働き方改革 自社実践事例

顧客対応への時間は約30%増加
デジタル活用による働き方改革がもたらした営業効果

FUTRO MU937 シンクライアントPC導入事例

FUTRO MU937

インタビューした従業員の集合顔写真

富士通では、国内外で16万人以上の従業員を抱える企業として、グローバルでの競争に勝ち抜き、持続的な成長を続けていく必要があります。その中で、顧客への提案強化や対応の質向上を促進できるワークスタイル環境の構築は急務であり、この課題に挑んだのが、産業ビジネス本部が独自に推進した働き方改革プロジェクト「CCC」(Change2020 CareerUP CS30(Customer Satisfaction):トリプル・シー・プロジェクト)です。現場主導で進められたこの取り組みは、デジタル活用による効果も相まって、実際にさまざまな成果をもたらしています。

導入事例概要

業種
製造・IT
ソリューション
仮想デスクトップ基盤ソリューション
課題
効果
課題世界で16万人以上の従業員を抱え、国内外に事業を展開する富士通では、これからのグローバルでの持続的な成長が課題となっており、他社に対して競争優位性を確保するための体制や仕組みの構築が必要。
またビジネス強化の対策の1つとして、営業部門の提案力強化や顧客対応の品質向上による他社との差別化が重要となり、旧態依然とした業務ルール、業務プロセスから脱却し、柔軟性とスピード感のある新たな働き方が求められた。
効果高時間や場所などに制限されないコミュニケーション環境を構築したことで、業務効率の向上と意思決定のスピードアップを実現。
それによって顧客対応などのより重要な時間に充てられる時間も30%増加しグローバル競争で勝ち抜くための富士通の提案力強化に寄与。

導入の背景

16万人超の従業員、グローバルでの成長は不可欠

 富士通では、グループ会社を含めて国内で9万人以上、全世界を含めると16万人以上の従業員を抱えています。いまやビジネスの競争の場はグローバルであり、その中で持続的な成長を維持していく体制の構築が急務です。具体的には、多様な人材が活躍してチームとして高い成果を出し続けられることが求められます。そうした柔軟性と多様性の文化を組織の隅々まで根付かせることが、より急速な変化への対応を求められるグローバル競争には不可欠でした。

 この課題解決に必要なのが、働き方改革です。富士通では、すでにその取組みを積極的に行っており、2010年度の在宅勤務制度導入や富士通グループ全社における共通コミュニケーションツールとしてOffice 365の導入、2015年にはフレックスタイムの見直し、2017年度より、本社の全社員を対象としたテレワーク勤務制度を導入しています。

 しかし、会社全体としての施策だけでは限界もありました。働き方改革では、どうしても残業削減などに焦点を当ててしまいがちで、もともと社内にはネガティブなイメージがあったのです。そこで、現場からよりポジティブなイメージで実践する新たな取り組みが必要であり、そうして生まれたのが、「CCC(トリプル・シー)プロジェクト」でした。

「“イキ・イキ”“ワク・ワク”“キラ・キラ”働ける職場環境の実現へ」のイメージ画像

きっかけは営業スタイルの改革であった。

 CCCプロジェクトは、富士通の営業部門の一つ、産業ビジネス本部で2017年3月から実施している働き方改革を目指す取り組みです。組織文化・ワークスタイルを変えるChange2020」、多様な働き方やキャリアプランの選択肢の多様化を認め支援する「CareerUp」、顧客満足度の向上を目指す「CS30」という3つの“C”から名付けられたこのプロジェクトは、「メンバー全員が“イキ・イキ”“ワク・ワク”“キラ・キラ”働ける職場環境を絶対に作る」と部門のトップ(執行役員 産業ビジネス本部長 藤原 克己)自らが意識改革に動き出して産業ビジネス本部が独自に始めたものです。前例やルールにとらわれることなく、組織・地域・世代を超えて働き方改革に取り組んでいます。

「産業ビジネス本部のお客様は、富士通以外の多くのベンダーから様々な提案を受けています。そのなかでどうすれば富士通を選んでもらえるのか、提案の品質や量、顧客対応の品質・スピードアップなど、いかに営業に付加価値をつけられるか。この課題がプロジェクト背景にあります」と、産業・流通営業グループ デジタルビジネスセンター AI・IoTビジネス推進部の井川千春は振り返ります。

 営業職では、顧客提案の前の事前作業が問題でした。提案書作成前の情報収集やヒアリングなどが重要であるにもかかわらず、上司の承認のための押印、会議室予約、会議資料準備など純粋な営業活動以外の業務が、本来注力すべき業務の阻害要因となり、しかも長時間残業の一因にもなっていました。

 こうした現状を打開し営業改革をすべく、CCCプロジェクトでは最初に、“イキ・イキ”“ワク・ワク”“キラ・キラ”というトップメッセージをもとにブレインストーミングを実施。一人ひとりが当事者となって現場起点の前向きな活動にするためのコンセプトビジョンをまとめました。その上で2017年度の具体的な活動テーマとして、現場の声をもとにした40の施策を企画。関連部門と連携しながら各種施策を推進してきました。営業改革以外にもキャリアアップの必要性も挙げた上で、CS(顧客満足度)の向上を目指すフェーズを描きました。

図解:1年間の施策

 このように3つの“C”から多様な施策を展開しているプロジェクトの中でも、特に富士通のビジネス課題の解決に大きく影響しているのは「Change2020」における施策です。ここではその観点から、具体的にはどのような効果が生まれているのかを以下に紹介していきます。

モバイル端末の導入をきっかけに働き方改革を推進

 産業ビジネス本部で大きな課題であったのが、意思決定の迅速化や顧客対応の質向上です。そのため、同部門にとって最も大きな改革の要因になったのがデジタル活用です。

 「ここ数年はデジタル活用による営業スタイルの変革が急務でした。しかしながら社内は、旧態依然とした組織文化、業務ルール、オフィス環境のままです。そこで産業ビジネス本部全員の意識改革も含めた取り組みを実践することにしました」(プロセス産業第二統括営業部 第二営業部 マネージャー 喜多 昌之)

 プロジェクトにて、まず取り組んだのが、全社に先駆けてテレワークを推進することです。
 「産業ビジネス本部では、2017年7月に、VDIとモバイル・シンクライアント端末を導入しました。これらを活用する形で、“どこでもオフィス”を目指したテレワークを推進することにしました。ただし、その実践には、産業ビジネス本部の社員全員に適用するためのルールや制度、方針を決定する必要があります。その中で、モバイル・シンクライアントのセキュリティのメリットは、持ち出しルール緩和に大きなポイントとなりました」(プロセス産業第一統括営業部 第一営業部 グループリーダー 加藤貴之)

 テレワークを実践する中で、社員に最も好評だったのは、まさにこのモバイル・シンクライアント端末でした。

 「以前に会社から支給されていたPCは重く、持ち運びに苦労していました。しかし、新しいモバイル・シンクライアント端末は、大容量バッテリーを搭載していてもわずか1kg未満の軽さで、苦もなく持ち運べます。柔軟なフレックス制も導入されたことで、私のような子育て中の社員も場所にとらわれない仕事ができるようになりました」(プロセス産業第一統括営業部 第一営業部 有田佑子)

 「従来のPCは持ち出しルールが厳しかったため、外出先から十分に活用できていませんでした。新しいモバイル・シンクライアント端末では、データがすべてVDI環境にあり、モバイル・シンクライアント端末にはないため、セキュリティ面でも安心できます」(組立産業第一統括営業部 第四営業部 小野裕太)

 このルール緩和による柔軟な働き方の実践として、そのほかにもコアタイム無しフレックス制度・時短勤務フレックス制度のトライアル、サテライトオフィスの設置や社内託児所の施策なども進んでいます。

導入のポイント

各種デジタル施策で意思決定のスピードを改善

 こうしたVDIとモバイル・シンクライアント端末によるテレワーク推進と合わせて、ソフトウェアまわりの強化も図りました。デジタル活用による営業スタイル変革として注力したのが、完全ペーパーレス化です。業務効率化と意識改革の両面から机上の紙を一掃。社内会議資料の印刷も原則禁止にし、PC画面上で表示することを意識した資料作成へと切り替えました。

 2018年度には電子印鑑システムを産業ビジネス本部に先行導入し、紙と判子が当たり前だった業務のデジタル化を実施しています。このシステムにより、外出先・出張先・在宅勤務などのテレワーク環境からでも見積書・請求書などの承認・押印が可能になりました。

 「業務のスピード感は確実に速くなっています。島型の座席配置が中心だったオフィス内もフリーアドレス化を徐々に進め、印刷した書類を持って相談をしにいくという行為から、今ではPCを1つ持って相談をして意思決定するというスタイルが見られています」と加藤。さらに小野も「今や端末1台あれば、紙の見積書を上司の席に置く必要もなくオフィスにいる必要もありません。デジタル化したワークフロー内で完結できるのは本当に便利です」と話します。

 このほかに、勤務時間中のPCログ取得によって業務可視化を行う「TIME CREATOR(旧称 IDリンク・マネージャー)」を導入しています。テレワークでは、社内での勤務ではないだけに、勤務内容が曖昧になりがちである中、そうした環境下で社員の長時間労働の危険モニタリングする必要があります。

写真:フリーアドレス化したオフィス

フリーアドレス化したオフィス

導入の効果

顧客対応に割く時間が増え、対応品質の向上へ

 こうしたデジタル活用の取り組みによって業務効率の向上、スピードアップを実現したことで、産業ビジネス本部では、さまざまな効果を実感しています。特にテレワークによって無駄な移動時間を低減させることは、営業提案へのインプットなど、より有意義な時間へ充当することにもつながります。それは産業ビジネス本部の課題であった顧客対応にも大きな影響を与えます。「こうした業務効率化に伴って、顧客対応に充てられる時間を30%も増やすことができています」と加藤は話します。

 そして、これらの働き方改革の取り組みは他にも数値となって表れています。

 「総務部の報告によると、テレワークの実践によって産業ビジネス本部の平均残業時間は前年の約29時間から約25時間へと10%以上減少、さらに資料印刷や会議室の予約といった会議の準備にかける時間が50%も減りました。コスト削減の点では、出張費用は20%削減されています。また、完全ペーパーレス化を推進したことで、紙の消費は前年比44%と大きく減り、印刷コストも33%に減っています」(井川)

写真:女性の働きやすい環境イメージ

 こうした取り組みが奏功し、「女性の働きやすさ」も格段に向上しています。富士通は、次世代育成支援対策推進法に基づいて子育てサポート企業を認定する「くるみん」のうち、より高い水準の取り組みを行っている優良企業の特例認定「プラチナくるみん」を受けています。また、女性活躍推進法に基づいて女性が活躍できる取り組みを推進する優良な企業を認定する「えるぼし」も受けています。ちなみに東洋経済新報社「CSR企業総覧」の評価では、女性が働きやすい企業の第1位(1,408社中)に選ばれています。

展望

働き方改革のゴールは「顧客満足度向上」

 富士通産業ビジネス本部では、新しいデジタル活用の取り組みとしてAIやRPAを導入して社内事務処理の業務効率化を進めています。2018年9月には現場の声をもとに、見積書作成などの社内業務にRPAの適用したトライアルを実施中です。すでに月40時間程度の業務効率化を見込んでいます。

 CCCプロジェクトをリードする喜多は、デジタル活用による営業スタイルの変革をはじめとする施策の効果を実感しています。

 「さまざまな施策を通じて、私たち産業ビジネス本部の組織と文化、そして営業スタイルは着実に変わりつつあります」と喜多が話すように、次世代CRM導入や営業系システムの見直し、また前述のワークフローなど、さまざまな改革は、顧客対応などの面からビジネスに好影響を与えています。また、作業環境の面からも、フリーアドレスによってコミュニケーションが活性化したと評価する声も上がっています。

 「今回のデジタル活用による取り組み・意識改革を一度限りの活動とすることなく、これからも継続してさまざまな施策を展開していきます。最終的には、私たちが蓄積した働き方改革の知見を営業活動に役立て、よりお客様の満足度向上につなげていきたいと考えています」(喜多)

 富士通産業ビジネス本部は、ICTベンダーの営業として、常に最新技術を取り入れながら新しい働き方にチャレンジし続けています。試行錯誤はこれからも続けていきますが、それは最終的に必ずや「顧客満足向上」という目標を実現できると考えています。それを積み重ねていくことはもちろん、今回の取り組みではES(従業員満足度)の向上効果も表れており、多様な人材が力を発揮する社内体制を作ることで、激化するグローバル競争の中でお客様から選ばれる企業となるための礎になると考えています。

集合写真

左から:
産業ビジネス本部 組立産業第一統括営業部 第四営業部 小野 裕太氏
産業・流通営業グループ デジタルビジネスセンター AI・IoTビジネス推進部 井川 千春氏
産業ビジネス本部 プロセス産業第一統括営業部 第一営業部 有田 佑子氏
産業ビジネス本部 プロセス産業第二統括営業部 第二営業部 マネージャー 喜多 昌之氏
産業ビジネス本部 プロセス産業第一統括営業部 第一営業部 グループリーダー 加藤 貴之氏

富士通株式会社

事業分野 電気通信事業など
ホームページ http://www.fujitsu.com/jp/
概要 ICT分野において、各種サービスを提供するとともに、これらを支える最先端、高性能かつ高品質のプロダクトおよび電子デバイスの開発、製造、販売から保守運用までを総合的に提供する、トータルソリューションビジネスを展開している。

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[2018年12月掲載]

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