第2回 eメールが届く仕組みインターネットを利用したサービスにおいてよく使われているのが「eメール」です。今やeメールはビジネスにおいても日常生活においても電話と並ぶ身近なコミュニケーション手段の一つとなっています。 【今回登場するキーワード】
メールシステムを支える各種のサーバインターネット上でメール文書が間違いなく相手先に送り届けられるのは、各種のサーバがそれぞれ連携して働いているからです。メールシステムは次のようなサーバの働きによって機能しています(図1)。
あらためて「サーバ」について説明しておきましょう。「サーバ」とはサーバコンピュータのことで、その基本的仕組みはPCと同じです。ただサーバコンピュータはネットワークに接続して24時間稼働するので連続運用にも耐えられる信頼性や、稼働したままメンテナンスができるなどの機能を備えています。 このような信頼性の高いサーバコンピュータに各種のソフトウェア、例えばSMTPのプログラムをインストールすれば1の「SMTPサーバ」に、またDNSのプログラムやデータをインストールすれば3の「DNSサーバ」として機能し始めるのです。1台のサーバに複数のプログラムをインストールしていくつもの働きをさせることも可能ですが、やり取りするデータが膨大になることを考慮し、単機能で動作させるのが一般的です。 インターネットの多様な機能を支える多様なサーバLANやインターネットの世界でデータをやり取りする上で重要な働きをしているのがサーバです。LAN環境で働くサーバとしては複数の端末でデータを共有する「ファイルサーバ」や、ネットワークを介して1台のプリンタを共有するための「プリンタサーバ」などがあります。一方、インターネットやイントラネットなどTCP/IPネットワークの世界で働くサーバには、次のように数多くの種類があります。
メール送信の仕組みeメール送受信は次の5つのステップを経て行われています。
メールソフトで作成したデータをメールサーバ(SMTPサーバ)に送信
↓ メールサーバがDNSサーバに対して送信先IPアドレスを照会する ↓ 送信先IPアドレスを持つメールサーバに向けてメールデータを送信 ↓ 送信先ユーザーが認証のうえで送信先メールサーバをチェック ↓ 受信メールを取り出す この5つのステップを郵便システムに置き換えてみると次のようになります。 eメールシステムの場合、ユーザーはメールソフト上でメール文書を作成し、送信ボタンを押すだけで受信側のメールサーバに送り届けられますが、裏側では図2のようにメールサーバ、DNSサーバが連携して働いています。
メール送信時のエラーメッセージの意味何らかの理由で相手先のSMTPサーバがメールを受信できない場合、エラーが発生したことを知らせる「バウンスメール」が返信されてきます。バウンスメールに記載されるメッセージには次のような種類があり、その内容からおおよそのエラー原因を知ることができます。
「User unknown」=ユーザーが不明。(図1の受信側ユーザーが存在しない)
「Host unknown」=ドメイン名が不明。(図1の受信側メールサーバが存在しない) 「Message size exceed fixed maximum size」=メールのサイズが大きすぎて受信できない。 「Mail box full」=受信側のメールボックスが満杯で受信できない。 世界中のIPアドレスとメールアドレスを照合するDNSの仕組みインターネット上には何万台ものDNSサーバがあります。あるドメイン名に対応するIPアドレスを検索してもらう場合、何万台ものDNSを総当たりで調べるわけにはいきません。そこでDNSではDNSサーバを階層化し(図7)、下位のドメインを管理するDNSサーバをすぐ上位のDNSサーバに登録するというように順に登録する方法を採っています。このように階層ごとのDNSがドメイン名とIPアドレスのデータを分担して保持すれば、国別のドメイン記号を管理するDNSサーバから、下位の組織種別のドメイン記号を管理するDNSサーバへとたどる方法で容易に、効率的に目的のドメイン名とIPアドレスを分担にたどり着くことができるわけです。 電子メール1通ごとに付けられる「メールヘッダー」受信したeメールのそれぞれには図8のような「メールヘッダー」と呼ばれるデータがついています。メールヘッダーにはメールの送信者、受信者、経由したサーバや題名などが書き込まれており、受信側のメールソフトはこのメールヘッダー情報をもとにして受信メール一覧の表示、返信時のアドレスを書き込んでいるのです。 ほとんどのメールソフトでは、普段メールヘッダーは表示されない設定になっていますが、「メールヘッダーを表示する」などのメニューを選択することで簡単に表示することができます。メールヘッダーの最初の部分には、メールが経由してきたメールサーバが下から順に記述されています。送信メールが何らかの理由で戻ってきた場合、メールヘッダーを表示し「Received」の欄をたどっていくと、どこまで届いていたか確かめることができます。 MIMEで送信される日本語やデータインターネットのeメールシステムで使われるプロトコルSMTPは、もともと英語圏のテキストであるASCII(American Standard Code for Information Interchange アスキー)コードをやり取りする前提で設計され、これと異なる日本語文字や1行が1000文字を超える長文データ、また画像や音声、アプリケーションデータなど(バイナリーデータ)は送信できませんでした。この制約をSMTPに手を加えずに取り払い、ASCII文字以外の文字、たとえば日本語や画像、動画や音声データ、表計算データなどを送信できるようにする規格がMIME(Multipurpose Internet Mail Extensions マイム)です。 実際にeメールで画像データなどを送る場合「添付ファイル」をクリックする操作を行いますが、この時メールソフトは画像データをASCIIコードに変換(エンコード)しているのです。また受信側が、受け取った添付ファイルを開封する場合、メールソフトはエンコードされたデータを画像データに戻して(デコード)いるのです。MIMEではエンコード方式としてBase64と呼ばれる方式を採用しています。 Base64の考え方そもそも、インターネットのメールシステムに用いられるテキスト(ASCIIコード)がなぜ7ビットなのか? それはASCIIコードが制定された1963年当時、コンピュータが扱うデータの最小単位は8ビット(8桁の0と1)で、8ビット目を通信における誤り検出(パリティチェック)用ビット(パリティビット)として使用していたこと、そして7ビット=128通り以内でアルファベットの大文字、小文字、数字や@、%、?()などの記号類、空白文字などを表すことができたからです。 しかしインターネットが世界中に普及し、ASCIIコードによる文字つまり英語圏以外の文字や、画像や音声など8ビットで表されるデータをメールシステムでやり取りする必要性が高まり1992年にMIMEが登場します。MIMEの登場によってインターネットメールは「7ビットの呪縛」から解き放たれ、広く世界の文字文化とeメールとを結び付けたことになります。 このMIMEで採用されているBase64とは、英数字ASCII文字だけを用いて英数字以外の文字やバイナリーデータを表すデータ変換(エンコード)方式で、名前の「64」はエンコードに用いられるASCII文字のA〜Z、a〜Z、0〜9と記号類(+と/、=)の合計64に由来しています。 Base64の手順は(英数字の場合)、
例えば文字列「ABC」(3バイト)をBase64でエンコードしてみましょう。 日本語を置き換える場合は、各文字の文字コードの2進8ビットで表し、同様にASCII文字(A-Z, a-z, +, /)にエンコードします。インターネットのメッセージで使う文字コードはISO-2022-JPと定められています。これ以外の文字コードを使ってはいけないというわけではありませんが、他の文字コードの場合、文字化けを起こす可能性があります。 増え続ける「迷惑メール」とその対策eメールは郵便システムに比べ、はるかにスピーディーで送信コストも安く大変便利なものですが、これを悪用した「迷惑メール」が増加の一途をたどり大きな問題となっています。迷惑メール対策を推進する業界団体でメール認証技術の標準策定作業を推進するMAAWG (Messaging Anti-Abuse Working Group)による、2006年第4四半期におけるインターネット上の全メールのなんと75パーセントが迷惑メールによって占められているといいます。 「迷惑メール」は「スパムメール」とも呼ばれ、その内容は一方的な商業広告の送りつけから、「〜のために、このメールを○○人に転送するように」と書かれたチェーンメールなど様々です。郵便ダイレクトメールのように切手代がかかるといったこともなく、ヘッダの発信元を書き換えて送りつけることができるなどの理由で増え続けているのです。メール受信時にはユーザーの認証が必要ですが、SMTPによって送信する場合、認証を必要としないことが多いことを思い出してください(図2の1。最近ではSMTPで送信時に認証を求める機能も利用されている)。迷惑メールはこうしたeメールシステムのスキを突く手口から、手の込んだものまでさまざまで、最近では発信元をくらますためにロボットのように遠隔操作で動作する迷惑メール送信プログラムを数多くのPCにばらまいて感染させ、あちこちのメールサーバに一斉に迷惑メールを送信させる「ボット」型も登場しています。 「迷惑メール」は開封した人を不快にしたり、必要なメールの読み出しの邪魔になったりするだけでなく、インターネットを混雑させメールサーバやDNSサーバに負荷を掛けることになります。そこで採られているのが次のような迷惑メール対策です。
WebメールWebメールとはWebブラウザで利用できるeメールシステムです。Webブラウザを利用できる環境であればどこからでもメールソフトなしにメールの送受信ができ、無料で利用できるサービスも提供され、そのユーザーは急速に増えています。 Webメールの仕組みは、受信メールサーバへアクセスして認証し受信メールを取得するプログラム(図2の4, 5)をWebサーバ上で実行、その結果をWebブラウザ上に表示するというものです。 おさらいインターネットの主要機能ともいえるeメールシステムでは、各種のサーバが重要な役割を果たしていることが分かりました。覚えておきたいポイントは、
次回はeメールと同様、インターネットでもっともよく使われ、インターネットの急速な普及の要因ともなったWeb機能について紹介します。 |
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