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ほっ!とコーヒー 第14回

ロバのパン屋がやってきた


お父さんが子どもだったころの昭和30年代には、街なかでも道路のほとんどは今のように舗装されていなかったんだ。車よりもリヤカーや自転車の方が断然多かったしね。リヤカーって、知らないよね。自転車の後ろに二輪の台車を繋げて荷物を運ぶんだ。狭い道路でもスイスイ通れる。むかしは荷物運びの主役だった。子どもを乗せて走ってるお母さんもいたっけ。

「良い子は道路で遊ばない」なんて標語も、そのころはまだ出されていなかった。子どもたちはろう石やチョークを持って、コンクリート壁やアスファルトの道を見つけては、ケンケンパの四角や丸を描いたり、相合傘マークで友だちカップルをからかったりしたものだ。

昼下がりの街なかは子どもが主役。今は自動車が占領している。

そんなのどかな路地裏に時折やってきたのが、菓子パンを馬車に満載したロバのパン屋さん。いま思えば、馬車を牽いていたのは小型の馬だったけど、子どもにとってはそんなことどうでも良い。聞くところによると、北海道には本物のロバが馬車を牽くパン屋もあったそうだけどね。

そのころもう街では馬や牛も珍しくなっていたから、大人しそうなロバさん(実は小型の馬)見たさに、みんな一斉に集まってきた。

あのころ少年だった人ならだれでも覚えていると思うけど、ロバのパン屋さんの唄は正式には「パン売りのロバさん」と言って、レコード化されたれっきとした童謡なんだそうだ(唄は近藤圭子、矢野亮作詞・豊田稔作曲で昭和30年にキングレコードから発売)。

それに、お父さんたちがロバのパン屋さんと呼んでいるのも、実際には京都市にある株式会社ビタミンパンの商標登録「ロバのパン」が正しいらしい。

関西方面にはチェーン店が何軒かあるらしいけれど、今はロバでも馬でもない、小型自動車で売りに来るそうだけど。


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