日建リース工業株式会社は、建設現場で利用する足場材の検収作業に富士通のタブレットを活用。従来、作業現場で紙に書きとった検収情報を事務所で入力し直していたプロセスを、現場でタブレットを使い、その場で入力まで行うプロセスに改革した。これにより、入力業務だけで、月に全国で4,160時間、26人分の省力化を実現。さらに、内蔵のカメラにより検収品の写真撮影にかかる手間も省力化でき、大幅な業務効率向上を実現した。
1 | 従来、紙の伝票で行っていた足場材の検収業務を効率化したい | 現場で入力可能なタブレットを採用することで、検収業務をほぼ100%オンライン化 | |
2 | 実際の在庫品とシステム上の在庫数データに発生するタイムラグを解消したい | ほぼリアルタイムで在庫を把握できるようになり、ビジネスの機会損失を防止 | |
3 | 破損品などの状況をホワイトボードに書き込みデジカメで都度撮影する手間を省力化したい | タブレット内蔵のカメラで、写真と情報をまとめてサーバに送信でき効率化を実現 |
日建レンタコム株式会社
情報システム部
部次長
石黒 雅樹 氏
日建レンタコム株式会社
情報システム部
部長
満川 和也 氏
日建リース工業株式会社は、建設用資材や介護用品、オフィス、イベント用品などのリース・レンタルを行う総合リース・レンタル業界のリーディングカンパニーである。レンタル業は単純な販売とは異なり、モノと紐づけて貸出日数や顧客などさまざまな情報を管理しなければならない。日建レンタコム株式会社※ 情報システム部 部長 満川和也氏は、「多くの情報を確実に効率よく管理するため、当社では古くからシステム化を実践してきました」と語っている。
7〜8年前からさらなる業務の省力化が求められ、建設現場で使う足場材の検収業務の改革を目指した。従来は、足場材が貸出先から日建リース工業の工場に返却されると、スタッフが作業現場で検品をしながら品番や修理内容を紙の伝票に記入。その後、同じく工場内にある事務所で紙に書いた情報を、PCで入力処理していた。同社は青森から沖縄まで事業所があり、全国で同様の処理が行われ、その伝票の枚数は月10〜12万枚にも上っていた。この業務を効率化するため、当初検収現場へのノートPCの導入を検討したが、実現には至らなかった。日建レンタコム株式会社 情報システム部 部次長 石黒雅樹氏は、「建設現場で使われる商品ですので、作業現場は土埃などの粉じんも多く、キーボードがあるPCでは環境に耐えきれないと判断し、導入を見合わせました」と語る。
※日建レンタコムは日建リース工業のホールディングカンパニーとして、人事・総務・経営企画・法務・情報システム部門を担当。
図 1:日建リース工業の業務プロセスイメージ [拡大図]
日建リース工業株式会社
武蔵工場
工場長代理
小川 宏司 氏
一旦は計画が中断した足場材検収の業務改革だが、タブレットが広く普及し、さまざまな業務でも活用され始めたことから、2010年夏、端末をPCからタブレットに変更して検討を再開した。タブレットならキーボードがなくPCに比べて粉じんが入りにくいうえ、カバーをつけられるので、より安心して利用できると考えたからだ。加えて、作業現場で手袋のまま操作できるよう、ペンが使えることも要件となった。
また、カメラ付きの製品であることも重要だった。足場材は屋外に長期間さらされるため、消耗が激しく、返却時に修理が必要となる場合も多い。検収時には担当者が良品か不良品かを確認し、修理が必要かどうかを判断するが、不良品の場合は状態を確認するため写真を撮影する。日建リース工業株式会社 武蔵工場 工場長代理 小川宏司氏は、「従来はホワイトボードにお客様名、作業所名、品番、数量、内容を書いてデジカメで品物と一緒に撮影していました。当工場では1日約600件の検収を行いますが、1件あたりの書く時間が30秒として半数を撮影するとそれだけで2時間半かかります」と語っている。タブレットにカメラ機能が付けば、他のデータと一緒にシステムに送信するだけでよくなるので、大幅な効率化が見込める。
同社は、複数のタブレットを比較検討した結果、2010年9月富士通のタブレットを採用した。10月から約半年かけて1次開発を実施し、東京、横浜、埼玉の3拠点5台ずつでテスト運用を実施。その結果を反映した2次開発を2011年10月から約半年かけて行った後、全国46拠点に対し、500台以上を導入した。
写真 1:日建リース工業の最新の拠点である埼玉県飯能市の武蔵工場。広大な敷地で足場材の検収作業が行われている。
富士通のタブレットを選んだ理由について、石黒氏は次のように語る。「オフィスから離れた工場で利用するため、バッテリーの持ちがよくないと実用には至りません。その点、富士通のタブレットは、当時最もバッテリーの持ちが良かったのです。ほとんどの機種はバッテリー駆動時間が不足しており、それ以上の検討にも至りませんでした」
また、富士通のタブレットはカメラを内蔵しており現場での写真撮影が可能な点と、特殊業務であるにも関わらず、工場まで足を運んでタブレット活用を提案する富士通の提案力、基幹システムから端末までトータルにサポートできる総合ICTベンダーである点も評価した。
具体的な使い方は、以下の通り。まず、貸し出していた足場材が戻ってくるとタブレットに接続されたスキャナで顧客情報のバーコードを読み取った後、一品ずつ検品。その場で必要事項をタブレットに入力し、基幹システムにデータを送信する。従来は、作業現場で必要事項を紙に書き、その後事務所で入力作業を行っていたので、その入力作業が丸々不要になったことになる。
現場の声として小川氏は、「撮影が非常に楽になったことと、履歴機能により、品番などは頭の1文字を入力すれば候補が出るので、ペンで選択するだけで済む点が喜ばれています」と話す。なお、タブレットには特製のショルダーストラップ付き防塵カバーを装着して利用しており、埃による問題は起きていないという。
写真 2:検収作業では、まずタブレットで顧客情報や品番・数量を確認。現物が合っているかどうかを確認していく。
写真 3:後から数の照合ができるように全ての検収品を撮影。破損個所については拡大して撮影する。なお、静かとは言えない現場のため、撮影時にはシャッター音の代わりに大きな赤丸が画面に表示される工夫が。
日建レンタコム株式会社
情報システム部
システム運用課
主任
古川 祐平 氏
同社では、導入当初月に10〜12万枚あった伝票の手入力作業の97%を自動化するという目標を設定した。最終目標は100%だが、イレギュラーとしての3%を見込んで立てた数字である。しかし、現在は予定を上回ったと日建レンタコム株式会社 情報システム部 システム運用課 主任 古川祐平氏は胸を張る。「導入から約半年後の2012年9月時点では87%でしたが、2013年12月時点ではすでに99%がタブレットから入力されています」
ほとんどの入力作業が自動化されたことにより、大幅な効率化が実現した。古川氏は、「手書きの伝票を入力するのに1枚約2分かかり、それが全国で12万枚弱として合計すると4,160時間、1日の労働時間を8時間と換算すると、26人分の作業が削減された計算になります」と話す。
写真 4:現場で入力された検収情報は事務所のPCですぐに確認できる。破損個所の拡大写真も添付可能だ。
また、従来は紙伝票の作成とPC入力に手間がかかっていたため、何日か検収処理が遅れてしまうこともあった。そのため、足場材が戻ってきたことをすぐにシステムに反映できず、システム上の数字と現物が必ずしも合っていなかった。満川氏は、「タブレットを導入したことにより、足場材が戻ってきたら、すぐに検収を行いシステムにも反映されるので、ほぼリアルタイムで在庫数がわかるようになり、機会損失が減りました」とビジネス面での効果を指摘する。
同社では、現在基幹システムをメインフレームで稼働させているため、バッチ処理でデータを更新している。今後の展望について満川氏は、「現在メインフレームのオープン化を検討しており、それが実現すればさらにリアルタイムかつシームレスなデータ連携が可能になります。まずはそこを目指しています」と話した。
今回のタブレット導入により、主力商品の検収業務を大幅に効率化できた日建リース工業。これからも、さらなる業務改革により、収益性の向上とよりよいサービスの実現を進めていくことだろう。
ユーザープロフィール | 日建リース工業は、建設用仮設機材のレンタルの先駆者として国内の流通量の3分の1を占める仮設資材を保有。賃貸資産は2000アイテムを超え、仮設ハウスや事務用品、OA機器、家電製品まで幅広いレンタル需要に応えている。 |
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所在地 | 東京都千代田区猿楽町2丁目7番地8号 住友水道橋ビル3階 |
設立 | 1967年11月 |
代表者 | 代表取締役社長 関山 正勝 |
ホームページ | 日建リース工業株式会社様 ホームページ |
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