WEBブラウザの最新動向 - 今WEBブラウザが熱い - |
WEBブラウザはInternet Explorerだけではない。軽快な動作で人気上昇中のブラウザ Firefoxはこの1年間でダウンロード回数1億回を超えたと言う。今、なぜWEBブラウザが注目されるのか、人気のブラウザを紹介しながら考えてみる。
日本でインターネットが当たり前の存在になっておよそ10年が過ぎました。しかしブラウザの性能や機能にまで気を配っている人はそれほど多くないでしょう。なにしろ、Internet Explorerという、現在ではほとんど世界標準となってしまったブラウザが、マイクロソフトのOS、Windowsにはバンドルされてついてくるからです。Windowsユーザーにとってブラウザとはこれが当たり前、と思っているのではないでしょうか。 ところが最近、IT関係の雑誌やニュースサイトではブラウザ周辺の記事が騒がしくなってきているといいます。その訳は、かつてInternetExplorerのマイクロソフト社に敗北したNetscape Navigator起源のブラウザとして去年発表されたMozilla1.7(日本語版)や、その流れを汲む軽快さと機能性がウリのFirefoxなど、Internet Explorerに匹敵するかそれ以上のスペックを身に付けたブラウザの登場が相次いだからです。次の図は、主要なブラウザの系譜です。イリノイ大学のマーク・アンドリーセン氏らがMosaicを発表したのは1993年。まだ15年にもなりません。今日の状況を考えると、インターネットが短期間に急速に普及したことを感じさせます。 Internet Explorer(IEと表記します)を含め、人気のあるWEBブラウザの系譜と特長の概要を一覧表にしてみました。
※WEBブラウザは上記以外に多数ありますが、2005年10月時点でのWebブラウザのシェア上位の5種を掲載しました。ただし、本表ではMozillaとNetscapeは分けてあります。
※Firefoxは、正式にはMozilla Firefoxと呼ばれますが、本稿では、Firefoxと表記しています。
どうして今ブラウザが熱いのか90年代半ばのIEとNetscape Navigatorの熾烈な主導権争いの中でWindowsの圧倒的なシェアを背景にブラウザを無償提供することで勝利したIEが、今日のブラウザ競争一人勝ち時代を築いています。ところが、最近この動きに変化が生じています。 身軽なブラウザへのニーズ音楽、動画、さまざまな表現やスクリプトへの対応など、ブラウザに要求される機能も高機能・多機能化する一方です。ブラウザは大型化し、大量のシステムリソースを必要とするようになっています。モバイル環境やビジネスでの情報収集のために、短時間サイトにアクセスするのに、なぜ重装備のブラウザを起動しなくてはならないのか。情報収集という立場からは、マルチメディアに対応するより軽快に動作し、効率よく目的の情報にアクセスできることの方が重要です。 セキュリティへの不安IEの機能はOSであるWindowsやDirectXなどのアプリケーションと密接に結びついており、IEのセキュリティホールはそのままユーザーのシステム全体への進入窓口になります。特に寡占的な状況にあるWindowsとIEは、悪意を持つ人々にそのセキュリティホールを突かれることが他のブラウザに比べて圧倒的に多くなります。他のOS/ブラウザでもセキュリティ問題は起こりえますが、現状では件数や規模は小さく、システムの安全を求めてブラウザを乗り換えるという切実な選択もあります。 表示の互換性WEBサイトによってはIE用に作ってあるので、Netscapeや他のブラウザでは正しく表示できない、ということも珍しくありません。 入手しやすくなった新たなブラウザが求められる背景には、ブラウザが簡単に入手できるようになったこともあります。IEとNetscape Navigatorが覇を競っていたころ、ソフトの配布はFDやCD-ROMが中心で、インターネットへの接続もダイヤルアップでした。しかし、ブロードバンドが普及した今日では、大きなファイルもネットから簡単に入手できるようになり、新しいブラウザを気軽に試してみることができる環境が整ったこともブラウザの多様化を推進しています。
ブラウザをブラウズするブラウザは3つの要素から成り立っています。通信・解析・表示です。この中で最重要視されるのが表示を担う部分で、レンダリングエンジンと呼ばれます。解析結果に基づいて画面表示を行う部分です。Mozillaのレンダリングエンジン「Gecko」はNetscapeやFirefoxにも採用されています。IEのレンダリングエンジンは数多くのブラウザに使用されています。 Netscape7はGeckoとIEのエンジンを併用するダブルエンジンで、閲覧するサイトごとに使用するエンジンを指定することができます。 今回は、ユーザー数の多いIE、Mozilla、Firefox、OperaというWindows用の4種を紹介します。次の表はそれらのブラウザの機能比較です。ベーシックな機能には差はありませんが、IEとの対比して特徴的な機能について一覧にしました。 ただし、IEについては、ほとんど機能が次バージョンで対応予定になっています。
次項から個々のブラウザを紹介しますが、以下の点をあらかじめご了承ください。
Internet Explorer(IE、インターネットエクスプローラー)
Windowsという強力な味方が付いているというだけでなく、他のブラウザに比べて性能が見劣りするものではありません。表示は十分に高速ですし、他を上回る機能も装備されています。 80%を超える圧倒的シェアを持っており、ブラウザのデファクトスタンダードです。それだけに、独自性の強いJavaVMの搭載や互換性のないCSSの機能拡張などの独自性でWEB全体の互換性を乱していることは否定できません。 しかし、IE 6.0のリリースは2001年9月、それ以来ServicePack 1と2がリリースされただけで大きな変化はありません。競争相手のMozillaが四半期ごとに機能を向上させてリリースされているのと比べると、性能面で劣らないにしても、タブブラウズや検索バーなど機能面で見劣りするのも事実です。 IEは、2004年を境にそれまで7年間増加を続けたシェアがわずかながらも減少に転じています。そしてその傾向は今後も続くという観測が一般的です。 しかし、OSに標準装備されている以上、事実上の標準の座が大きく崩れることはなさそうです。一般のユーザーにとっては、OSの上で特別な設定の必要もなく使うことができるのは、大きな長所で、特別な理由がなければ積極的に他のブラウザを試す必要はないのです。
Mozilla / Netscape Navigator
IEのお気に入りはインストール時に自動的にインポートしてくれます。Netscape 7.1は、タブブラウザ機能、ポップアップ自動抑止、メール・チャット・WEB作成・プロファイル管理など装備したWEB統合環境です。 Netscape 6から機能的には地味でありながらも強化・充実されています。表示速度も明らかに向上していますが、起動に要する時間は長く、他のブラウザと比べて明確に差があります。しかも、多機能なだけに操作はわかりやすいとは言えず、初心者には勧めづらいところがあります。 本稿でもまとめて紹介しているように、MozillaとNetscapeは元は同じです。Mozillaの前身はNetscapeです。IEとの競争に敗れたNetscape社は、Netscape Navigator 4からオープンソースの道を選び、Mozillaが誕生しました。その後、Mozillaは、新しいレンダリングエンジン「Gecko」を採用しました。現在のNetscapeはこのMozillaがベースになっており、Netscape 1.xから4.7までとはまったく別物になっています。 MozillaはMozilla.orgがオープンソースで開発し公開していました。MozillaにIEのレンダリングエンジンによる動作やAOL Mail、WebMailなどの機能を追加したのがNetscapeです。Mozillaの開発速度は速いので、Mozillaの最新版とNetscapeの最新版から追加機能を差し引いたものとは同じではありません。なお、Netscape 8からは、NetscapeBrowserとなって、ブラウザ単体で配布されています。日本語版はありません。2001年に日本法人が撤退したために日本語版はNetscape7.1で更新が停止しています。また、Mozillaは今年3月で開発が打ち切られました。開発は、SeaMonkey Council が引き継ぐことになっており、ソフト名もSeaMonkeyに変わります。
Firefox
重いといわれるMozillaのブラウザ機能だけを取り出して磨いたのが、このFirefoxです。 動作も容量も非常に軽くなっています。ダウンロードしたばかりの標準状態では、余計な機能がないというよりも物足りないという印象です。機能拡張は必須と言ってもよく、豊富な機能拡張やブラウザの外観にいたるまで実に多用なカスタマイズが可能になっています。入手してからカスタマイズや機能拡張によって自分用に作り込んでいくのがFirefoxの正しい使い方と言えるでしょう。機能拡張やテーマ、Firefox本体のバージョンアップの通知・自動アップデート機能、RSSをお気に入りのように使えるライブブックマークなど、身軽と言っても機能は充実しています。11月リリースの1.50では、個人情報の簡単に消去する機能などのセキュリティ強化やスクリーンリーダー対応などアクセシビリティが強化されています。 Mozillaと同じGeckoをレンダリングエンジンとして搭載しており、表示に関してはMozillaと変わりません。表示速度も新しいMozillaと大差ありませんが、起動は速く、全体的に動作がきびきびした印象で、軽快・高速と感じることはあるかもしれません。 既述の通り、この1年間で1億回のダウンロードがあったと言われ、一部にはシェアが10%を超えたとの報道もありました。身軽なブラウザの代表格として、今後も人気は継続すると予想されています。さらに、新しいNetscapeBrowser8はこのFirefox1.0.3がベースになっています。
Opera
「世界最速ブラウザ」がOperaのキャッチコピーです。 レスポンスが速く、キーボード/マウスどちらでも操作できるよう工夫されています。タブブラウザ機能、表示中のページのリンクをテキストやHTML、ブックマークに書き出すリンク書き出し機能、背景を真っ白にする背景の消去機能、Google、YahooやAmazonの書籍検索、さらにページ内の文字列が検索できる検索窓の常時表示、ポップアップ広告の無効化、フォルダ内のブックマークのWEBページの一括オープン、自由な拡大縮小、開いているページごとに設定できる自動更新、アイコンやスキンなど外観のカスタマイズなど、便利な機能を満載しています 独自のレンダリングエンジンを採用していることもあって、IEでの表示を前提として作られたサイトをはじめ、一部のサイトによっては体裁が崩れることがあります。また、言語の指定が不十分だと上記の画面のような文字化けが発生します。ほとんどの場合、サイト側の問題です。 Operaは、日本語に対応していなかったため日本ではあまり知られていませんでした。2001年の11月のOpera 6.0 で日本人篤志家により日本語化ソフトが発表され、2002年2月のVersion6.01で正式な日本語対応が発表されました。身軽で多機能なブラウザとして人気が出そうです。
今後のブラウザの方向性現在は、基本的なブラウジング機能がほぼ満たされた状態に至っているといえるかも知れません。そうした中、今後ブラウザが向かう方向として注目されている4つのトレンドがあります。
以上はいずれも、現段階で注目されているトレンドの一端でしかありません。いずれにせよブラウザは、今後ますます変化し、進化し続けていくことでしょう。 *1 RSS Resource Description Framework Site Summaryの略。 Webで用いられる技術の標準化を行う国際機関、Webコンソーシアムが2000年に定めたXML規格のひとつ。Webページの文章の見出しやハイパーリンク、要約などをRSSで記述しておくことで幅広く検索にかかることから、ページの紹介が広く行える。 |
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