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ほっ!とコーヒー 第10回

ほっと!コーヒー 「三角パック」


日本中の子ども

「三角パック」の不思議な形に魅せられ
突然、数学に目覚めた少年もいた

「変だな。つい最近まで見かけた気がしてたんだけどな〜、三角パックの牛乳。 ね、君知ってるだろ? 小学校の時、給食で出てこなかった?三角パック。え!そんなの知らないって」。

コンビニの若い店員にぶっきらぼうにされて、憮然とするお父さん。探しているのは三角パック入りの牛乳。

正確には正四面体ではないのだが、こどものころは何となく"究極の形状"のような気がしていた。
高邁な数学理論が突然天から降ってきて、自分たちの勉強机の真ん中にいま、どっしり鎮座している。
それを眺めながら"合理的"という言葉はこの形状のためにあったのかも知れない、科学は生活に役立つんだと、少し大人に近づいた少年たちもいた。
その癖、女子が通りすぎる頃合いを見計らって三角パックを踏みつけると、パンッて大きな音がして、きゃーきゃー騒ぐのが快感だった。中に牛乳が残っていて、靴や服に飛び散ったこともあった。

三角パックは俗名。テトラパックは、日本テトラパックという会社の名前。この容器の正式名称は現在、テトラ・クラシックと言う。1951年、スウェーデンのルーベン・ラウジング博士がガラス瓶に替わる紙パルプ製の画期的な容器として発表。世界中に普及した。
日本にテトラ・クラシック容器入りの牛乳が登場したのは昭和31年で、協同乳業株式会社の「名糖テトラ牛乳」がその製品だった。実は当時、冷蔵設備が普及していなかったために市場を拡大できなかった。本格的な普及は昭和39年の東京オリンピックで選手村の飲料に採用されてからという。
しかし1999年、テトラ・クラシックに牛乳などを充填する機械の製造が打ち切られ、三角パックは過去のものとなった。

コンビニでとうとう三角パック牛乳を見つけられなかったお父さん。
同じ紙容器入りのコーヒー牛乳とあんパンを買い、公園でちょっと遅くなった昼食を摂りながら呟いた。
「こぼれない、軽い、割れない。三拍子揃った良い形だったんだけどな。それにストローで最後の一滴まで残さず飲めるってのは最高じゃないか。そう言えば、このコーヒー牛乳ってのも名前が紛らわしいっていうことで、改名するらしい。良いじゃないか、細かいこと気にしなくてもさ」。
すると向こうから日ごろ気になっていた同僚女性社員が歩いてきた。紙容器を地面にそっと置いて、通りすぎざま、パンッ。あれ、音はしないし潰れちゃって、おまけにズボンが汚れちゃったよ。
三角パックで昔、数学に目覚めた少年時代がよみがえり、思わず苦笑するお父さん。

いま飲んだ四角い紙容器、テトラ・ブリックも日本テトラパック社の製品であることに、お父さんはまだ気が付いていない。

*  テトラ・クラシック、テトラ・ブリックは日本テトラパック株式会社の商標名です。
*  日本テトラパック株式会社 http://www.tetrapak.co.jp/
テトラパック社は全世界165ヶ国の市場に液体食品の加工処理とパッケージングシステムを提供しているテトラパックグループの企業名。日本法人として日本テトラパック以下3社がある
*  協同乳業株式会社 http://www.meito.co.jp/

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