEANでの事業を支えるクリティカルなシステムを、日本から海外へ移行するという初めての試みで、お客様社内においても非常に注目されていました。また、当社にとっても、味の素様の基幹システムを担うサービスを初めてご採用いただいたこともあり、プロジェクトの成功に向けて、日系グローバル企業としての総合力を発揮すべく魂を込めて取り組みました。
今後は南米、中東、アフリカとグローバルに事業展開する味の素様のビジネスに貢献できる「グローバルパートナー」となれるよう精進してまいります。
味の素株式会社 様
事業分野 | 食品・バイオ関連製品・医薬健康製品製造 |
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所在地 | 〒104-8315 東京都中央区京橋1-15-1 |
代表取締役社長 | 伊藤 雅俊 |
設立年 | 1925年(創業1909年5月) |
従業員 | 単体3,343名 連結27,518名(2013年3月31日現在) |
事業内容 | 調味料をはじめ各種食品の製造および販売、アミノ酸技術の開発、化粧品の製造および販売、医薬品・医療用食品の製造および販売 |
ホームページ | http://www.ajinomoto.com/ |
- (注)本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞等は掲載日現在のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。
[2014年4月25日掲載]
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