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UPTODATE あらゆる分野への適用の可能性を持つ未来のバーコード、ICタグ
富士通株式会社
コンサルティング事業本部   西田 広高氏


導入開始以来わずか1年半で600万枚を販売したというJR東日本のSuica。自動改札機に近づけるだけで、ID情報や料金情報などを、自動的に読み取り、記録します。このSuicaのキーテクノロジーが、RFID(Radio Frequency Identification)と呼ばれる自動識別技術です。無線タグ、ICタグと呼ばれることもあるRFIDは、今後、あらゆる分野への応用が期待されています。今回は、このRFIDタグの仕組みと応用例を解説します。

RFIDタグは無線を使うバーコード?

RFIDは、非常に小さなICチップとアンテナで構成され、リーダライタ装置から発信された電波を受けてIDなどの情報を応答する仕組みになっています。

無線通信装置を装備したコンピュータが非常に小さなICチップになったと考えると判りやすいでしょう。このICチップは、通信可能なエリアに入ると自動的にID情報などをリーダライタ装置に送り出します。さらにリーダライタ装置から送られてきた情報を記録します。ICチップの電源は電波の届く距離を延ばすために電池を内蔵するタイプもありますが、至近距離で動作するものはリーダライタ装置からの電波により供給されます。

■RFIDの動作原理

RFIDの動作原理

RFIDタグは物にIDを割り振るという点ではバーコードと同じですが、機能は格段に優れています。人の手でスキャンする必要があるバーコードに対して、RFIDタグは非接触の自動読み取り、電波を通す材質であれば梱包箱を開ける必要もありません。交信できる範囲にある複数のタグを高速に自動で読み取ることができます。また、バーコードと比べて大量の情報を扱うことができ、データの書き換えもできます。

例えば、製品が現在輸送中なのか、倉庫に入ったのか、店頭に並んだのか、販売されたのかを、RFIDタグがネットワークに接続されたリーダライタ装置を通じて知らせてきます。

あらゆる物がネットワークにつながるユビキタス社会にあっては、RFIDタグがさまざまな分野で大変重要な役割を担うことになるでしょう。


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生活をいっそう便利に快適にするRFIDタグ

あらゆる分野で品質の高い商品や付加価値の高いサービスの提供に、RFIDタグの活用が期待されており、身近なところですでに普及が進んでいます。

■RFIDの応用分野

RFIDの応用分野

RFIDの識別技術がセキュリティに活用されている代表的な例がイモビライザーです。

イグニッションキーにRFIDタグを組み込み、偽造されたキーではエンジンがかからないという車両盗難防止装置です。すでに国産の高級車の一部に標準装備されており、イモビライザーを装備した車種は盗難が激減したといいます。

スーパーやコンビニでは、バーコードに代わってRFIDタグが大活躍しそうです。

ショッピングカートに取り付けたリーダ装置で商品のRFIDタグを読み取り、生産者や鮮度を通知したり、関連する特売品の案内を行ったりするなどのサービスが可能となり、より便利に買い物ができるようになります。すべての商品にRFIDタグが付されるようになれば、商品を載せたカートがレジの前を通過するだけで、買上金額が計算され、レジでの待ち時間も短くなるでしょう。

現金を扱いにくい場所では、非接触で読み取れるRFIDタグの特長が活きてきます。

すでに一部のスキー場では、リフト乗り場でRFIDタグを組み込んだリフト券を読取装置に近づけるだけで改札できます。分厚い手袋を脱いで現金やリフト券を取り出したり、無理な姿勢でリフト券を提示したりする必要がなく、スマートにスキーを楽しむことができます。プールや温泉などでも、飲食や買物をすべてRFIDタグで行い、退出時にIDと照合して清算するシステムがすでに稼動しています。

大量の情報を記録することができるRFIDタグの特長は、例えば医療用のカルテをRFIDタグに記録するといった応用が考えられます。既往症や治療の履歴、血液型、アレルギー体質などを記録したRFIDタグを読み取ることで、治療に必要な情報が迅速に伝わり、より適切な治療が受けられるようになるでしょう。

その他、海外旅行の手荷物に目的地や自宅の情報を書き込んだRFIDタグを付与して、目的地のホテルまで手荷物を運んでくれたり、帰国時は自宅まで手荷物を配送してくれたりするサービスがすでに検討されています。


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ビジネスを変えるRFID

非接触、自動読み取り、複数のタグの高速読み取り、データ書き換え、大容量データの記録というRFIDタグの特長は、製造・販売・物流・サービスの現場における物品管理の作業効率化や省力化など様々なビジネスシーンで大きな効果が期待されています。

例えば、製造会社では流通量や在庫量をより正確に把握できることから、より精度の高いSCM(サプライチェーンマネジメント)やマーケティングが可能となります。万一、不良品が発生しても、RFIDタグによりいつどこで誰が製造、検査したものかを遡って追跡できるため正確な対策を講じることができ、消費者に対するサービスおよび品質保証という面で大きなメリットがあります。

販売会社にとっても、RFIDタグは大きなメリットをもたらします。入荷検品の自動化や、在庫の常時モニタによる品薄状態の検知・発注の迅速化による売上増、返品処理の省力化などはもちろん、既存システムと連携して、売れ筋情報を正確に素早くとらえ、商品企画や仕入れ計画の精度を向上させ、販売機会を拡大します。

流通関係でも、個々の物品をトラッキングすることが容易になります。貨物の仕分けの自動化や省力化など、輸送効率とその精度の向上がはかれます。発送した貨物の追跡サービスや配達予定時刻も精度が上がり、荷主に対するサービスが格段に向上します。

多種の部品を在庫するメーカーの修理サービス部門や、大量の書籍を管理する図書館では、RFIDタグがバーコードにとってかわることになるでしょう。また、ゴミの分別やリサイクルにおいて、危険物やリサイクル可能な資源を分別するための情報をあらかじめRFIDタグに書き込んでおけば、自動分別が可能になり、環境保護という面からも社会的なメリットがあります。

ビジネスシーンに大きな変革をもたらす可能性を持つRFIDタグは、便利になる一方で、個々の製品やサービス情報を追跡可能になることで個人のプライバシー領域に踏み込む可能性が出てきます。個人のプライバシー保護はRFIDタグの普及の前提となります。この点を怠るとプライバシーの侵害を恐れる消費者から敬遠されることにもなりかねず、十分な配慮が必要です。


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高速・大容量・低価格化へ向かうRFID

RFIDタグの市場規模は2010年には現在の30倍に達するという観測もあり、今後、あらゆる製品、サービスへの応用が期待されています。そのためによりいっそうの高速化、大容量化、低価格化が求められています。富士通は、バーコードに比べて約100倍、従来のRFIDに比べて約30倍もの情報量を高速に読み書きできるFRAM搭載の大容量・高速RFID用のLSIを開発、すでに2003年2月から販売を開始しています。

  • 大容量データ(約2000文字)のデータの読み書きが可能
  • EEPROMの約50倍もの高速処理が可能なFRAMを搭載
    (注)FRAMは米国ラムトロン社の登録商標です。
  • 大容量ながら小型、低コストを実現

富士通は、RFIDの能力を十分に生かしつつ、お客様のシステムへの適用を進めていくための関連製品および各種業務パッケージとRFIDとの連携ソリューションを提供し、今後この取り組みをいっそう強化していく所存です。

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