創立以来100年以上にわたって、日本のものづくりを支える人材を輩出し続けてきた東京電機大学(以下TDU)。同校は、職員用端末のリプレースにあたり、2年前に富士通がデータセンターに構築した教育研究システムと同様の技術を選択し、端末にはOSやHDD非搭載のゼロクライアント「FUTRO L420」を採用した。使いやすさと管理性を両立し、セキュリティも向上したと高い評価を得ている。
業種 | 教育機関 |
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ハードウェア | FUJITSU Zero and Thin Client FUTRO L420 |
OS | ー |
CPU | Teradici™ TERA2321 |
1 | 端末導入の整備に伴う煩雑な作業や、ソフトウェアのライセンス管理を効率化したい | 端末の更新時期を統一するとともに購入コストも大幅に圧縮、仮想化による統合管理により管理負荷を軽減 | |
2 | キャンパスが分散しているため、他のキャンパスでも自分のデスクトップ環境で仕事をしたい | 仮想化により、どの端末からでも自分のデスクトップ環境を呼び出せるようになった | |
3 | 情報漏えいや機器の故障によるデータ消失のリスクを最小化したい | サーバ側ですべてのデータを管理し、端末にデータが残らないので安心して利用できる |
学校法人東京電機大学
総合メディアセンター
課長
高橋 陽子 氏
学校法人東京電機大学
総合メディアセンター
総合メディアセンター
小山 裕徳 教授
TDUでは、職員が各種事務業務に利用する端末を約350台利用している。基本的に5年リースで利用しているが、導入時期がまちまちで、その本体およびソフトウェアのライセンス管理が大きな負担となっていた。管理部門である同大学のメディアセンターが直接導入したのは大口の約210台で、残りは各部門が部門予算で推奨機を導入しており、それも管理が煩雑になる一因であった。学校法人東京電機大学 総合メディアセンター センター長 小山裕徳 教授は、「一気に同じものを導入することで、導入コストの圧縮と運用負荷の軽減を目指しました。ちょうど一番数が多い130台のWindows XPのサポート切れが迫っており、この機会にすべてを入れ替えたいと思いました」と語る。
方針を検討中にリースアップとなる2013年3月を迎え、TDUでは1年間の再リースを実施。2013年秋に従来のPCではなく、シンクライアント一括端末を導入することを決定した。
TDUでは、2012年に仮想化技術を活用し学生向けの教育研究システムを構築。PC教室にシンクライアント端末を設置し、どの端末からでも自分の環境を呼び出せ、端末にデータを残さないセキュアな環境を実現していた。このシステムの構築を行ったのが富士通であり、同様の技術を職員用のシステムでも構築しようと考えたのだ。
写真 1:富士通が2012年に構築した学生向けの教育研究システム。PC教室に置かれたシンクライアント端末などから利用できる。
学校法人東京電機大学 総合メディアセンター 課長 高橋陽子氏は、「2011年に導入したサーバプラットフォームは、東日本大震災の時も止まることなく安心して使えました。また、2012年に導入した教育研究システムはシンクライアントということもあって端末の故障率も下がっており、今回職員用PCを入れ替えるなら同じ環境を構築したいと考えました」と語っている。
そこで、既存のサーバプラットフォーム上への事務用仮想デスクトップ構築については、2013年12月に富士通へ依頼。同時にシンクライアント端末の選定を行うことになった。
学校法人東京電機大学
入試センター
入試担当
課長
大房 克 氏
選定に当たっては、シンクライアント端末を出している複数のベンダーに声をかけた。その中で、マウントキットによりディスプレイ裏に設置できることで机上のスペースを広く使えること、さらにデュアルモニター機能が使えること、加えてコストパフォーマンスなどを評価し、2014年2月に「FUJITSU ゼロクライアント FUTRO L420」に端末を決定した。ちなみに、TDUではポリシーとして端末は日本製を選ぶことにしている。高橋氏は、「以前外国製を導入したことがあるのですが、故障率が高いうえ、代替機として違う製品が送られてくることもあり大変困りました。それ以来端末は国産と決めています」と語る。
FUTRO L420は、シンクライアント端末の中でも、OSもHDDも搭載しないゼロクライアントと呼ばれる端末である。OSやHDDを搭載していないので、情報漏えいやウイルス感染の心配がなく、IDとパスワードを入れるだけでどの端末からでも自分の環境を利用できる。さらに、通信プロトコルPCoIPと専用ハードウェアアクセラレーターを搭載しているので、従来のシンクライアント端末に比べて操作に対するレスポンスが良い。
実際に利用している学校法人東京電機大学 入試センター 入試担当 課長 大房克氏は、「ゼロクライアントになると聞いて、どういうものかわからず当初は不安もありましたが、OSやアプリケーションの起動の速さもマウスの操作性も、まったくと言っていいほど従来のPC環境と変わらず、不自由はありません」と語っている。
サーバ側の仮想化システムは、2014年2月末に完成。端末は3月から入れ替え作業を行い、順次運用を開始している。
写真 2:入試センターの様子。ゼロクライアント端末はディスプレイ背面に設置され、省スペース化にもつながっている。
写真 3:自分のID/PWでログインすることで、どの端末からでも即座に自分の環境を呼び出せる。
端末は、21.5インチのディスプレイの背面にマウントキットで固定して利用。机上や足元に端末を置く必要がなくなり、「デスクスペースが広く使えるようになりました」(大房氏)と好評だ。また、TDUはキャンパスが分散しているため、会議などで他キャンパスから本部がある北千住に来る職員も多い。その場合、従来自分のデスクトップ環境を使うことはできなかったが、どこからでもIDとパスワードを入力するだけでアクセス可能となり、「非常に便利」という声があがっている。さらに、異動により職場が他キャンパスに移る場合も楽になり、高橋氏は、「従来はHDDを取り外して持って行っていました。今後はその必要がなくなります」と満足げに語る。
今回一気にすべての職員用端末を入れ替えたことと、仮想化によってサーバ側ですべてのソフトウェア資産を容易に把握できるようになったことで、管理の効率化も図ることができた。セキュリティ面でも、学生の成績などセンシティブな情報も多く扱うため、情報が端末に残らないことはかなりのメリット。また、バックアップを各自でとる必要がなく、仮に端末が故障してもデータを消失することがないので、より安心して利用できるようになった。
導入コストに関しては、仮想化基盤を構築したため劇的な削減には至っていないが、端末コストだけで比べれば約4分の1に下がっている。「教育研究システムのシンクライアントは故障率がかなり下がっており、今回のゼロクライアント端末もそこに期待しています。長い目で見ればよりコストダウン効果が見込めるはずです」(高橋氏)
使い始めて約3か月の現在(2014年6月末)、端末の稼働率を見ながら、最適配置を探っている。また、Officeを2003から2010に入れ替えたため講習会を行うなど、職員のスキルアップにも力を入れる。今回ノート型シンクライアント端末(FUTRO MP702)も10台導入しており、それを講習会や会議などオフィス以外の共用スペースで活用。「自分の環境を呼び出せるので、より実践的な講習が可能になります」(高橋氏)
富士通について高橋氏は、「長くおつきあいしていることもあって、当校のシステムをよくご存知で、細かいところまで行き届き安心して任せられます。これからもパートナーとして、一緒によりよいシステム構築を行っていきたいですね」と話す。
最後に小山教授は、「今後もシンクライアント端末の統合管理環境の構築など、運用コスト削減と利便性の向上を両立できるICT環境を構築していきます」と抱負を語った。
写真 4:今回の導入ではゼロクライアントの他に、ノート型のシンクライアント端末も用意。職員研修などに有効活用している。
ユーザープロフィール | 1907年の創立以来100年以上にわたって、技術を通して社会貢献できる人材の育成を目指す「実学尊重教育」の建学精神と、技術者である前に社会の一員として成長し続ける人格の育成を目指す「技術は人なり」の理念のもと、現代社会を多様に支える高度な知的専門職の人材育成を行っている。 |
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