すべてはテレワーカーの幸せのために ──私たちは、ここに徹底してこだわった!
働く場所を選ばないテレワークの働き方を確立するには、PCの軽さ、薄さ、堅牢性に加えて、使いやすさ ──つまりは、ユーザビリティも重要なポイントだ。富士通のノートPC「LIFEBOOK U938/S」(以下、U938/S)は、そのすべてを実現した製品であり、本稿の前編では、その軽さと薄さを中心にしながら、開発の創意工夫にフォーカスした。その後編である本稿では、ユーザビリティに照準を当てる。
「LIFEBOOK U938/S」は、コンシューマー向けの軽量・薄型ノートPC「LIFEBOOK UH」シリーズのビジネス向けモデル。LIFEBOOK UHシリーズの最軽量モデルは約748g(2018年3月現在)で、13.3型ノートPCとしては、世界最軽量を実現。LIFEBOOK U938/Sも、標準構成モデルで質量799g、薄さ15.5mmを実現している。
後編富士通モバイルPC「驚きの機能・性能」はこうして生まれた
"打ちやすさ"も"軽快さ”も理想のキーボードを目指して
いつでも、どこでもオフィスの自席にいるのと、同じように仕事がしたい ──。そんなニーズを満たすためにモバイルPCを導入した方の中に、次のような経験をお持ちの方はいらっしゃらないだろうか。
「モバイルPCのキーボードは、どうも打ちにくくて、仕事がはかどらない」──。
そう、旧来型のモバイルPCの中には、キーピッチが非常に狭かったり、キータッチが軽すぎたりと、デスクトップPCのキーボードに慣れた人にとっては、使い心地が悪いものが少なくなかった。そのため、U938/Sの開発に当たったプロジェクトチームは、本体の徹底した軽量化・薄型化を図るのと併せて、キーボードのユーザビリティにも強くこだわったという。まずは、この辺りのユーザビリティのこだわりについて、2つの「開発の挑み」に分けてみていきたい。
開発の挑戦 ⑥極限の軽量化と使い心地の両立に挑む
「モバイルPCのキーボードが使いやすいかどうかは、テレワークの生産性に大きな影響を与える要素です。ですから、軽量化・薄型化を図る中でも、キーボードの打ちやすさ、使い心地の良さの実現には、かなり力を入れました」と、河野晃伸(富士通クライアントコンピューティング 開発本部 第一開発センター 第二技術部 マネージャー)は語気を強める。
例えば、Cカバー(※1)の裏面から72本もの極小ネジでキーボードを固定して吊るすという構造を採用。これにより、部品数を減らすこと(つまりは、軽量化)に成功した。「そのうえで、キーを押した時にどれだけたわむかを3Dでシミュレーションしながら、最適なネジの配置と本数を決めていったのです」と、河野は語る。※1 : キーボードのカバー部分のこと。
U938/Sのキーボードモジュール
U938/Sにおけるキーボードの実装上の工夫について語る富士通クライアントコンピューティング 開発本部 第一開発センター 第二技術部 マネージャーの河野晃伸
開発の挑戦 ⑦究極の打ちやすさを目指して
キートップ
+1.5mmストローク
キートップは凹形状の“球面シリンドリカルキートップ”を採用。指にフィットするため打ちやすく、疲れにくい。
デスクトップPC全盛の時代から、キーボードの打ちやすさには定評がある富士通。軽量化をテーマにしたU938/Sでも、究極の打ちやすさを目指し、19mmのゆったりとしたキーピッチと、1.5mmのキーストロークを採用した。
「U938/Sのキーボード開発で特に重要視したのがキーストロークの深さです。デスクトップPCからモバイルPCにリプレースする場合、キーボードの打ち心地は使いやすさを大きく左右するものだと考えたからです。また、打ちにくいキーを軽くする“二段階押下圧”等の設定も取り入れています」(河野)。
開発の挑戦 ⑧USBも有線LANも充実したインターフェース
PCとしてのユーザビリティを高めるために、U938/Sの開発では、インターフェース類を充実させることにもこだわった。軽量・薄型化を実現するために、インターフェース類を減らすモバイルPCは少なくない。その中でも、U938/Sでは、HDMI、有線LAN、USB3.1(Type-C)といったインターフェースを標準で搭載し、モビリティとユーザビリティを両立させている。
例えば、U938/Sでは、3つのUSB端子を備えているが、それらが本体の左右に振り分けられている。これは、オフィスや机のレイアウトに合わせて、左右のどちらからでもUSBデバイスを装着できるようにするための措置だ。
U938/Sの有線LAN端子
U938/Sのインターフェースに対するこだわりについて語る富士通クライアントコンピューティング 開発本部 第一開発センター 第三技術部 マネージャーの石川雅紀
さらに言えば、有線LANの端子まで標準で備えているのは、薄さ15.5mmの薄型モバイルPCとしては他に例を見ないようなU938/Sの特徴だ。
「モバイルPCであれば、無線LANに接続できればよく、有線LANの端子までは不要ではないかと思われる方がおられるかもしれません。ですが、地方のビジネスホテルなどでは、Wi-Fiの環境がなく、有線LANしか使えないところもまだまだあります。そうした場面を想定すれば、やはり有線LANの端子は必須なんです」と石川雅紀(富士通クライアントコンピューティング 開発本部 第一開発センター 第三技術部 マネージャー)は語る。
開発の挑戦 ⑨熱を逃がす創意工夫 ── 排気口デザインでのこだわり
薄型のモバイルPCでは、熱をどう逃がすかも設計上の重要課題となる。実際、PC内部に熱が溜まると、パフォーマンスの低下や不具合につながりかねない。そのためU938/Sは、排気口のデザインにも創意工夫が凝らされている。これは、前機種のU937/Rから継承された設計だ。その点について、石川は次のように説明する。
「熱の動きをシミュレーションし、LCDの開閉に関わらず最適な廃熱処理ができるよう後方排気の設計にしました。また、熱源を装置後方に配置したことで、キーボードやパームレストが熱くならず快適に使えます」
また、後方排気のため、排気の音や風も使い手側には気にならない。これもユーザビリティに対する細かな気配りの一つだ。
U938の排気設計
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LCD開
-
LCD閉
- 【設計上のポイント】
- 液晶ディスプレイの開閉にかかわらず、常に排気口が隠れないように形状を工夫
- 熱の動きをシミュレートし、最適な排熱処理を実現
- 熱源を装置後方に配置し、ユーザーが触るキーボード・パームレストの快適温度を確保
テレワークの生産性とセキュリティ強化を
ともに追求
外出先で用いるモバイルPCの場合、社内でしか使わないPC以上にセキュリティ対策に気を配らなければならない。ただし、PCに対する強固なセキュリティ対策は、ときとして、PCのユーザビリティに負の影響を与えてしまう場合がある。そうしたセキュリティ対策とユーザビリティのトレードオフの関係を断ち切るべく、U938/Sにはさまざまな設計上の工夫も施されている。本稿の最後としてその点について触れておきたい。
開発の挑戦 ⑩生体認証のサポート
U938/Sでは、指をスライドまたはタッチするだけで、簡単に本人認証が行える「指紋センサー」を標準で備えている。これによってユーザーは、本人認証のためにパスワードを入力する時間と手間を省くことが可能となる。
また、U938/Sには、オプションで「手のひら静脈センサー」も装備させることができる。これにより、PCに手のひらをかざすだけで、本人認証を行うことが可能だ。さらに、スマートカードスロットをオプションで装備させることも可能だ。
手のひら静脈センサーによる
本人認証のイメージ
U938/Sの指紋センサーについて説明する石川
開発のこだわりが大ヒットを呼ぶ
「私たちが目指したのは、業界最高レベルのモバイルPCという高みです。その高みを目指した開発者の想いが、U938/Sの製品化につながり、お客様の高い評価につながっていると考えています」と語る河野。
以上、前後編の2回に分けて、U938/Sの開発のこだわりについて紹介した。ここで紹介した開発の努力、創意工夫が奏功し、U938/Sはお客様から大きな支持を集め、当初の想定を大きく上回るペースで売れ続け、量産に次ぐ量産を重ねたものの、製品の需要に供給が間に合わない状況が続いている。
「周囲の人に、『そこまでやるのか』と愕然とされるぐらい、お客様の使いやすさ、製品としての完成度の高さをとことん突き詰めていくのが、私たちの流儀です。その流儀が、カタチになり、お客様の元に届けられ、ご評価いただいていることを本当にうれしく感じています」と、河野は言う。
コンピューティング
プロダクトマネジメント本部
商品企画統括部
第二プロダクト部
松村力賢
さらに、U938/Sの製品企画を担当した、松村力賢(プロダクトマネジメント本部 商品企画統括部 第二プロダクト部)はこう述べ、話を締めくくる。
「開発側の努力によって、U938/Sは、企画サイドが構想した以上のモバイルPCに仕上がり、モビリティと使いやすさの両面でお客様から高い評価をいただき、想定を大きく超える引き合いを頂戴しています。今後も、より多くの方に、U938/Sのメリットを享受していただき、テレワークの推進にお役立ていただければと考えています」
マウスを持ち歩かなくても
作業しやすいタッチパネルモデル
U938/Sでは、スマートフォンやタブレットのように、PC画面に触れて直感的に操作できる「タッチパネルモデル」も用意している。使い慣れれば、マウスを持ち歩かずにスピーディな操作ができるため、さらなる軽量化を進めたい人にはオススメだ。