株式会社アライドエンジニアリング様
シンクライアント導入で、コロナ禍でリモートワーク体制に移行しても製品・サービスの品質を確保
シンクラインアントFUTRO導入事例
株式会社アライドエンジニアリング(以下、アライドエンジニアリング)は、東京2020オリンピックを想定した混雑緩和と働き方改革推進をきっかけに、社員の2割を対象にリモートワークの導入を計画。富士通のパートナーであるSCSKが提供する法人向けシンクライアント「FUJITSU Thin Client FUTRO」(以下、FUTRO)シリーズを採用した。その後、新型コロナウイルス感染拡大で社員全員が常時リモートワークを実施する必要に迫られたが、FUTRO端末を追加導入することで、従来通り開発や業務を継続し、製品やサービスの品質を確保することに貢献した。
導入事例概要
FUJITSU Thin Client FUTRO MA576
Windows 10 IoT Enterprise 2015 LTSB(64ビット)
インテル® Celeron®プロセッサー 3855U(1.60GHz)
事例のポイント
- 最初は一部社員10名のリモートワーク用にシンクライアント端末の導入を想定
- コロナ禍で状況が急変し、社員全員が常時リモートワーク可能な体制へと転換
- 開発や業務を継続し、製品・サービスの品質を確保したことが最大の成功要件
背景・課題
最初は一部社員10名のリモートワーク用にシンクライアント端末の導入を想定
アライドエンジニアリングは、1997年に学術振興会 未来開拓事業「ADVENTUREプロジェクト」のコアメンバーとして参加し、2001年にその成果のADVENTUREシステムをベースとした大規模構造解析ソフトウェア「ADVENTURECluster」を開発したベンチャーだ。独自のCGCG法(並列CG法による有限要素法の構造解析ソルバと直接法とのハイブリッド解法)の活用により、高い並列効率とメモリ消費量低減を両立させ、CAE業界に飛躍的な革新をもたらした。2009 年に文部科学大臣表彰科学技術賞を受賞したほか、2013 年には日本計算工学会技術賞も受賞するなど、大規模なモデル計算で高い評価を得ている。また同社は、設計仕様から部品の仕様を展開して製品の部品構成を定め、設計にフィードバックをする設計支援システム「vDESIGN」の開発・販売も行うほか、ADVENTUREClusterの導入を支援する受託解析および解析コンサルティングサービスも実施している。
そんなアライドエンジニアリングは、2020年6月に全社員対象のリモートワークを開始。その基盤にSCSKが提供する法人向けシンクライアントのFUTROシリーズを採用した。
きっかけとなったのは、2019年7月に開始したシンクライアント導入プロジェクトだった。その背景について、アライドエンジニアリング システム開発事業部 事業部長 西守 充氏は次のように説明する。「当時、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が開催される会場付近では、公共交通機関の混雑緩和に向けた政府主導のリモートワーク推進キャンペーンが行われていました。それと平行し、2019年4月からは多様な働き方を選択できる社会の実現を目的とした働き方改革関連法が施行され、SCSKグループも働き方改革を積極的に推進していました。その一環で、当社もリモートワークの導入を計画したのです」
社員の8 割以上がエンジニアで構成される同社は、リモートでも業務が遂行しやすい条件が揃っていた。しかし、当時はまだ環境や手段が整っていなかったと西守氏は打ち明ける。「さまざまな方法を検討した結果、シンクライアントの活用を決め、その環境構築のためのプロジェクトを開始しました」。当初の計画では、2020年8月までに社員の出社比率を7~8割に抑え、2~3割の社員が交代で在宅勤務を行う予定だった。50数名の会社なので、常時10 名ほどがリモートワークを行う計算となり、端末は無理なく入れ替えられる20台の導入を想定した。
株式会社アライドエンジニアリング
システム開発事業部 事業部長
西守 充 氏
解決策と効果
コロナ禍で状況が急変し、社員全員が常時リモートワーク可能な体制へと転換
シンクライアント方式の選定にあたっては、会社のデスクトップ端末に遠隔からアクセスし、イメージの入出力だけで活用できる画面転送型が望ましいと考えた。CPUやメモリなど端末側のリソース負担を軽減できるからだ。また、端末は可能な限り軽量・コンパクトなモデルを選択することも条件とした。シンクライアントシステム各社の製品情報を収集し、比較検討した結果、SCSKが提案したFUTROシリーズが最も条件に合うと判断。13.3型ワイドウルトラ・スリムモバイルモデル「MU937」の採用が決定した。
「MU937の最大のメリットは、非常に薄くて軽いことです。800グラムを切るシンクライアント端末は他でもあまり見かけません。リモートワーク利用者が持ち運ぶことを想定し、可搬性の高さを重視しました」と語るのは、アライドエンジニアリングADVC事業部 サポート部長 中島 和彦氏だ。また、シンクライアントに必要な安全機能が盛り込まれていたことにも注目したという。
MU937のサポートOSにはWindows 10 IoTEnterprise 2016 LTSBが採用されており、悪意のあるユーザーからシステムを保護する機能と、安定性・信頼性の向上を実現する「ロックダウン機能」が搭載されている。ストレージへの書き込み制限や初期設定の保持、USBデバイスへのアクセス制限、起動できるアプリの制限、書き込みフィルター(ローカルストレージにデータを残さない設定)など、セキュリティポリシーに合わせて容易にカスタマイズが可能になっている。
「ソースコードなどの機密情報を持ち出すことができないよう、ストレージにデータを保存できないタイプのシンクライアントを探していました。その点でもMU937は安心して活用できる製品だと感じました」と中島氏は語る。
試験運用を経て、2020年3月に20台のMU937が導入され、本格運用が開始された。リモートワーク利用者は自宅からVPN(仮想プライベートネットワーク)で会社のデスクトップ端末に接続し、画面イメージを転送することで、会社で行っている日常業務をそのまま再現することが可能となった。
ところが、そこから状況が急変したと中島氏は振り返る。「日本国内でも新型コロナウイルスの感染拡大が始まり4月には政府による緊急事態宣言も発出されたことで、リモートワークに切り替える企業が急増しました。当社も計画を見直し、社員全員が常時リモートワーク可能な体制を整える必要に迫られたのです」
社員全員にシンクライアント端末を配付するには、新たに30台を調達しなければならない。そこで問題となったのがシンクライアント端末逼迫だった。リモートワーク需要が急速に拡大し、市場のシンクライアント製品が品薄になる中で、必要数を確保できなければ業務が停滞する可能性もあった。「そうした中で貢献してくれたのがSCSKでした。 富士通と早期に折衝し、5月には必要な数を確保できました。SCSKの協力がなければ数ヶ月は遅れていたかもしれません。本当に感謝しています」と中島氏は述べる。
株式会社アライドエンジニアリング
ADVC事業部 サポート部長
中島 和彦 氏
今後の展望
開発や業務を継続し製品・サービスの品質を確保したことが最大の成功要件
6月からは社員全員が原則リモートワークで業務を行い、感染拡大に備えることとなった。追加された30 台のうち、数台はMU937よりディスプレイサイズが大きい15.6 型ワイド モバイルモデル「FUTRO MA576」(以下、MA576)が導入された。大きな画面が必要な社員に配慮した結果だという。西守氏は、「MU937、MA576 ともリモートワーク用端末としてのパフォーマンスは高く、インターフェースも安定稼働しているので、業務遂行上の問題はほとんどありません」と高く評価する。
そして現在は緊急事態宣言も解除され、ほぼ100%だったリモートワーク実施率も徐々に緩和し、お客様サポート部門の担当者を中心に約2割が出社している状況だという。
「今後は、シンクライアント端末側の設定やソフトウェアをリモートで安全にアップデートできるよう、管理サーバー側の環境を整えるつもりです。FUTRO シリーズでは端末側にリモートアップデートに必要なアプリケーションとライセンスが搭載されているので、サーバーを用意するだけ低コストで実現できるのも大きなメリットです」と中島氏は話す。また、リモートワークを継続する社員と、出社を始めた社員とのコミュニケーションがスムーズに取れるよう、少人数の特定メンバー間で気軽に雑談やチャットができるシステムなどの導入も検討しているという。
西守氏は今回のプロジェクトを振り返り、「SCSKの協力で大きな問題もなくリモートワーク環境を整えることができました。コロナ禍の不自由な状況にあっても、事前にリモートワーク環境を整えていたからこそ、従来通りの開発や業務を継続し、製品やサービスの品質を確保したことが最大の成功要件だと考えています。恐らく今後もリモートワークは継続していくでしょう。そのため、シンクライアント環境より使いやすく改善することが次なる目標となります。引き続きSCSKのサポートを期待しています」と語る。
株式会社アライドエンジニアリング 様
事業分野 | 情報サービス | |
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設立年度 | 1981年 | |
ホームページ | https://www.alde.co.jp/ | |
概要 | 1981年設立。ADVENTUREプロジェクト(日本学術振興会 未来開拓推進事業)の成果をベースに独自に開発した並列CAEシステム「ADVENTURECluster」をポートフォリオの主力とする。また部品構成作成支援システム「v-DESIGN」の販売も行うほか、ADVENTUREClusterを利用したメッシュ作成・数値解析の受託および解析コンサルティングサービスも実施している。2015年にはSCSK株式会社の100%子会社となった。 |
[2021年4月掲載]