株式会社ガイナ様

TVアニメ「ピアノの森」の制作に富士通のワークステーションCELSIUSを活用
最新CG技術を組み合わせ、作業期間を6ヵ月短縮

CELSIUS M740/CELSIUS H970 PCワークステーション導入事例

CELSIUS M740/CELSIUS H970

2018年に第1シリーズ、2019年に第2シリーズがNHK総合にて全国放送され、現在Netflixで絶賛配信中のアニメ「ピアノの森」。この制作を担当したアニメーション制作会社が株式会社ガイナ(以下、ガイナ)だ。本作品は、累計600万部以上の大ヒット作品であり、第12回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞も受賞している。「ピアノの森」の第1シリーズにおいて、監督の発案により日本のアニメーションとしては初のCG技術「フォトグラメトリ」を採用し制作を行うことが決定した。それに伴いガイナでは、富士通の高性能ワークステーション「FUJITSU Workstation CELSIUS」(以下、CELSIUS)を導入。その優れたパフォーマンスのおかげでフォトグラメトリの技術をフルに活用でき、背景画像を作成する時間を短縮すると共に、アニメ作品の表現の幅も広げるなど数々の効果を発揮している。

導入事例概要

業種
アニメーション制作
ハードウェア
FUJITSU Workstaion CELSIUS M740
FUJITSU Workstaion CELSIUS H970
OS
Windows 10 Pro(64bit)
CPU
FUJITSU Workstaion CELSIUS M740:Intel® Xeon® プロセッサ E5-1650v4
FUJITSU Workstaion CELSIUS H970:Intel® Xeon® プロセッサ E3-1535Mv6
課題
効果
課題クオリティの高い作品を制作するにはスケジュールが限られていた。
効果富士通PCワークステーションCELSIUSとフォトグラメトリを活用する事で、クオリティの高い背景画像の作成時間を大幅に削減できた。
課題現場の作業負荷や外注コストをなるべくかけずに制作を行いたい。
効果クオリティの高い背景画像を自前でしかも少人数で作成できるようになり、人件費や外注費を抑える事ができた。
課題作品のクオリティを今までよりもっと上げたい。
効果最終版に近い背景画像を上流工程から使う事が出来、アニメーターがシーンのイメージを明確に持てるようになった事で作品の全体的なクオリティ向上に寄与した。

導入の背景

CG技術「フォトグラメトリ」を制作に採用
高性能のコンピュータが必要に

 ガイナは、NHK総合にて全国放映されていたTVアニメ「ピアノの森」の制作を担当したアニメーション制作会社だ。その原作となる作品は第12回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞しており、TVアニメも好評を得ている。本作の特徴の一つは、日本のアニメ作品で初といわれるCG技術、フォトグラメトリを採用した点だ。これを提案したのは、第1シリーズで監督を務めた中谷学氏。米・ドリームワークス社で日本人初のCGスーパーバイザーとして活躍した人物だ。

 「ピアノの森では、プロジェクト期間や予算などの制約がある中で、いかにクオリティの高い映像を作るかということが課題となりこの技術を採用することにしました」と中谷氏は語る。

 だが、フォトグラメトリを導入するには大きな課題があった。それは制作に使うコンピュータ環境だ。詳細な3次元データを扱うには、高性能GPUや大容量メモリなど高い性能が不可欠だが、同社が当時使っていたPCでは、フォトグラメトリをはじめとする高度な3次元CG技術を使いこなすには性能が足りなかったのである。

 「当時スタジオにあったPCは、手作業での作画を補助したり、演出のための効果を加えるといった目的で使われていたものです。フォトグラメトリにはそのPCの数倍の性能が必要でした」とガイナの浅尾芳宣 代表取締役社長は説明する。

写真「ピアノの森」第1シリーズの監督を努めた 中谷 学氏

「ピアノの森」第1シリーズの
監督を努めた中谷 学

導入のポイント

アニメ制作に必要なマシン環境をカスタムで構築
持ち運びに最適なモバイルワークステーションも導入

 こうした課題を浅尾社長から聞き、解決策をもたらしたのが富士通だ。ガイナが「ピアノの森」を制作する上で必要なスペックを見極め、最適なワークステーションを提案したという。

 「富士通に相談してみたところ、私たちがどういった仕事をしたいのかを細かくヒアリングしてもらい、ほとんどカスタムに近い仕様のワークステーションを作ってくれました」と浅尾社長は振り返る。

 こうしてガイナは、フォトグラメトリ処理や、それにより得られた3次元モデルの修正や加工を行うため、タワー型のCELSIUSMシリーズを4台と、関係先に持ち込んで制作に関する情報を共有するといった目的も想定し、モバイルワークステーションのCELSIUS Hシリーズを1台の計5台を導入する事になった。

写真:株式会社ガイナ 代表取締役 浅尾 芳宣氏

株式会社ガイナ
代表取締役
浅尾 芳宣

事務所システム概要(「ピアノの森」第1シリーズ製作時)事務所システム概要(「ピアノの森」第1シリーズ製作時)

導入の効果

高い処理性能とフォトグラメトリで6ヵ月の作業短縮

 フォトグラメトリによる背景画像の作成にCELSIUSを活用したことで「ピアノの森」の制作時間は大幅に短縮されたという。

 「オンエアまで半年くらいで、従来のやり方では作業時間が足りないと見込まれる中、時間的に間に合わせられたというのは大きかったです。実際に6カ月くらいの作業を短縮できました」と浅尾社長は評価する。

 また中谷監督は、厳しい制作スケジュールの中でCELSIUSの信頼性の高さにも助けられたと語る。「CELSIUSは安定性も高く、突然停止してしまったり処理が遅くなるといったことは今まで一度もありませんでした。本作のようなTVシリーズ作品は毎週納品しなければならないので、何らかのトラブルで止まってしまうと大きな問題になってしまうのですが、CELSIUSの高い信頼性のおかげで、そのようなことはありませんでした」

 実際に背景映像の制作を担当するCGクリエーターからも、CELSIUSの性能や信頼性を高く評価しており、以下のようにコメントが上がっている。

 「フォトグラメトリによる3Dデータは非常に重いので、今まで使っていたマシンでは開くだけでも時間がかかり、負荷を抑えるためテクスチャなしの表示で作業するのが一般的でした。CELSIUSなら読み込みも格段に早く、テクスチャ表示の状態で作業できるのでアウトプットをイメージしやすく、しかも2つか3つの画面を同時に開いたまま作業しても問題はありません」

放送前の準備期間の削減

制作現場の負荷も大幅に軽減され外注コスト削減の効果も

 短時間でクオリティの高い背景画像を作成できるようになったことは、現場で制作に携わるスタッフの作業負荷を軽減することにもつながっている。

 「背景を一から描く場合、数人の制作スタッフを確保した上で、別のスタッフに大量の資料を用意させ、そうして週単位の期間をかけて制作することになったでしょう。スタッフが足りなければ、他のプロダクションなどに依頼しなければなりません。しかしピアノの森では、基本的にCGクリエーター2人だけで毎回の背景制作を担当できました」と浅尾社長は説明する。

 なお、同時に導入されたモバイルワークステーションCELSIUS Hシリーズは、他の企業などとの打ち合わせに活用され、社外での円滑な業務遂行に役立ったという。

「フォトグラメトリで作った3次元データはクオリティが高い分、非常にデータが重いので普通のノートPCでは扱いきれません。しかしCELSIUSなら、その場で背景制作の内容などを見せることができます」(浅尾社長)

作業風景

早い段階から高品質の背景画像を利用でき作品クオリティ向上にも大きく貢献

 CELSIUSでのフォトグラメトリ活用は、作品のクオリティ向上も効果があったと浅尾社長は話す。

 例えば制作の上流工程で、絵コンテをもとに構図などを決める「レイアウト」という作業への応用だ。フォトグラメトリを活用することで、レイアウトの段階で質の高い背景画像を用意でき、関係者全員がシーンをイメージしやすくなった。これにより構図の修正が減ったり修正があった場合にも対応が容易になっている。

 そして、外部のCG制作会社に協力してもらうことなく、CELSIUSの性能を生かして社内で制作していたこともクオリティに寄与した。浅尾社長は以下のように話す。

 「これまでCGを使う際には、外部の制作会社と相談しながら一緒に作っていたので、時間がかかりました。しかし今回は、イメージした背景映像を自分たちだけの力で生み出せるようになり、表現の幅を広げることができました。限られたスケジュールの中、CELSIUSとフォトグラメトリを導入していなかったら、『ピアノの森』を今のようなクオリティで制作できていなかったでしょう」

作業風景

今後の展望

今後のアニメ作品でも新たな表現を模索
クリエイターの働き方改革も含めたIT活用も視野に

 ガイナは今回のフォトグラメトリを他のアニメ作品にも生かしていく方針だ。

 「制作進行中の別のアニメ作品でも、フォトグラメトリで背景制作やレイアウトを行い、作品のクオリティ向上に直結するような新しい表現を使える可能性が見えてきました」と浅尾社長は語る。さらにアニメ制作のあり方そのものも、ICT技術により変革していく可能性があると指摘する。

 「会社としては、クリエイターたちがクオリティの高いアニメ制作に集中できるよう環境を整えることも重要。これからの時代は地方在住クリエイターや海外の会社とも協力し合って制作するケースが増えてくるでしょう。そうしたとき、ネットワークで結び、作業環境全体を共有することができれば、働き方も変わってくると思います。そういったテクノロジーについても、富士通に期待したいですね」(浅尾社長)

作業風景

株式会社ガイナ 様

事業分野 アニメーション制作
ホームページ http://studiogaina.com/
概要 映画、ビデオ、テレビ番組及びコンピューターソフトを含む映像作品の企画、製作、販売、配給並びに配信など

お見積り・ご購入、お問い合わせ

パソコン直販サイト 富士通 WEB MART [法人]

※富士通パートナー及び弊社担当営業から購入を希望されるお客様は、直接担当者へお問い合わせください。

[2019年7月掲載]

このページの先頭へ