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支部活動にご登場いただく講師の方をフィーチャーしている会報Familyの「HUMAN HUMAN」。
eふぁみりでは、講師の方からのメッセージなどをご覧いただけます。
【CONTENTS】
「ワインを極める」連載コラム(3)
「シャトー・メルシャン」へようこそ
上田 敦史 氏
東京から電車で約1時間半。JR中央本線の勝沼ぶどう郷駅に降り立つと、一面にブドウ畑が広がる風景を目にすることができます。さらに豊かなブドウ畑を右に左に眺めながら駅から車を8分ほど走らせたところに「シャトー・メルシャン」があります。
私がビジターセンター長を務める「シャトー・メルシャン」は、メルシャン株式会社が2010年に、「日本ワインの魅力や歴史に触れ、楽しんでもらいたい」と考え、リニューアルオープンした体験型ワイナリーです。 施設内には、地下のワインセラー(樽育成庫・瓶貯蔵庫)や、現存する日本最古の木造ワイン醸造所を改装したワイン資料館、ワイン醸造用ブドウ20種類以上を栽培している見本ぶどう園などがあり、ワインにまつわる様々な知識を得ることができます。さらに併設された「ワインギャラリー」では、シャトー・メルシャンシリーズを中心として常時20種類以上のグラスワインをご用意。ワイナリースタッフとの会話を交えつつ、テイスティングをお楽しみいただけます。またワインに合う軽食メニューも用意していますので、ブドウ畑が広がる勝沼の風景を眺めながら、ゆったりと美味しいひとときを過ごすこともできます。
私どもスタッフが施設をご案内し、ワインの歴史や知識を学びながら、テイスティングを楽しめるツアーもご用意していますので、ぜひ一度、遊びにいらしてください。
また、2014年1月には、勝沼「シャトー・メルシャン」で体験できるワインを東京でも味わってもらいたい、との想いから、六本木1丁目に、「シャトー・メルシャン トーキョー・ゲスト・バル」をオープンしました。常時20種類以上のグラスワインをお楽しみいただきいただけますので、ぜひお越しください。
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- 会報Family 368号 ワインを極める(3) (PDF 901KB)
会報Family 368号 2016年1月1日掲載
「ワインを極める」連載コラム(2)
新酒シーズンの到来
上田 敦史 氏
日本国内で、1年の中でもっともワインの話題で盛り上がるのは、やはりボジョレー・ヌーボーの解禁日かもしれません。フランスのブルゴーニュ地方、ボジョレー地区でその年に収穫したブドウを醸造して造られた新酒ワインの解禁日。毎年、11月の第3木曜日と決められていて、今年は11月19日です。
そして私たちワイン造りに携わる者にとっても、秋は特別な季節です。 ワインは農作物、といわれるほど、原料となるブドウの品質がワインの味を大きく左右します。生産者の方々は1年をひとつのサイクルとして、冬場の休眠期から木々を選定し、春の萌芽、開花、受粉、結実とその成長を見守り、そしてやっと秋の収穫期を迎えます。 今年のブドウの品質はどうか、美味しいワインは造れそうか、誰もが胸をときめかします。そうしてその年実ったブドウで造られた新酒には、より一層の期待が募るのです。
さて、私が在住する山梨県でも、秋には『山梨ヌーボーまつり』が開催されます。 国内最大のワイン生産量を誇る山梨県では、様々なブドウ品種が栽培されており、品種によって収穫期が違い、新酒ができる時期も異なります。そこで日本固有のぶどう品種である甲州とマスカット・ベーリーAで造られた新酒ワインを「山梨ヌーボー」と命名し、解禁日を11月3日に決めたのです。
そして『山梨ヌーボーまつり』では、それぞれのワイナリーが自慢の新酒ワインを披露し、この年の収穫を喜び、感謝するお祭りが毎年開かれるようになりました。 今年も解禁日の11月3日(祝日)に東京の日比谷公園噴水広場で、11月14(土)-15(日)は甲府の山梨小瀬スポーツ公園で『山梨ヌーボーまつり』が開催されます。 皆さんもぜひ足を運んで、今年の新酒ワインの味を堪能してみてはいかがでしょう。
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- 会報Family 367号 ワインを極める(2) (PDF 804KB)
会報Family 367号 2015年10月20日掲載
「ワインを極める」連載コラム(1)
日本ワインの魅力
上田 敦史 氏
<プロフィール>
1960年生まれ。メルシャン(株)ワイン営業部シャトー・メルシャングループ
シャトー・メルシャン ビジターセンター長。大阪府出身。
1983年三楽オー
シャン(株)[現:メルシャン(株)]入社。主にホテル・レストラン、ワインショップへ
のワイン営業を長く担当し、特に「シャトー・メルシャン」の魅力を広める活
動に注力。
2007年エデュケーショングループにてワインに関する社員研
修・教育に従事後、コンセプトショップ「シャトー・メルシャン トーキョー・ゲス
ト・バル」(六本木)の運営にも携わった。
2015年4月より現職。シニアワイ
ンアドバイザー[(一社)日本ソムリエ協会 認定]日本ワインマスター[日本ワインを愛する会 認定]
メルシャン株式会社 http://chateaumercian.com/
世界中の人々に愛されているワイン。その歴史はとても古く、ヨーロッパではすでに数千年も前から、ワインが造られていたという記録が残っています。それに対して日本でワイン造りが始まったのは明治時代のはじめのこと。世界有数のワイン生産国と比較すれば、けっして長い歴史や伝統があるわけではないのです。 ところが今や日本は、アメリカやチリなどと肩を並べ、ワインの新世界と呼ばれる国のひとつとなり、日本ワインは世界でも高い評価を得るほどに実力を高めています。
ところで皆さんは、国産ワインと日本ワインの違いはご存知でしょうか。ご存知でしょうか。国産ワインというのは、日本国内で造られたワインを指します。その中には、海外から輸入されたブドウ果汁を使い、日本国内で製造されたワインも含まれます。日本ワインとは、日本で育ち収穫されたブドウを100%原料として、日本国内で造られたワインを指します。まさに純血の日本産ワインです。
日本ワインの魅力は、なんといっても繊細な味わいでしょう。 私たちの食文化のベースは、世界文化遺産にも選ばれた和食です。素材の味を大切にし、ダシによって複雑で奥深い味わいを生み出す、日本人の伝統的な食事。そしてこうした食文化によって育まれてきた日本人の繊細な舌は、ワイン造りにおいても十分にその力を発揮していると、私は思うのです。
日本人の繊細な味覚によって生み出された、繊細な味わいを持つワイン。ですから日本ワインか和食にもとても相性がよくなるというのも道理でしょう。
ワインにはフランス料理やイタリア料理と思われる人も多いかと思いますが、ぜひ日本ワインと和食という、素晴らしいマリアージュも楽しんでいただきたいと思います。
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- 会報Family 366号 ワインを極める(1) (PDF 871KB)
会報Family 366号 2015年8月20日掲載
「ウイスキーの世界を愉しむ」連載コラム(3)
ウイスキーの感動を、もっともっと伝えたい。
佐々木 太一 氏
現在、私はサントリースピリッツ㈱のウイスキー戦略部で、スペシャリストという役職を担い、より多くの方たちにウイスキーの魅力を伝えるべく、企業と消費者の方々との橋渡し的な仕事をしています。
私はバレーボール選手としてサントリーに入社し、「サントリーサンバーズ」のVリーグ5連覇などを経験してきました。選手引退後は、営業社員として大阪支社でお酒を売っていましたが、日本一、そして世界を目指していた選手時代のような、熱く燃える目標がなかなか見つかりませんでした。そんなとき、当時の上司から、社内資格として制定された「ウイスキー・アンバサダー」の資格を取るように言われ、1年間研修を受けることになったのです。私はもともとお酒を飲むのは大好きで、いろいろなお酒をたしなんできました。飲むことは得意でしたが、知識としては人並みでした。ところがこの研修を受け、まさに目からうろこが落ちるとはこのことか、と衝撃を受けました。
「ウイスキーってこんなに奥深い飲み物だったんだ」。蒸溜所での実地研修や、スコットランドにも足を運ばせてもらうなど、たくさんの経験を積ませていただき、まさしくウイスキーに惚れ直してしまったのです。
現在の仕事は、営業時代に培ってきた社内の人脈に助けられながら、外部の方たちと関わる業務ですが、それもまたとてもいい刺激になっています。スペシャリストの名に恥じないようにと、日々、勉強を重ねていますが、それでも一般の方たちと接していると、意外な質問が飛び出してきて、気づかされることも多くあります。
またウイスキーは世界に広がる文化。その世界の動き、他社の動向などにも意識が向くようになり、視野を広く持ってウイスキーを捉えたいと考えるようになりました。
この仕事の面白さがわかってきて、たくさんのやりたいことも見えてきました。東京、山梨、大阪と飛び回る日々ですが、ウイスキーの魅力をもっともっと広く知ってもらうために、今日も明日も、全力でがんばっていきたいと考えています。
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- 会報Family 365号 ウイスキーの世界を愉しむ(3) (PDF 1MB)
会報Family 365号 2015年6月20日掲載
「ウイスキーの世界を愉しむ」連載コラム(2)
究極の職人、ブレンダーの日々を知る
佐々木 太一 氏
<プロフィール>
1971年生まれ。サントリースピリッツ㈱ウイスキー戦略部 スペシャリスト。元バレーボール日本代表選手。1994年にサントリー㈱入社。選手引退後、大阪支社の営業部に配属され、2007年に社内資格の「ウイスキー・アンバサダー」を取得。2011年にはスコッチ文化研究所が認定する最高レベル資格の「マスター・オブ・ウイスキー」の取得者第一号となる。
ウイスキーづくりの花形的な職業、といえばやはりブレンダーでしょう。 ブレンダーは、樽で熟成されたウイスキー原酒をテイスティングし、製品にするための配合を決めていく役割を担う人たちです。世に出るウイスキー製品の味を決めているのが、まさしくブレンダー。もちろん仕事はそれだけでなく、毎日、樽ごとの原酒の状態を確認するため、多いときには一日200~300種類にも及ぶテイスティングを行い、その熟成のピークを見極め、10年、20年先を見据えた原酒の貯蔵管理の計画を立てるのも重要な仕事です。
ブレンダーこそ卓越した技能を持つ職人。現在、サントリーにおいてもブレンダーと名乗れる人はわずか5人しかいません。ウイスキーが大好きな私も、最初は「ブレンダーってかっこいいな」「こんな仕事ができたら、素晴らしいだろうなぁ」と憧れを持っていました。
あるとき、我が社のチーフブレンダーに話を聞く機会がありました。そこで私は彼の日常を聞き、その徹底した自己管理ぶりにたいへん驚かされました。
簡単にご紹介すると、まず、毎朝、起床時間は4時30分と決まっています。これは例えばその日、朝の9時から東京で会議が設定されても京都からでも間に合う時間ということ。何か業務が発生しても対応できるように、365日同じ時間に起きることで、日々の体調を一定に保っているのです。ちなみに就寝は21時だそう。
さらに鼻や舌の感覚がぶれないように、昼食は月曜から金曜まで、毎日天ぷらうどん。夕飯も刺激物は、金曜と土曜の夜しか食べないとのことです。
体調によってテイスティングの味覚が微妙にでも変化しないように、すべてそのための努力です。そこまで極めないと、本物のブレンダーにはなれない、ということです。
こうしたブレンダーの方たちがいるおかげで、私たちは最高に旨いウイスキーに出会えるのです。それを感謝し、今日も美味しくウイスキーをいただき、一日を終える私です。
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- 会報Family 364号 ウイスキーの世界を愉しむ(2) (PDF 355KB)
会報Family 364号 2015年4月20日掲載