CMS(コンテンツマネジメントシステム Contents Management System) Web時代到来に、強力“助っ人”が登場 |
Web技術の拡大で、インターネットのWebサイトはもとより、企業内のビジネス文書をWebによる企業情報ポータルサイトなどを介してやり取りする場面が多くなってきている。それに比例してコンテンツ管理業務は日々増殖の一途をたどっている。そのためWebコンテンツを管理し、作成する人は、多大な労力を費やすか、あるいはアウトソーシングによる分業を余儀なくされている。こうしたコンテンツの管理システムとして最近注目を集めているのがCMS、すなわちコンテンツマネジメントシステムだ。
ふくれ上がるコンテンツを管理し、活用するもともとCMSが誕生しかつ注目されてきた背景には、Web上を飛び交う膨大なコンテンツを企業や組織がどう管理したら良いかという課題が浮上してきたからにほかならない。 ちなみにここでいうコンテンツとは、おもにデジタルコンテンツのこと、つまりテキストや画像、そしてそれらのレイアウト情報のことである。 さてWeb上での情報コンテンツのやり取りは早さ、正確さ、コスト等々の面から文書による情報管理を大きく引き離しているのはいうまでもない。紙媒体中心の業務プロセスからデジタルコンテンツへの移行はもはや決定的になっている。 しかし、保存とプロセス管理という点からは若干の問題があったのも事実。たとえばデジタルコンテンツのなかでも大きな位置を占めるメール(テキスト情報)は、文書中心の業務プロセスに比べてタイムラグを大幅に解決し、確実に送受信されるために頻発される傾向にあるけれども、逆に削除されたり改ざんされたりする可能性も捨てきれない。 そこで、ナレッジマネジメントシステムなど、社内の情報資産(ドキュメントや画像などのコンテンツ)を管理する考え方と、Webポータルサイトを作成、管理する考え方を合体させて、CMSが開発されるようになった。CMSはつまり、Web上のコンテンツ管理とWebサイト作成を一括して行うためのシステムなのである。
CMSは何をしてくれる?
Webコンテンツを構成しているのはテキストや画像、そしてそれらのレイアウト情報(Webデザイン)などである。これらのコンテンツを一元的に保存・管理するとともに、サイトそのものを構築したり編集したりするシステムがCMSと呼ばれている。ほかにもページ間のハイパーリンクや、コンテンツのデータベースへの保存など、サイト管理のために必要な膨大な作業をCMSは行ってくれる。 ホームページサイトを作成したことのある人はだれも、それがHTML言語(注1)、また最近ではCSS言語を用いて作られていることを知っているはずだ。HTMLやCSSに精通することがより良いサイト構築の必須条件であるのはいうまでもない。しかしそうした特殊な言語はだれでもが使いこなせるわけではないし、多くの場合コンテンツの作成者のほかに、Webデザイナー、データベース管理者、そしてWeb全体を管理し運営するWeb管理者がいて、それぞれの業務を分担している。 しかしそうした分業も、コンテンツの修正や書換え、更新時にはいちいち全員でかからなければならない。実際、ポータルサイトへのアクセスが膨大な企業はもちろん、アクセス件数の多いWebサイトほど管理と運営には気の遠くなるような作業が強いられている。 CMSの基本的な考え方は、コンテンツ作成者はHTMLなどの知識を習得する必要なく情報の書換えを行い、デザイナーはコンテンツが更新されるたびに作業を行う必要をなくすることで、それぞれが自らの作業に専念できる、というもの。一旦構築されれば、所定の書式に従ってそれぞれの担当者がテキストや画像(コンテンツ)の更新をいつでも行うことができ、またコンテンツ作業とは別にWebデザイナーは独自にデザイン、レイアウトの変更を行える。もちろんデータ保存やリンク先の更新もCMSが自動で行うため、サイト管理者はコンテンツの管理とデザインレイアウト管理に専念することが可能になるのである。
CMSにはどんなものがあるのか現在CMSと呼ばれているシステムには2種類あって、ひとつは作成できるサイトの自由度が高い汎用CMS。企業や組織が内外の業務情報を管理、運営するために用いるもので、高度なカスタマイズが可能である。 もうひとつはコンテンツ管理の仕方やサイトに独自のコンセプトを持ち、特定のサイトを構築するためのシステムで、最近話題のブログ(WebLog)やウィキ(Wiki)(注2)が含まれている。こちらはネットワークを通して集まった不特定多数のコンテンツ提供者が、ひとつのサイトを共用し、それぞれが自由に書き込むことで一種の電子掲示板、あるいは公開データベースの場を構築する機能を持っている。 両者はまったく違うもののように見えるけれども、膨大で多様なコンテンツをスムースで確実に運用し、管理し、保存するというCMSのコンセプトの上では共通しているのである。 (1) 汎用CMS汎用CMSソフトは自由度が高く、企業や組織が独自のサイトや社内ポータルを構築するのに有効である。その機能としては、
などが搭載されている。この他、情報資産を保存するだけでなく、より広範に活用できるようにするためのデジタルアセットマネジメントシステム(DAM)などの機能をCMSに含める考え方もある。 企業にとってWebの活用はすでに当たり前の時代になってはいるが、Web活用の出来不出来が意外にも企業活動の妨げとなっている場合がある。たとえばeビジネスやオンラインショッピングなどでの商品管理、CRM管理は、運営している企業の生命線なのだが、実際にはサイトの管理運営作業が実際の商品やサービスと連動しない、現場とサイトのタイムラグが頻繁に発生するなど、大きな障害となっていることもある。すなわちサイト管理が適正になされることが、IT社会における企業にとって最重要な課題なのだが、そのためには当然、サイト管理のプロセスをより効率的、かつ柔軟にしておく必要があるのはいうまでもない。 またサイトデザインは常により最適で新鮮なものに生まれ変る必要があるが、デザインの更新はこれまでそれほど簡単ではなかった。一旦構築されたデザインを変更するためには、それまでのコンテンツを1から書き直す必要があるためだ。デザイナーの自由度が限定される多くの場合、外部に委託することが一般化している。 CMSの導入で、デザイナーはコンテンツの更新には基本的に左右されることなく最適なサイトのデザイン、レイアウト作業を行うことができる。このことはコンテンツの作成者についても同じことがいえる。つまりデザインを更新するたびに新たにコンテンツを書き直す必要がないため、それぞれの作業をそれぞれのテンポで実施できるのである。 CMSは、企業にとって最善のシステム管理を生み出すためのソフトとして力を発揮するだろう。現在では多くのソフト製品が市場に出回っており、Webサイト管理に強いもの、データベース管理と活用が得意な商品など、企業の特性に合わせて選択できる。 (2) 特定の機能を持ったCMSこのタイプのCMSには
が装備されている。こうしたCMSの代表格はブログやWikiである。特にブログは、HTML言語などの知識が全くない個人でも、即座に自分自身のホームページが作れるツールとして、昨年度あたりから話題を集めている。
以上、汎用のCMSにしろ特定のCMSにしろ、その特徴をひとことでいえば双方向であること、そして難しいIT言語を習得することなくだれもが情報の発信者、作成者、管理者になれるということであろう。 Webの閲覧はすでに携帯電話からも可能になりつつあり、コンピュータを介することなくWebを利用できるようになってきた。いわばWebは身近な情報収集の場であるばかりでなく、情報発信の場にもなりつつある。CMSによってそうした傾向はもっと強まることは必至であろう。 IT社会の未来がユビキタス、すなわち「いつでも、どこでも、だれでも」ということであるとしたら、目に見えない膨大な情報の海を日々泳ぎ回らざるを得ない私たちにとって、CMSは情報と私たちとの仲介役を果たしてくれるなくてはならないツールとなるに違いない。
【用語解説】
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