スモールスタートで始める働き方改革
~「やってみないと分からない」 中小企業がまず始めることは何?~

予算も人員も少ない中堅・中小企業にとって、働き方改革の推進はハードルが高い。「手軽に始められる働き方改革」はあるのだろうか?

 「長時間労働を削減し、多様な働き方を実現。そして誰もが働きやすい環境を構築する」――働き方改革が目指す理想像には納得していても、いざ自社で取り組むとなると話は別だ。特に中堅・中小企業では「大企業がコストと時間をかけてやるもの。うちには無理」と思っている方も少なくないだろう。

  確かに、働き方改革は大企業を中心に進んできた印象は強い。だが慢性的な人手不足に悩む中堅・中小企業こそ働き方改革が必要なはずだ。予算はあまりかけられない、専任の情報システム担当者もいない、そんな中小企業はどのように働き方改革を進めればいいのだろうか。本記事では、中堅・中小企業を取り巻く社会的状況を理解するとともに、働き方改革の進め方やポイントを解説する。

待ったなしの働き方改革

 2019年4月に働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)が施行されるなど、相変わらず話題になっている「働き方改革」。人手不足が懸念されるため、中堅・中小企業の働き方改革への関心は高いが、なかなか思うように進んでいないというのが現実だろう。だが、そうも言っていられない状況になりつつある。

 働き方改革関連法は、労働基準法やパートタイム労働法などの労働法改正の総称だ。例えば時間外労働の上限は月45時間を原則として、特別な事情があっても月100時間までと定める。他にも10日以上の年次有給休暇がある従業員は5日以上の休暇取得が必須といった具合に、長時間労働の是正や多様な働き方の実現を後押しする法改正となっている。

 企業は具体的に何をすべきなのだろうか。よく挙げられるのは、柔軟な働き方を実現するためのテレワーク環境構築だ。例えば仮想デスクトップ環境の構築や、セキュアな認証方式の導入、業務システムのクラウド化などだ。どの施策もコストが気にかかる。大企業が潤沢な予算を確保し、年度単位で取り組むにはいいかもしれないが、テレワークに関する知見もなく、人材不足が深刻な状況で専任の担当者を立てることも難しい多くの中堅・中小企業にとっては「ここまでは取り組めない」というのが現状だろう。

中堅・中小企業の取り組みは「テレワーク」に集中

 働き方改革に大きな予算が組めない中堅・中小企業にとって、有効な方法は、テレワーク環境の整備だ。会社以外の場所でも社内と同様に働けるようにすることで、子育てや介護をしている人でも仕事を続けることが可能になる。育児や介護をしていなくても個人の環境に合わせた柔軟な働き方が可能になり、従業員の満足度が高まる。結果的に離職率の低下につながるだろう。

  テレワークの実現に向けてはさまざまな方法があるが、予算が限られるのであれば、時間と場所を制限しないモバイルPCの導入にまずは取り組みたい。

テレワークの懸念をどう解決するか

 モバイルPCを取りあえず導入すればいいかといえば、そう簡単な話でもない。テレワークを開始する前に解決しておきたい懸念点があるためだ。ポイントは「セキュリティ」「労務管理」「コミュニケーション」の3つに大別できる。

 1つ目に気を付けたいのはセキュリティだ。ウイルスなどのマルウェアはもちろんだが、例えば移動中にPCを紛失したり、社外で作業中にPCの電源を入れたまま離席して機密情報が漏えいしたりするリスクがある。マルウェアについてはWindows 10の標準セキュリティである程度対処できるが、機密情報漏えいリスクへの対策は別途必要だ。

  2つ目は労務管理だ。「時間や場所に縛られない柔軟な働き方」を実現することがテレワークだが、いつ、どのように働いているのかが見えにくいといった問題もある。「テレワークを導入したら従業員の労働時間が逆に増えた」といった事態にもなり得る。

 富士通はこれらの課題の解決策として「手のひら静脈認証」「Sense YOU Technology Biz」「TIME CREATOR」といった仕組みを用意している。

手のひら静脈認証

手のひら静脈認証*

 手のひら静脈認証(注)で利用者本人を認証し、Sense YOU Technology BizでPCの「のぞき見」を防止する。労務管理についてはTIME CREATORでPCの動作状況を記録、管理できる。TIME CREATORは月数千円程度で利用できるクラウドサービスのため、気軽に始めやすいだろう。これらの仕組みを使うことで、働き方の「見える化」につながるというわけだ。*:手のひら静脈認証はオプション機能。

円滑なコミュニケーションを支えるクラウドサービス

 3つの中で最も関心の高い3つ目が「テレワークによりコミュニケーション不足が生じないか」という懸念だ。言うまでもないが、いくらPCを持ち運べても「データがない」「メールは社内でなければ見られない」では仕事に支障を来す。現在はさまざまなサービスがクラウドで提供されている。業界に特化したサービスも中にはあるため、必要な業務システムをクラウド化するのもいいだろう。まず導入しておきたいのが、どの業界でも共通して利用シーンの多いオフィスツールと、ファイル共有サービスだ。これらのツールを採用することで、いつでもどこからでもオフィスと同じ環境にアクセスできるようになる。

 オフィスツールの代表格である「Office 365」は、社外でも社内メールを利用できる点に加え、コミュニケーション基盤の「Skype for Business」が使える点も魅力だ。テレワークのように“柔軟な働き方”を実現するときに懸念されるのが、これまでオフィスでしていた「ちょっと相談」「ちょっと確認」がしにくくなること。業務で分からないことが生じた際、同僚にメールで聞くこともできるが、簡単な確認やちょっとした声掛けには不向きだ。確認不足のまま作業を進めてしまい、その結果トラブルになったり、手戻りが増えて作業効率が悪化したりしかねない。Skype for Businessがあれば、チャットで気軽なやりとりができる。必要に応じて音声通話やビデオ通話もでき、デスクトップ画面を共有しながら話すことも可能だ。コミュニケーション不足による認識違いやトラブルの大半は防止できるだろう。

ちょっとした確認もSkype for Businessで手軽に

ちょっとした確認もSkype for Businessで手軽に

 また、テレワークをしているメンバーが参加するミーティングといったこれまで意思の疎通が難しかった状況においても、Skype for Businessに加えてコンテンツコラボレーションツールとして「Box」を活用することで生産性の高いコミュニケーションが可能になる。

 Boxのコラボレーション機能によって、議論や説明に必要なコンテンツを参加者全員がリアルタイムで確認でき、議論のプロセスや決定事項といった議事内容の把握もスムーズにできる。Office 365を利用している企業であれば「OneDrive」や「SharePoint」などでもコンテンツを共有できるが、BoxであればOffice 365を利用していない企業とでもスムーズに連携可能だ。共同編集機能に特化しており、アクセス制限などを細かく設定できる点も注目だ。

 情報共有手段において、メール添付中心からBoxによる共有にすることで、メールの誤添付や誤送信に関してもリスクを低減できる。その上、法人向けライセンスでは保存容量が無制限のため、社内のストレージ容量を節約することができるのもBox導入のメリットといえる。

忘れてはいけないモバイルPCの利便性

 テレワークでの利用を想定するなら「薄くて軽い」ものを選ぶことが重要になる。どんなにスペックが高く、安全なPCでも、持ち歩きに不向きな重くて大きいものでは意味がない。薄くて軽いモバイルPCならば、従業員も「自宅に持ち帰ろう」「外出先に持っていこう」という気持ちになる。子育てや介護をしながらであっても自宅や移動中での作業を効率的に進めることができるだろう。

富士通のモバイルPC「U9310/E」

富士通のモバイルPC「U9310/E」

 例えば、富士通のモバイルPC「LIFEBOOK U9310/E」(以下、U9310/E)の重量はわずか777グラムと、大型のタブレットと比べても引けを取らない軽さだ。薄さも15.5ミリなので、一般的なビジネスバッグにもすっきり入る。有線LANポートを標準で搭載していることも注目したい。最近のモバイルPCは、薄さを優先するために有線LANポート非搭載のモデルも少なくない。無線LANの普及を受けた動きだが、社内に無線LAN環境が整っていない企業もあるだろう。社内ではLANケーブルをつないで使いたいというニーズにも応えられるのは、うれしいポイントだ。もちろん無線LANや本体に直接SIMカードを挿入できるためモバイル回線も利用可能。外出先ではそのまま通信キャリアの回線を利用してインターネットに接続できる。

  U9310/Eは、手のひら静脈認証やSense YOU Technology Biz、TIME CREATORといった、富士通が提供する仕組みも当然利用できる。テレワークに必要な基本要素を満たすPCといえるだろう。

スモールスタートで始めることの重要性

 テレワークにはさまざまな課題が存在する。じっくり腰を据えて検討することは重要だが、企業固有の課題は「運用してみないと分からない」こともある。そのため、モバイルPCの導入からスモールスタートして、テレワークの課題を改善するのがいいだろう。働き方改革の第一歩として、まずはここから踏み出してはいかがだろうか。